成功者はネガティブ思考
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こんにちは、MSインテグラル・デザイン研究所の斉木です。

今回は法人の役員、従業員にとっての人的リスク、企業活動を取り巻くリスクとその対策などについて、業種別及び個別企業の状況に応じて適切なリスクマネジメントや保険設計の提案方法を解説しましょう。

生命保険の機能を利用して経営リスクを軽減する

経営者のリスクとは?

会社の経営者は、非常に多くの責任を担っています。

例えば、経営上の課題を解決するためには、利益を上げるための努力・工夫が必要であり、人材の採用・育成、金融機関や取引先との付き合い、場合によっては資金繰りなど、会社を継続していくための経営上の責任は広範囲にわたります。

また、会社が一つの人格(法人格)を持つ以上、その資産を継続していくためには、経営者自身の健康管理、後継者の育成、事業承継の責任なども背負っていくことになります。

そして、経営者の立場からくる責任だけではなく、家族や自分の老後・相続などといった個人のリスクについても責任があるでしょう。

したがって、病気で経営ができなくなったり、死亡して責任が果たせなくなったときの準備しておく必要があります。

こうした人的リスク対策を準備するのが生命保険の役割です。

経営者はさまざまなリスクを担っているにも関わらず、労災保険や社会保険、あるいは企業福祉制度などでカバーされる部分は、従業員に比較すると非常に薄いといえます。

このため、企業としては経営者のリスクを詳細に把握して、別途保障準備を行っておく必要があります。

経営者のリスク対策

経営者のリスク

経営者と従業員の保障の比較

社会保障の場合

厚生年金 健康保険 雇用保険 労災保険
経営者 加入できる 加入できる 加入できない 加入できない注1
従業員 加入できる 加入できる 加入できる 加入できる
注意点▼

注1:中小企業の経営者(事業主)でも労働保険事務組合に事務手続きを依頼していれば、特別加入が可能である。

注2:中小企業退職金共済の略称。単独では退職金制度を設けることが困難な中小企業が、経営者(事業主)の相互共済と国の援助によって退職金制度を設け、従業員の福祉の増進と雇用の安定を図ることを日的としている。

注3:小規模の企業経営者が廃業、退職した場合、その後の生活の安定または事業の再建などのために資金を準備しておく制度である。

遺族のための保障

経営者のリスク対策のうち、経営者の死亡時の遺族に対する保障対策を考えておく必要があります。

経営者が個人として、その遺族のために対策を考えることは当然ですが、経営者への遺族保障は、会社の事業承継の上からも大切です。

経営者の遺族のための保障

経営者の遺族のための保障死亡退職金

支給金額

中小企業の経営者の中には、公私の区別がなく、遺族に対して法人から少しでも多くの退職金を支払いたいとするケースも多い。

しかし、経営者や役員に支給する退職金(法人税では退職給与)のうち不相当に高額な金額は、損金算入を認められていません。(法人税法第34条)。

具体的には、退任役員が業務に従事した期間や退職の事情、会社への貢献度、その会社と同業種で同規模の会社における役員退職給与の支給状況と照らして高額すぎるとされた場合(法人税法施行令第70条)、その高額とされた部分の金額は損金算入を認められません。

退職の事情が業務上の災害・事故などによる死亡である場合は多めの支給が認められ、また会社への貢献度については、創業者であるか否か、在任中の売上・所得金額、事業規模の拡大などを勘案して多めの支給が認められる場合があります。

しかし、過大の判断は、支給金額だけではなく、その算出根拠の妥当性からも判断されています。

計算方法としては、一般的には以下の3方式が合理的な方法としてとられています。

①役員退任時の最終報酬月額を基礎として計算

退任時の最終報酬月額×通算役員在任年数(役員としての在任年数)×役位別功績倍率(社長、専務、常務、取締役等、役員の役位ごとに会社への貢献度を退職金に反映させるための係数)

【計算例】

退任時の最終報酬月額:200万円 通算役員在任年数:15年 役位別功績倍率:3

200万円×15年×3=9,000万円、この計算式に功労金を加算する場合もある。

(退任時の最終報酬月額×通算役員在任年数×役位別功績倍率)+功労金

②歴任した役員ごとの最終報酬月額を基礎として役位ごとに累計して計算

(役位別最終報酬月額×役位別在任年数×役位別功績倍率)の累計額

【計算例】

社長:最終報酬月額:200万円 在任年数:6年 役位別功績倍率:3

取締役: 最終報酬月額:150万円 在任年数:4年 役位別功績倍率:2

200万円×6年×3+150万円×4年×2=4,800万円

③役位別に定めた1年当たりの定額を在任年数で計算した金額を累計して計算

(役位別基準額×役位別在任年数)の累計額

【計算例】

社長:役位別基準額::200万円  在任年数:6年

取締役: 役位別基準額::150万円 在任年数:4年

200万円×6年+150万円×4年=1,800万円

功績倍率方式を使用する場合は、功績倍率をあらかじめ役位別に規程しておくことになります。

しかし、規程がない企業に対する国税不服審判所の判例では平均功績倍率方式がとられることが多いようです。

そのほかに1年当たり平均額法がとられているケースもあります。

a)平均功績倍率法

判定役員の最終報酬月額×勤続年数×平均功績倍率洋注1

注意点▼

注1:平均功績倍率=類似法人個々の功績倍率÷類似法人の数、類似法人個々の功績倍率=役員退職金の額÷(最終報酬月額×勤続年数)

b)1年当たり平均額法

1年当たりの平均額注1×勤続年数

注意点▼

注1:1年当たりの平均額=類似法人個々の1年当たりの退職金の合計額÷類似法人の数、類似法人個々の1年当たりの退職金の合計額=役員退職金の額÷その者の勤続年数

経営者・役員の退職金

経営者・役員の退職金は、その法的な位置づけが従業員の退職金とは全く異なります。

従業員の退職金が、就業規則・労働協約などによりあらかじめ支給要件を明確にした場合や、退職金の支払いや算定基準が慣行として存在する場合は、労働基準法第11条「賃金」(この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう)で定める賃金に該当するため、法的権利として認められます。

また、その規則・協約などについては、労働基準法第89条で常時10名以上の労働者を使用している使用者は労働基準監督局に届ける義務があります。

一方、経営者・役員の場合は、労働者ではないため労働基準法による法的権利は全くないのつまり退職金に関する規程は、取締役会の承認が必要となるが労働基準監督局へ届け出る義務はありません。

退任しても、当然に退職金を受け取ることができるわけではありません。

退職金が支払われるためには、株主総会の決議が必要であり(会社法第361条)、株主総会の議題として取り上げてもらうためには、取締役会で決議しなければなりません。

以上のように、従業員の退職金と経営者・役員の退職金とでは性格は全く異なっており、従業員が「退職金規程に書かれている退職金は必ず受け取ることができる」のに対し、役員は「退職金規程があっても必ず受け取ることができるわけではない」のです。

役員退職金規程の必要性

役員・経営者が退職金を受け取るためには、役員退職金規程を設けておく方が安心です。

その理由は、株主総会の決議方法にあるc株主総会で役員退職金支給の決議を行う場合、具体的に金額を決議する方法と、一定の要件を前提に取締役会に一任する方法があります。

しかし、株主総会で具体的な金額まで決議していては時間もかかり会議をいたずらに引き延ばす原因となるため、一般には一任決議を取る方法がとられています。

一任決議を取る場合は、その会社において一定の確立された支給基準が存在すること、その支給基準で計算できる金額は確定していること、その支給基準は株主に公開されているかまたは簡単に知ることができることなどが判例上では条件となっています。

一任決議で退職金金額を決定できる条件は、下記のとおりです。

  • その会社において一定の確立された支給基準が存在すること
  • その支給基準で計算できる金額は確定していること
  • その支給基準は株主に公開されているかまたは簡単に知ることができること

もちろん一定の確’された支給基準は必ずしも明文化されていなくてもよいが、支給基準を明文化しておくことによリー任決議での役員退職金支給が行われやすくなります。

このことから役員退職金規程を設けておいた方が安心といえます。

また、支払った企業がその役員退職金を損金計上するためには適正な算定基準に従って支払われた役員退職金であることが必要となり、この面でも役員退職金規程が必要となります。

弔慰金

弔慰金の金額

弔慰金とは、社員の死亡退職時に法人から遺族に支払われる「見舞金」です。

弔慰金限度額=最終報酬月額×36カ月(業務上死亡の場合)最終報酬月額×6カ月(業務外死亡の場合)この限度額は、「相続税基本通達3-20」で、相続税の計算上この金額までは死亡に伴ってその遺族が受け取った場合は、非課税として取り扱うことができる金額です。

このことから法人として死亡退職金と弔慰金を別支給することは、残された遺族の相続税納税額において大きなメリットが生まれます。

【計算例】

経営者の業務上の死亡、家族は配偶者と子ども2人

退職時の最終報酬月額:100万円 通算在任年数:15年 功績倍率:3

会社から遺族に対して1億円を支給することにした場合、遺族はみなし退職金として500万円に法定相続人の人数を乗じた金額が控除可能

  • 死亡退職金適正額=退任時の最終報酬月額×通算在任年数×功績倍率

4,500万円 = 100万円×15年×3

弔慰金適正額 =退任時の最終報酬月額×36カ月

3,600万円 = 100万円×36カ月

  • 死亡退職金と弔慰金を別支給する場合の税務

法人:1億円―(4,500万円+3,600万円)=1,900万円(1,900万円が損金算入できない)

個人:1億円―(1,500万円+3,600万円)=4,900万円(4,900万円が相続財産となる)

  • 弔慰金部分も死亡退職金として支給する場合

法人:1億円-4,500万円=5,500万円(5,500万円が損金算入できない)

個人:1億円-1,500万円=8,500万円(8,500万円が相続財産となる)

法人の取扱い

法人は、この限度額を弔慰金として退職金に上乗せして支給した方が、損金算入額が増える。遺族も相続税の課税対象額が減り、受取額が増加します。

法人が、この限度額を超えて支払った場合には、その超える金額については退職金として課税されます。

また、退職金が過大になるような場合でも、弔慰金と退職金として支払うことにより損金を増加させることができます。

なお、弔慰金については法人税法では規定が見当たりませんが、判例上はこの相続税法の非課税限度額までは損金算入が認められているため、一般的にこの金額までは損金算入を可能としています。

ただし、弔慰金を死亡退職金と別支給するためには弔慰金の支給規程が必要になります。

弔慰金規程として別途規程を作成することも可能ですが、実務的には役員退職金規程の中に退職慰労金とは別に弔慰金としての支給規程を設けておく場合が多いようです。

役員退職金・弔慰金規程

役員退職金・弔慰金規程の取扱い

「役員退職金・弔慰金規程」はあくまでも内規であり、労働基準監督局や税務署などに届けるものではありません。

規程は「株主総会」か「取締役会」のどちらかで作成し、承認を得ることになります。

その後の改定は、株主総会で作成・承認した場合は、株主総会で、取締役会の場合は、取締役会で行います。

規程の作成・承認手続きは、

「規定」の見本を提示⇒「取締役会」で「規定」の作成と承認⇒「規定」制定に関する取締役会の「議事録」作成と保管という手順です。

参考事例▼

取締役会議事録の例

取締役会議事録

  • 平成○〇年○○月○○日○○時○○分より、当会社の本店において、取締役会を開催した。
  • 出席取締役 ××名(全取締役 ××名)
  • 代表取締役 ○△ □◇は、選ばれて議長となり、下記の議案につき、可決確定の上、○○時○○分散会した。

【議案】

役員退職慰労金・弔慰金規程制定の件

上記の議案につき議長から制定の趣旨に関し説明があり、その内容について逐条的に審議したところ、出席した取締役全員の賛成をもって、これを可決しました。

なお、この規程は監査役についても適用されるため、本規程の制定について、監査役の同意を得ているとの議長からの報告もありました。

以上の決議を明確にするため当議事録を作り、出席取締役全員がこれに署名捺印。

平成○〇年○○月○○日

議長 代表取締役 印
出席取締役    印
同          印
同          印
同          印

役員退職金・弔慰金規程の内容

役員退職金・弔慰金規程として、一時金として退職金を支給する例です。

実際支払いが発生し、株主総会において取締役会に支給金額が一任された場合の取締役会の議事録についても例を挙げておきます。

参考事例▼

役員退職慰労金・弔慰金規程〔例〕

第1条(総則)

当社の取締役または監査役(以下役員という)が退職したとき、または役掌が大きく変更したときは、株主総会の決議を経て退職慰労金を支給することができます。

第2条(目的)

この規程は、役員の退職または法人税基本通達による分掌変更などの場合に、一時金及び分割払いによる支給を行い、もって役員在任期間中の功労に報い、退職後における役員または遺族の生活の安定に寄与することを目的とします。

第3条(適用の範囲)

この規程は、全役員に適用します。

ただし、次の各項いずれかに該当する場合には、役員退職慰労金を減額または支給しないことがあります。

  1. 退職に当たり、所定の手続き及び事務処理などをなさず、会社業務の運用に支障をきたす場合。
  2. 退職に当たり、会社の信用を傷つけ、または在任中知り得た会社の機密を漏らすことによって、会社に損害を与えるおそれのある場合.
  3. 在任中不者『合な行為があり、役員を解任された場合。
  4. その他前各項に準ずる行為があり、取締役会で減額ないし不支給を適当と認めた場合。

第4条(算定基準)

退職慰労金の算定は、退任時最終報Wll月額に役員在任年数と退任時役位別倍率を乗じた額とします。

ただし、算定額に万円未満の端数がある場合は万円単位に切り上げます。

(退任時役位別倍率)

退任時役位 倍率 退任時役位 倍率
取締役会長 常務取締役
取締役社長 常勤取締役
取締役副社長 使用人兼務取締役
専務取締役 監査役

第5条(在任期間)

役員在任期間は1カ年を単位とし、端数は月割りとするこただし、1カ月未満は1カ月に切りあげます。

第6条(功績加算)

在任中に特に功績顕著と認められる役員に対しては、第4条により算定される退職慰労金額にその30%を超えない額を限度として、加算することがあります。

第7条(弔慰金)

任期中に死亡したときは、次の金額を死亡退職金とは別に弔慰金として支給します。

  • 業務上の死亡の場合 …………………万円
  • 業務外の死亡の場合 …………………万円

第8条(支給時期)

退職慰労金・弔慰金の支給時期は原則として株主総会の決議または承認後 力月以内とします。

第9条(死亡役員に対する死亡退職金など)

  1. 死亡した役員に対する死亡退職金・弔慰金は遺族に支給する。
  2. 遺族とは配偶者を第一順位とし、配偶者のいない場合には子、父母、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。なお、該当者が複数いるときは代表者に対して支給するものとする。

第10条(生命保険契約の締結)

  1. 会社は退職慰労金・弔慰金の支払いに際し、一時的な資金負担を軽減するため生命保険会社との間で、役員を被保険者とする生命保険契約を締結する。
  2. 役員が退職したときは退職慰労金・弔慰金の全部または一部として、この保険契約上の名義を退職役員に変更の_L、保険証券を交付することがある。この場合、保険契約の評価額は解約返戻金とする。
  3. 新任の役員については、就任後速やかに加入手続きをとるものとする。

第11条(使用人兼務役員の取扱い)

この規程により支給する退職慰労金のなかには、使用人兼務役員に対し使用人として支給すべき退職給与金を含みません。

第12条(その他)

本規程に定めなき事項については、取締役会で協議決定する。

第13条(施行日)

この規程は、 年 月 日より施行し、施行後に退職する役員に対して適用する。

参考事例▼

【議事録の例】

第○○号議案 退任取締役及び退任監査役に対する退職慰労金贈呈の件議長は上記議案を上程し、本総会終結をもって任期満了により退任される取締役A氏及びB氏並びに監査役C氏に対し、その在任中の功労に報いるため、それぞれ当社所定の基準により、相当額の範囲内で、退職慰労金を贈呈したく、その具体的な金額、時期、方法については、退任取締役については取締役会に、また監査役については監査役の協議に一任されたい趣旨を述べて審議を求めたところ、(議決権行使書を含め)(委任状を含め)出席株主の議決権の過半数の賛成をもって第○○号議案は原案のとおり承認許可された。

退任取締役及び退任監査役の略歴は次のとおりです。

氏名 略  歴
□□ □□ 昭和〇年○月 当社取締役就任
昭和〇年○月 当社常務取締役就任
平成〇年○月 当社社長就任
平成〇年○月 当社取締役退任

事業承継資金

経営者が死亡した場合、法人の存続が危うい状態になることがあります。

法人として次の後継者に経営を譲った場合の対策については後述しますが、ここでは、経営者個人として事業承継するために法人ができる資金対策として事業保険を考えます。

相続対策自体は、経営者本人が個人として準備しておくことです。

また、前述の退職金や弔慰金も遺族の相続対策には充当できます。

しかし、それ以外に法人として事業承継を手助けすることができる方法が自社株の買い取り制度です。

自社株(金庫株)とは

会社の所有権を持っている経営者が所有している自社の株式を「自社株」といいます。

中小企業では会社の経営権を維持するために、株を所有しておくことが多いです。

会社の業績が良好であったり、土地などの合み資産(購入価格と時価との差額)が多いと、自社株(上場されていない非公開株式)の評価額が額面の20倍、100倍となるケースもまれではなく、経営者がその相続対策として、自社株対策を行うことが必要になります。

この自社株は、上場または店頭株式のように換金できることもありますが、中小企業の場合は、換金が難しいです。

この自社株を企業が保有する場合、金庫株と呼んでいます。

自社株評価の必要性

事業承継においては、社長として会社の経営権を承継するだけでなく、株式も承継し会社の所有権も承継する場合が多いです。

この承継の際に、自社株を評価(財産評価基本通達)して、相続税・贈与税が課税されます。

株式は額面金額とは関係なく会社の資産内容や業績などから評価されます。

中小企業では経営者は個人の財産のほとんどを投入し、役員報酬を低く抑えて資産内容の充実を図っている会社も多いです。

その結果会社は豊かだが、個人は貧弱といったケースも少なくありません。

会社設立が古く、駅前などの一等地に自社ビルを持っている会社、工場の敷地が交通の便利な所にあり敷地が広いなど、会社として不動産の合みを保有している会社は評価が高くなりがちです。

また、老舗の旅館、料亭などは、敷地は広く、一等地にあり、建物も建て替えなど行っておらず借入金も少ないために評価が高くなりがちです。

新興住宅地や最近道路整備が行われた地域に開発以前からあった工場も広い敷地を持っており、土地の価格が上がり、含みが多くなっていることが多いです。

自社株の評価方法

①株式の相場の有無による区分

相続または贈与により取得した株式を評価する場合は、上場及び店頭株式のように換金性があれば、①相続・贈与のあった日(課税時期)の最終価格、②課税時期の属する月以前3カ月の毎日の最終価格の月平均、のうち最も低い価格で評価を行います。

しかし、ほとんどの会社は非上場で相場価格がないため、取引相場のない株式として、会社規模や株主の区分によって評価方法が定められています。

a)原則的評価方式

  • 類似業種比準方式
    事業内容が類似する上場会社の業種の株式をベースに自社株を評価する方法で、類似業種の株価が上昇すれば株価も上がる。
  • 純資産価額方式
    所有する土地、建物、有価証券などの資産を相続税評価額で評価替えし、自社株を評価する方法で、地価の高騰や会社所有株式の株価上昇があると評価額も上昇する。
  • 上記2方式の併用方式

b)特例的評価方式

  • 配当還元価額方式
    株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法。

②株式取得者による区分

判定はまず、株式取得者で区分される。同族株主がいる会社の場合、株式取得者がその会社の経営に参画できるような同族株主の場合と単に経営とは関係なく配当を得るだけの株主の場合があるということです。

次に、会社の株式所有者の筆頭株主グループと判定対象の株主とその同族関係者が属するグループの場合の持ち株割合で判断しますが、一般的に中小企業の場合の社長は、同族株主にあたるケースが多いです。

同族株主の場合は一般的に原則的評価方式となり、そうでない場合は特例的評価方式としての配当還元価額方式となろます。

③会社規模による区分

次に、会社の規模による区分で行う。従業員数もしくは総資産額または取引額により「大会社」「中会社(大、中、小)」「小会社」に区分して評価します。

会社規模の区分

会社区分 評価方法
大会社 LとRの低い方
中会社 L×0.90+R×0.10とRの低い方
L×0.75+R×0.25とRの低い方
L×0.60+R×0.40とRの低い方
小会社 L×0.50+R×0.50とRの低い方

注:類似業種比準価額をL、純資産価額をRとする。

④特定の評価会社区分

会社を規模などにより区分するが、株式保有特定会社(株式の保有割合が高い)、土地保有特定会社(土地の保有割合が高い)、開業後3年未満の会社、類似業種比準方式の計算の2基準が0で計算できない会社などは純資産価額方式で行うこととされています。

⑤種類株式の評価

a)種類株式とは

株式は、保有する株数に応じて同一の権利内容を持つのが原則ですが、株主平等原則の例外として、一定の条件により法の定める権利内容の異なる株式、すなわち種類株式の発行を認めています(会社法第2条13)。

種類株式とは、利益・利息の配当、残余財産の分配、株式の買受け、利益による株式の消却、株主総会で議決権を行使できる事項、当該種類の株主総会での取締役・監査役の選任に関して株式の権利内容の異なる株式のことをいいます。

会社は数種の株式の内容及び数を定款で定めて授権することにより、数種の株式を発行することができます(会社法第108条)。

  • 優先株式
    利益配当や残余財産の分配のすべてまたは一部につき、他の種類の株式に対して優先的内容を持つ株式。
  • 劣後株式
    利益配当や残余財産の分配につき、他の種類の株式に対して劣後的内容を持つ株式。「普通株式に対する配当が○円未満のときには配当しない」などと規定されている株式。
  • 混合株式
    ある権利については優先的内容を持つが、他の点では劣後的内容を持つ株式をいう。
  • 議決権制限株式
    株主総会での議決権の全部または一部を制限する事を規定されている株式。

b)種類株式の評価

  • 配当優先の株式の評価

(類似業種比準方式により評価する場合)財産評価基本通達183の(1)に定める「一株当たりの配当金額」については、株式の種類ごとに計算して評価します。(純資産価額方式により評価する場合)

配当優先の有無にかかわらず、財産評価基本通達185の定めにより評価します。

  • 無議決権株式の評価一定の条件を満たす場合に限り、上記「配当優先の株式の評価」または原則的評価方法により評価した価格から、その価格に5%を乗じて計算した金額を控除した金額により評価するとともに、当該控除した金額を当該相続または遺贈により同族株主が取得した当該会社の議決権のある株式の価格に加算して申告することを選択することができることとする。

無議決権株式の評価額=A×0.95

議決権のある株式への加算額=(A×無議決権株式の株式総数×0.05)=X

議決権のある株式の評価額=(B×C+X)÷C

  • A:調整計算前の無議決権株式の一株当たりの評価額
  • B:調整計算前の議決権のある株式の一株当たりの評価額
  • C:議決権のある株式の株式総数
自社株の買取り

①自社株の買取りとは

後継者が社長から自社株を相続することにより、自社株の評価額が高く相続税も高額となるが、自社株は売却できない上、納付する現金もなく、遺産分割資金は必要となるなどといった自社株相続のトラブルが発生することがあります。

そこで、会社が自社株を買い取る対策が考えられます。

②自社株買取りの留意点

会社が自社株を買い取る際には、いくつかの留意点があります。

a)売買の価格

商法上、買取り価格の規定はなく、相続人と会社との話し合いで決められる。目安としては相続税の評価時点の価格がある。

b)手続き要件

特定の者からの買取りについては、株主総会を開き特別決議(発行済株式総数の過半数以上の株式を有する株主の出席により株主総会を開催し、その3分の2以上の同意を得て決議すること)により決定する必要がある。

③生命保険を活用した自社株の買取り

自社株の買取り資金として生命保険を活用する。保険金額は、買取り予定額の約16倍の金額を用意します。

法人税の負担がある場合には、法人税の実効税率を36%とすると、1.6倍の準備が必要となります。

後継者は、相続財産の自社株評価額を計算し、死亡退職金・弔慰金並びに個人で加入していた生命保険などを加え相続税を計算し、相続税の納付金額や、後継者以外の法定相続人の代償分割資金を決定します。

そのための資金として自社株を会社に売却し資金準備を行います。

なお、非上場株式の譲渡時は、20.315%課税になっています。

生命保険のプランニング

必要資金

死亡退職金、弔慰金、事業承継資金を準備する。

①死亡退職金

死亡退職金の税務上の適正額は、功績倍率方式で考えると、在任年数によって適正額が増加することになる。

  • 役員報酬月額×役員在任年数×功績倍率

②弔慰金

弔慰金は、死亡が業務上かどうかで適正金額が異なるため、提とする。

  • 役員報酬月額×36カ月

③事業承継資金(自社株の買い取り資金)

自社株の買い取り資金は、個人の相続税課税も考慮して、金額を決定する。

保険期間

あらかじめ勇退時期が決定されている場合は、在任期間の死亡保障があればよいので、勇退時期を満期とする保障でいいです。

ただし、同族会社や中小企業の場合では勇退時期は決まっていないケースが多く、そのため保険期間をある程度余裕を持って設定するようにします。

保険種類

経営者・役員が死亡することによって発生するリスクであるために、生命保険で対応するとしたら、貯蓄性の保険は必要なく保障性があればいいです。

実際の具体的な提案にあたっては、顧客の保険料等の負担能力と商品の内容、生命保険会社等の金融機関の信用リスク、生命保険商品ごとの特徴、保険業法における健全性維持のための規制の状況等を考慮することが必要です。

さらには、企業や経済の状況に応じて、数年ごとに見直す必要があります。

参考事例▼

ケーススタディ

  • X会社経営者A社長は、先祖から続いている清酒業を長男Bに引き継ぐことを考えている。
  • 長男Bは地元の銀行動務後、10年前からX社に勤務し現在は専務である。
  • Aさんが35年前に急逝した父から25歳で事業を引き継いだ際は、事業は個人事業として行っており、一人っ子であった自分が承継することで対処した。自分が事業を引き継いだあと、すぐに法人成りさせ、堅調に事業を拡大させている。
  • Aさんの家族は、配偶者と長男Bと長女Cの4人家族であり、長女は嫁いでおりX社の仕事には一切関係ない状況になっている。
  • 自分も60歳になり、退職時の準備や事業承継に生命保険の活用が有効であることを雑誌などで知り、既知のFPに相談することとした。

なお、現在加入の生命保険の内容は以下のとおりである。

保険内容

  • 契約20年前 契約者:×社 被保険者:A社長(40歳)死亡保険金受取人:X社
  • 保険商品:定期保険(長期平準定期保険に該当)
  • 死亡保障 1億円 保険料:200万円 70歳時解約返戻金:5500万円

①面談の結果わかったAさんの要望

  • 事業については、配偶者とも相談し長男Bにすべて継がせたい
  • 長女Cに対しては、長男ともめないようにしっかりと財産も残したい。
  • 現在の×社の状況は収益も順調に上がっており、黒字。
  • 個人の財産としては主には、自宅と金融資産、自社株式。

②FPの提案

X社の自社株式の評価を行い、この自社株式の評価を引き下げることが必要になります。

自社株式では市場の株式価格の上昇の影響をうけ、自社株式評価が高くなっていることも予想されます。

そこで、その対策として利益の引き下げをひとつの目的として損金算入ができる生命保険の活用を勧めます。

また、損金算入しながら貯蓄性の高い商品を活用して、退職金も準備することを勧めます。

退職金適正額 報酬月額150万円×在任年数45年×役位別係数23=約1.55億円現在用意できている5500万円では退職慰労金が不足しているので定年の時期を10年後として約1億円の解約返戻金の準備ができる生命保険を用意します。

逓増定期保険の勧め

  • 契約者:X社 被保険者:A社長(60歳)死亡保険金受取人:×社
  • 保険商品:逓増定期保険(1/2損金算入タイプに該当)
  • 死亡保障:1億円 保険料:1000万円 70歳時解約返戻金19500万円

逓増定期保険。長期平準定期保険ともに、70歳時に解約するのではなく、その時点で払済保険として終身保険にすることで、一生涯の保障に変更します。

契約者・死亡保険金受取人を変更

契約者:A社長 被保険者:A社長(60歳)死亡保険金受取人:長男B

死亡保険金受取人を長男Bにすることで、事業承継のために会社の株式などを多く相続する長男Bさんから長女Cさんに対して代償交付全としてこの保険全を活用します。

また個人の財産については、相続税の軽減も考え、生命保険の非課税枠の活用の他、子ども・孫などへの贈与についても考慮を勧めます。

まとめ▼

事業承継については、相続税負担の軽減のためと、残された遺族間の争いが発生しないために準備をしておくことが必要になります。

自社株式の評価については、こまめに評価を行いつつ相続が発生しても株式評価が高くなることがないように、類似業種比準方式の評価を引き下げるべく利益を抑えておくことが必要になります。

そのためには損金算入が可能な生命保険の活用が有効になります。

逓増定期保険を活用して自社株評価を引き下げながら利益繰り延べし、退職慰労金として活用することが1つの方策となります。

もちろん勇退時期までに死亡した場合には、死亡保険金を活用して退職慰労金・弔慰金にも活用可能です。

退職時には退職慰労金として受け取ることで退職所得となるので、所得税の軽減も図ることができます。

またこの保険を払済にして終身保険に変更することで(商品によってできない場合もあるので注意が必要)個人で準備すべき代償交付金も用意できます。

生命保険を上手に活用することは事業承継には有効な手段であるといえます。

ではまた。

 

日本FP協会 CFP教育カリキュラムに基づき作成しています。

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