
まず結論:60/40を捨てる前に、「株式の中身」を作り替える
最初に押さえる要点(スマホで3分)
- 60/40は“万能の答え”ではなく、ある前提の下で成立した型
- 見直しの本丸は、株式の地域配分(国内偏重)に潜む“無自覚な賭け”
- 「国内50・海外50」は、相場予想ではなく迷いを減らす設計として機能する
- 正解は一つじゃない。だからこそ手順(決め方)を先に固定する
「株60・債券40」という数字は、議論の出発点としては便利です。でも、投資の世界で一番危険なのは、便利な型が“いつの間にか正解に昇格する”ことです。
型が効くのは、型の前提が生きているときだけ。前提が変われば、同じ型でも意味が変わります。
そして近年の違和感の多くは、債券比率そのものよりも、株式の中に潜む「国内偏重」という癖から生まれています。
なぜ「国内偏重」が危ないのか:それは“意図せぬ集中”だから
多くの人は「国内株を持つ=安全」と感じます。言葉の感触として、たしかに“馴染み”があります。
でも、馴染みは安全の根拠ではありません。むしろ馴染みは、判断を省エネ化するために脳が用いる近道です。近道は便利ですが、近道のまま大きな意思決定をすると、本人が気づかない形で集中投資が出来上がることがあります。
「国内偏重」が作る3つの集中
- 経済集中:日本の景気・賃金・制度・税制に、生活そのものがすでに連動している
- 産業集中:国内市場の構造・主力産業の偏りが、そのまま資産の偏りになる
- 通貨集中:円で生活する以上、円への依存は避けられない。資産まで円一色にすると“揺れ”が増える局面がある
ポイントは「国内株が悪い」ではありません。問題は“自分が意図した以上に”国内に賭けてしまうことです。
投資は、当てるゲームではなく、外れても立て直せるゲーム。意図せぬ集中は、外れたときの立て直しを難しくします。
「国内50・海外50」は“当てに行く比率”ではない
「国内50・海外50」と聞くと、何かの研究が示した“最適解”のように見えがちです。けれど、この考え方の本質はそこではありません。
これは相場の予想ではなく、自分の中に生まれやすい迷い(偏り)を、仕組みで減らすための比率です。
この比率が効くのは、こんなとき
- 国内が安心に見え、海外が不安に見える(でも不安だからこそ海外を持つ意味がある)
- 相場が荒れると判断がブレる(その場の感情で比率を変えやすい)
- 「正解を探す」癖が強い(探した瞬間に、次の情報で揺らぐ)
50/50は、完璧ではありません。けれど、完璧より大事なのは、意思決定を反復できることです。
投資で最も損を出しやすいのは「銘柄の選択」よりも、「続け方が崩れる瞬間」です。続け方が崩れるのは、恐怖や焦りが入り込む余白が大きいとき。だからこそ、シンプルな比率が“心の余白”を減らします。
ただし注意:50/50が合わない人もいる(ここを曖昧にしない)
ここを曖昧にすると浅い話になります。なので先に線を引きます。
50/50を調整したほうがいい典型
- 為替の上下で眠れなくなる:海外比率を落とすか、為替変動の捉え方を先に整える
- 数年以内に大きな支出が確定:地域配分より先に、株式比率そのものを下げる
- 収入がすでに海外に強く連動:資産まで同方向に寄せすぎないようバランスを取る
- “国内株=安心”が信念になっている:信念を否定せず、海外を「保険」として少しずつ増やす
比率の正解は一つではありません。だから、ここから先は「比率」ではなく、決め方の順番を固定します。
手順:比率は「決める」のではなく「組み立てる」
Step1:あなたの“生活通貨”を先に認める
日本で暮らしているなら、生活通貨は円です。これは思想ではなく現実です。まずは生活防衛(数か月〜1年分など)を円建てで確保します。
この土台が薄い状態で地域配分をいじると、相場の揺れが生活不安に直結し、投資の継続が崩れます。
Step2:「株式は成長のエンジン」と割り切る
株式は“守り”ではなく“成長”の役割です。守りを株式に期待すると、下落局面で心が引き裂かれます。
成長枠の中で、国内・海外をどう割るかを考えます。ここで50/50が効いてきます。
Step3:株式の中で「国内:海外=50:50」を置く(暫定でいい)
この比率は“予想の結論”ではなく、“迷いを減らす暫定ルール”です。暫定でいい。重要なのは、暫定でもルールがあることです。
Step4:リバランス規律を一行で書く
比率は「当てるため」ではなく「戻すため」に存在します。例えば次のどちらかに決めるだけで、迷いが激減します。
- 年1回:毎年同じ月に元の比率へ戻す
- 乖離幅:目標から±5%ずれたら戻す
この一行がない投資は、気分で運転する車に似てきます。遠くへ行けても、いつか事故ります。
「60/40」と「国内50・海外50」をどう接続するか(設計の見取り図)
ここが接続できていないと、読み手は“結局何を買えばいいの?”で止まります。なので構造で示します。
例:株式60%・守り40% の場合
- 株式60% → 国内30% + 海外30%(株式の中で50/50)
- 守り40% → 円の現金・円建て債券・必要ならヘッジ付き債券など(目的に合わせる)
この形の良いところは、「国内だけ」「海外だけ」という極端な物語に引っ張られにくい点です。
そして、株式が同じ60%でも中身が変わるだけで、ポートフォリオの“揺れ方”が変わってきます。揺れ方が変われば、続け方も変わります。
深掘り:あなたが本当に調整したいのは「リターン」ではなく「下落時の自分」
投資の本題は、利回りではありません。下落時にどう振る舞うかです。
多くの人が崩れるのは、暴落そのものよりも、暴落の最中に頭の中で始まる“物語”です。
- 「やっぱり海外は怖い」
- 「国内のほうが分かる」
- 「いま動かないと取り返せない」
この物語が強くなるほど、売買は“合理”ではなく“鎮痛剤”になります。痛みを消すための売買は、だいたい高くつく。
だから、配分とは「未来の相場」を当てる作業ではなく、未来の自分を守る作業です。
最後に:比率を決めるための3つの問い(ワーク)
- 下落が来たとき、私は何を守りたい?
生活・家族の安心・選択肢・自尊心。守りたい対象で“守りの厚み”が決まる。 - 私は「不安だから減らす」のか「不安だから持つ」のか?
不安の正体が“未知”なら、理解と分散で扱える。不安の正体が“生活不安”なら、土台を先に厚くする。 - 判断が揺れたとき、私を戻すルールは何?
年1回か、乖離±5%か。ルールが“あなたを救う手すり”になる。
「国内50・海外50」は、正解を提示する比率ではありません。
迷いを減らし、判断を安定させ、続けるための設計図です。
数字が人生を支配し始めたとき、いったん数字を下ろして、設計図を見直す。
この順番だけは、崩さないほうがいい。



