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お金を増やす方法とファイナンシャルプランニング、№3

前回は、ファイナンシャルプランニングの目的とリスクを読み取る力について解説した。今回はファイナンス理論のべーすでもある将来価値からの視点と現在価値からの視点についてから解説していく。

現在手元にあるお金の価値は、その金額以上に価値があるものです。

そこには時間の経過が加味されるからです。

例えば、今手元に100万円があれば何かの目的にすぐに使うことができます。

銀行に預けておけば僅かであっても、そこには利息というものが付加されます。

逆に必要なものがあっても手元に100万円がなかったら、金利を払ってどこからかお金を借りてこなければなりません。

つまり、最終的には100万円以上のお金を返済しなければなりません。

このように貨幣価値というものは、時点と金額の組み合わせによって、異なるものです。

現在の視点から見た将来の価値

いま100万円が手元にあった場合、このお金の現在価値(P)は100万円ですが、1年後の将来価値(F1)は当然ながら100万円ではありません。

仮に1年間の利息が年利(r)3%だとした場合、1年後の将来価値(F1)は103万円になります。

※F1=P(1+r)

そして2年後には106万900円になります。

さらに、同じ条件の運用を継続できたとするとF1=(1+r)n年ということになり、数十年後になればその金額はとても大きなものになります。

もちろん同じ金利が何十年も固定されるこなど現実的ではありませんが、金利差によって将来価値が大きく変わってくることは承知の事実です。

将来の視点からみた現在の価値

では逆に将来価値の視点から現在価値を見た場合はどうでしょうか?

例えば、金利が3%のとき、2年後に100万円にするためには、現時点でいくらあればいいでしょうか?

※P=100万円/(1+r)n年

上の式に当てはめると約942,596円ということになります。

したがって、この金額を預けて2年間複利運用した場合、100万円に到達します。

ファイナンス理論の役割の一つに、金融商品の価値を決定するというものがあります。

その前提が将来価値から現在価値を求めるという考え方にあります。

市場で決まっている価値は、市場参加者たちが、この考え方に基いて取引をした結果によって、その価値が決められていると考えます。

※ここで、注意したいことは、上記の2つの式は、あくまでも将来価値が確実でリスクがなく、将来価値の受取が1回のみの金融商品の現在価値、つまり現時点での理論価値を求めたものだということです。

リターン

投資の成果を測定する方法として、投資額に対してどのくらいのリターンを得たかというものがあります。

投資額とその成果との比を投資収益率(ROI)、あるいは単に収益率といったり、リターンと称したりしています。

ここで注意しなければならないことは、リターンは利回りのことではないということです。

さらに投資成果は、投資から得られるもの全てであり、売却金額の他に配当、分配金、利子なども含まれるということです。

売買の差額から得たリターンをキャピタルリターン、配当・分配・利子などはインカムリターンと言います。

それが、キャピタルとインカムの両方からのリターンである場合、総合リターン・トータルリターン・配当込みリターンと表現される場合もあります。

例えば、第t期の期末の配当、分配、利子などを含まない資産価格をPt。

配当、分配、利子は期末に発生するものと仮定してDtとします。

第t期の期首の資産価格は第(t-1)期の期末の資産価格と等しいのでこれをPt-1とします。

つまり、「第t期のリターンr1=第t期の収益額/第t期の投資額」という関係になります。

※Pt-Pt-1+Dt/Pt-1=Pt-Pt-1/Pt-1(キャピタル)+Dt/Pt-1(インカム)

実際にはリターンは、日次、週次、月次、四半期、半期、年次などさまざまな頻度で計算されます。

そして、これらの計測期間と資金の投下、回収時点は必ずしも一致していません。

この場合リターン計測のためには、計測期間の開始時と終了時で対象資産を時価評価しなければなりません。

例えば、10年前に購入して保有している株だとしても1年間のリターンを算出する時の投資額としては、1年前に時価で再投資したと考え、1年前の時価と現在の時価の差額とその間の配当の合計を投資収益として算出する必要があります。

つまり、1年前に100円であった株価が現時点で110円になり、5円の配当があったとすると、1年間のキャピタルリターンは10%で、インカムリターンは5%ということになります。

リターンの分布と期待リターン

過去のリターンは算出可能ですが、将来のリターンを算出することは不可能です。

なぜなら、将来の株価や配当を確定することはできないからです。

現時点の株価は、現時点の情報で投資家が将来を予測した結果決められています。

したがって、時間の経過により新たな情報が次々ともたらされることによって、株価は確率的に変動すると考えられます。

さらにファイナンス理論では、将来のリターンを確実に予測することは不可能だとしつつ、ある既知の分布に従っていると考えて、理論を展開していくケースが多く見られます。

したがって、実証研究としては、どのような分布に従っているかが課題となってきます。

例えば、現時点が第t期の期首であるとすると、現時点の株価Pt-1は市場で観測できますから確率変数ではないのですが、期末の株価と配当は確率変数となります。

将来のリターンが従っている分布が特定できれば、統計学の知識を応用して理論を展開することは可能です。

※分布とは統計学の用語で、確率変数がある値をとる確率をすべての値について表したもの。

それぞれの確率は0以上1以下であり、すべての確率を合計したものは1となります。

株式市場は正規分布には従っていない

リターンのように確率変数が連続となるものは下図のような確率分布を考えます。

横軸が確率変数で縦軸が確率密度となり、確率変数がある値の範囲内となる確率はこのグラフでその上限と下限の間の面積で与えられます。

 

正規分布

図は標準正規分布と呼ばれる分布の例で、例えば、この分布に従う確率変数が、-1以上1以下の値になる確率は約60%です。

標準正規分布に関しては統計学の教科書に数表が掲載されていたり、表計算ソフトに関数が用意されています。

現実の資産のリターンがどのような分布になっているかは、重要な問題ですが、その資産の特性や経済状況によっても異なってくるので、普遍的なものは存在しません。

しかしながら、市場で取引されている資産のリターンデータを分析すると、多くの分布は標準正規分布に近い釣鐘型をしています。

ただし、株式市場においては暴落とその反動による極端な値がたびたび観測され、その頻度が正規分布より高くなることから、厳密には正規分布に従っていない可能性があり、慎重な検討が必要になってきます。

分布を見極めるための最初の尺度は平均値

分布がどのよなものであるかを見るために、最初に用いられる尺度が平均値です。

平均は統計学では期待値ともいい、統計学上は平均値=期待値になります。

直感的な意味付けとしては、分布がどのような値の周りに散らばっているかという代表値です。

投資家の心情としては、投資によるリターンの分布を知りたいので、最初にリターンの期待値を知る必要があるのです。

しかし、将来のリターンを知ることは不可能なので、推測値によって経済現象を限定することは出来ません。

したがって、全資産に共通した普遍的な推定方法は存在しないことになります。

こうしたことから、次善の策としてさまざまな方法が考案されました。

そのうちの一つが過去の分布と将来の分布は同じだとしたものです。

経済変動は同じ分布から繰り返されていると仮定したならば、成り立つ方法です。

この考え方に従ったなら、過去の平均リターンを将来の期待リターンの推測値として算出することになります。

ただし、この場合においても統計学的には、実際のデータから真の期待値を算出することは不可能で、算出しているのは期待値の推計値に過ぎないということです。

推計には誤差が存在する上、実現するリターンはその周りに分布する、そのことを忘れてはいけません。

つまり、これらの方法は経済構造に変化が生じた場合には使いものになりません。

シナリオとそのシナリオの生起確率を見ていく

次にシナリオとそのシナリオの生起確率に着目していく考え方があります。

具体的には、今後経済が上向いていくとした場合のリターンとその確率、現状維持の場合のリターンとその確率、悪化した場合のリターンとその確率のそれぞれを想定して、そこから期待リターンを求めていくといった方法です。

例えば、経済が上向く確率が20%でリターンが30%、現状維持の確率が60%でリターンが10%、悪化する確率が20%でリターンが-10%のような場合、期待リターンの算出は、統計学の期待値の定義により以下の式になります。

※平均リターン=期待リターン⇒ある状態のリターン値×確率の合計

上記の例で云えば、期待リターン=30%×0.2+10%×0.6+(-10%)×0.2=10%ということになります。

これが真の値であると仮定すれば理論的には正しいのですが、現実に使用する場合に各数値をどのようにして求めるのか、シナリパターンは3つで事足りるのか、例えば最悪のケースが-10%でいいのか、破綻まで想定したとしたら-100%になる。という色々な問題がでてきます。

こうした予測の限界ということもよくよく理解した上で、FPとして顧客とどう向き合っていくのか、知識だけではなくセンスが問われる場面であるといえます。

さいごに

平均の計算方法は「データの合計÷データの数」と理解している人が多いことでしょう。

しかし、この考え方は記述統計の上での「平均」であり、あくまでも入手したデータそのものの平均でしかありません。

例えば、ある集団での平均体重は、その集団に属している全員の体重を測定し、個々の全ての体重を加算して人数で割れば算出が可能です。

しかし、統計学の最も重要な役割は推論であり、これを論理的に支えているのが推測統計学と呼ばれているものです。

例えば、ある物質が体重の増減に効果があるかどうか、全人類に同一の実験をして前後の体重を測定すれば分かることですが、これは現実的な方法とは言えません。

すべての人の体重を量ることはできませんし、増してその前後の違いを測定することなど土台無理な話です。

そもそも実験から得たものは、一部の結果でしかありません。

しかし、この結果を踏まえ、これを全体に適用した場合には、どのようなことが言えるのかが、推測統計学による推論です。

最終的に知りたいことは、一部のサンプルの分布ではなく、全人類の分布ですが、正確な計測を繰り返し行なったところで、分布の真の平均を算出することは出来ません。

わたしたちが算出できるのは、どこまでいってもその推計値にすぎないのです。

また、その推計には誤差があり、その誤差の範囲をデータを活用できる数値に抑えていくことが重要だと言えます。

平均と期待値とは異なる概念ではなく、記述統計における平均と推測統計学における平均が異なるだけです。

したがって、推測統計学における真の平均と平均の推定値は異なるものです。

推測統計学における平均と期待値の定義は同一で言葉が違うだけなのです。

「違う言葉で同じ概念を語る」このことがモノゴトをより複雑化しています。

次回はリスクの測定、バリュー・アット・リスク、そしてリスクとリスクプレミアムについて解説します。

ではまた。

この投稿はNPO法人日本FP協会CFPカリキュラムに沿って記述しています。

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