退職所得と譲渡所得にかかる税金!

10種類の所得と税金Part2

前回は3つの所得について解説した。

今日は退職所得、譲渡所得、山林所得について解説しよう。

退職所得

退職所得の意義(所法30①)

退職所得とは、退職手当、一時恩給その他退職によリー時に受ける給与およびこれらの性質を有する給与(退職手当などという)に係る所得をいう。

給与の延長線上にある所得のように思えるが、課税方法は異なる。

そして、次に掲げるものも退職手当に含まれる。

みなし退職手当など

a)国民年金法、厚生年金保険法などの特別の法律の規定に基づいて支給される一時金。

b)厚生年金基金から受ける一時金で、加入者の退職に基因して支払われるもの。

c)確定給付企業年金法に基づいて支給される退職一時金(自己負担部分を除く)。

退職所得の金額の計算方法(所法30②~⑥)

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

ただし、勤続年数が5年以下の役員などに支払う退職手当などについては、2分の1課税は適用されない。

退職所得控除額

退職手当などを取得した者の勤続年数を基礎とし、次の算式による。

a)勤続年数が20年以下である場合……40万円×勤続年数(最低80万円)。

b)勤続年数が20年超である場合……800万円+70万円×(勤続年数-20年)。

c)障害者となったことに基因して退職した場合……上記a)またはb)に掲げる控除額に100万円を加算。

勤続年数の計算

勤続年数は、その会社に実際に勤務していた期間になる。

勤務していた期間に1年未満の端数がある場合は1年とする。

ポイント!また、長期欠勤または休職の期間も勤続年数に含まれる。

【例】勤続年数35年3カ月(うち、病気による休職期間6カ月)

  • 勤続年数……36年
  • 退職所得控除額……800万円+70万円×(36年-20年)=1,920万円

課税の方法

退職所得の金額は分離課税され、退職所得金額に区分される。

譲渡所得

譲渡所得の意義(所法33①~②)

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得だ。

ただし、棚卸資産(棚卸資産に準ずる資産を含む)の譲渡、その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得および山林の伐採または譲渡による所得は、譲渡所得に含まれない。

譲渡所得の金額の計算方法(所法33③~①、措法31、32)

譲渡所得の金額は、次の1⇒4の順序により計算する。

1,譲渡損益

譲渡損益の計算は、次の式を用いてa)~d)の区分ごとに行う(図表2-13参照)。

譲渡損益=総収入金額-(取得費+譲渡費用)

  • a)分離短期
  • b)分離長期
  • c)総合短期
  • d)総合長期

図表2‐13 譲渡損益の区分

譲渡所得の分類

 

注意点▼

株式など……株式などの譲渡については所有期間により長期、短期の区分はない。

土地などまたは建物など……土地などとは、土地または土地の上に存する権利をいう。建物などとは、建物およびその付属設備または構築物をいう。それらを取得した日から譲渡した日の属する年の1月1日までの期間を所有期間という。

上記以外の資産……取得した日から譲渡した日までの期間を所有期間という。

2,内部通算

内部通算とは、前記6-1-1の区分により計算した金額のうち、黒字の金額と赤字の金額がある場合、赤字と黒字の相殺を行うことだ。

次の順序により譲渡益と譲渡損の通算をする。

a)総合短期と総合長期との通算

b)分離短期と分離長期との通算

なお、資産の譲渡の場合、譲渡所得に対する課税は、資産を所有していた者に帰属する値上がり益を、所有者の支配から離れて他に移転するのを機に、精算して課税しようとするものが該当する。

また、譲渡とは、売買に限定されず、交換、代物弁済、現物出資、収用など、資産の所有権が移転する一切を含む。

3,生活に通常必要でない資産の災害などによる損失

損失額を分離短期、総合短期、分離長期、総合長期の順序で控除する。

なお、生活に通常必要でない資産に災害または盗難もしくは横領により損失を受けた場合には、次の算式により計算した損失額を譲渡所得の金額の計算上控除することができる。

  • 損失額=損失直前の取得費-損失直後の時価-廃材などの処分価額-保険金などにより補てんされる金額

また、生活に通常必要でない資産には、次のようなものがある。

  • レジャー用ヨット。
  • 競走馬(事業を除く)その他射こう的行為の手段となる動産。
  • 通常自己および自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽、保養の用に供する目的で所有するもの(別荘など)、その他主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産。
  • 1個または1組の価額が30万Flをこえる貴石、貴金属、絵画、書画、骨董品などその他一定のもの。

4,特別控除額

最高50万円を総合短期、総合長期の順序で控除できる。

課税の方法

区分課税の方法課税標準への区分
分離短期分離課税短期譲渡所得の金額に区分される
分離長期長期譲渡所得の金額に区分される
総合短期総合課税全額が総所得金額に含まれる
総合長期その金額の1/2が総所得金額に含まれる

あまり一般的ではないと思うが、一応山林所得にも触れておこう。

山林所得

山林所得の意義(所法32①~②)

山林所得とは、山林の伐採または譲渡による所得だ。

ただし、保有期間5年以下の山林の伐採または譲渡は、山林所得に含まれない。

なお、山林に係る所得の分類は、次のようになる。

注意点▼

山林所得 山林の伐採または譲渡による所得をいい、林地(土地)の譲渡による所得は山林所得ではなく、譲渡所得となる。

保有期間5年超・・・・山林所得

保有期間5年以下

  • 事業的規模・・・事業所得
  • 非事業的規模・・雑所得

山林所得の金額の計算方法(所法32③~④)

山林所得の金額=総収入金額-必要経費-特別控除額

山林の譲渡による所得は、過去の累積費用を必要経費にできる。

また、特別控除額として最高50万円控除できる。

課税の方法

山林所得の金額は分離課税され、山林所得金額に区分される。

次回は一時所得などについてです。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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