不動産登記手続きの原則と登記事項証明書の見方

今回は、申請主義の原則共同申請の原則など不動産取引を行う上での原則や登記の申請方法、登記記録の構成、登記事項証明書の見方についてです。

登記と不動産取引

(1)申請主義の原則

不動産登記手続きは、原則として、当事者の申請によって開始され、かつ申請を受けた事項についてだけしか登記手続きを進めることができない。

ただし、裁判所または官公署の嘱託によってなされる場合もある(同法16条)。

また、表示の登記は登記官が職権で行うことができる。

(2)共同申請の原則

登記は、登記権利者および登記義務者が共同で申請することを原則としている(同法60条)。

したがって、登記権利者のみの単独申請が認められるのは、表示の登記や仮登記、判決または相続による登記などの場合に限られる。

登記権利者とは、、、

  1. 相手方当事者に対して登記申請に協力を求める権利を有する者
  2. 登記により利益を受ける者

登記義務者とはその逆の立場の者。

  1. 相手方当事者の登記申請に協力する義務がある者
  2. 登記によって不利益を受ける者

だが、通常は司法書士が双方の代理人となって申請することが多い。

(3)申請の方法

登記の申請は本人または代理人が行うことになっている。

①オンラインによる申請

不動産登記の申請は、インターネットを利用したオンラインで申請することができる。

  • 不動産登記のオンライン申請は、申請用総合ソフトを利用して作成した申請情報とその登記の申請に必要な添付情報とを登記・供託オンライン申請システムに送信して行う。

※オンラインで登記の申請をした場合は、申請の補正、取下げおよび事前通知の申し出、登記の申請の却下、登記識別情報の通知および登記完了証の交付もオンラインでということになる。

②出頭による申請

本人または代理人が登記所に出頭し、登記に必要な書面や情報が記録されたCDRなどを持参して登記を申請する。

③郵送による申請

登記に必要な申請書類などを登記所に書留郵便で郵送することで登記を申請する。

その場合、申請書類などが登記所に到達した時点で受け付けたものとされる。

(4)登認識別情報と登記済証

現行の不動産登記法に基づいて権利に関する登記を受けた場合は、登記完了後に登記名義人に登記識別情報が通知される。

登記識別情報とは、登記を受けたことを証明する符号(数字とアルファベットを組み合わせた12桁の符号)のこと。

その後に登記を行う場合は登記識別情報を提供して申請する。

一方、旧不動産登記法のもとで権利に関する登記を受けた場合は、登記完了後に登記原因証書または申請書副本が還付されていた。

この還付された登記原因証書などを登記済証(または権利証)といい、権利に関する登記などの必要書類とされていた。

しかし、現行の不動産登記法のもとで登記を行った場合には登記済証は発行されない。

つまり、かつての登記済証に代わるものが登記識別情報ということだ。

しかし、新たに登記を受けて登記識別情報が通知されるまでは、登記済証は登記必要書類として有効だ。

登記識別情報は、登記申請人が登記名義人であることを確認する重要な情報だ。

そのため、登記識別情報通知書の符号欄には目隠しシールが貼られている。

もし、日隠しシールが剥がされていたり、通知書を紛失した場合などは、悪用される危険性もある。

その場合は、登記官に登記識別情報を失効させるよう申し出ることができる。

また、あらかじめ登記申請に当たって、登記識別情報の通知をしないよう申し出ることもできる。

失効や不通知によって登記識別情報を提供できない場合や登記済証を紛失してしまった場合。

本人であることを確認するための事前通知制度または資格者(司法書士、弁護士など)による本人確認制度によって登記を申請することができる。

※事前通知制度とは、登記所から申請人に対して申請内容を確認する事前通知書が送られる制度のこと。

登記記録の構成

登記記録は「表題部」と「権利部」に区分され、「権利部」は「甲区」および「乙区」に区分される。

詳細は以下の図を確認してほしい。

なお、従来の不動産登記簿には、土地登記簿と建物登記簿があり、土地は地番順に一筆ごとに、建物は1棟の建物ごとに所在地番順に登記用紙が備えられている。

※従来の不動産登記簿とは、コンピュータ化前の登記所の登記簿および閉鎖登記簿のこと。

図表5‐4

表示の登記
(表題部)
土地や建物の物理的概要が記録されている。
土地登記記録:所在、地番、地日、地積など
建物登記記録:所在、家屋番号、種類、構造、床面積など
権利の登記
(権利部)
甲区所有権に関する事項が記録されている。
所有権の保存、移転など、所有権に関する差押え、
共有物の分割禁止などの処分の制限など
乙区所有権以外の権利に関する事項が記録されている。

区分所有建物の登記記録は、図表5-5のとおり1棟の建物の全体を表示した表題部と、専有部分の表題部、権利部の甲区および乙区で構成されている。

※1棟の建物の登記事項に変更があった場合は、その棟に属する他の区分所有建物についても同様の登記としての効力がある。

図表5-5

1棟の建物の表題部1棟の建物の表示1棟の建物の物理的概要が記録されている。
所在、建物の番号、構造、床面積など
敷地権の目的である土地の表示1棟の建物の敷地の物理的概要が記録されている。
所在、地番、地日、地積など
専有部分の 建物の表題部専有部分の建物の表示専有部分の建物の物理的概要が記録されている。
家屋番号、建物の番号、種類、構造、床面積など
敷地権の表示専有部分に係る土地利用権の概要が記録されている。敷地権の種類、敷地権の割合など
権利の登記 (権利部)甲区専有部分の所有権に関する事項が記録されている。 所有権の変動と原因、差押えなど
乙区専有部分の所有権以外の権利に関する事項が記録されている。
抵当権、賃借権など

登記事項証明書の交付など(登記記録の公開)

誰でも登記所において手数料を納付して登記事項証明書(登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面)および登記事項要約書(登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面)の交付を請求することができる(不動産登記法119条1、2項)。

登記事項証明書には、登記記録に記録されている事項であることを証明する登記官の印が押される。

登記事項要約書はもともと閲覧に代えて交付されるものなので、登記官の証明印は押されず、公的文書としての証明力がない。

登記事項証明書については、郵送による送付請求も可能だ。

また、どの登記所においても、その登記所の管轄外の不動産に関する登記事項証明書の交付も受けることができる(同法119条5項)。

しかし、登記事項要約書はもともと閲覧の代替とされているので、管轄の登記所の窓口でしか交付請求ができない。

閉鎖登記記録については、従来どおり登記簿謄抄本の請求および閲覧をすることとなる。

登記事項証明書などの交付請求や登記簿謄抄本の交付申請や閲覧申請などは、土地の場合は「地番」、建物の場合は「家屋番号」を記載する。

「地番」が不明な場合は、公図と住宅地図を照らし合わせ把握する。

「家屋番号」が不明な場合は、所有者名または地番上の建物で申請する場合もある。

※登記記録の内容は、必ずしも真実の物理的状況・真実の権利関係が記録されているとは限らない。

例えば、現況が「宅地」であるのに土地の地目が「畑」として登記されている場合や、現実の所有者が「甲野太郎」であるのに登記記録における所有者が「法務五郎」と誤記されている場合もある。

登記記録に記録されている事項が真実であるかどうか他の資料との突合などを踏まえ、十分な調査が必要である。

登記事項証明書の見方

登記事項証明書は、対象不動産の過去から現在への物理的変動および権利関係の変動が記載されている(移記されて閉鎖登記記録などの確認を要する場合もある)。

また、記載は順位番号の古い順から新しい順に行われる。従って、新しい変動内容ほど順位番号が大きくなる。

①表題部

土地、建物の表示に関する事項が記載される。「地積」「床面積」の項目には過去から現在への地積・床面積の変動が表示される。

その変動の原因は「原因およびその日付」の項目に、分筆・合筆・錯誤、または新築・増築などと表示される。

不動産番号とは不動産を識別するために一筆の土地または一個の建物ごとに表題部に記録される番号、記号その他の符号で登記申請書などに不動産番号を記載すれば不動産の表示の記載を省略することができる。

②権利部

a)甲区

所有権に関する事項が記載される。登記の目的(所有権移転・差押えなど)、原因(売買・相続・代物弁済など)、共有の場合は、各共有者の各持分などが記載されている。

1つの不動産(一筆の土地・一個の建物)について2つ以上の所有権は存在しないので、最も順位番号の大きい欄に記載されている所有権が、現在の所有権を表示し、その記載より小さい順位番号に記載されている内容は、過去の所有者の変動が表示されている。

b)乙区

所有権以外の権利に関する事項が記載される。登記の目的(抵当権設定。地役権設定・賃借権設定など)、原因、債権額または極度額、共同担保目録番号、その他の条件や特約などが記載される。

1つの不動産(一筆の土地。一個の建物)について2つ以上の抵当権が存在する(同順位または順位の異なる抵当権)場合もある。

次回も不動産取引を安全かつ円滑にしていくために必要なことについてです。

ではまた。CFP® Masao Saiki

※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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