今回は、公法上、私法上、民法の補充規定など、不動産に関する民法の規定と抵当権設定金銭消費貸借契約書の事例です。
民法の規定
不動産に関する規制には、国などからなされる公法上の規制と、私人間の取引についてなされる民法などの私法上の規定の2とおりのものがあります。
両者は、制度の趣旨。目的がまったく異なるものなので、個別に理解する必要があります。
公法上の規則
取引を制限するものとして国土利用計画法、農地法など、利用を制限するものとして都市計画法、建築基準法などがある(第6章第4節以下参照)。
私法上の規則
民法とその他の法律
民法は原則法と呼ばれており、借地借家法、区分所有法などの特別法と区別されています。
また、民法は補充法とも呼ばれ、契約(または特約)がない場合(またはない部分)について、補充的に適用されます。
一方で、契約自由の原則に基づいて契約(または特約)をすれば、民法の規定に反しても構わないということになります(特約による民法の排除)。
しかし、特約をもってしても適用を排除しえない法律があり、これを強行法規といいます。
例えば、借地借家法における借地人・借家人に不利な特約を無効とする規定などです。
- 強行法規・・・・・・借地借家法における借地人・借家人の保護の規定など。
- 契約(特約)・・・・契約自由の原則。
- 民法(補充法)・・特約がなくとも補充的に適用される。
民法の補充規定について
①法律行為などと法律効果
図表5-1
法律行為など | 法律効果 |
契約- ア)売買契約
- イ)贈与契約
- ウ)抵当権設定契約
- 工)賃貸借契約
| - 目的不動産の所有権の移転
- 同上
- 目的不動産に対する抵当権の設
- 目的不動産に対する賃借権の設定
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b)不法行為- ア)AがBの家を壊す
- イ)AがBの土地に無断で掘立小屋を建てて不法占拠
| - BがAに対し損害賠償請求権(債権)を取得する(民法709条)
- BはAに対し損害賠償(債権的請求権)および掘立小屋を取り除けと妨害排除(物権的請求権)を請求しうる(民法198条、709条)
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c)時効取得- AがBの建物を自己の物と 誤解して20年間占有(注:善意で過失のない場合は10年間で時効取得する)
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d)財産分与 | |
e)相続 | |
②法律行為に間違い(瑕疵)があった場合
a)AのBに対する意思表示(例:売ります、あげます)に瑕疵が存した場合
- ア)強迫によりなされた場合 → 取り消しうる(民法96条)
- イ)詐欺によりなされた場合 → 取り消しうる(民法96条)
- ウ)錯誤によりなされた場合 → 無効(民法95条)
- 工)虚偽の表示によりなされた場合 → 無効(民法94条)ただし、以上のうち一定の場合に善意の第二者が保護される(民法96条3項、94条2項)。
b)AまたはBに本来備わるべき資格・能力が存しない場合
- ア)未成年者(法定代理人の同意なし)→ 取り消しうる(民法5条)
- イ)被補助人(補助人の同意なし)→ 取り消しうる(民法17条)
- ウ)被保佐人注4(保佐人の同意なし)→ 取り消しうる(民法13条)
- 工)成年被後見人注5 → 取り消しうる(民法9条)
- オ)無権代理人(代理人と称するが代理人ではない)→ 本人に効力が及ばない(民法113条)
- 力)他人(本人と称するが本人でない)一 本人に効力が及ばない
ただし、以上のうち一定の場合に善意の第二者が保護される(民法109条~112条)
保証
主たる債務者Aが、債権者Bへの債務の履行をしない場合に、債務者Aに代わりAの債務を履行をしなければならないこととなる保証人Cの義務を保証債務といいます。
また、保証関係のうち、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する形態を連帯保証といい、通常の保証よりも債権者に有利な点注6が多いため、通常の保証よりも実務では頻繁に用いられます。
次回は、「資産流動化法の概要などを知って、不動産の投資分析に役立てる」です。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。