
1. いま理論が滑る主因(実務で要監視)
1-1. フロー > ファンダ
国債増発・MMF資金・受動的インデックス資金の機械的な買いが、割高でも価格を押し上げる。
1-2. 会計の“名目化”
インフレで名目売上・EPSは膨張。D&A/在庫評価/減価の名目歪みで見かけ益が増える。
1-3. 集中リスク
一部超大型の利益・期待に指数が引っ張られ、市場全体≠実体になりやすい。
1-4. 政策の二重作用
短期金利・量的引締め/再投資の組み合わせで、割引率とリスク・プレミアムの向きが噛み合わない局面。
1-5. ナラティブの自己実現
AI・生産性などの物語が資本コスト低下を織り込み過ぎ、価格が先行。
2. 「通貨安による見かけの株高」を見切るミニ手順
2-1. 実質化(名目を剥がす)
- 名目株価 ÷ CPI/GDPデフレータ=実質株価。
- 指数だけでなく等加重・セクター別でも確認。
2-2. EPSの“質”で見る
- 買戻し・リパトリ後の希薄化調整EPS。
- 営業CF/売上の改善有無。
- ROIC−WACC(名目と実質の両面)。
2-3. フローの地図
- 国債ネット供給 vs 自然買い手(年金/海外/中銀)。
- MMF残高・リバースレポ(現金→リスク再流入の手前)。
- パッシブ比率・上位10社寄与(集中度)。
- 信用温度:HY OAS、デフォルト率見通し、CP・レポの詰まり。
2-4. 市場の“中身”を剥がす
- アドバンス・デクライン、等加重指数、ブレッドス(広がり)。
- セクターの寄与分解(指数の“見かけ”を排除)。
3. 立ち回り(シンプルで強い型)
3-1. バーベル
短期T+流動性に厚め+限定コストの保険(プット/テールヘッジ)。
3-2. 質への回帰
ROIC > WACC(実質)、強い現金創出力、負債期間のマッチング良好銘柄に絞る。
3-3. 実質連動
インフレ連動や実物キャッシュフローに紐づけ(ただしバリュエーションは冷静に)。
3-4. 規律
バリュエーション×クレジット・スプレッドで再配分ルールを機械化(感情を排除)。
3-5. 集中の逆張り
指数の偏りが極端化→等加重/品質・バリュー・小型など因子で歪みの逆を取る。
4. ダッシュボード(週次ウォッチ)
4-1. 名目⇔実質
- 実質株価:名目÷CPI/デフレータ
- 実質ROIC・実質WACC
- 実質EPS(希薄化調整)
4-2. フロー
- 国債ネット供給/入札テール
- MMF残高・RRP残高
- パッシブ比率・上位10寄与
4-3. クレジット&流動性
- HY OAS/IG OAS
- CPスプレッド/レポ金利の歪み
4-4. ブレッドス
- Advance/Decline、等加重vs時価総額
- 新高値−新安値、セクター幅
5. 機械的リバランスのルール(テンプレ)
5-1. シグナル定義
- 集中警戒:上位10社の指数寄与がX%超。
- 実質割高:実質PERが過去5年分位で上位Y%。
- 信用過熱:HY OASがZbp割れ。
5-2. 行動規則
- 集中警戒→等加重/品質因子に比率+a。
- 実質割高→バリュエーション高位セグメントを−b%。
- 信用過熱→ヘッジ比率+c%(期限とコスト上限を明記)。
1行契約(コピペ)
【再配分】シグナル(集中/実質割高/信用過熱)の点灯数=n
→ リスク資産 − n×b%、等加重/品質 + n×a%、ヘッジ + n×c%
【見直し】翌週レビュー/逸脱は理由を記録。
→ リスク資産 − n×b%、等加重/品質 + n×a%、ヘッジ + n×c%
【見直し】翌週レビュー/逸脱は理由を記録。
6. 実務テンプレ(コピペOK)
6-1. 週次メモ
名目→実質:指数__/実質PER__/ROIC−WACC(名目__/実質__)
フロー:国債供給__/MMF__/RRP__/パッシブ比率__/上位10寄与__
信用:HY OAS__/IG OAS__/CP/レポ__
ブレッドス:ADライン__/等加重差__/新高値−新安値__
判断:集中 警戒/中立/解消、実質 割高/妥当/割安、信用 過熱/中立/逼迫
アクション:__(比率変更、ヘッジ、等加重/因子への移動)
フロー:国債供給__/MMF__/RRP__/パッシブ比率__/上位10寄与__
信用:HY OAS__/IG OAS__/CP/レポ__
ブレッドス:ADライン__/等加重差__/新高値−新安値__
判断:集中 警戒/中立/解消、実質 割高/妥当/割安、信用 過熱/中立/逼迫
アクション:__(比率変更、ヘッジ、等加重/因子への移動)
6-2. 銘柄フィルタ(質への回帰)
条件:ROIC>WACC(実質)/ 営業CFマージン>過去中央値/ 負債デュレーションと資産寿命の整合
除外:株主還元のみでEPSを嵩上げ(買戻し依存)、会計上の名目効果が大(在庫・D&A歪み)
除外:株主還元のみでEPSを嵩上げ(買戻し依存)、会計上の名目効果が大(在庫・D&A歪み)
7. まとめ:理論は“使える部分だけ”に戻す
名目→実質化/フロー→ファンダ分解/集中→広がりチェックで可視化すれば、
「通貨劣化で上がって見える」を疑いつつも、総否定に陥らず理論の可用範囲を再定義できます。
ルールを文章化し、週次ダッシュボード→機械的リバランスで感情を排除しましょう。