リスクプレミアム
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前回は将来価値と現在価値、2つのアプローチ方法を学んでキャッシュフローデザインを精査する方法などについて解説しました。今回は、リスクの測定、バリュー・アット・リスク、そしてリスクとリスクプレミアムなどについて解説しましょう。

リターンの分布を知るために期待値(平均)の次に分散または標準偏差と呼ばれているもの使う。

リスクの概念は多岐にわたるが、リスクをリターンのブレとして考えた場合には、分布または標準偏差を「リスク」として認識することになる。

ファイナンシャルプランの基本的な考え方

分散と標準偏差について

統計学において分散とは一般的に次のように定義されている。

分散=[(ある状態の値-分布の期待値)2×(その状態になる確率)]を起こりうるすべての状態について計算し合計したもの

したがって、分布を算出するためには期待値が必要になってくる。

参考▼

※期待値については「将来価値と現在価値、2つのアプローチ方法を学んでキャッシュフローデザインを精査する」などを参照。

また、(ある状態の値-分布の期待値)2を偏差ともいい、期待値からの乖離を示したものだ。

偏差が期待値よりも大きければプラス、小さければマイナスの値で表す。

注意点▼

※ただし、単純に[(ある状態の値-分布の期待値)2×(その状態になる確率)]を起こりうるすべての状態について計算し合計したものとして算出すると、分布の散らばり方によらず、必ず0になってしまうので、乖離の部分が常に0以上になるように2乗する必用がある

当然、算出された分散は2乗したものの和になり、元の数値からは比較しにくい数値になるので、分散の平方根をとって標準偏差とする。

なお、標準偏差は統計学ではσ(シグマ)を用いて表記するのが通例なので、分散はσ2と表記される。

これらの考え方をリターンに適用した場合、分散と標準偏差は次のようになる。

リターンの分散σ2=[(ある状態の値-分布の期待値)2×(その状態になる確率)]を起こりうるすべての状態について計算し合計したもの

リターンの標準偏差σ=√リターンの分散σ2

例えばリターンの分散と標準偏差を期待リターン=30%×0.2+10%×0.6+(-10%)×0.2=10%という条件で求めてみよう。

リターンの分散σ2=(30-10)2×0.2+(10-10)2×0.6+(-10-10)2=160

リターンの標準偏差=√160=12.6%

分散と標準偏差を推計する

リターンのデータが得られていて、過去と将来は同じ分布に従っていると仮定する。

この場合、分散と標準偏差を推計する方法はいくつかあるが、その内の一つの計算式は次のようになる。

例えば、リターンが、1%、7%、10%という値だったと仮定した場合、

この期待値は(1%+7%+10%)/3=6%で、分散は次のようになる。

リターンの分散=(1-6)2+(7-6)2+(10-6)2/3=14

結果、リターンの標準偏差は√14=3.7%ということになる。

正規分布を分析に使う

正規分布
図1-4

もし、リターンの分布が正規分布という扱いやすい形に従っているとすると期待値と標準偏差がわかれば分布のかたちを決めることが可能だ。

期待値と標準偏差からも図1-4のように期待値が大きくなると分布のかたちはそのまま右方向(青色)に移動し、標準偏差が大きくなると、分布の中心はそのままで拡がりが大きくなる。(赤色)

このように正規分布は、分布のカタチの変化を期待値と標準偏差という2つのパラメータで表現できる特徴がある。

 

 

標準偏差
図1-5

さらに正規分布を分析に用いるメソットとして、図1-5のように期待値と標準偏差が様々であっても、その領域の確率は期待値と標準偏差に対応して求められるということがある。

馴染みのあるものとしては、教育現場で頻繁に使われる偏差値があり、それは期待値50、標準偏差10の分布になるように変換したものだ。

このように正規分布にはメリットもあるが、利用する場合には注意が必要だ。

なぜなら、現実のリターンの分布が正規分布に従っているとは限らないからだ。

もし仮に、それが正規分布に従っていたとしても、その現象がタイミングよくその分布のカタチの通りになるという保障はどこにもない。

例えば、サイコロを6回振って、各目が1回ずつ出る確率を考えてみればわかる。

ただし、真の値がわからないからといって、自分勝手に、あるいは主観的に楽観的な値を設定するのは避けたい。

データに基いて客観的な分析をする方が安全であることは間違いない。

元本保証があるかないかでリスクを判断している

前述した通り、リスクは分散あるいは、標準偏差で測ることができる。

しかし、これらをリスクそのものと解釈してしまうのはいささか早計だろう。

例えば、「元本保証があるかどうか」をリスク基準としている人は多いだろう。

したがって、元本割れする可能性のある商品はリスクが大きいと感じる人が多いと思う。

言いかえれば、リスクというものを、資産時価が購入価格を下回っているか上回っているかで判断していることになる。

一方、分散や標準偏差は、将来最もあり得る数値である「期待リターン」を中心とした上下の変動を意味している。

しかし、現実的には、期待リターンを上回ることもリスクの一部であるという認識は、やや理解しにくいだろう。

 

参考▼

リターンが定期分布に従っているとしたなら、分布は左右対称であり、分散や標準偏差でリスクを表現するこができる。

また、ダウンサイドリスクといわれる損失方向へのブレのみにフォーカスするリスク尺度もある。

 

バリュー・アット・リスクとは?

リスク・バファー
図1-6

バリュー・アット・リスクとは、ある資産に投資して、1年後のある時点において95%や99%などのような一定した信頼のおける水準を基準に、いくら以上の損失が生じると考えるべきか、としたときの損失額のことだ。

この尺度は、金融機関のリスク管理では必須のもので、リスク・バッファーとして準備している額以内に、バリュー・アット・リスクをコントロールする必要がある。

因みにリスク・バリューとは、リスクに対応して積み上げている自己資本等のことだ。

ただし、この場合でもバリュー・アット・リスク(VaR)が発生する確率は(1-信頼水準)であり、バリュー・アット・リスクを上回る損失が発生する可能性はある。

信頼水準を高めれば、バリュー・アット・リスクを上回る損失が発生する可能性は低くなる。

したがって、そのままの投資額ではVaRは大きくなり、準備可能なリスク・バッファーに耐えられないと判断した場合、リスクの大きい投資は減らすなどの工夫が必要だ。

例えば、保有期間1年、信頼水準を95%とした場合、1年後にVaRを上回る損失が発生する可能性は5%だ。

つまり、毎年これを繰り返していくと20年間に1回の頻度でVaRを上回る損失が発生することになる。

20年間、VaRの範囲内に収まる確率は0.9520=35.8%という計算になるので、20年間に3回以上損失がVaRを上回る確率も24.5%あることになる。

したがって、投資する際には、どこまでの損失に耐えうるのかを常に考慮しながら投資判断を行い、リスク管理を怠らないといったことが非常に重要だ。

リスクについて

前もってリターンが確定していたとしたら、当たり前の話だが、そこにリスクは存在しない。

年利3%のリターンが約束されていたなら、リスクはない。

しかし、その考え方は現実的ではないことは皆承知している。

実際には様々なリスクが存在していることを誰もが知っている。

金融資産の運用設計の際に、金融商品への投資アドバイスをするにあたっては、その投資行為に伴う収益や損失の可能性について予測しうる限りの想定をしなければならない。

そのためには、ファイナンシャルに関する知識やその仕組みについての理解は不可欠だ。

また、リスクについての考え方が極めて重要な意味を持つ。

なぜなら、複数の証券を組み合わせることによって、ある程度リスクを軽減することは可能だが、その組み合わせたポートフォリオによって期待しうるリターンを得られるかどうかはわからないからだ。

したがって、リターンの大きさだけではなく、リスクをどう考えていくか、どうとらえていくか、非常に重要なポイントとなる。

リスクとリターンの関係を考える

現実的には考えられないが、コントラストをつけるためにあえて飛躍した例を示す。

例えば、投資対象として、

  1. 無リスク、金利10%の預金
  2. 同じ株価の株式Aと株式Bの2銘柄の内どちらかに投資

という状況を考えてみましょう。

  • 株式Aの1年後の株価は1,200円
  • 株式Bの株価が1年後に1,200円になる確率も800円になる確率も50%だと仮定(配当はない)

Aは100%の確率で1,200円になるとわかっているので、リスクがなく、収益率は20%ということになる。

Bは50%づつの確率で1,200円か800円になるのでリスクがある。

上記の条件下で、すべての投資家が高い期待リターンと低いリスクを好むと仮定した場合には次のようなことが考えられる。

  • リスクが同じでリターンが異なる場合、期待リターンがより大きい方に投資する
  • 期待リターンが同じで、リスクが異なる場合、リスクがより小さい方に投資する
  • 期待リターンとリスクのいずれも異なる場合、投資家の類似性(経験や認知)によって異なる

この例でいえば、投資家は当然のごとく株式Aを選択する。

需要と供給のバランスを考える必用がある

しかし、すべての投資家がAへの投資を選択した場合どうなるだろうか?

需要が供給量を上回る結果となり、1,000円という株価は無リスク金利リターン10%に向け上昇し、すぐに「楽して稼げる」機会はなくなる。

一方、リスクのある株式Bは需要が少ないため株価が低下し、期待リターンは上昇することになる。

結果、リスクが小さい商品は低いリターンになり、リスクの大きい商品は期待リターンが高くなる。

このようなことから、株価のような資産価格は単にリターンだけではなく、そのリターンの不確実性が加味され価格に収束するということがわかる。

リスクとはなにか?

では、リスクとは何でしょうか?

例えば、先程の割高な株式Bの株価が850円になったとしよう。

株式Bはリスクのある商品であることには変わりないので、将来1,200円になるか、800円になるかは不明のままだ。

しかし、それが50%づつの確率であるとしたなら、期待リターンは18%ということになる。

0.5(1200)+0.5(800)=1,000円 (1,000-850)÷850=0.18

この場合、無リスク商品のリターン10%に比べると株式Bの期待リターンは18%になるので、その差8%が、リスクの代償として投資家に支払われる可能性がある。

それでは、なぜ1,000円ではなく850円という株価になったのだろうか?

そもそも、株式Bを購入しても期待株式価値である1,000円を1年後に得ることはできない。

なぜなら、1年後にBがとりうる価値は1,200円か800円だからだ。

しかし、この期待株式価値1,000円はまったく意味のない値でもない。

仮に株式Bと同じ分布で、1,200円になるか800円になるかランダムである株式が他にもあり、それらを保有したと仮定する。

やがてそれらすべての株式の平均株価が1,000円に近づいていくことになる。

時間価値とは?

しかしながら、実際には850円という株価をとるという考え方のほうが現実的だ。

なぜかというと、まず第一に言えることは、時間価値の問題だ。

無リスク資産が10%のリターンだということは、時間価値として考えた場合、リスク無しで10%の運用ができることを意味する。

つまり、もし株式Bのリターンンが10%以下げあれば、リスクを好まない投資家は無リスク資産を購入するだろう。

したがって、投資家にとって魅力にかける株式Bの株価は更に安くなることになる。

そこで、株式Bの上限株価Sは期待リターンが10%になるように計算される。

※(1,000-S)÷S=0.1⇒S=909円

上記のように期待株価が1,000円である株式Bの期待リターンを最低10%にするためには現在の株価は909円以下でなければならないことになる。

リスクプレミアムとは?

もう一つは、リスクの代償であるリスクプレミアムを加味する必要があるということだ。

もし投資家がリスクに対して無関心で期待値のみを考えるのであれば、リスクプレミアムを加味する必要はない。

しかし、実際にはリスクをなるべく取りたくないと考えるのが普通なので、リスクに対する代償を支払う必要がある。

仮にリスクプレミアムを59円とし、市場によって適正化された価格が850円と考えた場合、

期待株価と実際の株価である850円との差は、「時間価値91円+リスクプレミアム59円+現在の株価」ということになる。

仮に、さらにBよりもリスクが大きいCがあったする。

これまでと同様、期待株価よりも現在の株価は低くなるが、同じ期待リターンであれば、よりリスクの小さい株式を選択するはず。

したがって、Bと同じ価格で購入する投資家は存在しないと考えられる。

その結果、株式Cは株式Bよりも低い株価になる。

例えば、Cの株価が750円になっても時間価値は91円のまま変わらないので、リスクプレミアムは159円ということになる。

さいごに▼

このように投資家の行動の結果、リスクが大きい資産には大きなリスクプレミアムが与えられる。

したがって、リスクが大きい資産ほど期待リターンが高くなり、リスクが小さいものほど期待リターンが低くなるという構造になる。

その結果、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンといった関係が生じてくるわけだ。

ただし、あくまでもこれは期待リターンの話。

例えば、株式Bは現時点で850円、将来時点で800円なら-5.9%ということになる。

株式Cは現時点で750円、将来時点が600円であれば、-20%というマイナスリターンになり、株式Cの方が下落幅が大きいということも投資の世界ではありえる。

次回はポートフォリオ理論、ポートフォリオのリスクと期待リターンの算出などについて解説します。

ではまた。

日本FP協会 CFP教育カリキュラムに基づき作成しています。

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