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前回は、ファイナンシャルプランニングの目的とリスクを読み取る力について解説しました。今回はファイナンス理論のベースでもある将来価値からの視点と現在価値からの視点などについて解説しましょう。

現在手元にあるお金の価値は、その金額以上に価値がある。

そこには時間の経過が加味されるからだ。

例えば、今手元に100万円があれば何かの目的にすぐに使うことができる。

しかし、銀行に預けておけばわずかであっても、そこには利息というものが付加される。

逆に必要なものがあっても手元に100万円がなかったら、金利を払ってどこからかお金を借りてこなければならない。

つまり、最終的には100万円以上のお金を返済しなければならないことになる。

このように貨幣価値というものは、時点と金額の組み合わせによって、異なってくるものだ。

時点と金額の組み合わせ

現在の視点から見た将来の価値とは?

例えば、いま100万円が手元にあった場合、このお金の現在価値(P)は100万円だが、1年後の将来価値(F1)は当然ながら100万円ではない。

それを「F1=(1+r)n年という数式で表すことができる。

さらに、同じ条件の運用を継続できたとすると、数十年後にその金額はとても大きなものになる可能性がある。

もちろん、同じ金利が何十年も固定されるこなど現実的ではないが、金利差によって将来価値が大きく変わってくるのは事実だ。

将来の視点からみた現在の価値とは?

では逆に将来価値の視点から現在価値を見た場合はどうだろう?

例えば、金利が3%のとき、2年後に100万円にするためには、現時点でいくらあればいいだろうか?

それを「P=100万円/(1+r)n年」という数式で表すことができる。

上の式に当てはめると約942,596円ということになる。

したがって、約942,596円という金額を預けて2年間複利運用した場合、100万円に到達することを意味する。

ファイナンス理論には、金融商品の価値を決定するという役割がある。

その前提が、この将来価値から現在価値を求めるという考え方にある。

市場で決まっている価値は、市場参加者たちが、この考え方に基いて取引をした結果によって、その価値が決められていると考えるからだ。

注意点▼

ここで、注意したいことは、上記の2つの式は、あくまでも将来価値が確実でリスクがなく、将来価値の受取が1回のみの金融商品の現在価値、つまり現時点での理論価値を求めたものだということ。

リターン

投資の成果を測定する方法として、投資額に対してどのくらいのリターンを得たかというものがある。

投資額とその成果との比を投資収益率(ROI)、あるいは単に収益率といったり、リターンと称したりしている。

注意点▼

ここで注意しなければならないことは、リターンは利回りのことではないということ。

さらに投資成果は、投資から得られるもの全てであり、売却金額の他に配当、分配金、利子なども含まれる。

そして、売買の差額から得たリターンをキャピタルリターン、配当・分配・利子などはインカムリターンと言いう。

それが、キャピタルとインカムの両方からのリターンである場合、総合リターン・トータルリターン・配当込みリターンと表現される場合もある。

例えば、第t期の期末の配当、分配、利子などを含まない資産価格をPt、

配当、分配、利子は期末に発生するものと仮定してDtとする。

第t期の期首の資産価格は第(t-1)期の期末の資産価格と等しいのでこれをPt-1とする。

つまり、「第t期のリターンr1=第t期の収益額/第t期の投資額」という関係になる。

※Pt-Pt-1+Dt/Pt-1=Pt-Pt-1/Pt-1(キャピタル)+Dt/Pt-1(インカム)

実際にはリターンは、日次、週次、月次、四半期、半期、年次などさまざまな頻度で計算される。

そして、これらの計測期間と資金の投下、回収時点は必ずしも一致していない。

この場合リターン計測のためには、計測期間の開始時と終了時で対象資産を時価評価しなければならない。

例えば、10年前に購入して保有している株だとしても1年間のリターンを算出する時の投資額としては、1年前に時価で再投資したと考え、1年前の時価と現在の時価の差額とその間の配当の合計を投資収益として算出する必要が出て来る。

つまり、1年前に100円であった株価が現時点で110円になり、5円の配当があったとすると、1年間のキャピタルリターンは10%で、インカムリターンは5%ということになる。

リターンの分布と期待リターン

過去のリターンは算出可能だが、将来のリターンを算出することは不可能だ。

なぜなら、将来の株価や配当を確定することはできないからだ。

現時点の株価は、現時点の情報で投資家が将来を予測した結果決められているものだからだ。

したがって、時間の経過により新たな情報が次々ともたらされることによって、株価は確率的に変動すると考えるのが普通だ。

さらにファイナンス理論では、将来のリターンを確実に予測することは不可能だとしつつも、ある既知の分布に従っていると考えて、理論を展開していくケースが多く見られる。

したがって、実証研究としては、どのような分布に従っているかが課題となってくる。

例えば、現時点が第t期の期首であるとすると、現時点の株価Pt-1は市場で観測できるので、確率変数ではないが、期末の株価と配当は確率変数となるといった具合にだ。

将来のリターンが従っている分布が特定できれば、統計学の知識を応用して理論を展開することが可能になってくる。

※分布とは統計学の用語で、確率変数がある値をとる確率をすべての値について表したもの。

それぞれの確率は0以上1以下であり、すべての確率を合計したものは1となる。

株式市場は正規分布には従っていない

リターンのように確率変数が連続となるものは下図のような確率分布を考える。

横軸が確率変数で縦軸が確率密度となり、確率変数がある値の範囲内となる確率は、このグラフでその上限と下限の間の面積で与えられる。

正規分布

図は標準正規分布と呼ばれる分布の例で、例えば、この分布に従う確率変数が、-1以上1以下の値になる確率は約60%だ。

標準正規分布に関しては統計学の教科書に数表が掲載されていたり、表計算ソフトに関数が用意されているのでそちらを参考にして欲しい。

現実の資産のリターンがどのような分布になっているかは、重要な問題ではあるが、その資産の特性や経済状況によっても異なってくるので、普遍的なものは存在していないことになる。

しかしながら、市場で取引されている資産のリターンデータを分析すると、多くの分布は標準正規分布に近い釣鐘型をしていることが確認できる。

ただし、株式市場においては暴落とその反動による極端な値がたびたび観測されている。

その頻度が正規分布より高くなることから、厳密には正規分布に従っていないと考えられるため、当然慎重な検討が必要になる。

分布を見極めるための最初の尺度は平均値

その分布がどのよなものであるかを見極めるために最初に用いられる尺度が平均値だ。

平均は統計学では期待値ともいい、統計学上は平均値と期待値は同じことだ。

直感的な意味付けとしては、分布がどのような値の周りに散らばっているかという代表値ということになる。

投資家の心情としては、投資した時に得られるリターンの分布を知りたいので、最初にリターンの期待値を知る必要があるだろう。

しかし、将来のリターンを知ることは不可能であり、推測値によって経済現象を限定することは出来ない。

したがって、全資産に共通した普遍的な推定方法は存在しないことになる。

こうしたことから、次善策としてさまざまな方法が考案されてきた。

そのうちの一つが過去の分布と将来の分布は同じだと仮定したものだ。

経済変動は同じ分布から繰り返されていると仮定したならば、成り立つ方法だ。

この考え方に従った場合、過去の平均リターンを将来の期待リターンの推測値として算出することになる。

ただし、この場合においても統計学的には、実際のデータから真の期待値を算出することは不可能だ。

したがって、算出しているのは期待値の推計値に過ぎないということだ。

推計には誤差が存在する上、実現するリターンはその周りに分布する、そのことを忘れてはいけない。

つまり、これらの方法は経済構造に何らかの変化が生じた場合には使いものにならないことだ。

シナリオとそのシナリオの生起確率を見ていく

次にシナリオとそのシナリオの生起確率に着目していく考え方がある。

具体的には、

  1. 今後経済が上向いていくとした場合のリターンとその確率
  2. 現状維持の場合のリターンとその確率
  3. 悪化した場合のリターンとその確率

上記3つのそれぞれを想定して、そこから期待リターンを求めていくといった方法だ。

例えば、

  1. 経済が上向く確率が20%でリターンが30%
  2. 現状維持の確率が60%でリターンが10%
  3. 悪化する確率が20%でリターンが-10%

こののような場合、期待リターンの算出は、統計学の期待値の定義により以下の式になる。

※平均リターン=期待リターン⇒ある状態のリターン値×確率の合計

上記の例で云えば、期待リターン=30%×0.2+10%×0.6+(-10%)×0.2=10%ということになる。

これが真の値であると仮定すれば理論的には正しいが、現実に使用する場合に各数値をどのようにして求めるのか?

シナリパターンは3つで事足りるのか?

例えば最悪のケースが-10%でいいのか?

破綻まで想定したとしたら-100%になるのではないか?

といった色々な問題が浮上してくる。

こうした予測の限界ということもよくよく理解した上で、知識だけではなくセンスを磨いていく必要があるだろう。

平均の計算方法は「データの合計÷データの数」と理解している人が多い。

しかし、この考え方は記述統計の上での「平均」であり、あくまでも入手したデータそのものの平均でしかない。

例えば、ある集団での平均体重は、その集団に属している全員の体重を測定し、個々の全ての体重を加算して人数で割れば算出が可能だ。

しかし、統計学の最も重要な役割は推論であり、これを論理的に支えているのが推測統計学と呼ばれているものになる。

例えば、ある物質が体重の増減に効果があるかどうか、全人類に同一の実験をして前後の体重を測定すれば分かることだが、これは現実的な方法とは言えない。

すべての人の体重を量ることは不可能だし、増してその前後の違いを測定することなど土台無理な話だ。

そもそも実験から得たものは、一部の結果でしかない。

しかし、この結果を踏まえ、これを全体に適用した場合には、どのようなことが言えるのかが、推測統計学による推論ということになるだろう。

また、最終的に知りたいことは、一部のサンプルの分布ではなく、全人類の分布だが、正確な計測を繰り返し行なったところで、分布の真の平均を算出することは出来ない。

さいごに▼

わたしたちが算出できるのは、どこまでいってもその推計値にすぎないのだ。

そして、その推計には誤差があり、その誤差の範囲をデータを活用できる数値に抑えていくことが重要だ。

平均と期待値とは異なる概念ではなく、記述統計における平均と推測統計学における平均が異なるだけの話だ。

したがって、推測統計学における真の平均と平均の推定値は異なるものではない。

推測統計学における平均と期待値の定義は同一で言葉が違うだけだ。

「違う言葉で同じ概念を語る」このことがモノゴトをより複雑化してしまう。

次回は「ファイナンシャルプランを作成する際のポイント・・・」について解説します。

ではまた。

この投稿はNPO法人日本FP協会CFPカリキュラムに沿って記述しています。

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