お金を増やす方法とファイナンシャルプランニング、№11

今回は、効率的市場仮説における3つの基準、つまり弱度・準強度・強度について、そして行動ファイナンスについて基本的なことを解説する。

市場が効率的であれば、えれば、「市場の効率性」必須である。

人並みの努力で、人並み以上の利益をあげることは困難である。

言い換えれば「市場の効率性」が何であり、何を意味するかを知ることが、投資成果を判定する場合に必須である。

1,効率的市場仮説(EMH)

株価、債券価格、為替レートなどの資産価格は、そぅした資産に投資して得られる将来キャッシュフロー、わかりやすくいえば、将来の配当や金利によって決定されるはずである。

そうであれば、将来キャッシュフローについて利用可能な情報が価格を決めることになろう。ファィナンス理論では、このような情報が瞬時に資産価格に反映されることを効率的市場仮説(EMH:EfficientMarket Hypothesis)として議論をしてきた。

資本市場において利用可能な情報を的確に反映して資産価格が決定されているかどうかを検証するために、効率的市場仮説では、次の3つの基準を用いている。

1-1,弱度の意味での効率的市場仮説(Weak Form of EMH)

弱度の意味での効率性が成立するとは、簡単にいうと、過去の資産価格から将来の資産価格を予測しても、通常のリスクとリターンの関係を上回るリターン(超過リターン)を得ることはできないことを意味する。

例えば、ソニーの過去の株価の推移をみて明日のソニーの株価がいくらになるかを予測できない。

過去の株価は、誰にでも観察可能である。ネット証券との取引があれば即時に、あるいは、インターネットを利用すれば、ほぼリアルタィムで東証の株価は誰でも知ることができる。

誰にでも利用可能な情報である過去の株価をみて将来の株価を正確に予測して、特段の利益をあげることはできない。

なぜならば、もし、過去の株価により明日の株価が値上がりすると予淑1できたとすると、多くの投資家は今日の市場で株を買おうとし、逆に売ろうとする投資家はいなくなる。

その結果、今日の株価は値上がりしてしまい、今日株を買って明日株を売ってももうけることができない株価になってしまうからである。

事実、毎日の株価の変化額あるいは変化率はほとんどランダムであり、予測により超過リターンを得ることは困難である。

例えば、日経平均株価の昨日から今日へのリターンを横軸に、今日から明日へのリターンを縦軸にとって、毎日の値をプロットすると、なんらの時系列相関もみられない。

つまり、日経平均株価が昨日から今日にかけていくら値上がりし、あるいは値下がりしたかがわかったとしても、今日から明日にかけて株価がどのようになるか、全く予想がつかない。

いい換えれば、将来の株価を予測するには、今日の株価をもって予測するのが、弱度の意味での効率性が成り立っているときには、最もよいことになる。

1-2,準強度の意味での効率的市場仮説(Semi‐strOng Form of EMH)

準強度の意味での効率性とは、過去の資産価格のみならず、一般に利用可能なあらゆる情報は当該資産の価格形成にすでに反映されていることを意味している。

一般に利用可能な情報とは、新聞、テレビや雑誌などの情報、企業の発表する財務諸表、あるいはアナリスト予想など、一般の人が利用可能な有料、無料のあらゆる情報である。

例えば、日本経済新間で毎日報じられる企業業績は、多くの人が目にしている。

よいあるいは悪い利益予想が報じられたならば、すでにその時点で株価に反映されているはずであるので、それを知ったからといって、超過リターンはとれないということになる。

1-3,強度の意味での効率的市場仮説(Strong Form of EMH)

強度の意味での効率性とは、一般には利用可能でない情報、例えば、特定企業の内部情報(インサイダー情報)までもが、その時々の株価(資産価格)にすべて反映されている状況を示す。

アクティブ運用はより高いリターンを得ているといえるのだろうか。

アクティブ運用の投資信託を買うことは、特定のアナリストやファンドマネージャーの分析能力や相場観に基づいた運用、彼らの能力を信じて託することを意味する。

しかし、アクティブ運用投信の成果は、後述するように、リスクを調整したあとで、特に高いリターンを長期にわたって実現することは困難であることが、多くの研究や調査で確かめられている。

つまり、特定のアナリストやファンドマネージャーが特別な情報を持っていたとしても、それによって特に高いリターンを得ることができないのである。

高いリターンを得ていたというのは単に高いリスクをとっていたことの裏返しであることが多い。

2,個人投資家にとつて効率的市場仮説は何を意味するのか

いまや、グローバル化、情報化の時代である。株や債券、為替に影響を与える情報は、インターネットやマスコミを通じ、即座に、無料もしくはきわめて低い価格で多くの人が入手できるようになっている。

また、巨大な資金を動かす世界中の機関投資家は、より早く、安い手数料や税率、優れた投資技術をもとにして投資を行っている。こうした環境の下で、個人投資家が、ほかの人に比べて高いリターンを継続的に実現することは困難である。

一時、高いリターンを得たように思えるが、それは単に高いリスクをとっていたことの裏返しであることが多い。

その意味で、個人投資家にとって、特定の資産や株式のリスクがいかなるものであるかをまず認識し、そのリスク水準に対応する期待リターンが実現できているかどうかを確認することが必要になる。

もしリスクに応じた以上の高い期待リターンを得ているという場合であつても、それは単に幸運にすぎないのか、あるいは自己の見通しが本当に優れていたのか。

あるいは、隠れたリスクを負担していることにより単に期待リターンが高いのかを、分析し、確認する必要がある。

伝統的な経済学では、合理的な経済人を仮定しでいるが、あとで述べる行動経済学、行動フアイナンスの研究では、個人は必ずしもそのように行動せずに、極度に楽観的であつたり、逆にあるときには悲観的であつたりする場合があれば、それがバブル経済や資産価格の過度の変動性をもたらし、ひいては投資の失敗をまねくと説明されている。

このように、資本市場の効率性とは何かをよく理解し、個人投資家のフアイナンス、パーソナルファイナンス戦略を立てる必要があろう。

3,行動フアイナンスとは

3-1,市場関係者は合理的か

前節では、資産価格形成において、利用可能な情報が価格に反映している程度によって、市場の効率性を判断した。現代資本市場理論は、効率的市場を仮定した上で発展してきた。

しかし、多くの実証研究によって市場が必ずしも効率的ではないということが示されてきた。実際に市場にはアノマリーや歪みが存在し、投機バブルが起きる可能性もある。

市場が効率的であるためには、情報が適切に価格に反映されている必要があり、そのためには、投資家は、次のような意思決定プロセスを経て、情報を価格へ伝達する。

意思決定プロセス

情報⇒認識⇒分析⇒評価⇒価格

情報が適切に価格に反映されるためには、投資家が合理的でなくてはならない。投資家が合理的であるということは、この意思決定プロセス(認識・分析・評価)において、

  • 認識・・・意思決定に関わるあらゆる情報を入手することができ、
  • 分析・・・偏見や感情などによって客観性を失うことなく、情報を分析し、
  • 評価・・・効用関数に基づき期待される効用を最大化するように行動する

これらを満たし、また、すべての投資家が同質的であると仮定する必要がある。しかし、これらの仮定が実際に成り立っているかどうかは、疑わしいといわぎるを得ない。

例えば、インターネットの発展によって多くの情報をすばやく誰でも入手することは可能になってきたが、それでもなお、投資家自身の情報収集許容量と時間的制限からとてもすべての情報を入手することはできない。

よって、通常、投資家に限らず多くの人は過去の経験で培った方法で情報を取捨選択し、効率的に自分にとって有益な情報の入手を行っている。また、投資家の投資判断は過去の経験やある特定の情報から認識した情報にひきずられる傾向がある。

例えば、大きな地震が起きると、その後一定期間、地震保険の加入者が増加する。株価暴落を経験した株式ディーラーとそうでないディーラーではリスクに対する態度が異なることもある。

さらに、投資行動は、利益が出ているときは「このような状況はいつまでも続かない」、損失を出しているときは「何とかして損失を挽回したい」といったストレスにさらされ、利益の出ているポジションを早々にクローズしたり、損切りが遅くなってしまう。

投資行動は、常に感情との戦いである。行動ファイナンスとは、このような観察される多くの非合理性から出発し、「合理性」力`そもそも限定的にしか成り立たないという前提に立って、人間の投資行動に主眼をおいた金融理論である。

3-2,非合理的な情報処理

市場に参加する者、特にトレーダーのような職種につく者は一日のうち何度も瞬時の意思決定をすることが求められる。程度の違いこそあれ、個人投資家であっても、相場が大きく動いたときなど、素早い意思決定を行わなければならない状況があるであろう。

インターネットなどの普及によって、望みさえすれば大量の情報を瞬時に得ることはできる。しかしながら、例えば個人投資家が一日のうちでその情報処理に携わることのできる時間は限られるため、何らかの効率的な情報収集を行っているが、その目的は情報の複雑さを減少させ、最終的に迅速に判断を下すことである。

ここでは、いくつかのその意思決定手法を紹介する。

3-2-1,単純化

例えば、次の2つの可能性があったとする。

株式Aについては非常に単純でわかりやすいが、株式Bの値はわかりづらい。よって、株式Bは株式Aと対比することで、株式Aとほぼ同じという認識をする。

この場合、株式Aと株式Bでは大きな差はないが、このような単純化は決して合理的ではない。

資産 収益率 可能性
株式A 20% 50%
株式B 19% 51%
3-2-2,心理感情

次の2つの状況を比べてみよう。

  • 状況A・・・ミュージカルを観に行こうと1万円のチケットを購入したが、会場に着くまでの間になくしてしまった。さらに1万円支払ってチケットを購入する。
  • 状況B・・・ミュージカル当日に窓口でチケットを購入しようとしたが、会場に着くまでの間に1万円をなくしてしまった。さらに1万円支払ってチケットを購入する。

状況Aも状況Bもミュージカルを観るためにかかるコストは2万円であるが、多くの人は状況Aではミュージカルを観ないことを選択し、状況Bでは観ることを選択する。

なぜなら、状況Aでなくしてしまったチケットはすでにミュージカルに投資した1万円であり、さらにチケットを購入すると合計2万円の投資になると考える。

一方、状況Bの場合、なくした1万円は自分の資産であり、 ミュージカルに投資したものとはみなさない。

よって、さらに1万円でチケットを買っても1万円の投資で済んでいると考える傾向があるのである。

3-2-3,利用可能性

記憶をたどるとき、一般的には新しい記憶の方が引き出されやすい。例えば、自動車の運転で20年以上無事故である優良ドライバーは、1回事故を起こしたことをきっかけに、時間をおかずに再度事故を起こす傾向がある。

これは、 ドライバーにとって起こした事故の記憶があまりにも強烈で、過去に安全運転をしてきた経験をすっかり忘れてしまうのである。

結果として、運転に対して過度に緊張するなどして、平常心を失い事故を再発させることになる。

3-2-4,情報の無視

例えば、いまどれだけの人が上の数式を見てその意味を考えたであろうか。多くの数学を苦手とする人は、とりあえず上の数式は飛ばして、この文章を読んだはずである。

また、数学や統計を得意とする人や嫌いではない人は数式を見て、「なぜこの式が突然出てきたのだろうか」と、思ったのではなかろうか。上の式は、期待値をμ(ミュー)、分散をσ2とする正規分布の確率密度関数であり、この文脈上なんら意味はない。

多くの人はその意味を考えて、不必要であるかどうかを判断する前に、無視したであろう。このように、一般的に人は自分に適さないものや自分の半J断で不必要と思われる情報を無視する傾向がある。

3-2-5,アンカーリング

アンカーリングとは、例えば将来の不確実な株価に対して、参考となる値が示されていると、それとの相対的な関係で評価してしまうことである。次の2つの状況を考える。

  • 状況A・・・有名なアナリストが、現在800円の株価が1カ月後には1,200円になる、といったが実際には1,000円になった。
  • 状況B・・・有名なアナリストが、現在800円の株価が1カ月後には800円になる、といったが実際には1,000円になった。

両方とも、800円の株価が1カ月で1,000円になったのであるが、状況Aではアナリストの予想1,200円から比較するとあまりよくなかったという判断がされがちであるが、状況Bでは予想800円に比較するとかなり成長したと判断されるかもしれない。

このように、絶対値としての判断が難しい場合、参考値との比較で評価されることとなり、それに対する認識は全く異なることとなる。

3-2-6,代表性

例えば、5回コイン(10円硬貨)投げをしたところ、5回連続して表が出た。では6回目も表が出るであろうか。多くの人が、裏の出る確率が高いのではないかと考えるであろう。

なぜなら、5回も連続して表が出たのであるから、そろそろ裏が出てよいはずだと思うからである。

しかしながら、この場合、それぞれの10円玉投げは独立したものであるから、6回目も表、裏が出る確率はそれぞれ50%である。つまり、過去の傾向にとらわれて、予想に偏見を持ってしまうのである。

投資家の損切りが遅くなる理由というのは、この性質で説明ができる。

例えば保有株式の株価が前日下落したことで、マイナスのポジションになっているとする。このとき、投資家は前日下落したから、今日は反転するはずだと期待して、株式を保有し続ける。

もし、期待に反して今日も下落したとすると、投資家は2日続けて下落したのだから、明日は上昇に転じるはずだとさらに大きな期待をすることになり、結果として損切りが遅くなってしまうのである。

4,プロスペクト理論

合理的投資家は、不確実な状況においては期待される効用を最大化するように行動するとされる。

また、一般的な投資家は危険回避的であるとされるため次のような効用関数を持つ(効用関数の詳細についてはFPTEXT4「リスクマネジメント」参照)。

効用関数とは、投資家の保有する客観的な資産金額を主観的な効用(幸せ)に変換するものであり、危険回避的な合理的投資家の効用(幸せ)は、絶対的な資産の規模が大きくなるに従って、1円資産が増えたときの効用の増分は減少していくという性質を持つ。

プロスペクト理論例えば、横軸の資産額では0円から100万円と100万円から200万円の増分の大きさは同じ、つまり100万円ずつ増加しているが、その増加に対する効用の増加は0円から100万円に増えたときの効用の増分の方が、100万円から200万円になったときの増分よりもはるかに大きい。

このことは投資家が現在100万円の資産を保有しているとしたとき、そこから100万円増加して得られる幸せよりも、100万円減少したときの不幸せの方が大きいため、資産を減少させるリスクに対しては回避する特性を持っていることを意味する。

相対的な利益が正の部分だけを取り出せば、図表で示される効用関数に似た形をしていることがわかるが、価値関数では、レファレンス・ポイントといわれる相対的な利益をゼロとする点を中心に、左下にも曲線が伸びている。

また、ここでは、横軸はレファレンス・ポイントを中心として、それより右は利益の水準を示し、左は損失の水準を示す。では、もう少し具体的に説明しよう。

ここでは、レファレンス・ポイントを購入株価1,000円として、株価の変動によって損益が生じる場合に投資家にとって何が生じるかを説明する。

  • 参照点付近:購入株価1,000円に対して、現在の株価が1,000円前後で行き来しており、相場から目が離せない状態。株価が数十円上がるだけで大きな価値が得られ、逆に、数十円下がるだけで、かなりの価値を損失した感覚がある(微小な損益変動にも敏感な区域)。
  • 利益200までの領域:購入株価1,000円に対して、利益が出ている状態。1,000円から利益が出始めた当初数十円の上昇でも主観的な価値の増大は大きく、満足感が大きいが、さらに上昇を続けると、数十円の上昇も当初ほどの価値の増大を感じない(利益変動に敏感な区域)。
  • 利益200を越えた領域:株価がすでに1,300円くらいになっており、そこから数十円上がってもあまり満足度は大きく向上しない。もちろん、それに比較すると数十円株価が落ちると若干不安があるが、さほどの問題とは思わない(利益変動に鈍感な区域)。
  • 損失200までの領域:購入株価1,000円に対して、損失が出ている状態。1,000円から損失が出始めた当初数十円の下落でも主観的な価値の減少は大きく、不安(不満)感が大きいが、さらに下落を続けると、数十円の下落も当初ほどの価値の減少を感じない(損失変動に敏感な区域)。
  • 損失200を超えた領域:株価がすでに700円くらいになっており、そこから数十円下がってもあまり価値の減少を感じない。もちろんそれに比較すると数十円株価が上がると若干価値の増加があるがさほど感じない(損失変動に鈍感な区域)。

次に、価値関数のリスクに対する態度の変化について考える。まず、利益が出ている領域においては、効用関数と同様であり、リスク回避的な態度をとるといえる。

例えば、同様の株価の例で、投資家が確実な100円の株価アップと0円か200円が50%の確率で起きる不確実な100円株価アップ(期待値が+100円となるため)のどちらかを選択することができるとすれば確実な100円アップを選択するような態度である。

逆に、損失が出ている領域においては、逆のリスク愛好的な態度になる。例えば、投資家が確実な100円の株価ダウンと0円か200円が50%の確率で起きる不確実な100円株価ダウン(期待値が-100円となるため)のどちらかを選択することができるとすれば不確実な100円ダウンを選択するような態度である。

これらの結果は、投資家の態度を非常によく示したものであるの実際にこの株式に投資をしているとして、1,000円の株価が1,050円や1,100円くらいになるときの満足度は大きく、またリスク回避的であるから、利益の確定に動く傾向が出る。

逆に、株価が950円や900円になったときの主観的な価値の減少は大きく、さらにリスク愛好的、つまリリスクを冒してでも損失を挽回しようとする傾向が表れる。つまり、なかなか損切りができない状況を表しているのである。

さらに、2種類の株式からなるポートフオリオを保有し、図表に示された価値関数を考える。ポートフォリオは利益200の領域に属している。

つまり、若干の利益が出ている状態である。しかしながら、投資家はそれぞれの株式を別々に評価することがある。

1つの株式は利益200超えに属しており大きな利益が出ている。もう1つの株式は損失200の領域に属しており、若千損失が出ている。

このとき、投資家はポートフオリオとして利益が出ていることに安心し、損失を出している株式を売れないことがある。

なぜなら、損失200の領域では微小な損失改善による主観的価値の増大が大きいからであり、このような行動は合理的な投資行動を阻害することになる。

このように、人間の意思決定プロセスには合理的とは考えられない行動が多くみられる。

その一部を、行動ファイナンスの主要理論の1つであるプロスペクト理論によって説明するなど市場関係者の非合理性を想定することが市場を理解する上で合理的であると考え、理論と現実を結びつける役割を果たす試みも続けられている。

ではまた。

 

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