サラリーマンの生活設計とそれに基づいた保険設計の事例
- 現在の環境や家計の状態を把握。
- キャッシュフロー表作成。
- 修正後のキャッシュフロー表を見て検討。
- 必要保障額の算出。
1,現在の家族状況や家計の状態を把握する
吉田太郎さんの家族構成
- 太郎:昭和53年5月15日生(38歳)会社員
- 恵美:昭和56年4月2日生(35歳)専業主婦
- 美玲:平成17年9月1日生(11歳)小学5年生
- 健太:平成19年11月10日生(9歳)小学3年生
家計の収支・貯蓄の状況
定年までの収入
- 職歴:23歳で入社、60歳まで勤続予定
- 年収:750万円
- 平成15年3月までの平均標準報酬月額34.4万円。
- 平成15年4月以降の平均標準報酬額61.9万円。
※平均報酬月額:東京都中小企業振興公社「中小企業の賃金(モデル賃金)」(平成25年度版)の賃金上昇率に現在の年収を掛けて算出。
- 退職金:300万円(現在)
- 1,500万円(定年退職時)
定年後の収入
- 老齢厚生年金、老齢基礎年金
- 企業年金60歳から年金年額120万円の10年確定年金
- 現在の貯蓄額:300万円
家計の支出
- 日常生活費:月37万円(定年まで)
- 定年後の日常生活費、定年前の80%
住宅ローンの支払い
- 年間114万円、65歳まで(年利2.5%)、残高2,170万円
- 6年前に2,500万円借り入れ(団体信用生命保険加入)注:増改築費用考慮しない。
子どもの教育費
- 二人とも高校までは国公立、大学は私立の文系(自宅)
子どもの結婚援助費用
- 二人とも130万円ずつ。
死亡保障
グループ保険加入、1,500万円(限度額は2,000万円)
太郎さんの希望
- 住宅ローン返済を60歳までにしたい。
- 子どもの教育費は削りたくない。
- 老後はゆとりある生活を送りたい。
2,キャッシュフロー表の作成
キャッシュフロー表を作成し問題点を分析する。
※キャッシュフロー表を作成したと仮定
①問題点
- 子どもの教育費が増加すると、家計に余裕がなくなる。
- 60歳定年の場合、老後生活費の確保が難しい。(住宅ローンの返済が65歳まである。)
②提案
現在の住宅ローンの借り換えを検討する。
担保などの問題がなければ、住宅ローンの借り換えを試みる。
年利2%と仮定した場合、
- 年間の返済額126万5,736円
- 返済期間は60歳まで短縮できる。
現在のローン内容。
- 借り入れ当初2,500万円
- 現在の残高は2,170万円
- 期間は、平成23年~平成55年(32年間)
- 完済時期は65歳
- 年利2.5%(元利均など方式)
- 年間返済額113万5,740円
借り換え後のローン内容
※借り換え時の必要経費は考慮しない。
- 金額、2,170万円
- 平成29年~平成50年(60歳)、21年間
- 年利2.0%(元利均など方式)
- 年間返済額126万5,736円
恵美さんの就業を考えてみる
家事負担が軽くなってから60歳になるまでパートで働く。
月収8.5万円(年間で102万円)。
3,修正後のキャッシュフロー表を見て検討する
返済期間を60歳までに短縮したため、60~65歳までの家計の赤字額が縮小。
- ローン借り換えにより、総返済額が約300万円減少。
- 老後準備資金の蓄えにも余裕ができた。
※借り換えが難しい場合でも一部繰り上げ返済などを活用して返済期間の短縮は可能。
- 恵美さんの就業により、子どもの教育資金の増加。
- 教育費がかさむ時期の家計の収支が改善。
※浮いた資金で60~65歳までの老後生活ための資金準備の手段を検討してみる。
例えば、所得控除をうまく活用する方法として、個人年金保険などがある。
最高6.8万円が所得控除できる。
ゆとりある老後生活資金は、35.4万円(生命保険文化センター「平成25年度 生活保障に関する調査」)
とされているが、改善後はその条件を満たしている。
このケースでは、
- 現状と修正後において、退職までの収支が良好に改善された。
退職してから公的年金が支給されるまでの間は収支がマイナスになるが、トータルで見れば十分な老後資金を確保できるシミュレーションに落ち着いた。
4,必要保障額を算出する
修正したキャッシュフロー表を基に必要保障額を算出。
万一時の収入
- 遺族年金
- 恵美さんの給与年180万円
万一時の支出
- 生活費、月26万円(夫の死亡前の70%)
- 子ども結婚自立後の生活費、月20万円
- 子どもの教育費、現時点と同様
- 現時点での死亡退職金、300万円・弔慰金200万円
以上を考慮して、シミュレーションソフトなどを使って必要保障額を算出する。
実際に保険商品を選択する際には、、
- 保険料などの負担能力。
- 商品の内容。
- 生命保険会社などの信用リスク
- 生命保険商品の特徴
- 保険業法における保険会社の健全性
などを一緒に検討する必用がある。
また、個人を取り巻く環境の変化に応じて見直しをする必要がある。
次回は、個人事業主の法人成りを生活設計と保障設計の両側面から考えてみましょう。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。