各種所得金額の計算と税金

所得金額の計算と税金:基本を理解する

所得金額の計算と税金に関する理解は、個人の財務計画と税負担を最適化する上で重要です。所得税は、個人の年間総所得から必要経費や各種控除を差し引いた課税所得に基づいて計算されます。ここでは、所得金額の計算方法と税金について基本的な概念を解説します。

所得金額の計算

  1. 総所得の把握
    年間に得た全ての所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)を合算します。
  2. 必要経費の差し引き
    事業所得や不動産所得など、特定の所得については、所得を得るために必要だった経費を差し引くことができます。
  3. 各種控除の適用
    所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除など)や社会保険料控除、医療費控除など、適用可能な控除を適用して所得金額を算出します。

税金の計算

  • 課税所得の算出
    総所得から必要経費と所得控除を差し引いた額が課税所得です。
  • 税率の適用
    課税所得に応じた税率(累進課税)を適用して、所得税額を計算します。日本では、課税所得に応じて数段階の税率が設定されています。
  • 住民税の計算
    所得税の計算が終わった後、同じく課税所得に基づいて住民税が計算されます。住民税には均等割と所得割があり、所得額に応じて加算されます。

税金対策

  • 所得控除の最大化
    所得控除を最大限活用することで、課税所得を減らし、納税額を軽減できます。
  • 前払い医療費の活用
    年末にかかる医療費を翌年の医療費控除の対象にすることで、税負担を軽減することが可能です。
  • iDeCoやつみたてNISAの活用
    個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISAなど、税制優遇措置が適用される投資制度を活用することも、長期的な税負担軽減につながります。

所得金額の正確な計算と税金に関する基本的な知識は、個人の財務健全性を保つために不可欠です。計画的な税金対策を行うことで、無駄な税金の支払いを避け、資金を有効に活用することが可能になりま

所得税における所得の分類と計算

所得税の計算において、所得はその発生源に基づき10種類に分類されます。この分類は、所得の性質を正確に反映させ、適切な税額を算出するために必要です。以下では、各所得の種類とその計算方法について概説します。

1. 給与所得

給与、賞与、その他勤務に対する報酬からなり、給与所得控除後の金額が課税対象となります。

2. 事業所得

個人が営む事業からの利益。必要経費を差し引いた後の金額が課税所得となります。

3. 不動産所得

賃貸不動産からの収入。収入から経費を差し引いた金額が所得として計算されます。

4. 利子所得

預貯金の利子や国債の利息など、資産から生じる利子に対する所得です。

5. 配当所得

株式投資等からの配当金に対する所得。一定の条件下で源泉分離課税が適用されます。

6. 譲渡所得

不動産や株式の売却益。売却価格から取得費等を差し引いた金額が所得となります。

7. 山林所得

山林の伐採や売却から生じる所得。特定の条件を満たす場合、特例が適用されることがあります。

8. 一時所得

賞金や懸賞金など、一時的に得られる所得。一定額の控除後に課税されます。

9. 雑所得

上記のいずれにも該当しない所得。たとえば、著作権料や特許使用料などがこれに該当します。

10. 退職所得

退職金から一定の控除を差し引いた金額が所得として課税されます。

各所得ごとの計算方法

各所得の計算方法は、所得の性質に応じて異なります。事業所得や不動産所得では、実際に発生した経費を所得から差し引くことができます。一方、給与所得では一律の給与所得控除が適用され、実際の経費の有無にかかわらず控除されます。

所得税の計算において、所得の正確な分類と計算は税額を正しく算出する上で不可欠です。各所得に応じた適切な計算方法を理解し、適切な税金の申告と納付を行うことが重要です。

各種所得の金額の計算方法は、次表のとおりです。

図表2‐6 各種所得の計算方法

所得の種類 具体的内容 計算方式
利子所得 公社債、預貯金の利子、並びに公社債投資信託などの収益の分配による所得 注:源泉分離課税が原則 収入金額
配当所得 剰余金の配当、1利益の配当、剰余金の分配:基金利息、証券投資信託の収益分配などによる所得 収入金額-元本取得のための負債利子
事業所得 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業による所得 総収入金額-必要経費
不動産所得 不動産、不動産上の権利、船舶、航空機の貸付けによる所得
給与所得 給料、賃金、俸給、歳費、および賞与並びに当該性質を有する給与による所得 収入金額-給与所得控除額
雑所得 各種所得以外の所得 総収入金額-必要経費
一時所得 事業など(雑所得を除く)の所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時的な所得で労務などまたは資産の譲渡の対価の性質を有しないもの。 総収入金額-当該収入取得のための支
出金額-特別控除額(50万円)。※1/2が課税対象。
譲渡所得 資産の譲渡による所得(営利を目的とする継続的な資産の譲渡による所得を除く)注:特定のものは分離課税。 (総合課税の場合)総収入金額-(資産の取得費+譲渡費用)-特別控除額(50万円) 注:総合長期は1/2が課税対象となる。
山林所得 山林の伐採または譲渡による所得(5年超のものに限る)注:(申告)分離課税 総収入金額-植林費、伐採費など-必要経費特別控除額(50万円) 注:5分5乗方式により課税される。
退職所得 退職手当、一時恩給などおよびこれらの性質を有する給与による所得 注:(申告)分離課税 (収入金額―退職所得控‐除額)×1/2
注:勤続年数5年以下の法人役員などの退職金については1/2の適用なし

利子所得の意義と金額の計算

利子所得は、資産運用から得られる利子や収益の分配に関連する所得です。これには公社債や預貯金の利子、さらには合同運用信託や公社債投資信託などの運用投資信託からの収益分配が含まれます。この種の所得は、資産を有効に運用することで得られる収入源として重要です。

利子所得の計算方法

利子所得の計算は比較的シンプルです。受け取った利子や収益分配の総額がそのまま所得として認識されます。ただし、特定の運用商品によっては源泉徴収される税額が異なるため、実際に手元に残る金額は受け取った利子や分配額から源泉徴収税額を差し引いた金額となります。

利子所得における税制の特徴

  • 源泉分離課税:利子所得は一定条件下で源泉分離課税の対象となることがあり、税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が一般的です。この場合、受け取った利子から税金が源泉徴収され、個人が確定申告をする必要がない場合もあります。
  • 特定口座の利用:特定口座を利用することで、利子所得や配当所得に対する税金の計算や申告が簡素化されます。特定口座では、源泉徴収あり(源泉徴収税額で確定申告が不要)と源泉徴収なし(確定申告が必要)の選択が可能です。
  • 非課税制度の活用:少額投資非課税制度(NISA)やつみたてNISAを利用することで、一定の条件下で利子所得や配当所得を非課税で受け取ることができます。

利子所得は、資産運用を通じて得られる重要な収入源です。適切な税制の理解と賢い口座選択を行うことで、手元に残る収益を最大化し、資産形成を効率的に行うことが可能です。特に、非課税制度の利用は長期的な資産形成において有効な戦略となり得ます。

注意)利子所得に該当しないもの

利子所得とは一般的に資産運用から得られる利子収入を指しますが、すべての利子が利子所得に該当するわけではありません。

以下では、利子所得に該当しない特定の収入について、それぞれがどのように分類されるかを解説します。

金銭の貸付けによる利子

個人が他人に金銭を貸し付け、その利子を受け取る場合、この利子は事業所得または雑所得として分類されます。これは、貸付活動が事業の一環と見なされるか、または個別の取引と見なされるかによって異なります。

役員や退職者の勤務先預金の利子

役員や退職者が勤務先から受け取る預金の利子は、その性質上、雑所得に分類されます。この種の利子は、通常の資産運用とは異なる特別な条件下で発生するためです。

学校債および組合債の利子

学校債や組合債から得られる利子も雑所得として扱われます。これらは特定の目的や組織から発行される債券であり、その利子収入は一般的な利子所得とは区別されます。

定期積金の給付補てん金

定期積金から受け取る給付補てん金も、その性質上、雑所得に分類されます。これは、定期積金が特定の条件下で提供される補助金の形を取るためです。

国税または地方税の還付加算金

国税や地方税の還付金に付随する加算金(遅延利息)は、雑所得として分類されます。これは税金の還付プロセスに関連する特別な利子収入であり、一般的な資産運用から得られる利子とは異なります。

外貨建預金の為替差益

外貨建預金から得られる為替差益は、雑所得に該当します。これは、外貨との交換レートの変動によって生じる利益であり、通常の利子収入とは異なる性質を持ちます。

これらの例から分かるように、利子収入はその発生源や性質によって、所得税法上異なるカテゴリーに分類されることがあります。したがって、収入を正確に申告するためには、これらの区分を適切に理解することが重要です。

配当所得の金額とその意義

配当所得とは、国内外の株式や出資金から得られる配当、さらには投資信託の収益分配金などを含む所得のことを指します。この所得は、投資した資本から得られる利益の分配を受けることによって生じます。

配当所得の計算方法

配当所得の金額は、実際に受け取った配当金額そのものです。ただし、源泉徴収される税金がある場合には、その税額を含めた総額が所得として計上されます。また、特定口座を利用している場合、特定口座内での損益通算や繰り越し損失の適用によって課税所得が調整されることもあります。

負債の利子の計算と控除

負債の利子とは、投資(例えば、株式投資)に関連して発生した借入金に対する利息のことです。この利子は、投資のために借り入れた資金のコストとして発生し、特定の条件下で税務上の控除対象となることがあります。

負債の利子の計算式

負債の利子は、以下の算式により計算されます。

負債の利子=借入金利子×(投資元本の所有期間借入期間)

ここで、

  • 借入金利子は、株式などの投資に要した借入金にかかる利息の総額です。
  • 投資元本の所有期間は、投資を購入してから売却するまで、または現在までの期間です。
  • 借入期間は、借入金を受けてから返済するまでの期間です。

この算式により、投資に直接関連する期間に対応する負債の利子の部分を特定し、税務上の控除対象とすることができます。

税務上の控除

負債の利子は、投資収益を得るための必要経費として扱われ、所得税計算時に控除することが可能です。この控除を適用することで、実質的な投資コストを低減し、納税額を軽減することができます。

ただし、控除を適用するためには、負債の利子が投資活動に直接関連していることを明確に示す必要があります。また、税法による具体的な規定や制限が適用される場合があるため、事前に確認することが重要です。

負債の利子は、投資のための借入金にかかる利息であり、特定の計算式によりその控除対象額を算出します。税務上の控除を適切に利用することで、投資コストを効率的に管理し、税負担を軽減することが可能になります。控除を適用する際は、税法の規定を遵守し、必要な文書や証拠を整えることが求められます。

配当所得の意義

所得税法における配当所得の意義は、資本市場を通じて企業に投資することで得られる利益の分配を受ける行為に対して課税することにあります。配当所得は、投資者が企業の経営成績に対して間接的に参加し、その成果を共有することを可能にします。このため、配当所得に対する課税は、資本市場の健全な機能を支え、投資を通じた経済活動を促進する役割を担っています。

配当所得の税制

日本では、配当所得に対しては、20.315%(所得税15.315% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)の税率が適用されます。ただし、NISA(少額投資非課税制度)口座やジュニアNISA口座を利用した場合には、一定期間内であれば配当所得に対する税金が非課税となるなど、税制上の優遇措置が設けられています。

このように、配当所得は投資家の収益源の一つであり、その計算方法や税制には特定のルールが存在します。投資を行う際には、これらの配当所得に関する知識を有することが、より良い投資判断につながります。

注意点▼

剰余金の配当は、株式または出資に係るものに限られ、資本剰余金の額の減少に伴うものおよび分割型分割によるものを除く。

剰余金の分配と配当所得

剰余金の分配は、企業が利益を上げた後、その一部を株主に還元する形で行われます。しかし、この剰余金の分配全てが自動的に配当所得として認識されるわけではありません。配当所得にならない剰余金の分配には、いくつかの具体的な例があります。

配当所得にならない剰余金の分配の例
  1. 資本の払い戻し: 企業が資本削減を行い、株主に資本の一部を払い戻す場合、これは配当所得ではなく、資本取引とみなされます。この場合の払い戻しは、株主がもともと出資した資本の返還にあたるため、所得として課税されません。
  2. 株式の自社買い(買い取り): 企業が市場から自社株を買い戻す際の支払いも、配当所得には含まれません。これは、株式の売買取引とみなされ、株主はこの取引によって生じる譲渡益に対して譲渡所得税を支払うことになります。
  3. 内部留保による再投資: 企業が利益を株主に分配する代わりに、内部留保を増やして事業拡大や研究開発に再投資する場合もあります。このような形での剰余金の活用は、直接的な株主への分配とはみなされず、配当所得とはなりません。
  4. 特定の非課税分配: 一部の特定条件を満たす分配金(例えば、特定の非営利組織からの分配など)は、税法上非課税扱いとされ、配当所得には含まれません。

剰余金の分配が全て配当所得となるわけではなく、その性質や企業の取り扱いによって異なる税法上の扱いがあります。投資家は、受け取る分配金がどのカテゴリーに当てはまるかを理解し、適切な税務申告を行う必要があります。これにより、税務上の誤解を避け、適切な税金を支払うことができます。

基本的な課税の区分
区 分 課税方法
下記以外の配当金 総合課税、
申告分離課税
公社債投資信託および公募公社債など運用投資信託注1以外の証券投資信託の収益分配金 特定株式投資信託注2など(ETF)
公募株式投資信託など
私募公社債など運用投資信託など 源泉分離課税

 

注意点▼

注1:公社債投資信託、公募公社債など運用投資信託は利子所得に分類される。
注2:一定の上場株式に対して投資運用するもののうち、その受益証券が証券取引所に上場されている証券投資信託である。日経300株価指数連動型上場投資信託などがこれにあたる。

配当所得の申告不要制度

配当所得に関しては、税制上、総合課税、申告分離課税、または申告不要のいずれかを選択することが可能です。この中で「申告不要」とは、配当所得を他の所得と総合せずに、一定の源泉徴収税額だけで納税を完了させる制度を指します。申告不要制度を利用することで、簡便に税務処理を完了させることができます。

申告不要制度の適用条件

申告不要制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります:

  • 源泉徴収税額が適切に徴収されていること:配当所得に対する源泉徴収が適切に行われ、納税者が別途確定申告を行わずとも税務上の義務が完了する状況であること。
  • 他の所得との総合課税を行わないこと:配当所得を他の所得と合算せず、独立した所得として扱う選択をすること。
利点

申告不要制度を利用することで得られる主な利点は以下の通りです:

  • 手続きの簡素化:確定申告の手続きが不要になるため、税務処理が簡素化されます。
  • 時間と労力の節約:確定申告にかかる時間や労力を節約し、より効率的な税務管理が可能になります。
注意点

申告不要制度を利用する際には、以下の点に注意が必要です:

  • 選択の確認:申告不要制度を選択することで、配当所得に関する税務処理が完了するため、他の所得との合算が行われないことを理解し、適切な選択を行うことが重要です。
  • 源泉徴収税額の確認:源泉徴収税額が適切に計算・徴収されているかを確認し、必要に応じて金融機関等に問い合わせることが推奨されます。

申告不要制度は、配当所得に関する税務処理を簡素化し、納税者にとって便利な選択肢の一つです。自身の税務状況に合わせて、この制度の利用を検討することが望ましいです。

図表2‐7 配当の課税

配当の支払いを受ける日
平成26年1月1日以後
上場株式など(大口株主を除く) 所得税 源泉15%注4・総合課税
源泉15%注4・申告分離課税注3
金額にかかわらず申告不要可注2
住民税 5%配当割注4.総合課税
5%配当割注4・申告分離課税注3
金額にかかわらず申告不要可注2
上場株式など(大口株主注1 所得税 源泉20%・総合課税
少額配当のみ・申告不要可注2
住民税 総合課税
非上場株式など 所得税 源泉20%・総合課税
少額配当のみ・申告不要可注2
住民税 総合課税

 

注意点▼

注1:発行済株式総数の3%以上を所有している株主。
注2:申告不要の場合も源泉徴収、配当割あり。
注3:申告分離課税を選択した場合には、上場株式などの譲渡損失と上場株式などの配当と通算できる。また、平成22年1月からは特定口座内で損益通算可能。
注4:平成26年1月1日以後に支払いを受けるべき上場株式などの配当などおよび譲渡所得などについては従前の軽減税率が廃止され、本則である所得税15%、住民税5%の税率により源泉徴収されている。なお、平成26年1月1日から平成35年12月31日までの期間内に得た①非課税口座内の上場株式などの配当など②非課税口座内の上場株式などの譲渡所得などの非課税措置が一定要件のもと講じられている。
注5:平成25年1月1日以後に支払われる配当などについて、上記の源泉所得税のほか、源泉所得税額に21%の税率を乗じて計算した金額が、復興特別所得税として源泉徴収されている。

次回は不動産所得にかかる税金について解説します。

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