
生命保険には、こども保険、貯蓄保険、利率変動型保険、定期保険、変額保険といった商品がある。
適正なライフプランを作成する上で、これらの保険商品の特徴を知っておいた方がいいと思うので解説しておこう。
死亡保障に重点を置いた保険
死亡保障を重視した生命保険は7種類だ。
- 定期保険
- 終身保険
- 利率変動型積立終身保険
- 定期保険特約付き終身保険
- 収入保障保険
- 条件体保険
- 無選択型保険
1,定期保険
定期保険とは、保険期間を決めて契約し、その期間内に死亡または高度障害状態になったときに死亡保険金や高度障害保険を受け取れる保険だ。
- 期間と保証内容を限定しているため保険料が安い。
- 終身保険や養老保険などの特約として付加できる。
- インターネット上で契約を完結できるものもある。
保険期間は5年、10年、20年など年数で満期を設定する場合と60歳、70歳など年齢で設定する場合がある。
※年数で満期を設定する商品には、健康状態にかかわらず自動更新によって継続できるものが多い。
その他
- 期間の経過に応じて保険金額が減っていく逓減定期保険
- 逆に経過に応じて保険金額が増えていく逓増定期保険
- 保険金を一時金ではなく、年金として受け取るスタイルの収入保障保険(生活保障保険)
このように定期保険にはいくつかのバリエーションがる。
また、病気になるリスクが小さい健康体の人ほど保険料が割り引かれるリスク細分型の定期保険もある。
※解約した時点で責任準備金がある場合は返戻される。(長期契約の場合)
2,終身保険
死亡保障・高度障害保障を目的とした保険で、解約しない限り一生涯その保障が得られる。
- 保険料は高い。
- 一生涯保障が続く。(必ず保険金が受け取れる)
- 年金や介護保障に移行できるケースもある。
- 解約返戻金を受け取ることができる。
保険料の払込み方法には、有期払込と終身払込、一時払いがある。
終身払込
毎回の保険料負担は軽減できるが、払込総額は増える。
契約当初の一定期間、保険料を低く設定し、期間経過後の保険料を高く設定するステップ払込方式もある。
終身保険は満期がないので、満期保険金を受け取ることはできない。
しかし、保険料のうち積立部分に充当される金額が多いので、途中で解約すると加入期間に応じた解約返戻金を受け取ることができる。
有期払込
保険料の払込終了後も保障が継続する。
年金や介護保障に移行するなど、いくつかのコースを選択できる場合もある。
3,利率変動型積立終身保険
利率変動型積立終身保険は、保障設計が自由という特徴がある。
つまり、保障内容を見直す場合、転換や増減ではなく、契約内容そのものを必要に応じて見直していくタイプの商品だ。
利率変動型積立終身保険と定期保険特約をあわせた仕組みが、それを可能にしている。
したがって、保険料の払込期間中は、定期保険特約や医療保障特約などの保障のみで終身の保障はない。
保険料の払込が終了した時点で、積立部分にプールされていたお金を終身保険などに移行する仕組みだ。
また、予定利率が固定されていた従来の保険とは異なり、所定期間ごとに利率が見直される。
※設計の自由度が高い商品だけに、ライフプランとの整合性が特に問われる商品だろう。
4,定期保険特約付き終身保険
一生涯の保障に定期保険を特約として付加したものが、定期保険特約付き終身保険だ。
- 定期保険特約の付加期間中は高額な保障が得られる。
- 定期保険特約の期間終了後も一定の終身保障がえられる。
満期時に定期保険部分を自動更新する更新型と払込期間を保険期間とする前期型がある。
加入当初の保険料は前期型の方が高い。
注意!更新型は更新時に更新時の年齢に従って保険料を再計算するので保険料がその都度アップする。
以前は生命保険会社の主力商品だったが、利率変動型積立終身保険に切り替え、販売を中止にする保険会社が増えている。
5,収入保障保険
収入保障保険は、保険金を一時金ではなく年金として受け取るタイプだ。
生活保障保険、あるいは家族収入保険などと呼んでいる保険会社もある。
この保険は単独のものと、利率変動型積立終身保険の特約として付加されているものがある。
保険金の受け取り方には、5年、10年、15年、20年などのほか、年齢が設定されている場合があるが、いずれも受け取りには、最低保障年数が設けられている。
どういうことかというと、もし仮に年金の受取り回数が満期までに満たされなかったとしても、最低保証年数分の年金は受け取れる、ということだ。
具体的に言えば・・・
最低保証年数を10年で設定した契約の場合
被保険者が満期までの期間を5年残して死亡した場合には、最低保証年数分である10年分(残り5年分がプラス)の年金を受け取ることができるということだ。
なお、保険金を年金というかたちではなく、一時金で受け取る選択も可能だ。
ただ、その場合は、年金で受け取る合計額よりも保険金は少ない。
6,条件体保険
条件体保険とは、健康状態に問題があり通常の条件では加入できない人のための商品だ。
限定告知型・条件緩和型などと呼んでいる保険会社もある。
なお、通常の生命保険で条件体とされた場合には、特別条件付保険特約を付保することになる。
主な特徴は、以下の通りだ。
- 告知書だけで危険選択が行われる、医師による審査は不要。
- 条件体であるため通常の保険に比べて保険料が高い。
終身保険の場合
契約後一定期間内に死亡すると、経過年数に応じて一定割合しか死亡保険金が支払われない。
医療保険の場合
契約後一定期間内に支払い事由に該当した場合、給付金が削減される。
注意!終身の場合は、受け取れる死亡保険金よりも、支払う保険料総額の方が多くなることもある。
しかし、契約を条件体に限定しているため、次に解説する無選択保険よりは安くなる。
7,無選択型保険
無選択保険とは、健康状態のいかんを問わず加入できるタイプの商品だ。
生命保険会社が危機選択を行う保険で、終身保険や医療保険の商品に多い。
- 危険選択を行わないので、医師診査も告知書も不要。
- 無選択型であるため、保険料は高い。
- 終身保険:契約後一定期間内に死亡すると、既払込保険料相当額しか保険金が支払われない。
- 医療保険:既に発生している病気などに関しては不担保になるケースもある。
割高になるなどの問題があるが、実は健康な人も一定程度加入することを前提として商品が販売されている。
健康な人がまったく加入しなくなると、収支相当の原則が成り立たなくなる恐れがあるからだ。
契約者サイドからしてみれば、まったく納得の行かない話ではある。
保障性と貯蓄性を兼ね備えた保険
保障性と貯蓄性を組み合わせた保険商品は以下の3種類だ。
- 養老保険
- 定期保険特約付養老保険
- 生存給付金付定期保険
1,養老保険
- 契約満期までの保険期間中に死亡または高度障害になった場合には保険金として支払わる。
- 満期の時点で生存していた場合には、死亡保険金額と同額の満期保険金を受け取れる。
つまり、養老保険とは、同一保険期間で、死亡保険金と生存保険金が同額である定期保障と生存保障を組み合わせた商品だ。
保険料の大部分が積立に充当される貯蓄性の高い保険商品でもある。
しかし、長引く低金利の影響もあって養老保険の貯蓄性は低下した。
したがって、以前のように個人が貯蓄を目的に加入するケースは少ない。
2,定期保険特約付養老保険
養老保険に定期保険特約を付加した商品。
保険期間中は高額な死亡保障が得られ、満期時には満期保険金が受け取れる仕組みだ。
3,生存給付金付定期保険
定期保険の一種で、2年、3年、5年などの一定期間ごとに祝い金やボーナスなどの給付を受け取るタイプだ。
注意!保険契約が継続している限り、生存給付金が支払わるが、定期保険のみの場合よりも保険料が高い。
貯蓄性の保険
貯蓄性に重点をおいた保険商品は以下の2種類だ。
- こども保険(学資保険)
- 貯蓄保険
1,こども保険(学資保険)
子どもの教育資金の準備を目的にした保険商品だ。
契約者は親、被保険者は子どもといった形になる
つまり、親も被保険者としての性質を持つ連生保険商品だ。
15歳、17歳といった一定年齢に満期を定め、満期に保険金額を受け取ることができる仕組みだ。
その他
子どもの入学時毎に生存給付金(祝い金)を受け取ることができる商品や大学時代に保険金を分割して受け取ることができる商品もある。
契約者である親が死亡した時は、それ以降の保険料の払込は免除となり、契約内容はそのまま継続される。
また育英年金や養育年金などの特約を付帯できる商品もある。
貯蓄性の高さに重点を置いた保険会社では、子どもが死亡した場合は、既払込保険料相当額が支払われるのが一般的だ。
2,投資性の強い保険(変額保険)
変額保険とは、加入後の運用状況によって保険金額が変動するタイプだ。
変額保険以外の保険は一般勘定で運用されるが、変額保険は他の保険商品とは区分して特別勘定で運用されている。
特別勘定とは、生命保険会社の資産・負債を経理するための勘定のうち、変額保険などにかかわる資産・負債を経理するために区分された勘定のことだ。
変額保険は運用がうまくいけば加入当初を上回る保険金を受け取れる。
しかし、逆にうまくいかなければ運用負債は契約者が負うことになる。
ただし、死亡保険金には最低保障があるので、それを下回ることはない。
また、変額保険には満期のある有期型と満期のない終身型と2つのタイプがある。
有期型の場合には運用の良し悪しには関係なく満期が到来する。
つまり、満期のタイミングによっては、損失を被ることもある、というわけだ。
終身型の場合は、運用状況が悪くても基本保険金額は保障される。
次回はライフデザインと個人年金保険商品とのミスマッチです。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。