不動産運用設計2

不動産投資とファイナンシャルプランニング、シリーズ№3

ファイナンシャルプランを考える上で重要なカテゴリーである、不動産とその運用、その特徴とメリット・デメリットについては前回解説した。

今回は不動産に投資する際の投資分析のポイントと税金や収益計画のポイントについて少々解説していこう。

  • 投資判断はNPV(正味現在価値)、IRR(内部収益率)を用いる
  • 不動産の運用収益に係る税金や内容について知る
  • 総収入の金額と計上時期について知る
  • 減価償却と必要経費の内容について知る
  • 賃貸に関する税金の問題点を知る
  • 事業収支計画の考え方を知る
  • 投資判断は会計上ではなく、経済的な利回りで決める
  • TMK、REATの概要を把握し、証券化不動産の特性を知る

前述のとおり不動産の投資対象は様々で、大きくわけて現物と証券化したものに分類されます。

投資判断の指標として用いられる指標の一つにNPV(正味現在価値)があります。

NPVを用いた投資判断基準は以下のとおりになります。

  • NPV>0 その投資は承認される
  • NPV<0 その投資は承認されない
  • NPV=0 その投資は採算上にある

(※NPVとは、キャッシュインフローの現在価値合計-キャッシュアウトフローの現在価値)

この場合注意しなければならないことは、例えNPV=0の場合であってもその投資は承認されるが、NPV<0つまりNPVが負となる投資は承認しないということです。

逆にNPVが負でなければそれは収益をもたらしてくれるということを意味しています。

複数の案件のNPVがプラスになる場合は、最大のNPVをもたらす案件を選択することが重要です。

例えば、ワンルームマンションへの投資を例にとってNPVの計算をしてみましょう。

  • 物件価格:24000千円
  • 取得費用:1200千円
  • 賃料収入:1920千円(家賃16万×12:10年間一定とする)
  • 営業費用:192千円
  • 正味営業収益(NOI):1728千円(賃料収入1920-営業費用192)
  • 10年後の物件正味売却価格:19600千円(10年後に売却する想定)

キャッシュインフローは10年間で36,880千円-キャッシュアウトフロー24,000千円になりますが、ここで間違えてはいけないのがキャッシュインフローの計算です。

キャッシュインフローはすべて将来価値なので、現在価値に換算し直す必要があります。

つまり割引率を適用して導き出された数字を用いなければいけないということです。

現在価値、将来価値、そして割引率の関係性は以下のとおりです。

  • 現在価値=将来価値×複利原価率
  • 複利現価率=1÷(1+割引率)期間

例えば割引率を年率5%とすると1年後の複利現価率は0.9523806952・・・・

2年後だと0.907029478・・・・・このように計算していくと10年後のキャッシュインフローは約25,380千円、キャッシュアウトフローは24,000千円ですからNPVは1,380千円ということになりNPV>0という結果になるのでこのワンルームマンションは投資できるということになります。

不動産の収益に係る税金

不動産の運用収益は賃料が一般的ですが、法人の場合は益金として所得税、住民税、事業税が課されます。

個人の場合は必要経費を控除した上で所得税、住民税が課せられるほか、それが事業規模である場合は事業税も課されます。

また住宅以外の家賃収入は消費税及び地方消費税の課税対象になります。

そして不動産所得は事業所得や給与所得と合計し総所得なりあす。

不動産所得が赤字の場合は他の黒字所得と損益通算が可能です。

個人の所得における不動産所得とは貸付、不動産の上に存在する権利の貸付や設定、船舶、航空機など資産の貸付によるものですが、資産の貸付のうちで区分の難しいものがあります。

例えば商品ケース貸し、ネオンサインや広告看板の使用料の収入は何だと思いますか?

実はこれらも不動産所得なんです。

不動産業者の棚卸資産の一時貸付によるものや事業主が従業員に貸しつけた寄宿舎の賃料、下宿などのように食事供給を伴う場合はどうでしょうか?

これは事業所得に該当します。

敷金の運用益は利子所得になり、権利の貸付、設定の対価として受け取った一時金は不動産所得または譲渡所得に該当します。

このように一口に所得と言っても色々と種類があるわけです。

不動産所得は損益通算ができるため赤字の場合は税額を少なくすることが出来ますが、幾つかの規制があります。

一つ目は損失金額が土地を取得するための借入金利子の額より多い場合は土地代の利子分は損益通算できません。

二つ目は、損失金額より、土地代利子分のほうが多い場合は損益通算が出来ません。

このように土地代利子分の損益通算が規制されているため、実際に損益通算するためには土地代利子分を確定するため土地代と建物代を区分する必要があります。

分譲マンションの場合は消費税額から建物代を割り出すことが出来ます。

土地建物を一括して借入により取得した場合、通常は区分されていませんので、その場合は借入金をまず建物代に充当し、残りを土地代に充当することが認められています。

減価償却

減価償却は支出と連動するものではないため、収支計画や税務対策などの重要なポイントとなっています。

減価償却資産の償却方法には、「定額法」と「定率法」の2つがあります。

どちら方法を選択するかを確定申告書の提出期限までに所轄の税務署に届け出なければなりません。

届け出がない場合、個人の場合は、定額法、法人の場合は定率法になります。

ただし平成10年4月1日以後に取得した建物は定額法に限定されています。

もし、現時点で採用している方法を変更するときには、個人の場合はその年の3月15日まで、法人の場合は、事業年度の開始の日の前日までに、変更の申請書を提出して、所轄税務署の承認を得なければなりません。

ただし、相当期間(3年)を経過していない場合や所得計算が適正に行われ難いと判断された場合には償却方法の変更が認められないこともあります。

定額法:取得価格×定額法の消去率=減価償却額

定率法:(取得価額-既償却額)×定率法の償却率=減価償却額

年又は事業年度の途中の場合は上記算式によっての金額の12分の該当月数になります。

耐用年数については国税庁のサイトを御覧ください。中古物件の場合は合理的に見積もった耐用年数によりますが、見積もりが困難なときは、簡便法による耐用年数が認められています。

簡便法では、法定耐用年数を全部経過したものは、(法定耐用年数)×20/100、一部残っている場合は、(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数)×20/100という計算式になります。

またサービス付き高齢者向け住宅を新築又は取得した場合は、賃貸した日から5年間、通常の減価償却費の割増償却が認められます。

耐用年数35年未満のものは28%、35年以上のものは40%ということになっております。(国土交通省参考資料

その他

不動産の賃貸等の業務をはじめて行う場合は、業務開始までの期間に支払った利子は、必要経費ではなく、建物等の取得価格に算入し、その建物の減価償却の対象とされます。

そして業務開始後の利子に関しては、全額必要経費に算入します。

税金

支払った税金のうち必要経費となるものは、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、事業税、利子税です。

地代・家賃

借地上の建物を賃貸したり、建物を転貸しする場合に支払った地代・家賃は、必要経費になります。

ただし、生計を共にする親族に支払う地代・家賃は必要経費になりません。

法人が支払った賃貸したは損金になります。

給料など

管理などに従事したものに支払った給料などは必要経費になります。

ただし生計を共にする親族に支払う給料などは貸付が事業として行われている場合に限り必要経費になります。

立ち退き料

原則として必要経費になります。

ただし、不動産譲渡に際しての立ち退き料は、譲渡費用になり、取得の時に支払う立ち退き料は不動産取得価額となります。

その他

火災保険料、修繕費、維持管理費、広告宣伝費などがあります。

大規模な修繕は減きゃ償却の対象となり、必要経費や損金にはなりません。

事業的規模での貸付

この場合、生計を一にする親族に対する給料も必要経費になる他、固定資産の損失も全額必要経費として認められます。

事業的規模でない場合は、損失額控除前の不動産所得の金額までとされています。

また事業規模に該当する場合は、青色申告特別控除(65万)も受けられるようになります。

事業的規模かどうかの実質基準は、建物・土地ともに収入状況、管理状況によって判断されます。

形式基準としては、建物場合、「5棟10室」基準によって判断されます。

土地の場合の形式基準は建物の貸付に相当する土地の貸付件数を「概ね5」として判断します。

例えば、貸室8と貸地10件を有する場合、8室+10件÷5=10室という解釈になります。

平均課税

変動所得や臨時所得がある人は、平均課税にによって計算することになっています。

臨時所得の定義は3年以上の期間、他人に貸し付けることにより、一時に受け取る権利金等で、使用料年額の2倍以上のものです。詳細は国税庁サイトをご参照ください

事業税

事業税とは事業を行う法人または、第一種・第二種、または第三種事業を行う個人を納税義務者とする都道府県税。

法人の所得は全て事業税の対象となります。

個人事業税の課税対象となる不動産貸付業者または駐車場は、貸付規模が基準となります。

詳細はタックスプランニングをご参照ください。

税率

個人事業税において、不動産貸付・駐車場業、不動産売買業は第一種事業に分類され、標準税理は5%です。

ただし、課税標準の計算において事業所得から事業主控除の290万円を控除することが出来ます。

これに対し法人事業の税率は業種別に分類されていません。

詳細はタックスプランニングをご参照ください。

不動産事業、収支計画の立て方

採算性の判定

不動産事業の意思決定において、採算性の判定は極めて重要です。

ではどのようにして、採算性を判定すればいいのでしょうか?

この採算性を判定するためには、まず事業収支計画が必要になってきます。

採算性は、

  1. 投下資本
  2. 収益及び費用のバランス

上記によって決定されるので、まず、これらを推定するための条件を整えること、が始めの一歩ということになります。

  • 投下資本:事業を開始する際の必要資金とその調達方法の検討。
  • 収益と費用のバランス:毎期の収支予測であり、事業収支計画で最も重要。

収支と所得は概念が違う

収益と費用、つまり、収支はよく所得と勘違いされることがありますが、両者はまったく異質の概念です。

収支とは所謂キャッシュフローのことで、現金主義を基本とし、収入-支出で計算されます。

これに対して所得は、発生主義を基本とし、収入-必要経費で計算されます。

法人税法上は、益金-損金という形式になります。

そして所得が発生すれば、税金も発生します。

収支を予測するにあたって、支払うべき税金も支出として予測しておかないと資金ショートが起こる場合もあります。

どういうことかというと、収支計画を作成する時の原理は、

  1. 税法の規定に基づいて所得計算を行う。
  2. 所得に対する税額計算を行う。
  3. 納税額を含めた収支計算を行う。

という手順になるということです。

所得計算の算式と収支計算の算式の違い

所得計算上の収入金額
  • 家賃や地代収入。
  • 返済しなくていい一時金(礼金や権利金)。
  • 返済しなくてはいけない一時金(敷金や保証金)のうち返済不要が確定した部分。
所得計算上の必要経費
  • 支出を伴うもの
  • 支出を伴わないもの(減価償却費など)
収支計算上の収入金額
  • 家賃や地代収入。
  • 返済しなくていい一時金(礼金や権利金)。
  • 建設資金に充当する借入金額
  • 返済を要する一時金

※一時金についてはその運用益(返済要)や運用益及び償却額(返済不要)を収入金額とする場合もある。

収支計算上の支出金額
  • 支出を伴うもの
  • 支出を伴わないもの(減価償却費など)
  • 借入金の元金返済額
  • 一時金の返済額

つまり一時金の特別な取り扱いを除けば、税引前の所得計算と収支計算の関係は

  • 不動産所得(所得計算)+減価償却費-借入金元金返済額=余剰金(収支計算)。
  • 所得に対する税金は所得計算上の必要経費にはならないが、収支計算上は支出金額。

収支計画の作成

事業を開始するにあたって必要な資金総額を適切に見積もるために初期投資計画を作成します。

例えば、

不動産・初期投資計画

初期調達計画

初期投資計画により、総事業費を把握したら調達方法を検討する

  • 自己資金:事業主の手持ち資金(割合が高いほど資金繰りが容易)
  • 敷金・保証金:事業費に充当することで、借入金の負担を軽減
  • 借入金:上記の調達できない部分を調達
収入の項目

1,経営的収入

現実の収入を伴うもので、所得計算と収支計算の両方に関係するもの。

家賃収入

賃料設定が適正に行われていることが重要

賃料設定方法には、事業による期待利回りを元に算定する方法もありますが、実際には需給バランスによって定まってきます。

従って、実際には、近隣類似施設の賃貸条件などを調査して当該物件の賃料を算出、設定しています。

この近隣相場には募集相場と成約相場がありますが、参考にするのは当然成約相場です。

駐車場収入

建物に駐車場を併設すれば、駐車場収入の確保ができる他に賃貸条件を有利にすることが出来ます。

礼金・更新料

礼金は返金を要しないものなので、賃料の前払い的意味を有します。

しかし、最近では礼金を取らないケースが増えてきています。

更新料は賃貸契約の更新に伴って賃借人から支払われるお金ですが、地域によっては授受しないところもあります。

受取管理費

管理費又は共栄費などの名目で建物を維持管理していくために賃借人から受け取るお金です。

2,保証金の償却など

保証金の一部を返却しない取り決めをする場合に、それを収益計上することを言います。

収益計上時期は、所得税基本通達や法人税基本通達に規定されています。

保証金の償却は、収益計上時期において「収入を伴わない収益」となる場合があります。

支出(経費)の項目

1,経営的支出

事業を継続していく上で現実に支出される経費で、所得計算と収支計算の両方に関係しています。

土地公租公課

  • 土地に係る固定資産税や都市計画税のこと。
  • 住宅用地の課税標準の特例や負担調整措置がある。

建物公租公課

  • 建物に係る固定資産税や都市計画税のこと。
  • 一定の住宅新築家屋等の固定資産税に減額の特例がある・

火災保険料

建物に対する火災保険料

維持修繕費

経済的価値を適正に維持していくための費用。

収支計画上は一定額を計上しておくのが一般的。

ただし、資本的支出となるものは、建物等の取得価額に加算して減価償却の対象とされます。

支払い管理費

建物の管理や共用部分の水道光熱費。

支払利息

事業資金を借り入れた場合に発生します。

その他

地代などの支払いがある場合

2,減価償却費

資産が有効に事業の用に供される期間の費用として按分し、税法上減価償却費として計上します。

減価償却費は支出を伴わない費用なので所得計算のみに関係してきます。

3,借入金元金返済額

借入金の元金返済部分は必要経費とすることは出来ません。

費用にならない支出なので、収支計算のみに関係してきます。

収支計画のチェックポイント

作成した事業計画をどう読み取っていくことができるか、それが重要です。

事業計画の設定条件

初期投資計画や資金調達計画にある程度の余裕を持たせているでしょうか?

つまり、収入項目や支出項目は妥当な条件で設定されているかどうか、ということです。

これらの項目は時間の経過とともに変動していくものなので、変動率についてもある程度考慮しておく必要があります。

不動産所得【償却後利益】

個人の不動産賃貸による所得は不動産所得に区分されます。

不動産所得がマイナスの場合は他の所得との損益通算によって節税効果が生まれます。

しかし、プラスに転じた時は、あらたな税額が発生することになります。

これは、収支計算とは別なので、所得がマイナスでも資金がショートするわけではありませんが、長期に渡ってマイナスが続いた場合、事業資金の回収が困難になります。

余剰金

最終的に手元に残る金額のことです。

本来であれば税引き後の金額が望ましいのですが、不動産所得は総合課税扱いになっているため、他の所得金額によって適用税率が変わることや税制改正によって税率が改定される可能性があることなどから、税引前でチェックする場合もあります。

もしも、余剰金がマイナスになった場合には、資金ショートを回避するために、他の所得や短期借り入れなどによってカバーする必要があります。

さいごに

事業収支の改善策

一般的に事業の成否や採算性は3つの要素の組み合わせで決まります。

  1. 投下資本(事業に必要な資金)
  2. 収益(収益予想)
  3. 資本コスト(調達資金に係るコスト)

つまり、事業収支を改善するためには投下資本の引き下げ、収益の引き上げ、資本コストの引き下げを行う必要があります。

これを不動産事業にあてはめると、1、土地代や建築費の引き下げ、2、賃料の引き上げ、3、借入金利の引き下げということになります。

  1. 仕様の適正確認、ローコスト工法の採用を検討。
  2. ターゲットの見直し、付加価値の検討。
  3. 自己資金の追加、低利の融資活用を検討。

などを単独或いは総合的に検討する必要があります。

ではまた。

この投稿はNPO法人日本FP協会CFPカリキュラムに沿って記述しています。

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