
「感じる」を軸に戻す──十如是で再校正する自分基準
私たちは、合理性で“正しく”決めながら、どこかで腑に落ちない違和感を抱えることがあります。
そのズレは、情報不足よりも「感性(感じ方)と自分軸(選ぶ基準)」の不整合から生まれがちです。
本稿では、十如是(相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟等)を、自分軸を整える10の視点として再解釈し、“納得して選ぶ”ための運用手順に落とし込みます。
十如是を「自分軸」の10視点にリライトする
- 相(外観):いまの私の振る舞い・印象は、何を語っている?
- 性(本性):価値観・感受性に沿っているか。嬉しさ/嫌悪の身体感覚は?
- 体(土台):健康・時間・資金・関係性。無理のない設計か。
- 力(強み):再現可能な勝ち筋は何か。どの文脈で最大化するか。
- 作(行為):最初の一手は“小さく・速く・可逆的”になっているか。
- 因(根因):その選択の根本動機は、恐れ/承認欲求/使命のどれ?
- 縁(条件):追い風と向かい風は?人物だけでなく、場所・時間帯・ツール・プラットフォーム・情報(本・教材・データ)・資金・制度/規制など、どの条件が作用している?
- 果(成果):観測できる成果は何か(行動・数値・関係の変化)。
- 報(反響):自分・家族・社会にどう返ってくる(副作用も含む)。
- 本末究竟等(一貫):はじまりから終わりまで、語る物語は同じか。
メモ: 「相→性→体→力→作→因→縁→果→報→本末究竟等」の順で確認すると、感性の違和感と設計の無理が早期に可視化されます。縁は人物に限定せず、条件の総体として棚卸しするのがコツ。
ケース:条件は最高、でも心が重いとき
たとえば好条件の提案。報酬・肩書・将来性は申し分ないのに、どこかで心が重い──そんなときは十如是で分解します。
- 性:価値観の核と衝突していないか(自由/創造性/誠実など)。
- 体:時間帯・働き方・通勤距離など、身体が拒否していないか。
- 力:自分の強みを使える設計になっているか。活かされない強みは消耗のサイン。
- 因:選ぼうとしている理由が“恐れ(不安回避)”や“承認欲求”に偏っていないか。
- 縁:人・場所・時間・ツール・プラットフォーム・情報・制度等の条件に、構造的な向かい風はないか(例:意思決定の遅い組織、相性の悪い媒体、一次情報にアクセスしづらい等)。
- 本末究竟等:最初に語った「ありたい姿」と、着地の姿に矛盾はないか。
違和感が性/体/本末究竟等に集中する場合は、長期的に自分軸を侵食します。
一度立ち止まり、作(小さく試す)で可逆的検証へ。
ワーク:自分軸スコア(0〜3)で“ズレ”を発見
各項目を0〜3で採点(0=不一致/3=一致)。
①相 ②性 ③体 ④力 ⑤作 ⑥因 ⑦縁 ⑧果 ⑨報 ⑩本末究竟等
- 合計≧24:今の設計は“自分らしい”。小さく前進しながら調整。
- 18〜23:要・微修正。スコアの低い2〜3項目のみ対策を立てる。
- 〜17:再設計。特に「性/体/本末究竟等」に低スコアが集中していないかを確認。
縁マップ(条件の7分類)──追い風/向かい風の棚卸し
- People(人):関わる人・チーム・メンター・顧客。
- Place(場所):物理的環境・移動距離・騒音・アクセス。
- Time(時間):時間帯・季節・締切・可処分時間の塊。
- Tools(道具):ソフト/ハード・テンプレ・ワークフロー。
- Platform(場):発信/流通の媒体、コミュニティ、アルゴリズム。
- Info(情報):本・教材・データ・一次情報への到達性。
- Rules & Capital(制度・資源):制度/規制・資金・信用・契約。
各項目で「ある(追い風)/ない(向かい風)」を○×でチェック→×のうち、2つだけを次の一手で補強。
よくある落とし穴とリフレーム
- 合理性の罠: 数字で説明できる安心に偏り、感性の違和感を切り捨てる。
→ 性と体のスコアが低いときは、短期利得より長期の消耗コストを試算。 - 承認欲求の罠: “よく見られたい”が因になっている。
→ 因を“使命/貢献の物語”へ書き換える言語化を。 - 過剰最適化の罠: 最初から完璧に作ろうとして動けなくなる。
→ 作を「可逆的・小規模・短サイクル」の実験に限定。 - 条件無自覚の罠: 縁を“人間関係”だけで捉え、場所・時間・情報・制度などの条件を見落とす。
→ 〈縁マップ〉で構造的な向かい風を特定し、まず2点だけ補強。
実装:小さく試す設計(作→果の最短距離)
- 仮説1行: 「私はXという価値を、Yという場で、Zという強みで提供する」
- 一手だけ決める: 30〜90分で完了する、リバーシブルな行動。
- 観測指標: 行動ログ/身体感覚のメモ/1名のフィードバック。
- 学びの記録: 果(結果)と報(反響)を一言で。次の一手だけ更新。
まとめ: 感性は“現在の自分”を、十如是は“全体の自分”を映します。
この二つを重ねたとき、自分軸の物語は自然に一貫します。縁=条件の総体を整えることが、違和感の根治への最短路です。
この二つを重ねたとき、自分軸の物語は自然に一貫します。縁=条件の総体を整えることが、違和感の根治への最短路です。


