ユーザーの感情を捉えるデザイン思考入門|実務ガイド

デザイン思考の手法を使うと、ユーザーの感情・価値観・文脈を行動レベルで捉えられます。本稿は「ユーザーの感情や気持ちを理解する」ための実務ガイドを、調査→分析→共創→改善の流れで解説します。

1. ユーザー理解の4段階(H3以下で深掘り)

1-1. ユーザーのニーズを把握する

前提は本人語りの取得。インタビュー/観察/アンケートを併用し、事実と解釈を分けて記録します。

実務のポイント

  • サンプリングは極端事例(初回/ヘビーユーザー/離脱者)を含める。
  • 質問は「最近の具体的な出来事」「直後に何をした/感じた」で時系列に。
  • アンケートは自由記述を必ず1問入れ、言葉づかいを学ぶ。
質問テンプレ
直近で困った瞬間は?(いつ/どこ/何が起点)
そのとき何を考え、どう感じ、何をしましたか?
理想の結果は何でしたか?妥協案は?

1-2. ユーザーの視点を理解する

「ユーザーの立場になる」を具体化するには、状況・制約・目標の三点セットで可視化します。

視点マップ(H5で項目化)

状況

時間帯/デバイス/同伴者/場所/騒音/可処分時間など。

制約

金銭/認知負荷/身体特性/社内ルール/家族都合など。

目標

短期(今回の達成)/長期(価値・避けたいこと)。

1-3. ユーザーの感情や気持ちを理解する

表情・仕草・語彙・沈黙・ため息等の情動シグナルを逐語/タイムスタンプで記録。状況とセットで意味づけします。

観察チェック

  • 感情の強度(1–10)とトリガー(UI/人/環境)。
  • 回復要因(人の言葉/機能/ルール/環境)。
  • 繰り返し出る比喩(「怖い」「めんどい」など)。

1-4. 共感(エンパシー)を関係に変える

共感で終わらず、合意→行動まで落とし込みます。

プロト共有の作法

  • 小さな試作を短周期で。撤退条件と更新予定を明示。
  • 「指摘してOK」の合図(文言/導線)をUIに組み込む。
  • 参加者への報酬・交通費・結果共有を事前合意。

2. ユーザーの声を反映したデザインを作る手順

2-1. 収集:フィールド/アンケート/インタビュー

SNS/レビューも補助に。出所・日時・原文を必ず残す(再現性)。

2-2. 分析:声→課題→機会へ翻訳

声の仕分け

  • 事実(起きた出来事)/感情(感じたこと)/解釈(本人の仮説)を分離。
  • 頻度×強度×影響範囲で優先度を決める。

インサイトの書式(H5)

洞察カード(テンプレ)
観察:__(原文引用/出所/日時)
解釈:__(なぜそれが重要か)
機会:__(こう変えると楽になる)
メトリクス:__(成功の見え方)

2-3. 反映:共創プロトタイピング

ペーパープロト/ワイヤー/クリックモデル→可用性テスト→改善。

テスト観点

  • 理解時間、迷い箇所、戻り回数、中断理由。
  • 感情の変化ポイント(開始/中盤/完了)。
  • 「また使いたい?」の自由記述理由。

2-4. 継続:フィードバック→改善のループ

公開後も定点観測(NPS/離脱/苦情種別)。変更履歴と理由を残す。

3. そのまま使えるテンプレ(コピペ可)

3-1. インタビュー・ガイド

導入:録音許可/退出自由/所要時間/謝礼
本編:最近の体験→一番困った瞬間→直後の行動→理想の結果
深掘り:その言葉は何を意味?(例を1つ)
締め:今日一番伝えたいこと/未回答項目

3-2. エンパシーマップ

【見る】__ 【聞く】__
【考え感じる】__(強度1-10/言葉の引用)
【言う/する】__(具体行動)
【痛み】__/【望み】__

3-3. 意思決定ログ

問題定義:__
代替案:A__/B__/C__(採用理由・捨てた理由)
仮説KPI/KQI:__(いつ/誰が/どう測る)
次の実験:__(撤退条件付き)

4. よくある落とし穴と修正(漏れ・ダブリ・ズレ)

4-1. 表面一致=本質一致と誤解

用語/見た目が似ていても、関係・制約・目的の三行対比で判定。1つでもズレ大なら別物扱い。

4-2. 代表事例の過一般化

反例を先に3つ探し、適用条件を明文化。

4-3. 確証バイアス

「もし逆なら?」の反事実を1行で書いてから意思決定。

4-4. 古いプロトタイプの固定化

直近12か月のデータでプロトタイプを更新。更新理由もログ化。

5. 導入の次の一歩

  1. ユーザー5名で発見インタビュー(各45–60分)。
  2. 洞察カードを10枚作成し、優先3件を決める。
  3. 1週間スプリントでペーパープロト→テスト→改善。
  4. 公開後2週間でKPI/KQIレビュー、再設計。

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