不動産に関連のある資産流動化法について

今回は不動産活用にも関連のある「資産流動化法」の概要と制度、金融商品やそれらを扱う業者に関係する金融商品取引法についてです。

資産流動化法

資産流動化法とは、簡略すれば資産の流動化に関する法律。

これは、平成10(1998)年9月に施行された「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(旧SPC法)」が、法制化のきっかけとなったものだ。

その後、平成12(2000)年に名称が「資産の流動化に関する法律」に改められた。

資産流動化法の概要

①流動化対象資産

証券を発行して流動化することができる資産の種類には制限がない。

したがって、財産権一般の流動化ができることになっている。

また、この資産の流動化に係る業務として、特定目的会社または受託信託会社などが取得した資産のを「特定資産」と定義付けしている。

②「資産の流動化」

資産の流動化は、企業などが保有する資産をオフバランスするために(バランスシートから除外)行われる。

そして、特定目的会社または特定目的信託を使って資産を処分するという方法だ。

では、特定目的会社とはなんだろうか?

特定目的会社制度というものがあって、そこで定められている。

特定目的会社制度

①特定目的会社の概要

a)資産流動化法により設立された社団のこと。

  • 資産の証券化手法による流動化のためにのみ認められる特別の会社。
  • 特定目的会社は、商号中に「特定目的会社」という文字を使用しなければならない。

b)有価証券などを発行して投資家に引き受けてもらい、その資金で特定資産を取得する。

c)特定資産の管理・処分を外部に委託し、その収益で投資家に対する利払いや配当などを行う。

②特定目的会社の設立

a)発起人が、その目的、商号および特定資本の額などを記載した定款を作成し、特定出資をして設立する。

b)資本は、特定資本金(特定出資にかかる資本)とする。

しかし、資産流動化計画で優先出資の発行が定められた場合は、特定資本金と優先資本金の合計額とする。

※優先資本金とは、資産流動化計画に従い発行される優先出資にかかる資本のこと。

  • ア)優先出資:特定目的会社に対する出資。
    特定目的会社の利益の配当または残余財産の分配を、特定出資者に先立って受ける権利を有するもの。
  • イ)特定出資:特定目的会社設立の際に発起人が行った出資。

c)取締役と監査役はともに1人以上とすること。

③届出

a)あらかじめ内閣総理大臣に業務開始の届出をしなければならないことになっている。

内閣総理大臣は、特定目的会社名簿を備え、公衆の閲覧に供する。

b)資産流動化計画などを記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければならない。

※計画などとは、資産の流動化に係る業務に関する基本的な事項を定めたもののこと。

④業務

a)特定資産の流動化

  1. 資産対応証券の発行または特定借入れなどにより得られる金銭をもって特定資産を取得。
  2. その特定資産の管理および処分により得られる金銭を使用
  3. 資産対応証券および特定借入れなどに係る債務の履行または利益の分配などを行う。

b)資産対応証券の発行

ア)優先出資:株式会社の株式に相当するもの。

優先的に利益の配当や残余財産の分配を受けることができる。

イ)特定社債:特定目的会社が本法および会社法に基づき発行する社債。

転換特定社債、新優先出資引受権付特定社債、特定短期社債とすることもできる。

ウ)特定約束手形:特定目的会社が本法に基づき発行する約束手形。

以上これらは、いずれも金融商品取引法の有価証券とされている。

c)資金の借入れ

ア)特定借入れ:銀行などから特定資産を取得するために必要な資金を借入れたもの。

資産流動化計画において借入れ限度額を定める必用がある。

イ)その他の借入れ:特定社債や特定約束手形などの債務の履行のための1年以内の借入れや、一時的な資金繰りなどの借入れ。

d)他業禁止特定目的会社は、資産流動化計画に従って営む特定資産の流動化に係る業務およびその付帯業務のほか、他の業務を営むことができない。

e)業務の委託

特定目的会社は、特定資産(信託受益権を除く)の管理および処分に係る業務を信託会社などに信託しなければならない。

ただし、特定資産のうち、不動産、指名債権、電子記録債権、その他内閣府令で定める資産のうち特定目的会社が対抗要件を備えたものおよび従たる特定資産については、特定資産の譲渡人または管理および処分を適正に遂行できる者に委託することができる。

f)特定資産の処分などの制限

資産流動化計画に基づく場合を除き、特定資産を貸し付け、譲渡、交換または担保に供することはできない。

⑤特定目的会社に係る課税の特例(措置法67条の14他)

支払う利益の配当の額が、配当可能利益の90%をこえていることなど。

一定の要件を満たしている場合は、特別目的会社の所得金額の計算上、その配当の金額を損金の額に算入することができる(二重課税の排除)。

また、特定目的会社の登録免許税や不動産取得税についても軽減の特例が設けられている。

図表3-18特定目的会社と株式会社の税制の比較

時期税目株式会社特定目的会社
設立時登録免許税
(設立登記)
資本金の7/1000
(下限15万円)
一律3万円(優先出資発行登記
1万5,000円)
資産取得登録免許税
(所有権移転登記)
固定資産税評価×20/1000注1固定資産税評価×13/1000注2
不動産取得税固定資産税評価額×3/100注3
(土地については、固定資産税評価額×1/2×3/100)
左記算式中の固定資産税評価額からその3/5を控除注4
資産の管理運営処分分配時法人税
(SPC段階)
法人所得×法人税率支払配当損金算入体J益の90%超配当などする場合)
法人事業税所得金額×事業税率所得金額×事業税率
注意点▼

注1:平成29(2017)年3月31日までに行う売買による土地の所有権移転登記は15/1000。
注2:平成29(2017)年3月31日までの税率。
注3:住宅以外の家屋は4/100。
注4:平成29(2017)年3月31日まで。

(3)特定目的信託制度

①概要

a)資産の流動化を行うことを目的とし、かつ信託契約の締結時点において委託者が有する受益権を分割することにより複数の者に取得させることを目的とするもの。

受託するのは信託会社などに限られる。

b)特定資産の所有者は、信託会社などと信託契約を締結し、受益権を分割して投資家に販売する。

c)特定目的信託の受託者となった信託会社などは、特定目的信託財産の管理・処分を行い、その収益を投資家に分配する。

②届出

a)受託者として特定目的信託を締結するときは、あらかじめ内閣総理大臣に届け出なければならない。

b)資産の流動化に係る業務に関する基本的な事項を定めた資産信託流動化計画などを記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければならない。

③特定目的信託契約

原委託者は、特定資産の管理・処分について受託信託会社などに指図を行うことができない。

原委託者とは、特定資産のもともとの所有者のこと。

④受益権

a)受益証券:特定目的信託契約に基づく受益権を表示する証券で、受託者が発行する。

金融商品取引法上の有価証券として扱われる。

b)受益権は原則として譲渡することができる。

受益券の譲渡は受益証券をもってしなければならない。

c)受益証券を取得する者は、原則として特定目的信託の委託者の地位を承継する。

⑤特定目的信託に係る課税の特例(措置法68条の3の3)

特定目的信託による利益の分配の額が、分配可能利益の90%をこえていることなど、一定の要件を満たしている場合は、その分配の金額を損金に算入することができる。

次回は資産流動化法同様、不動産活用に関連する「投資信託法と金融商品取引法」についてです。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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