
夫婦の間に訪れる問題の中でも、セックスレスはとりわけ繊細なテーマです。
言葉にしづらい沈黙の時間が長く続くと、互いの心の距離も静かに広がっていく──。
今回は、この問題が法的にどのように扱われるのか、そしてその背景にある「心の痛み」と「現実」を見つめ直していきます。
セックスレスは慰謝料請求の対象になるのか?
一般的に、セックスレスは結婚生活における問題のひとつとされています。
しかし意外にも、この状態が慰謝料請求の対象となることがあります。
一方の配偶者が長期間にわたって性交渉を拒み、相手が深い精神的苦痛を受けたと認められる場合、
それは婚姻関係の破綻原因として法的に扱われることがあるのです。
もっとも、すべてのケースが慰謝料請求に該当するわけではありません。
例えば、医学的理由(EDなど)や身体的疾患によって性的関係が難しい場合は、
故意による拒絶と見なされにくく、慰謝料の請求が認められないこともあります。
離婚理由としてのセックスレス
セックスレスは離婚原因として認められる可能性もあります。
一方の配偶者が離婚を拒んでいても、長期のセックスレスが「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認定されれば、
家庭裁判所での調停や裁判を通じて離婚が成立する場合があります。
実務上、セックスレスが3年以上続いている、あるいは結婚当初から性的関係がほとんどなかった場合など、
夫婦関係の実態が失われていると判断されるケースでは、離婚が認められる傾向にあります。
慰謝料の相場と判断の背景
セックスレスを理由とする慰謝料の相場は、おおむね100万円前後とされています。
ただし、金額は状況により大きく異なります。
長期間にわたる拒絶、精神的苦痛の程度、不貞行為の有無、婚姻期間など、
関係の深さと破綻の経緯が重要な判断基準となります。
たとえ金額が数字として示されても、それは「痛みの価格」ではありません。
法律が扱うのは金銭ですが、そこには夫婦が共有してきた時間、沈黙、思いやりの欠如といった
感情の層の厚みが折り重なっています。
その意味で、慰謝料とは「関係の終わりを受け止めるための区切り」としての役割も果たすのです。
現実を整えながら、自分を取り戻す
セックスレスという問題は、単なる「行為の有無」ではなく、
互いの信頼や尊重のあり方に深く関わっています。
法律的な対応を考える前に、まずは自分の感情を整理し、
「何に傷つき」「何を望んでいるのか」を見つめ直すことが大切です。
そして、必要に応じて専門家に相談しながら、現実的な選択を重ねていく。
感情の回復と制度の理解、その両輪がそろって初めて、
人生を立て直す確かな道筋が見えてきます。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律上の助言を行うものではありません。
個別の状況によって判断や対応は異なります。具体的な問題については、弁護士などの専門家にご相談ください。
感情と現実を整理しながら、自分らしい再出発の形を一緒に考えていきましょう。



