ベータ(β)の推定:投資戦略の基石
前回のマネープラン・ガイダンスで触れたように、ベータ(β)は市場リターンと個々の証券リターンの関連性を数値化する非常に重要な指標です。
市場がどれだけ動いたかというと、そのβ倍の動きをその証券が見せると期待されます。
βの計算における具体的手法
βを計算する場面で最もよく使用される方法はリグレッション分析です。
これにより、過去のデータを基にして、その証券がどれぐらい市場と相関しているのかを測ることができます。
- データの収集:市場リターンと証券リターンの月間データを集めます。
- 基本統計量の計算:それぞれのデータセットの平均(期待値)、分散、標準偏差を計算します。
- 共分散の計算:市場リターンと証券リターンの共分散を計算します。
- βの推定:β=
Covariance/ Variance of Market
こうして計算されたβは、資産ポートフォリオのリスク評価や、市場に対する感応度を明示的に示してくれます。
理論と現実のギャップについて
だが、この数値に過度に依存することは危険です。
統計的な数値はあくまで「過去のデータ」に基づいていますので、未来の市場状況を100%反映するわけではありません。
また、過去のデータが十分にない場合、βの推定値は不正確になる可能性もあります。
認知バイアスとその影響
投資判断においても、認知バイアスがしばしば顕れます。
これには、例えば「過度の自信バイアス」や「確証バイアス」「損失回避バイアス」などがあります。
これらのバイアスによって、最も理論的に正確な判断が行えなくなる場合も少なくありません。
特に、長期にわたる投資戦略を考える場合、自分が持つバイアスに気づくことは非常に重要です。
投資哲学としてのバランス
投資において理論と実践はどちらも重要ですが、そのバランスを取る必要があります。
すなわち、高度な理論に基づいて投資戦略を構築する一方で、その理論が現実の市場状況や自分自身の心理的側面とどのように合致するのかを常に考慮する必要があります。
ベータは確かに投資戦略において重要な指標ですが、それだけに依存するのは危険です。
市場は複雑な要素で動いており、それに対応するためには理論だけでなく現実の認識も必要です。
そして、その現実には、自分自身の心理も含まれるのです。
理論を学び、現実をしっかりと観察し、自分自身のバイアスに気をつけながら、堅実な投資判断を行うことが最も賢明な戦略と言えるでしょう。