生命保険を活用した事業保障プランニング

生命保険を活用した事業保障計画では、死亡退職金、弔慰金、事業承継資金という3つの重要な資金の準備が中心となります。これらは、事業の持続性と平滑な事業承継を確保するために不可欠です。

  1. 死亡退職金: 死亡退職金の適正額は、役員の功績を考慮し、在任年数に応じて計算されます。計算式は「役員報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」で表されます。この方法により、役員の貢献度に応じた適切な退職金額を設定できます。
  2. 弔慰金: 弔慰金は、死亡が業務上のものであるかにより、適正金額が異なります。一般的な計算基準としては、「役員報酬月額 × 36カ月分」を目安にします。これにより、遺族への適切な支援を保証します。
  3. 事業承継資金: 事業承継に必要な自社株の買取資金は、相続税の課税を考慮して決定されます。適切な計画により、事業のスムーズな移行と税負担の軽減が可能になります。

保険期間の設定では、勇退時期が予め決まっている場合、その期間に合わせた死亡保障を設けます。しかし、特に同族会社や中小企業では、勇退時期が不定であることが多いため、柔軟性を持たせた保険期間の設定が推奨されます。

保険種類については、貯蓄性よりも保障性を重視するべきです。生命保険は、経営者や役員の死亡リスクに対処するためのものであり、顧客の負担能力や金融機関の信用リスクなどを考慮して選択します。

事業承継の計画では、相続税負担の軽減と遺族間の争いを避けるための準備が重要です。自社株式の評価を適切に管理し、逓増定期保険のような商品を活用して、事業承継を円滑に進める方策が必要です。

生命保険の適切な活用は、事業承継計画において効果的な手段です。これにより、死亡退職金、弔慰金の提供や、税負担の軽減など、事業の持続性と遺族の支援が確保されます。定期的な見直しを通じて、経済や企業の変化に対応する柔軟な計画が求められます。

ケーススタディー

A社長は、X会社の経営を継続し、先祖代々の清酒業を息子、B専務に引き継ぐことを計画しています。B専務は、地元の銀行での勤務経験を経て、10年前から家族経営のX社に加わり、現在は専務として活躍しています。A社長が25歳で急逝した父から事業を引き継いだ時、事業は個人事業の形態をとっており、その後、法人化して事業を拡大してきました。A社長の家族は、配偶者と長男B、そして結婚してX社とは無関係の生活を送る長女Cからなります。A社長は60歳を迎え、退職準備と事業承継を考え始めており、生命保険を活用することの有効性について認識しています。

現在の生命保険の概要

  • 契約内容: 20年前にX社が契約者で、A社長が被保険者、受取人がX社の定期保険。
  • 保険の特徴: 長期平準定期保険で、死亡保障額は1億円。保険料は年間200万円で、70歳時の解約返戻金は5500万円。

A社長の要望

  1. 事業承継: 配偶者と相談の上、長男Bに事業を全て継がせたい。
  2. 財産の分配: 長女Cに対しても、長男と争いがないよう適切な財産を残したい。

FPの提案

  1. 自社株式の評価調整: 自社株式の市場価格上昇により評価額が高騰しているため、損金算入可能な生命保険を活用して利益を引き下げることを勧めます。
  2. 退職金の準備: 現状の解約返戻金では退職慰労金が不足しているため、10年後に約1億円の解約返戻金が得られる生命保険の準備を提案します。
  3. 逓増定期保険の活用: 保険料年間1000万円で、70歳時の解約返戻金が19500万円となる逓増定期保険を導入し、70歳時には終身保険に変更して一生涯の保障にします。

契約者・受取人の変更

  • 新規契約: A社長自身が契約者であり被保険者、死亡保険金受取人を長男Bに設定。これにより、事業承継と財産分配をスムーズに行うことが可能になります。

財産管理と相続対策

  • 生命保険の非課税枠の活用と、子どもや孫への贈与を含む相続税の軽減策を講じます。

このケーススタディーでは、A社長の事業承継計画と財産分配の意向に基づいて、生命保険を効果的に活用することで、事業の持続性を確保し、家族間の争いを避けるための具体的な提案がなされています。生命保険は、事業承継計画において財産分配を平和的に行い、税負担を軽減する有効なツールとして機能します。

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