法人生命保険契約の経理処理

今日は保険契約の税務を始め、経理処理、受取金と福利厚生制度、退職金規定などに特化して解説する。

法人契約で利用される保険種類には、個人保険と企業保険の2つのスタイルがありる。

法人契約による個人保険を単に法人契約という場合が多い。

その中でも役員・従業員の退職金や事業保障の確保を目的とした契約を事業保険として区分しているようだ。

言い換えれば、広義の法人契約と狭義の法人契約があるということだ。

狭義の法人契約は、経営者の保障目的と福利厚生目的にわかれる。

いろいろな新商品が販売されていることもあって、税務調査などで経理処理の誤りを指摘されケースも多い。

注意!法人契約の税務は昭和55年12月25日付および昭和59年12月17日付法人税基本通達の改正により詳しく規定されている。

保険料の経理処理について

法人が支払った保険料の経理処理

  • 養老保険や終身保険などの貯蓄性のある保険は資産計上。
  • 定期保険や医療保険などの貯蓄性のない保険は損金算入。

しかし、実務において例外も多く、保険の種類や契約形態によっても異なる。

事業保険の経理処理事例

契約形態

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員・従業員
  • 死亡・満期保険金受取人:法人
養老保険、終身保険の場合

法人が負担した主契約保険料は、「保険積立金」として資産に計上。

特約が付加され主契約保険料と区分されている場合には、特約保険料は「支払保険料」として損金算入。

※区分されていない場合は保険料全額を資産に計上する。

借方貸方
保険積立金(資産)現金・預金
特約保険料(損金)
注意点▼

通常、損金計上する場合に「支払保険料」、資産計上する場合に「保険積立金」といった勘定科目を使用する。ただし資産計上する場合でも、期間の経過に応じて損金となる前払保険料については「前払費用」もしくは「長期前払費用」を使用する。

定期保険特約付養老保険、定期保険特約付終身保険の場合

法人が負担した養老(終身)保険の保険料は「保険積立金」として資産に計上。

特約が付加され、主契約保険料と区分されている場合には、定期保険料や特約保険料は「支払保険料」として損金に算入。

※区分されていない場合は保険料全額を資産に計上する。

借方貸方
保険積立金(資産)現金・預金
定期保険料(損金)
特約保険料(損金)
定期保険の場合

定期保険の保険料は定期保険料として、また特約が付加されている場合も特約保険料としてそれぞれ損金に算入。

借方貸方
定期保険料(損金)現金・預金
特約保険料(損金)
定期保険特約付養老保険、定期保険特約付終身保険の保険料の前納・一時払いの場合

養老(終身)保険の保険料は「保険積立金」として資産に計上。

定期保険特約保険料は未経過部分を資産(「前払費用」もしくは「長期前払費用」)に計上。

そして、期間の経過に応じて損金に算入。

【例】定期保険特約付養老保険(保険期間10年)、1年分を年払いし、9年分を前納した場合。

年払い保険料

  • 養老部分:50万円、前納保険料:430万円
  • 定期部分:9.4万円、前納保険料:81万円
  • 特約部分:2.1万円、前納保険料:18万円

保険料を支払ったとき

借方貸方
保険積立金(資産)   480現金・預金   590.5
前払保険料(資産)    99
定期保険料(損金)    9.4
特約保険料(損金)    2.1

翌年の契約応当日

借方貸方
定期保険料(損金)     9.4前払保険料注   11
特約保険料(損金)     2.1雑収入       0.5
注:定期部分と特約部分の前納保険料を前納期間で核分する。(81万円+18万円)÷9年間=11万円
保険料の短期払いの場合

短期払いの場合は、貯蓄性の保険(養老保険、終身保険など)であれば保険料支払いのつど資産に計上。

貯蓄性のない保険(定期保険、定期保険特約など)は払込保険料の総額を保険期間で按分し、その年度に対応する部分だけを損金に算入。

【例】30歳男性が定期保険特約付終身保険(60歳払い済み)に加入の場合。

  • 終身保険1,000万円(年払い保険料20万円)
  • 定期保険特約2,000万円(保険期間70歳まで、60歳払い済み、年払い保険料16万円)

30歳から60歳まで

借方貸方
終身保険料(資産)  20万現金・預金  36万
前払保険料(資産)   4万
特約保険料(損金)  12万
注意点▼

注:16万円(定期保険特約保険料)×30年(保険料払込期間)=480万円
480万円÷40年(保険期間)=12万円(損金計上)
16万円-12万円=4万円(資産計上)

60歳から70歳まで

借方貸方
特約保険料(損金)  12万前払保険料

注:60歳からは資産計上した前払保険料を10年間で取り崩していく。
4万円(資産計上)×30年(保険料払込期間)=120万円
120万円÷10年=12万円(損金計上)

福利厚生保険の経理処理

役員や従業員の福利厚生を目的とする。

  1. 契約者:法人
  2. 役員、従業員(使用人):被保険者。
  3. 満期保険金受取人:被保険者

上記を一般に福利厚生保険という。

死亡保険金は役員・従業員の遺族が受取人となる。

主契約の保険料は、役員や従業員の給与とみなされ、役員や従業員の給与所得として課税される。

原則として損金に算入。

定期保険料、特約保険料は、「福利厚生費」として損金となる。

ただし、役員・部課長、その他特定の者のみを加入させる場合は、加入者への給与となる。

事例

契約形態

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員または使用人
  • 満期保険金受取人:役員または使用人
  • 死亡保険金受取人:役員または使用人の遺族
養老(終身)保険の場合
借方貸方
給与(損金)現金・預金
特約保険料(損金)
定期保険特約付養老(終身)保険の場合(保険料が区分されている)
借方貸方
給与(損金)現金・預金
定期保険料(損金)
特約保険料(損金)
定期保険の場合
借方貸方
定期保険料(損金)現金・預金
特約保険料(損金)
注意点▼

注:特定の者のみ加入の場合は給与となる。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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