

為替とは、現金を送る代わりに交換(やりとり)によって債権債務を決済する方法のことだ。
その交換が国際間で行われるものを外国為替と呼んでいる。
外国為替では、その国々の異なる通貨間の交換が行われている。
そのため、それぞれの貨幣価値に見合った交換比率がある。
この通貨の交換比率による外国為替相場(外国為替レート)を外国為替と呼んでいる。
外国為替市場について
外国為替には、株式市場のような取引所という場所はない。
為替市場は、インターネットなどを介して行われるグローバルなネットワーク市場だ。
市場は、ウエリントン、シドニーから始まり、東京、香港、シンガポール、フランクフルト、ロンドン、ニューヨーク市場などへ移っていき、24時間取引が行われる。
つまり、各取引所に限定的な境界線がない。
それぞれの取引時間帯が、その中心的なマーケットになっているのだ。
因みに、最大の外国為替市場はロンドン市場で、その次がニューヨーク市場、東京市場の順になっている。
二種類の外国為替市場
- インターバンク市場:銀行間の市場
- 顧客市場:銀行が一般企業や個人などと取引を行う市場
二種類のインターバンク市場
- 直取引:銀行同士が直接取引をする
- ブローカー取引:仲介業者(ブローカー)を介在して取引する
その他、外国為替市場には中央銀行も参加している。
為替レートの急激な変動を抑制するなどを目的に外国為替平衡操作、所謂為替介入を行っている。
二種類の為替レート表示
- 自国通貨建て
- 外国通貨建て
自国通貨建
外貨1単位が自国通貨でいくらかという表示方法。
例えば「1米ドル=110円」という表示だ。
外国通貨
自国通貨1単位に対して外貨がいくらかという表示方法。
例えば「100円=0.909米ドル」という表示だ。
対米ドルの為替相場を表示する場合、自国通貨建てで表示している場合が多い。
だが、ユーロ、英ポンド、オーストラリアドル、ニュージーランドドルなどは、外国通貨建てで表示している。
一般的には対米ドル以外の為替相場は、各通貨の対米ドルの相場水準から計算されている。
この為替相場をクロスレートと呼んでいる。
これは、米ドルが基軸通貨になっているためだ。
中には米ドルを介在させない取引もあるが、ドルを介在させて取引することが多い。
クロスレートの計算方法
通貨によって割り算による場合と掛け算によって計算される場合がある。
- 掛け算:$/¥100(1米ドル=100円)€/$l.5(1ユーロ=1.5米ドル)→1ユーロ=1.5×100=150円 €/¥150
- 割り算:$/¥110(1米ドル=110円) $/CHF 1.1(1米ドル=1.1スイスフラン)→1米ドル=110円=1.1スイスフラン→1スイスフラン=110÷1.1=100円 CHF/¥100
TTM
銀行が顧客と取引するときに適用する顧客相場は、実勢レートとともに変化する。
この対顧客相場のほかに、銀行が、午前10時頃の銀行間レートを基準に、一日中一定のレートを適用する為替相場がある。
それをTTM(公表仲値)と呼んでいる。
ただし、日中に相場が大きく変動した場合には、レートの変更などが行われる。
外国為替市場の種類
- 直物(スポット)市場
- 先物(フォワード)市場
- オプション市場
外国為替市場には上記がある。
直物市場:取引が約定の2営業日後までに決済が行なわれる。
先物市場:約定の3営業日以降に決済が行われる。
なお、先物取引では、直物(スポット)レートではなく、先物(フォワード)レートが使われる。
オプションについては「オプション記事一覧」を参考にしてください。
為替変動の要因
短期的な為替変動の要因には、「ファンダメンタルズ」「需給」「各国金利差」「国の政策」などが考えられる
ファンダメンタルズとは、経済成長率、インフレ率、国際収支などのことを指す。
ファンダメンタルズ要因
その国の通貨価値は、その国に投資した場合の投資効率の良し悪しによって大きく変動する。
一般的には、経済成長率が高い国への投資は投資効率は高くなる。
だから経済成長率が高い国への投資が増える。
その国の通貨が買われ、その結果通貨高となりやすい。
では本当に経済成長率と投資効率は連動しているのだろうか?
経済成長率の名目値が高いからと言って、投資効率が必ずしも高いとは言えない。
その国の物価上昇率によってその事情は変わってくるからだ。
また、自国の貿易収支の黒字が増えれば、外貨の受け取りが増える。
それが自国通貨に交換されれば、当然自国通貨が高くなる。
なお、資本収支が黒字の場合にも同じことがいえる。
つまり、資本の流人が流出よりも多い状況であれば、同様に自国通貨高の傾向が強くなる。
需給バランス
各国の貿易の決済実需、機関投資家の投資行動による通貨の需給なども為替動向に影響する。
特に近年、短期的に為替を大きく変動させる要因となっている存在がある。
それが前回も登場したヘッジファンドの投資行動だ。
投資家から集めた資金を世界各国の為替、株、債券、商品市場などに投資し、高い収益を目指すのがヘッジファンドの目的だ。
したがって、為替を大きく変動させる要因にもなる。
各国金利差
各国金利差の変動で必ず為替が動くということではないが、それも1つの要因になり得る。
より高い収益を求めて巨大な資金が、各国の金利動向と相まって、めまぐるしく移動している。
しかも瞬時にだ。
例えば、米国金利が低下すると日米間の金利差が縮小することになる。
この場合、ドルを売り、円を買いに走る人が多くなるので円高になる。
※1980年代のように米国の高金利政策とわが国の低金利政策のなかで円高が進行することもある。
政策要因
各国の税制変更、外国為替法などの法律改正や国際協調体制の状況が為替にも影響する。
例えば、外国為替市場への介入は、外国為替相場に影響を与えることを目的に行っている。
しかし、必ず効果が上がるわけではない。
固定相場制の時代には貿易などのフロー取引が中心だったが、変動相場制の現在では資産がらみの取引が大半を占めているからだ。
そのため、為替レートの分析も「フロー・アプローチ」から「アセット・アプローチ」へと主流が変化している。
購買力平価(PPP:purchasing power parity)
長期的な為替変動は、各国の物価変動と密接な関係があり、通貨の購買力がなどしくなるように為替レートが決定されるという解釈がある。
これを購買力平価(PPP)と呼んでいる。
これは、裁定取引「同じ商品なら同一時点で異なる場所でも同じ価格になる」という「一物一価」を基本としているためだ。
例えば、ある商品が日本で120円、米国では1ドルで売られていたとしよう。
その場合1ドル=120円になるというのがPPPの解釈だ。
これを数式化すると以下の様な式になる。
日本価格=(為替レート×米国価格)⇒為替レード=日本価格÷米国価格
相対的購買力平価
特定の一時点での物価水準比より計算される「絶対的購買力平価」。
ならば、そこに時間の経過による物価変動の要素を加えると「相対的購買力平価」を導き出すことができる。
という解釈がある。
相対的購買力平価=基準時点の為替レート×日本の物価指数÷米国の物価指数
- 日本の物価上昇率が高い→円安方向に動く
- 日本の物価上昇率が低い→円高方向に動く
具体的には上記のような動向が視えてくる。
しかし、基本となっている「一物一価」は、輸送費や関税など取引費用が発生した場合には成立しない。
また、物価指数の構成品目は各国により異なる。
したがって、現在の為替レート水準をPPPの解釈に基づいて中長期的に判断することはできないだろう。
参考値にするのであれば、少なくとも変化率に対応できる相対的購買力平価を目安にするのが妥当といえる。
しかし、基準年をどこに置くかで為替レートの水準は大きく異なるだろう。
また、国際価格競争にさらされてない「サービスなどの国内価格」は高い傾向にある。
したがって、これらを含めた物価指数を使用した場合には、円安に動向することも考慮しておく必要があるだろう。
次回は「オプション取引の概要とその特徴」です。