不動産 運用
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前回の投稿「不動産の投資分析のポイント、そして税金と収益計画のポイント」では不動産の投資分析のポイントと収益改善のポイントについて主に解説しました。

今回は不動産投資利回り、つまり、不動産投資収益率についての解説から始めましょう。

不動産投資利回りとは、不動産投資利益を初期投資額に対する割合で表したものです。

(※初期投資額=物件価格+取得費用(手数料や税金)

2種類の不動産投資利益

  1. 毎年(毎月)の正味営業収益(NOI):賃料収入-営業費用
  2. 将来不動産を売却した時の正味売却価格:売却価格-取得費用

上記2つが不動産に投資した時の利益ということになります。

不動産投資利回りは、不動産に投資することで初期投資したものがどの程度増減したのかを表す指標です。

例えば、初期投資額3,000万円に対する不動産投資利回りがプラス10%なら300万円の増益、マイナス10%なら300万円の損失がそれぞれ生じることになります。

このように利回りは投資家の資産の増減の程度を示す評価指標です。

2種類の不動産投資利回り

  • 会計上の利回り
  • 経済的な利回り

上記の2つが不動産の利回りを表したものになりますが、経済的な利回りが、投資判断になり、会計上の利回りは物件などを比較する時に使います。

例えば、以下の事例のような場合があるとします。

計算の前提条件 物件A(千円) 物件B(千円)
物件価格 24,000 24,000
取得費用 1,200 1,200
賃料収入 1,920 1,400
営業費用 192 216
正味営業収入 1,728 1,224
10年後の物件正味売却価格 19,600 19,600

 

注意点▼

会計上の利回りにフォーカスした場合は、NOIのみに着目して正味売却価格は無視することになります。

したがって、会計上の利回りは、正味営業収益÷初期投資額ということになります。

 

3種類の会計上の利回り

上記の例からすれば、A物件は6.9%となりますが、実務では、初期投資額の代わりに物件価格を使うことが多いので、1,720÷2,400=7.9%ということになります。

また、賃貸不動産用の広告では会計上の利回り計算における利益の代わりに営業費用を差し引く前の賃料収入と物件価格を用いて会計上の利回りを表示する場合があり、これを表面利回りといます。

  • 表面利回り=1,920÷24,000=8.0%

このように会計上の利回りには3種類が考えられ、その関係性は、

  • 純粋な会計上の利回り<物件(NOI)利回り<表面利回り

ということになり、同じ物件でもどの利回り指標を使うかによってその数値が異なってきます。

したがって、物件の収益性を比較するときには同じ利回りを使って比較することが重要です。

例えば先程の2つの物件の3つの利回りを比較した場合、

利回り 物件A 物件B
会計上の利回り 6.9% 4.9%
NOI 7.2% 5.1%
表面利回り 8.0% 6.0%

といった結果になります。

会計上の利回りの大きな欠点

  • 貨幣の時間価値
  • 将来の正味売却価格

会計上の利回りの大きな欠点はこの2つを考慮していないという点です。

どういうことかというと、投資判断に用いる利回りは、本来であれば複利計算を前提とします。

しかし、会計上の利回りは単利計算である上、物件売却時の損益が反映されていません。

上記の会計上の利回りに、複利計算を考慮した経済的な利回り、つまり内部収益率を示すと以下のようになります。

利回り 物件A 物件B
会計上の利回り 6.9% 4.9%
NOI 7.2% 5.1%
表面利回り 8.0% 6.0%
内部収益率(対物件価格) 5.8% 3.5%
内部収益率(対初期投資額) 5.1% 2.9%

投資判断は内部収益率によって行う

すなわち、不動産投資の場合には、会計上の利回りではなく、内部収益率に基づいて投資判断をするのが望ましいです。

会計上の利回りは、投資分析に入る前の大雑把な判断材料に留めておいて欲しい。

例えば、投資期間が10年、正味営業収益が毎月同額と仮定した場合の物件Aの内部収益率(IRR)を計算すると。

24,000=1.728/(1+IRR)+1.728/(1+IRR)²+・・・・・・・1.728/(1+IRR)10+19,600(正味売却価格)/(1+IRR)10

未知数のIRRはエクセルなどの表計算ソフトの「IRR関数」を用いると簡単に計算できます。

参考▼

内部収益率は前回の投稿「不動産の投資分析のポイントと収益改善のポイント」で紹介したNPVと密接な関係にあります。

キャッシュフロー・アウトフローの現在価値=キャッシュ・インフローの現在価値合計。

つまり、NPV=0という関係が成り立つ場合の割引率が内部収益率ということになります。

では、IRRを使って、どのように投資判断をするのか?

物件Aの場合、IRR=5.8%という事になりましたが、では実際IRRを用いてどのように投資判断をしていけばいいのでしょうか?

IRRは利回りという利益のことだと言いましたが、投資を判断する際には、この利益を得るために支払った費用と比較して、利益が費用を上回っていた場合は投資してもいいという判断になります。

投資判断で使う費用は「資本の機会費用」といわれるものですが、この資本の機会費用は、資金調達の方法によって決定します。

例えば物件A2,400万円を、自己資金720万円と1680万円を借り入れて(金利2%)購入したと仮定したとします。

自己資本に金利はかかりませんが、投資する際には、ただではないと考えます。

なぜなら、不動産に投資する目的はそれなりの利益を享受することにあるからです。

通常の不動産投資では自己資金に対して10%以上の利回りを期待して投資が行われます。

従って、自己資金の費用は10%以上ということになるので、ここでは仮に12%と設定します。

  • 自己資金720万円に対しての費用12%
  • 借入金1,680万円に対しての費用2

資本の機会費用は自己資金のコストと借入コストの加重平均ですから、

  • 12%×720/2,400+2%×1,680/2,400=5.0%

ということになります。

物件AのIRRは5.8%で、資本の機会費用5.0%を上回っているので、投資を承認できるということになります。

物件Bの場合は、IRRが資本の機会費用を下回るので投資を承認できないという判断になります。

物件Bの会計上の利回りは6.0%であり、一見すると魅力的に見えますが、実際は投資を承認できない物件である、ということになります。

  • IRR>資本コスト:その投資は承認される
  • IRR<資本コスト:その投資は承認されない
  • IRR=資本コスト:その投資は採算上の分岐点にある
注意点▼

※IRR=資本コストは、「投資家が要求する期待収益率に等しい利益をもたらしうる」ことを意味する

不動産投資とレバレッジ効果

不動産投資は多額の資金を必要とするため、一般的には借入をして投資を行うことが多いです。

投資物件の期待収益率が借入金利を上回る場合にはレバレッジ効果が生じます。

注意点▼

つまり、総投資額に対する自己資金比率が低くなればなるほど、自己資金利益率が高くなりますが、その反面、収益力の低下や借入金利が上昇に伴うリスクの増大も考えられます。

したがって、投資の安全性やキャッシュフローの健全性を判断するための指標が必要になってきます。

LTV(Loan to Vaiue)

LTVとは、総投下資本に対する有利子負債額の割合のことです。

  • LTV=有利子負債額/総投下資本

(※有利子負債:社債や借入金など)

例えば、物件Aの場合のLTVは、1,680/2,400=70%ということになります。

さいごに▼
DSCR(Debt Service Covetage Ration)

DSCRとは、投資物件が生みだす年間のキャッシュフローが、その年に支払う元利金に対してどの程度の余裕があるのかを示すものです。

  • DSCR=元利金返済前のキャッシュフロー(純収益)/元利金返済額

このDSCRが起きいいほどキャッシュフローに余裕があるということになります。

しかし、1.0未満のときには不動産からの収入だけでは借入金の返済が出来ないことを意味しています。

次回は不動産の証券化で使われる器、SPVを設立する時のポイントについて解説します。

ではまた。

 

この投稿はNPO法人日本FP協会CFPカリキュラムに沿って記述しています。

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