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こんにちは、MSインテグラル・デザイン研究所の斉木です。 今回は、行動ファイナンスについて解説しましょう。

前回の投稿「資本市場において利用可能な情報を的確に反映して、資産価格は決定されているのか?」では、資産価格の形成に関して、利用可能な情報が価格に反映している度合いによって、市場の効率性を判断することなどについて解説した。

現代の資本市場における理論は、効率的市場を仮定した上で発展してきた理論だ。

しかし、実際には市場が必ずしも効率的ではないということが多くの実証によって明確になった。

つまり、市場にはアノマリーや歪みが予め存在しているので、そこに投機バブルが起こる可能性も十分ありえるということだ。

参考▼

アノマリーとは、法則・理論からみて異常、または説明できない事象や個体等のこと

行動フアイナンスとは

不可能ではあるが、仮に市場が効率的であるとすると、情報が適切に価格に反映されていることになる。

そのためには、次のような意思決定プロセスを経て、情報を価格へ伝達する必要があるだろう。

つまり、仮説ではあるが、次のようなプロセスが存在することになる。

意思決定プロセス

  1. 情報
  2. 認識
  3. 分析
  4. 評価
  5. 価格

意思決定のプロセスは上記の順番で行われる。

上記の順序だとすると、まず投資家サイドが合理的だということが前提になる。

投資家サイドが合理的でないと、情報が適切に価格に反映されないからだ。

投資家が合理的であるとすると、、、、、

  1. 認識・・・意思決定に関わるあらゆる情報を入手することができる
  2. 分析・・・偏見や感情などによって客観性を失うことなく、情報を分析できる
  3. 評価・・・効用関数に基づき期待される効用を最大化するように行動する

つまり、これら全てを満たし、かつすべての投資家が同質的である必要あるだろう。

もうすでにおわかりだと思うが、この仮定が実際に成り立っているとは考えづらい。

例えば、インターネットなどの発展によって多くの情報をすばやく誰でも入手することが可能になった。

しかし、投資家個人の情報収集許容量と時間的制限からみて、すべての情報を入手できるとは考え難い。

また、ほとんど全ての人間が過去の経験から情報を取捨選択し、自分にとって有益であると解釈した情報のみを入手する傾向があることを考えわせると尚更疑わしい。

つまり、一般的に考えて、投資家の偏った特定の情報に基づき、自ら有益であると認識したものに基づき投資を判断しているということになる。

参考事例▼

例えば、大きな地震が起きると、その後一定期間、地震保険の加入者が増加することが知られている。

また、株価暴落を経験した人と、そうでない人ではリスクに対する態度が大きく異なる。

さらに、利益が出ていると「このような状況はいつまでも続かない」、損失と認識した場合は「何とかして損失を挽回したい」といった思考が働き、常にストレスにさらされていることになる。

このため利益の出ている有益なポジションを早々に閉じてしまったり、損切りするタイミングが遅くなって損を拡大させてしまうといったことが頻繁に起こる。

このように投資行動は、常に自己の感情(精神状態)との戦いだといってもいいだろう。

行動ファイナンスとは、このような多くの非合理性を前提とした「合理性がそもそも限定的にしか成り立たない」という人間の行動そのものに主眼をおいた金融理論だ。

非合理的な情報処理が前提

人は合理的に判断しているつもりでも、非合理的な情報処理しか出来ない。

特に金融市場に参加する者は、日々何度も瞬時に意思決定をしなければならないので、その回数は増加することになる。

相場が大きく動いたときなどは、プロ同様、瞬時に意思決定を行わなければならない状況に追い込まれるわけだ。

インターネットなどの普及によって、望みさえすれば大量の情報を瞬時に得ることは実に簡単になつた。

しかしだからといって、得た情報を細かく分析できるほどの時間を確保することは容易ではない。

また、それが個人の投資家であれば尚更その情報処理に携わることのできる時間は限られるだろう。

したがって、個人の投資家が効率的な情報収集を行うためには、情報の複雑さを減少させ、迅速に判断を下すこ必要に迫られることになる。

ということで、これからいくつかその意思決定の傾向とそのポイントを紹介しよう。

単純化

例えば、次の2つの可能性があったと仮定する。

  1. 株式Aは非常に単純でわかりやすい。
  2. 株式Bの値はわかりづらい。

上記の場合、株式Bは株式Aと対比することで、株式Aとほぼ同じと仮定する傾向がある。

株式Aと株式Bでは大きな差はないが、しかし、このような単純化は決して合理的だとはいえない。

資産 収益率 可能性
株式A 20% 50%
株式B 19% 51%

心理感情

今度は、次の2つの状況を比べてみよう。

  • 状況A:ミュージカルを観に行こうと1万円のチケットを購入したが紛失してしまった。
  • 状況B:ミュージカル当日チケットを購入しようとしたが、会場に着くまでの間に1万円をなくしてしまった。

※A・Bともミュージカルを観るためにチケットを再購入する。

状況Aでなくしてしまったチケットはすでにミュージカルに投資した1万円と考える。

さらにチケットを購入すると2万円を同じものに投資することになるので、そこまでして観たくないと考える。

状況Bの場合は、なくした1万円は自分の資産で、 ミュージカルに投資したものとは別物だとみなす。

だから、チケットを買っても1万円の投資で済んでいると考える。

AもBもコストが2万円であることは変わらない。でも、そうした非合理的な行動を選択する傾向がある。

利用可能性

記憶について云えば、新しい記憶の方が引き出されやすいと考えるのが一般的だろう。

例えば、損害保険の事案を扱っているとある傾向があることに気付く。

20年以上無事故である優良ドライバーが、1回事故を起こしたことがきっかけになり、時間をおかずに再度事故を起こすということがよくある。

これは、 起こした事故の記憶が強烈で、安全運転をしてきた経験をすっかり忘れてしまうからだ。

その結果、過度に緊張した状態で運転するようになり、平常心を失いやすく、事故を再発させることになることがわかっている。

情報の無視

※ri,t=αi+βirM,t+[誤差i,t]

例えば、いまどれだけの人が上の数式を見てその意味を考えたであろうか。

多くの数学を苦手とする人は、とりあえず上の数式は飛ばしたはずである。

また、数学や統計を得意とする人や嫌いではない人は数式を見て、「なぜこの式が突然出てきたのだろうか」と、思ったのではなかろうか。

上の式は、この文脈上なんら意味はない。

多くの人はその意味を考えて、不必要であるかどうかを判断する前に、無視したであろう。

このように、一般的に人は自分に適さないものや自分の判断で不必要と思われる情報を無視する傾向がある。

アンカーリング

アンカーリングとは、将来の不確実なことに対して、参考となる固定点(値)が示されていると、それとの関係性で評価してしまうことである。

つまり、別の異なった判断が必要な場面でも、その固定点に戻ろうとする力が働く。

例えば次の2つの状況を考えてみよう。

  • 状況A:有名なアナリストが、現在800円の株価が1カ月後には1,200円になるといった。
  • 状況B:有名なアナリストが、現在800円の株価が1カ月後には800円になるといった。

※A・Bともが実際には1,000円になった。

どちらも800円の株価が1カ月で1,000円になったことは変わらない。

しかし、実際に投資した、あるいは投資しようとした人は全く異なる感情を抱くはずだ。

状況Aでのアナリストの予想はあまりよくなかったと判断がされがちだ。

しかし、状況Bでは、かなり成長したと判断されるだろう。

このように、どちらなのか判断が難しい場合、いずれも参考値との比較で評価され、認識は全く異なったものになる。

代表性

次なようなケースについて想像して欲しい。

5回コイン投げをしたところ、5回連続して表が出た。

では、6回目も表が出るであろうか?

大概は、裏が出る確率が高いと考えるだろう。

なぜなら、5回も連続して表が出たのだから、そろそろ裏が出てもいい頃だと解釈するからだ。

しかし、6回目で表、裏が出る確率はそれぞれ50%で変わらない。

このように、過去の傾向にとらわれて、予想に偏見を持ってしまう。

投資家の損切りが遅くなる理由というのは、このパターンに陥った時に起きている。

仮に保有している株式が前日下落してマイナスのポジションになっているとする。

このとき、投資家は前日下落したから、今日は反転するはずだと期待して株式を保有し続けるだろう。

もし、期待に反して今日も下落したとすると、投資家は2日続けて下落したのだから、明日は上昇に転じるはずだと解釈する傾向が強い。

この傾向が続き、結果として損切りが遅くり、大きな損失を被ることがよくある。

プロスペクト理論

プロスペクト理論では、合理的投資家は、不確実な状況においては期待される効用を最大化するように行動するものだと断定している。

また、一般的な投資家は危険を回避する傾向が強いため、次のような効用関数を持つとも・・・

少し分かりづらい理屈だと思うが、ついてきて欲しい。

参考▼

効用関数とは、投資家の保有する客観的な資産金額を主観的な効用に変換したもの。

合理的だとされる投資家の効用は、資産の規模が大きくなるに従って、資産が増えたときの単位あたりの効用は減少していくという性質を持っている。

以下の参考事例をみて欲しい。

参考事例▼

プロスペクト理論横軸の資産額では0円から100万円と100万円から200万円の増分の大きさは同じだ。

つまり、100万円ずつ増加しているが、その増加に対する効用の増加は0円から100万円に増えたときの効用の増分の方が、100万円から200万円になったときの増分よりもはるかに大きいと言いたいのだ。

現在100万円の資産を保有していると仮定したとき、そこから100万円増加して得られる幸福感よりも、100万円減少したときの不幸感の方が大きいということを意味する。

つまり、資産を減少させるリスクに対しては回避する特性を持っているということなのだ。

利益がプラスの部分だけを取り出せば、図表で示される効用関数に似た形をしていることがわかる。

しかし、価値関数では、レファレンス・ポイント(相対的な利益をゼロとする点)を中心に、左下にも曲線が伸びていることが見て取れるだろう。

また、ここでは、横軸はレファレンス(参考・参照)・ポイントを中心として、それより右は利益を示し、左は損失を示している。

では、なぜこのような図表になるのか?

そこで、株価の変動によって損益が生じる場合、投資家の心情にいったい何が生じているのかを順を追って解説しよう。

投資家の思考に何が起きているのか?

※レファレンス・ポイント(購入株価)を1,000円とする。

微小な損益変動にも敏感な区域

購入株価1,000円に対して、現在の株価が1,000円前後で行き来している領域で相場から目が離せない状態。

株価が数十円上がるだけで大きな価値が得られ、逆に、数十円下がるだけで、かなりの価値を損失した感覚になる。

利益変動に敏感な区域

購入株価1,000円に対して、利益が出ている状態。(利益200円以下)

1,000円から利益が出始めた当初数十円の上昇でも主観的な価値の増大は大きく、満足感が大きい。

さらに上昇を続けると、数十円の上昇も当初ほどの価値を感じなくなってくる。

利益変動に鈍感な区域

株価がすでに1,300円くらいになっている領域で、そこから数十円上がってもそれほど満足度は向上しない。

もちろん、それに比較すると数十円株価が落ちると若干不安がよぎるが、さほど問題視しない。

損失変動に敏感な区域

購入株価1,000円に対して、損失が出ている状態。

1,000円から損失が出始めた当初数十円の下落でも主観的な価値の減少は大きく、不安(不満)感が大きい。

さらに下落を続けると、数十円の下落も当初ほどの価値の減少を感じなくなってくる。

損失変動に鈍感な区域

株価がすでに700円くらいになっており、そこから数十円下がってもあまり価値の減少を感じなくなる。

もちろんそれに比較すると数十円株価が上がると若干価値の増加があるがさほど感じない。

リスクに対する態度の変化

次に、価値関数のリスクに対する態度の変化について考えてみよう。

まず、利益が出ている領域では、効用関数と同様リスク回避的な態度をとることがわかる。

例えば、

  1. 確実な100円の株価アップが約束されている
  2. 0円か200円が50%の確率で起きる不確実なもの

上記のどちらかを選択することができる場合はどうだろうか?

一般的には確実な100円アップを選択するだろう。

しかし、損失が出ている領域においては、逆の態度になる可能性が非常に高い。

例えば、

  1. 確実な100円の株価ダウン
  2. 0円か200円が50%の確率で起きる不確実な株価ダウン

上記のどちらかを選択することができるとした場合はどうだろうか?

おそらく不確実な株価ダウンを選択するだろう。

これらの結果は、投資にたいする態度を非常によく示している。

実際にこの株式に投資をしていると仮定して考えて欲しい。

1,000円の株価が1,050円や1,100円になるときの主観的な満足度は大きくなるだろう。

また、リスク回避的であることからうれば、利益を確定させようとする態度に出るに違いない。

逆に、株価が950円や900円になったときの主観的な価値の減少は大きくなるだろう。

こうなってくると、さらにリスクを冒してでも損失を挽回しようとする態度が見え隠れし始める。

つまり、なかなか損切りができない状況に陥り、結果的に大きな損失を被る可能性が高くなるということだ。

2種類の株式に投資している場合はどうだろうか?

さらに、2種類の株式からなるポートフオリオを保有し、先程の図表に示された価値関数を考えてみよう。

ポートフォリオは利益200の領域に属し、若干の利益が出ている状態だ。

しかし、実際にはそれぞれの株式を別々に評価することがある。

  1. 1つの株式は利益200超えに属しており大きな利益が出ている。
  2. もう1つの株式は損失200の領域に属しており、若千損失が出ている。

このようなとき、ポートフオリオ全体として利益が出ていることにのみに目が向き、損失を出している株式を無視してしまうことがよく起こる。

なぜなら、損失200の領域では、先ほど説明した「微小な損失改善」による主観的な価値の増大が大きく感じられるからだ。

まとめ▼

つまり、このような行動が、合理的な投資行動を阻害していることになる。

このように、人間の意思決定プロセスには合理的とは考えられない行動が多くみられるのだ。

したがって、市場関係者の非合理性を想定することが市場を理解する上で合理的だということになる。

その一部を、行動ファイナンスの主要理論の1つであるプロスペクト理論によって説明することは可能だろう。

ではまた。

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