

株式投資などを考える場合、リターンとリスクの関係、さらには、他のどの銘柄と組み合わせたときのリスクとリターンの関係に納得できるかによって、どの会社の株を買うのかが決まる。
その決定を促す一つの理論的背景が、以前にも解説したポートフォリオ理論だ。
ポートフォリオ理論については「分散投資によってリスクがゼロになる場合とリスクがなくならない場合」のなかで詳しく解説しているので、そちらを参考にしてほしい。
そのポートフォリオ理論では、個別の会社の株や債券を、どのような基準に従って選択し組み合わせるかが重要だ。
今回は、ポートフォリオ理論で展開した「銘柄に注目して投資の決定を行う」という手法ではなく、主に同じ特色を持つ資産間で投資資金の配分を行う手法について解説しよう。
その方法とは、アセットアロケーション(資産配分)のことだ。
※アセット(資産):株式、債券、現金、海外通貨、その他資産(不動産、貴金属商品など、外国株・債券といったカテゴリーのこと。
ではなぜ、資産配分が投資をする際に重要になるのでしょうか?
資産配分が成果を大きく左右する
一つには、資産配分をいかに行うかによって、投資成果の大部分が決まってしまうからだ。
また、そうした実証結果が数多く得られているという事実関係もある。
つまり、個別銘柄の選択よりも資産配分が投資成果に大きく影響する。
個別銘柄へのフォーカシングは負担を増長させる?
実際一個人が、多数の株式のなかから個別銘柄の選択を行った上で、そのリスクとリターンの動向を予測し、銘柄の入れ替えを行っていくのは非常に大変な作業だ。
そして、その際の取引コストや情報収集コストも大きな負担になる。
それは、多くの人にとって可能なことではない。
個別銘柄にフォーカスすると勝てない!?
現金、株、債券など極少数の資産クラスのリスクとリターンの予測や分散効果の見積もりは容易だろう。
しかし、それでも実際に一個人が利益を得ることは難しい。
例えば、株価と債券価格は逆の動きをする傾向があるのはよく知られている。
長期の金利動向を適切に判定できれば、この資産間でどう投資資金を配分すればいいかはわかる。
景気上昇に伴い金利が上昇するという予測であれば、債券の配分を減らし株式の配分を増やせばいい。
しかし、これは長期の金利動向を適切に判定できているという前提において成立する。
手数料や税金の負担増を誘引する。
分散投資効果を十分に発揮させるには、非常にたくさんの銘柄に投資する必要がある。
当然ながら、そこには手数料や税金がかかるという問題が浮上してくる。
ということで、はじめから分散投資が十分に行われた株価指数やそれに連動した投資信託に人気が集中するわけだ。
しかし、これは分散してリスクを軽減するという視点から見た場合であって、利益を最大化する視点ではない。
また、専門家の運営する多くのアクティブ(積極)運用のファンドよりも、指数連動型のパッシブ(消極)運用ファンドの方が勝っている事例は多い。
こうしたことから、はじめから指数に連動した株式や債券指数などのアセット(資産)クラスに投資することが望ましいとされている。
繰り返しになるが、これは利益を最大化することとは別の話だ。
次回は「資産配分決定のプロセス、順張り戦略でリスクを回避する」です。