パーソナル・リスクマネジメントと損害保険設計

偶然の事故や災害の危険に対し、経済的な負担を軽減するのが損害保険の役割だ。

個人や企業を取り巻くリスクにはさまざまなものがある。

例えば、火災、自動車事故、ケガ、労働災害、天候不順、逸失利益などなど・・・

これらリスクをカバーする商品として、火災保険、自動車保険、傷害保険、労災の上乗せ保険、デリバティブ、所得補償保険、休業補償保険、利益補償保険、盗難保険、賠償責任保険などがある。

損害保険会社は、保険料率によってこれら商品の保険料を算出しており、保険料率は保険会社によって異なる。

したがって、各保険会社によって保険料が違うわけだ。

また、保険代理店や銀行などの金融機関に限らず多くの業種が参入している分野でもある。

大数の法則と収支相当の法則

保険の仕組みは「大数の法則」をその根拠とし、その保険料は、「収支相当の法則」にもとづいて計算されている。

参考▼

収支相当の法則とは、純保険料の総額と支払われる保険料の総額がなどしくなるという法則のことだ。

これを契約者側から見た場合、「給付・反対給付均などの法則」に従っているといるともいえる。

参考▼

給付・反対給付均などの法則とは契約者が支払う保険料と、事故発生の際に支払われる保険金の数学的期待値がなどしいという法則で、レクシスの法則ともいわれる。

利得禁止の原則が大前提

また、損害保険は、一定の危険率を乗じて生じた損害額に対する保険金の支払いを目的としていている。

したがって、被保険者は保険金が支払われることによって利得を得るものであってはならない。

これを「利得禁止の原則」といって、保険制度成立の前提となっている。

もしも事故によって利得が得られるならば、事故を故意に起こすといったモラルを害する行いを誘発することにもなりかねないからだ。

そうした数々の原則に則したカタチで損害保険の仕組みができているのだ。

不慮の事故データ

厚生労働省「平成28年(2016) 人口動態統計(確定数)の概況」によると、不慮の事故で死亡した人は38,306人で、死因原因の6番目になる。

さらに、その詳細を見てみると以下のようになる。

不慮の事故死因 死亡数 不慮の事故死総数に占める割合
1,窒息 9,485 24.8%
2,転倒、転落 8,030 21.0%
3,溺死、溺水 7,705 20.1%
4,交通事故 5,278 13.8%
5,煙、火および火炎への曝露 891 2.3%
6,有害物質による中毒、有害物質への曝露 565 1.5%
7,その他 6,352 16.6%
総数 38,306

(出典:厚生労働省「平成28年(2016) 人口動態統計(確定数)の概況」)

以上これらのことを踏まえた上で損害保険について解説しよう。

損害保険の設計

保険契約の本来の目的はなんだろうか。

リスク軽減やリスクヘッジ、つまり補償を得る行為だ。

でも実際には、それ以外の目的で契約するケースも多いだろう。

例えば、法人では節税目的で契約するケースもある。

その他、遺産分割、運用、あるいは事故の際の金銭的リスク軽減など、さまざまな目的で保険に加入しているだろう。

また、これら契約の動機として心的リスクを軽減したいという思いもある。

だから、これらの動機と目的に則した保険設計が望まれる。

その保険設計は、大きく生命保険と損害保険にわかれる。

生命保険分野についてはこれまでさまざまなカタチで触れてきた。

今回は損害保険に焦点を絞って、その特徴やポイントなどについて解説しよう。

リスクマネジメント視点

リスクマネジメントの考え方を、損害保険設計に応用することによって、その効力を向上させることができる。

つまり、保険領域外のマネジメント技術を取り入れることによって、より正確で確実なリスク対策が可能になるにということだ。

では、保険領域外のマネジメント技術にはどのようなものが考えられるだろうか?

保険領域外のリスク処理技術

世の中には、保険によってカバーできないリスクがあることは既にご存じだと思う。

また、保険でカバーできる領域であっても、他の方法によって処理する方が効率的な場合もある。

確かに、企業リスクの多くは、保険によってカバーできるものは多いだろう。

しかし、日常生活で使えるリスク処理技術となるとその種類は限られるだろう。

したがって、保険以外の方法によって、リスクを回避したり、制御したり、移転する方法が必要になってくる。

したがって、当然ながらリスクマネジメントの基本的な手順に従う必要があるだろう。

具体的には、以下のようなプロセスになる。

  1. リスクの確認
  2. リスク測定
  3. 処理技術の選択
  4. 処理の実施
  5. 結果の統制

こうした手順は、日常生活に当てはめて考えている人は少ないだろう。

しかし、実は損害保険の機能を有効に活用するために欠くことのできないプロセスだ。

それではその手順を1つ1つ順を追って見ていくことにしよう。

リスクマネジメントのプロセス

リスクの確認

自動車保険など保険契約先の保険代理店からリスクチェックリストをもらうといいだろう。

そういう先がない場合は、書籍、雑誌あるいはネットで検索してその雛形を手に入れることもできる。

最初から完璧なものを求めず、試行錯誤しながら修正しつつ個々のライフスタイルに合わせてチェックリストを作成してほしい。

リスクの測定

一般的なリスク測定は、統計学を応用して求めるが、日常生活の場合は困難だろう。

したがって、リスクを精密に分析することはできないという前提で進めてほしい。

その際に再調達価格を基準に考えたほうがいいだろう。

再調達価格とは、その目的物を新たに購入した場合の金額のことだ。

例えば、建物や家財のリスクを測定する場合は、この再調達価格を使用するということだ。

では、人的リスクについてはどうだろうか?

人的リスクを測定する場合は、公的な給付金を控除して見積もる必要がある。

例えば、遺族年金や障害年金などの公的年金、健康保険などの公的医療保険の給付金などがそれに該当する。

リスク処理技術の選択

リスクの処理を個人で行う場合、そこにかけられる費用は限定されるだろう。

したがって、優先順位を決めることが最大のポイントとなるだろう。

優先順位を決定する際には、予想される損失額が基準になる。

ということで、まず損失額が最大になると予想される事柄を把握することが重要になる。

さらに、リスクについて次のようなことを検討しておく必要があるだろう。

  • リスクの分離や保険以外へのリスクの移転は可能か?
  • 損失を制御する費用はどれくらい必要か?
  • 損害保険で対応が可能な場合、その保険料はどのくらいになるか?
  • 損害保険によらない場合、そのための資金確保は可能か?

処理の実施

行動しなければ何も変わらない、それはリスク処理についても同様だ。

特に組織を持たない個人の場合、実行されないままお蔵入りしてしまうことが多いようだ。

したがって、実施できる環境を自ら整えておく必要もあるだろう。

具体的には、実施基準、実施時期を定め、実施を報告する先をあらかじめ選定しておくといいだろう。

結果の統制

リスク処理を実施した結果を踏まえて再度検討するといい。

リスク処理の成果を自己採点した結果、あらたな問題点を発見できるケースも多い。

このプロセスを守り、そして繰り返すことによって完成度を高めていってほしい。

リスクマネジメントに適した環境を整える

リスクマネジメントや保険設計を考える場合は、家族の協力が必要だ。

したがって、定期的に話し合う場を設けることが望ましい。

目的を共有することによって他のメリットも得られるに違いない。

また、専門的な知識を必要とする場面も多いと思うので、専門家から援助を受けることをあらかじめプランに組み込んでおくといいだろう。

全て自分で行うのもいいが、結果的にそれは効率的ではないように思う。

自分のプランを第三者に客観的に見てもらった方が、早く正確に仕上がるだろう。

特に損害保険分野は、無料でアドバイスしてくれるプロも多いので、大いに利用するといい。

次回は火災保険を中心に解説します。

ではまた。。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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