

個別銘柄の選択いかんよりも、資産配分によって投資結果が大きく変わることは前回解説した。
では、その資産配分はどのようなプロセスで行ったらいいだろう?
まず、一般的な資産配分の過程をみてみよう。
ベースになる考え方は、前回と同様個別銘柄でなく資産クラスに適用する形になる。
投資対象の資産を検討する
一般的な資産として、債券・株式・不動産・短期の金融資産・貴金属などが考えらる。
各資産の期待リターンとリスクを推定する
過去のデータから導き出した平均リターンを活用してリスク/リターンを推定する。
その他には、何らかの経済理論を基に無リスク金利に各資産特有なリスクプレミアムを上乗せして推定する、という方法も考えられるだろう。
資産間の相関を推定する
一般的には、過去の資産間の相関データを基に推定される。
その他、そこに傾向や慣性を利用して推定するケースも考えられる。
効率的フロンティアを参考にする
「価格決定モデルの考え方と運用成果評価の手法を学んで投資家の仲間入りをする」の中で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてほしい。
人的資産やライフスタイルを基に資産配分を決定する
個人が投資する際の資産配分は、機関投資家などが行うスタイルとは異なる。
長期間にわたってキャッシュフローに影響を及ぼす形になる。
金融投資そのものよりも、住宅ローンや長期の教育投資など個人の生活に密接した事柄を中心に資産配分していく必要があるからだ。
また、資産価値下落を労働力によって補える余地もあるだろう。
その場合は、比較的リスクが高いものに資産を配分することも可能だ。
しかし、そうでない場合はリスクが低いものにシフトした方が無難だ。
つまり、人的資産を考慮した上で、個人のライフスタイルやライフサイクルに応じた資産配分を考える必要がある。
そのことについては「ライフサイクルと人的資本を考え合わせて資産運用を考える必用がある」で詳しく解説しているので参考にしてほしい。
ダウンサイドリスクを回避する
ダウンサイドリスクについては「分散と標準偏差を理解してファイナンシャルプランを効率的に行なう」の中でも紹介した。
また、リスク回避については他の投稿でも度々解説してきた。
株式などの資産で資金運用する場合、ある程度のリスクにさらされる覚悟が必要だからだ。
すべて現金(短期の債券)で資産運用を行えばリスクについて考える必要はない。
しかし、ある程度のリスクを取らなければ、貨幣価値の変動によって資産が目減りしていく可能性もある。
したがって、生活水準を維持した上で、適度に投資を行っていく必要があるだろう。
特に個人投資家の場合は、リスクをヘッジをしつつ資産を増やしていくことが重要だ。
例えば、ポートフォリオ価値の目標下限を決定し、この下限近くになった時に株を売り、その資金を現金運用にシフトでききるような仕組を考えればいい。
元本保証とまでは言えないが、下限価値を割り込まなくて済む。
また、下限時点から見て十分に余裕がある場合に、現金運用から株式運用にシフトできる仕組を併せ持っていれば、目減りすることなく確実に資産を増やすことができる。
このように、ポートフォリオに保険の仕組みを取り入れた方法や動的資産配分の考え方も重要だ。
具体的な手順は、以下のようになる。
- ポートフォリオ価値から守るべき下限値を差し引く
- 一定割合を株などのリスクの大きい資産で運用する
- 上記を毎期繰り返していく
単純な方法ではあるが、この方式によって、市場が下落するときには現金で運用する割合が増え、上昇する場合には株で運用する割合が増える。
つまり、順張り戦略によってダウンサイドリスクを回避するというパターンだ。
このやり方を「一定比率法のポートフォリオ保険」とも呼んでいる。
これも資産配分戦略の一つと言える。
デリバティブ戦略
互いに同じような値動きをする銘柄や資産に投資をしてもリスクを軽減することができない。
しかし、そのような場合であっても理論上はリスクを完全になくしたポートフォリオを作ることは可能だ。
あくまでも理論上の話だが・・・・
例えば以下のケースを考えてみましょう。
- 株式A:日経平均株価に連動するインデックスファンド
- 株式C:日経平均先物
日経平均先物は、日経平均株価を基にした派生証券なので、値動きは日経平均株価とほぼ同じ動きをする。
つまり、日経平均のインデックスファンドと一緒に保有しているだけではリスクは全く変わらない。
では、インデックスファンドを保有している状態で、日経平均先物を「売る」とどうなるだろう?
この場合、日経平均先物売りの損益は、インデックスファンドの損益とほぼ逆の方向に動く。
インデックスファンドの「買い」の損と日経平均先物の「売り」からの益が同時に発生するからだ。
つまり、インデックスファンドを持っている投資家は、その先物を活用して一方の損を他方の益で相殺することによりリスクを回避することができるというわけだ。
オプションなどのデリバティブによって価格変動リスクを容易にヘッジすることができるのだ。
ただし、個人の場合は、現物とデリバティブの税制の違いも考慮する必要があるので注意してほしい。
また、オプションやデリバティブについては「オプション取引の概要とその特徴」「オプション効果と組み合わせ方法」「デリバテイプを組み込んだ金融商品などについて」なども参考にしてほしい。