
ライフプランとライフスタイル、ライフイベントの関係
前回の記事では、2,000件を超える実例をもとに、ライフプランの本質的な考え方を解説しました。
今回は、「ライフプランはなぜ必要なのか」という根本的な問いから、ライフイベントやライフスタイルとの関係、さらに実際の作成手順とファイナンシャルゴールの設定方法までを体系的に解説していきます。
なぜライフプランが必要なのか?
人生には、結婚、出産、住宅購入、転職、退職といったさまざまなライフイベントがあります。しかし、これらは順番通りにやってくるわけではなく、複数の出来事が同時並行で起きることも少なくありません。
たとえば、住宅ローンの返済と子どもの教育費のピークが重なると、資金繰りが厳しくなるケースもあります。さらに、病気や事故、リストラといった予期せぬ出来事が起これば、経済的なダメージだけでなく、心理的な不安も一気に高まります。
こうしたリスクや希望を前提にして、「いつ」「どのようなライフイベントが起こるか」「そのとき何が必要か」を見える化し、長期的な視点で資源(お金・時間・情報・人脈)を管理する。それがライフプランの本来の役割です。
ライフスタイルとの関係 ― 価値観の整理
ライフプランは単なるお金の計画ではなく、「どう生きたいか」というライフスタイルの選択でもあります。以下の3つの視点から、自分にとっての価値ある生活を棚卸ししてみましょう。
- 目に見えないけれど重要なもの(健康・家庭・友情・地域とのつながり)
- 経済的基盤に関わるもの(職業・収入・能力・資格)
- ある程度の支出を伴うもの(住居・車・教育・趣味・レジャーなど)
これらの価値観は、「目標の設定」「資産の管理」「リスクへの対応」という3つの切り口に整理することで、具体的なライフプランへと落とし込むことができます。
例:ある職業に就くためのライフプラン
- 目標設定:◯◯という職業に就く
- 資産の管理:資格取得のための学費・生活費の確保、勉強時間の確保
- リスク対応:不合格だった場合の再受験計画や他業種への選択肢
ライフイベント表の作成手順
まず、今後の人生で起こると予想されるイベントと、それにかかる金額を一覧にまとめます。
- 縦軸に「年(西暦/元号)」を記入
- 「家族構成」と年齢(年度末時点)を記入
- 予想されるライフイベント(結婚・出産・転職・住宅購入など)を記入
- それぞれに必要となる資金を見積もって記入
これにより、いつ・どれくらいの資金が必要かが明確になります。
ファイナンシャルゴールを設定する
ライフイベント表をもとに、経済的な目標(ファイナンシャルゴール)を具体的に設定します。
具体例:
- 35歳までにマイホームを購入する
- 頭金として500万円を用意する
- 資格取得のために30万円を準備する
- 家族で3年に一度、国内旅行に行く
5WHの視点で目標を明確化
- Why:なぜその目標を実現したいのか(動機)
- Who:誰が中心となって実現するのか(主体)
- When:いつまでに達成したいのか(期限)
- Where:どこで実現するのか(場所)
- What:何を具体的に実現するのか(目標内容)
- How:どのくらいの金額や時間が必要なのか(手段・数値)
キャッシュフロー表の作成手順
収入欄の記入
- 給与:税金・社会保険料を差し引いた可処分所得
- 自営業:生活費に充てられる事業収入
支出欄の記入
- 基本生活費(食費・光熱費・通信費など)
- 住居費(家賃・住宅ローン)
- 教育費・保険料・一時的支出(旅行・買い替え等)
年間収支と貯蓄残高の確認
- 年ごとの収入・支出を記入
- 年間収支 = 収入 - 支出
- 貯蓄残高 = 前年の貯蓄残高 + 年間収支
赤字が連続する年がある場合は、支出の見直しや目標の延期、収入の増加策を講じます。
キャッシュフロー表(サンプル)
年 | 年齢 | 主なライフイベント | 収入(万円) | 支出(万円) | 年間収支(万円) | 貯蓄残高(万円) |
---|---|---|---|---|---|---|
2025 | 35 | 第一子誕生 | 600 | 500 | +100 | 300 |
2026 | 36 | 育休・収入減 | 450 | 520 | -70 | 230 |
2027 | 37 | 復職・保育料開始 | 580 | 530 | +50 | 280 |
バランスシートで資産状況を可視化する
最後に、家計全体の健全性を把握するために、バランスシート(資産・負債の一覧)を作成します。
- 資産:預貯金・有価証券・不動産・保険解約返戻金など
- 負債:住宅ローン・自動車ローン・クレジットカード残高など
資産と負債のバランスを確認することで、必要な保障の見直しや資産運用の戦略も検討しやすくなります。
家計のバランスシート(サンプル)
資産 | 負債 | ||
---|---|---|---|
預貯金 | 300万円 | 住宅ローン残高 | 2,500万円 |
有価証券(株・投信) | 200万円 | 自動車ローン | 100万円 |
保険の解約返戻金 | 150万円 | クレジット残高 | 20万円 |
その他資産 | 50万円 | その他負債 | 0万円 |
資産合計 | 700万円 | 負債合計 | 2,620万円 |
純資産(資産 - 負債) | ▲1,920万円 |
まとめ
ライフプランとは、単なる「お金の計画」ではなく、自分らしい生き方を設計するための土台です。価値観の整理から始まり、目標の設定、リスク対応、資産管理、そしてシミュレーションまでを一貫して行うことが、安心と納得感のある未来につながります。