不動産運用設計

不動産とファイナンシャルプランニング№2

今回は不動産の特徴と不動産を活用する上でのメリット、デメリットについて解説していこう。

不動産の特徴を掴んで上手に活用する

不動産の運用をするに当たってはその特性を理解し、関連する知識を身につけていくことが求められる。

  • 不動産は預貯金や有価証券とは異なり、不動産独自の特性を持っている。
  • 不動産は個別性の強い資産、探せば類似したものはあるが、まったく同じというものは存在しない。
  • 時間の経過とともに周辺の環境も変化していくので、必ず現地に赴いて調査することが必要。

土地の意味と市場構造

  • 都市として定められているのは国土の27%
  • 宅地として利用できる土地はわずか3.8%
  • そこに69%の人口が集中している。

これが日本の宅地の現状。

したがって、土地の私的所有権は認められているが、一方では国民共通の貴重な資産としての側面がある。

  • 国土利用計画法・都市計画法・建築基準法などによって、様々な規制がある。
  • 自分の所有地だからと云って自由に取引や利用が出来るわけではない。

権利関係が複雑な一物多価の資産

そのためこれらの関連した法律による規制内容を把握しておく必要もある。

そして不動産のもう1つの特長は複雑な権利関係が成立するというところにある。

例えば、Aが所有する土地にBの借地権が設定され、その借地上のBが所有する建物にCの賃借権とDの抵当権が設定される。

このように、複数の権利を同時に存在させることができてしまう。

これは特殊なケースではなく、ごく当たり前に行われていること。

不動産はその権利関係を把握することが極めて重要

  • 不動産の取引は契約によって行われるのが一般的、したがって権利法規等の知識も必要。
  • 不動産の価格は高額になるため売買等においてその価格が適正であるのかが重要。

しかし、不動産は個別性が強い資産なので、その適正を把握することはとても難しい。

計算の基礎となる価格がいくつもある

  • 不動産は取得・保有・譲渡等さまざまな局面で税金が課される。
  • 計算の基礎となる価格にもいくつかの種類がある。

したがって、不動産価格についての基礎知識も必要になる。

不動産の影響力

個人の資産形成を考えた場合、不動産はとても重要な役割を果たすとともに、日本経済にも大きな影響を及ぼしている。

日本経済への影響

例えば高額な買い物であるマイホームが欲しいとなれば、そのために一生懸命に働いて得たお金を貯金したり、運用したりする。

そしてマイホーム購入時には多額の借金をして長い期間かけて利息も含めて返済していく。

そのことによって経済が活性化する可能性が生まれる。

個人の資産形成

また不動産は投資対象としてもよく利用されている。

  • 賃料収入を得て資産を増やす。
  • ワンルームマンションやアパートに直接投資する。
  • 不動産を証券化したREITなどに投資する。

このように不動産投資は資産形成の手段として多く広い範囲で用いられている。

特に日本の資産家と言われる人達は、不動産を資産形成の中心にしている。

平成25年度の国税庁統計によると、相続税が課税された資産の内訳をみてみると不動産が5割近くを占めている。

※相続税の納付額、相続の件数とも3大都市圏が圧倒的多数

ちょっとだけブレイクスルー

不動産に限った事ではないが、投資・資産運用の基本は、収益性・安全性・流動性の3つの要素に優れた資産で運用するのがベストと言われている。

しかし、この3つを兼ね備えたもは現時点においてない。これからも恐らく出てこない。

したがって、複数の資産に分散して運用する方法がスタンダードになってくる。

これまで財産三分法といわれる運用法がポートフォリオの基本とされ、貯金・有価証券・不動産に適性配分することが重要とされてきた。

しかし、貯金と有価証券は上位概念においては同じカテゴリー。つまりペーパーアセットだ。

従ってこの運用法だとペーパーアセットと不動産に配分するということになる。

そもそもこの考え方自体が分散投資になっていない。

重要なビジネスのカテゴリーが抜け落ちているからだ。

世界の名だたる資産家は例外なくビジネスを所有している。

  1. ビジネスを行い
  2. キャッシュフローを生み出し
  3. そのキャッシュフローをビジネスに投資し
  4. またキャッシュフローを増やす

世界の名だたる資産家はファイナンシャルに強いという、共通した特長がある。

残念ながら日本の資産家はファイナンシャルに疎い方が多い。その理由は、

  • 資産の5割が不動産
  • ファイナンシャルについて教育を受けていない
  • ビジネスができない

その他諸々の理由については他の投稿も是非ご覧いただきたい。

話を不動産に戻す。

不動産運用のメリット、デメリット

不動産の収益はインカムゲインとキャピタルゲインの2つがある。

不動産運用のメリット

土地神話の崩壊によって収益性の判断が難しくなったとはいえ不動産には次の強みがある。

  • 価格や賃料は物価との連動性があるのでインフレに対する回避性が高い
  • 実物資産であるため、それ自体の利用価値がある
  • 登記による公示制度が整備されていることなどから、比較的安全性も高いといえる

不動産運用のデメリット

一方デメリットとしては、

流動性に乏しい

例えば、実際に換金する場合は、不動産業者に仲介を依頼して売買を行うため、換金までに数ヶ月かかるといったことが通例。

転用コストが莫大

青空駐車場のような暫定的な土地の利用を除けば、恒久的な建物を建てて行う不動産事業は、多額の投資を必要する。

その回収には長期間を要し、建物の構造や用途によっては数十年に及ぶ事業になることも有る。

目先の収益性だけではなく、長期展望にたった見極めが必要だ。

不動産の場合は他の投資商品と比較して転用コストは莫大なものになる。

例えばオフィスビルを建て失敗したからマンションに建て替えようとしても多額の資金を必要とするため現実的には難しい。

運用の方向性を決定するに当たっては、慎重な判断が求められるだろう。

他に考えられること

  • 不動産には固定資産税や都市計画税などの保有コストがかる
  • 不動産が全く収益を生み出してくれなくてもそれらの費用は軽減されることはない

上記からすると、資産価値に応じた適切な活用が出来なければ、保有し続けることすら困難になってくる。


土地と建物の定義

諸外国では土地と建物を一体ととして扱っている場合が多いが、日本の場合は土地と建物は別個の不動産として取り扱われている。

土地は建物と異なり、人為的に区画せざるを得ないことから、登記制度というものがある。

人為的に区別された1区画を一筆といい、その区画ごとの堺を境界としている。

建物とは原則として人間の居住、作業、空間、物品の保管などに用いられるものとされ、門扉、地下室、車庫なども建築物として定義されている。

土地は地域性、周辺環境等によって建築物が法によって規制されている。

土地と建物の権利

土地に対する権利としては所有権と借地権がある。

土地の所有権

1人で所有している場合と複数で所有している場合がある。

法令の制限内において自由にその土地の上下に及ぶ権利を使用、収益、処分することが出来るものとしている。

土地の借地権

建物の所有を目的として土地を借りる権利。

借地権には物権である地上権と債権である土地賃借権がある。

このうち使用貸借権は、土地使用の対価を払わずに土地を利用する権利を言う。

建物の場合

建物1棟の主有権と分譲マンションのような区分所有権がある。

また一時使用を目的とした賃借権以外の建物貸借権は借地権として借地借家法の適用を受ける。

  • 1つの土地を複数の人で共有する場合がある。この場合各人の持分が所有権が制限されますが、共有物全体を持分に応じて使用することが出来る。
  • 各共有者は自分の持分を自由に処分できるほか、いつでも共有分の分割を請求する事ができる。

共有者に不利益が無いようする行為は各共有者が単独で出来るが、使用・利用・改良することは持分の過半数、造成・建築・売買などは共有者全員の同意が必要になる。
また借地権等の所有権以外の権利を複数の人が共同で持つことを「準共有」といい、各人の権利は準共有持分に応じて制限され、共有の場合と同じ制約をうける


投資はアセットクラスを取得する行為

資産運用の分野では、前述の土地、現金・預金、株式・債券、建物など同じような収益率やリスクを持つグループをアセットクラスと総称している。

したがって、投資とは「キャピタルゲイン」や「インカムゲイン」を得るためにアセットクラスを取得する行為と置き換えることもできる。

そしてこうした資産クラスの組み合わせをアセットアロケーションと呼んでいる。

日本の場合、保有資産の46%が土地や固定資産であり、現金・預金を含めると84%になる。

※平成25年度の国民経済計算を見てみると日本の家計は2600兆円の資産を保有している。その内の33%が現金・預金で、土地が25%、保険・年金準備金が16%、固定資産が13%、株式や債券などの証券が10%という内訳。

相続税の課税対象者を見てみると、日本では高齢者になるとアセットアロケーションに不動産が占める割合が大きくなる。

土地が 42%、家屋が5%で土地と家屋だけでなんと47%を占めている。

これに現金・預金の26%を合わせるとその数値は73%まで跳ね上がる。

実際に相続税が発生するのは全体の 4.3%(平成25年現在)程度で、この数値は資産家と呼ばれている人達に限定したもの。

ここからも日本の資産家たちは不動産によって資産を形成してきたことが読み取れる。

因みに、一般家庭においては土地の割合は年々低下しており、保有資産が多様化している傾向が顕著に現れている。

効率的な資産バランスと不動産

アセットアロケーションの資産クラスを組み合わせたものをポートフォリオと言いう。

金融経済学では、個人の富はその効用によって表現されるとされている。

その効用は資産ポートフォリオから期待される収益率が高いほど、リスクが小さくなるほど高くなるのが一般的。

アセットアロケーションは収益率を最大化するために行うわけではない

しかし、本来アセットアロケーションとは収益率を最大にするために行うことではないので誤った解釈をしないで欲しい。

なぜなら、金融経済学ではリスクとリターンは負の相関関係にあるからだ。

つまり収益性が高ければ高いほどリスクが大きくなり、リスクが大きければ大きいほど富は小さくなる。

このようにポートフォリオのリスクとリターンはトレードオフの関係にある。

それ故に個人が選択する組み合わせは無数に存在することになる。

その中から個々に適したポートフォリオを選択するには、それぞれ個人のリスク許容度(精神的なものも含む)、保有資産や負債状況などの要素を加味して考える必要がある。

例えば、資産も所得も十分でかつ投資に関して損失が生じてもあまり動じないような人であればよりリスクの高い資産への投資が可能。

その逆の人であれば投資行為は避けた方が無難。

リスクとリターン、トレードオフの例外

たとえば平成13年にJ-REITが登場しましが、REITを組み込むとリスクが軽減されリターンも一定になる。

或いはリスクが一定でリターンが増加する傾向がある。

その理由はREITは株式や債券とは異なるリスクとリターンの特性を持っているからだ。

つまり株式などのリスクを中和する効果が期待できる。

こうした効果を「リスク分散効果」と云う。

実は、不動産は株式や債券などのポートフォリオに対してリスクを分散する効果がある。

それは昔から言われていることで、REITがその役目を果たすことは別に改めてお話することでもないが、あえて加筆した。

不動産キャッシュフローの特徴

不動産を資産クラスと見た場合、そのキャッシュフローが特徴的だ。

経済学ではキャッシュフローを生みだすものを資産と定義しているが、そのキャッシュフローには将来の成長率と不確実性といった2つの特徴がある。つまり将来性がリターンであり、不確実性がリスクといっているものだ。

そして、この2つがキャッシュフローの特徴だということ。

またキャッシュフローには、インカムゲインとキャピタルゲインの2種類の成長率(リターン)がある。

もちろんゲインばかりでなく、損失が生じることもある。

そうしたゲインとロスの振れ幅をリスクというわけだ。

では、不動産のキャッシュフローにはどのような特徴があるのでしょうか?

不動産のアセットは4つのカテゴリーに分類される

「エクイティとデット」これに実物資産と証券という2分類の組み合わせ。

つまり、エクイティ×実物資産、エクイティ×証券、デット×実物資産、デット×証券ということになる。

エクイティ×実物資産

これは賃貸ビルや土地などの実物不動産を指す。

デット×実物資産

これは住宅ローンや商業不動産担保ローンなどの一般的なローンを指す。

エクイティ×証券

これはREATのこと。

デット×証券

MBS(住宅ローン証券化債権)、CMBS(商業不動産担保ローン証券化債権)。

このように不動産の資産クラスはエクイティの実物資産とREITであり、デットのうちローンは負債にあたる。

ただし、住宅投資はその時価から住宅ローンの残存元本を差し引いた残りの部分がある場合は資産にカウントされる。

個人の富を最大化を目的とするアセットアロケーションを行うにあたっては、不動産資産クラスのキャッシュフローの特徴を十分に把握しておく必要があることは間違いない。

富の大きさは資産の組み合わせ方で粗決まってしまう。

個人の資産運用の目的が富の最大化という観点から見た場合、資産の組み合わせによって大半のことが決まってしまう。

一方で、人は富の最大化のみを資産運用の唯一の目的とすることはできないという現実がある。

それら諸々に関して簡単に解説しよう。

富の最大化のみならず「資金調達」と「相続」という事項が加わる。

  • 結婚、出産、子供の進学といったライフイベント、マイカーの購入、マイホームの購入、それから定年後の生活設計。
  • あるいは離婚、倒産、転勤、災害、事故、入院、訴訟などの予期せぬイベントに対する資金調達。

これらを考慮して資産の組み合わせを決めていかなければならない。

例えば、年金に不安を抱く人の中には将来自宅を担保にして銀行から生活費を調達する人もいる。

こうした場合、戸建てとマンションとではどちらが適当であるかということも検討しておく必要がある。

また、賃貸ビルを保有するよりも、REITへの投資のほうが富を最大化のためには良いと判断できたとしても、地所のままで相続させたいという個人の思いもそこに内在するケースも有る。

そうしたケースでは、土地のままで保有するよりも、賃貸マンションやロードサイド店舗にして経営した方が、税の観点から見て富の最大化には適しているということもある。

実は資金調達や相続問題も富の最大化の一部

大局的に捉えれば、そうした資金調達や相続の問題も富の最大化の一部に過ぎない。

例えば、

  • 相続は、世代間をまたぐ富の最大化に解釈できる。
  • 資金調達は、負債を考慮した富の最大化とも解釈できる。

したがって、アセットアロケーションの課題は、世代間をまたぐ資産を負債を考慮したうえで最大化していくにはどうしたらいいか。

どうしたら最大化できるのか、というところにあるとも言える。

日本人の場合、資産に占める土地の割合が非情に大きい、これが今の大きな課題。

地下が暴落して売却のチャンスを逃したということはある程度頷けること。

しかし、このままの状態でいいのだろうか。

相続する毎に目減りしていくような環境下にあって、果たして私達国民が本当の意味での豊かさを手にできる日は訪れるのであろうか。

まとめ

わずか3.8%の宅地に70%近くの人口が集中しているという環境とともに預貯金や有価証券とは異なり、独自の特性を持つ不動産。

まったく同じというものは存在しない構造において、複雑な権利関係が存在する。

また、取得・保有・譲渡等さまざまな局面で税金が課され、また計算の基礎となる価格にもいくつかの種類がある。

こうした複雑な事情が絡みあった構造の中で、不動産を効率的な資産の一部として保有し続けることが容易でないことはゆうに想像がつく。

しかしだからといって、積極的な資産形成を試みるなら、不動産というアセットを組み込んでいく必要があることは確かだ。

有意義な資産形成をサポートしていく立場にある私たちは、こうした複雑な事情をよく取らまえ、クライアントの資産最大化に貢献できるよう常に精進を重ねていく必要がある。

次回は、不動産の投資分析と税金や収益計画のポイントについて解説します。

ではまた。

この投稿はNPO法人日本FP協会CFPカリキュラムに沿って記述しています。

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