ライフプランの前提を組みなおす──“ライフデザイン”から始める再構築

ライフプランの前に“ライフデザイン”を整える

一般にライフプランは「将来の収支や資産の見取り図」を指します。しかし、その図は
どんな生き方を選ぶのか(ライフデザイン)という前提が定まっていないと、数字だけが先行し、行動に結びつきません。
本稿では、2,000件超の支援経験で見えてきた「欠落しがちな論点」を補い、読者が
読みやすく・手を動かしやすい形で、ライフデザイン→ライフプランの順に再構築する手順を提示します。

  • まずは望まないことから始めて、意思決定の輪郭を出す
  • 価値観の源泉(素質×経験の類似性)を掘り起こす
  • 他人の物語に乗っ取られない仕組みを用意する
  • 最後に数字(収支・資産・リスク)を月次で実装する

ライフデザインの手順──“将来像づくり”より先に輪郭を出す

多くのプランは「将来像を描くこと」から入ります。しかし、明確な将来像を現実感をもって描ける人は少数派です。
そこで入口を逆転させます。最初の問いは「自分の人生に望まないことは何か」。避けたい状況・合わない働き方・疲弊する人間関係・身体が拒むリズム――
これらを列挙すると、あなたの意思決定を縛る“見えない制約”が浮き上がります。

  1. 望まないこと: 例)長時間通勤/週末の仕事/孤立した子育て/夜型生活 など
  2. 望むこと: 例)自然の近くで暮らす/朝型リズム/学びと休息の確保 など
  3. 理想の一日: 起床〜就寝までの時間割を30〜60分粒度で書き出す

Life Plan Pro PFD v2 で、意思決定に直結する試算を

数字の裏側(リスク・感度・逆算)まで1画面で可視化。
未来の選択を「意味」から設計します。

  • モンテカルロで枯渇確率と分位を把握
  • 目標からの逆算(必要積立・許容支出)
  • 自動所見で次の一手を提案

ライフデザインの目的──“豊かさ”を自分の語彙で定義する

ライフデザインの目的は、一般的な成功像に合わせることではなく、あなたが感じる豊かさを最大化することです。
豊かさが経済的指標とは限りません。たとえば「老後は田舎で季節の仕事をしながら暮らす」が豊かさなら、最適解は高所得ではなく、
時間の自由・地域のつながり・健康を保つ設計です。ここで効いてくるのが価値観の源泉――
素質(体質・認知傾向)×類似性(経験の蓄積)。私たちはこれに沿って選択をします。

  • 素質: 朝型/夜型、内向/外向、刺激耐性、回復に必要な条件
  • 類似性: 繰り返してきた学び・仕事・人間関係のパターン
  • 豊かさの定義: お金/時間/関係性/健康/貢献/創造の比率

ライフデザインを台無しにする要因──“他人の物語”の借用

もっとも多い崩れ方は、メディアや周囲の影響で他人の理想像を自分のものと錯覚することです。
かつて「キャンピングカーで全国を回る生活」を掲げた方がいましたが、深掘りすると「そういう生き方が素敵と聞いた」だけで、
本心は静かな拠点と近所の関係性を望んでいました。借り物の物語は、現実の体感に馴染まず、計画だけが独り歩きして実行が止まります。

  • 兆候: 数か月で目標が変わる/買った道具が眠る/説明は立派だが疲れる
  • 対策: 2週間の生活実験(小さな試行)→合う/合わないの記録
  • 検証: 「体調が良い日・悪い日」でも続けられるかで耐久性を判定

さらに、ファイナンスだけを切り出して最適化しようとすると、投資や商品の流行に巻き込まれ、
生活の土台と不整合を起こします。お金はライフデザインのパーツであって中心ではありません。
本来の「お金の流れ(稼ぐ→受け取る→使う→守る→育てる→分かち合う)」を理解し、暮らしの節に沿わせて設計しましょう。


実装:ライフデザインを“月次の数字”に落とす

① 時間割から固定費を設計する

  • 理想の一日の時間割→通勤/在宅/学び/回復の枠を決める
  • その時間割に必要な支出(住居/通信/移動/外注)を固定費として定義
  • 固定費は毎月/年払い/変動の3列に分け、繁忙期/閑散期のズレも反映

② 収入の“質”を揃える

  • 労働/事業/配当等の時間当たりの負荷と回復コストを見積もる
  • 同じ年収でも、体調と関係性を壊さない収入の組み合わせを優先
  • 流動性(可動化できるか)と再現性(季節で維持できるか)をスコア化

③ リスク余白をあらかじめ決める

  • 予備費: 生活費2〜3か月分を即時可動の普通預金で確保
  • 与信: 医療・修繕に備えてカード枠/立替可否を点検
  • 停止スイッチ: サブスク・任意サービスの停止順と再開条件を文書化
  • 保険: 給付条件・免責・待機期間を「一枚シート」で家族と共有

チェックリスト(実装前の最終確認)

  • [ ] 望まないこと→望むこと→理想の一日を3パターンで作成した
  • [ ] 豊かさの定義(お金/時間/関係/健康/貢献/創造)を配分比率で決めた
  • [ ] 他人の物語を排除するための2週間の生活実験を実施した
  • [ ] 固定費/年払い/変動費を月次に割り付け、繁忙/閑散も反映した
  • [ ] 予備費・与信・停止スイッチ・保険給付を一枚化して家族と共有した

まとめ──数字の安心ではなく、“合意”の安心へ

ライフプランは、ライフデザインという物語の上にだけ有効です。安心を生むのは数字そのものではなく、
その数字を根拠に交わした合意です。今日の一歩は、望まないことの棚卸しと、理想の一日の時間割づくり。
そこから固定費・収入の質・リスク余白へ、月次で落としていきましょう。

暮らしの輪郭を、内側から描きなおす

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