相続税の納税方法(延納について)
私たちに架されている税金は、金銭による一括納付が原則です。
しかし、相続税は財産を課税対象としているという点で、他の税目とは異なります。
したがって、金銭による一括納付が困難な場合も考えられます。
ですから、年賦による延納や相続により取得した財産による物納が一定要件のもとに認められているわけです。
また、申告または更正、決定により、納付すべきことが確定した相続税額は、納付期限までに国に納付する必要があります。
具体的な納付期限は、下表のとおりその区分によって異なります。
申告の区分など | 納付期限 |
期限内申告にかかる相続税額 | 期限内申告書の提出期限 |
期限後申告または修正申告にかかる相続税額 | その申告書を提出した日 |
更正または決定にかかる相続税額 | 更正の通知書または決定の通知書が発せられた日の翌日から起算して1カ月を経過する日 |
もしも相続税を納付期限までに納付しなかった場合には、延滞税を納付しなければなりません。
また、延滞税はその期間によって次のように決まっています。
納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「特例基準割合(※)+1%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表 の割合が適用されます。
納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「特例基準割合(※)+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表 の割合が適用されます。
※ 特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
期間 割合 平成26年1月1日から平成26年12月31日 2.9% 9.2% 平成27年1月1日から平成27年12月31日 2.8% 9.1% 平成28年1月1日から平成28年12月31日 2.8% 9.1% 平成29年1月1日から平成29年12月31日 2.7% 9.0% 平成30年1月1日から平成30年12月31日 2.6% 8.9% 国税庁ホームページから抜粋
相続税の延納について
税金は金銭で一括納付することを原則としていることは冒頭にも申し上げました。
しかし、相続税は一時に多額の納税資金を必要とすることから、取得した財産の内容や相続人などの状況によっては、あらかじめ定められた期限までに金銭納付することが困難なケースもあります。
そこで相続税法では一定の要件を備えた場合には、延納が認められます。
延納の年割額は延納税額を延納期間で除した金額です。
また、延納する際には担保の提供が必要であり、延納期間中には利子税も課されることになります。
延納の申請期限は、その基因によって下表の通り異なります。
納付すべき税額の基因となった事項 | 延納の申請期限 |
①期限内申告書 | これらの申告書の提出期限 |
②相続財産法人にかかる財産分与が合った場合の修正申告書 | |
③期限後申告書 | これらの申告書の提出の日 |
④②以外の修正申告書 | |
⑤更生または決定 | 更正通知書または決定通知書が発せられた日の翌日から起算して1カ月を経過する日 |
⑥物納を撤回する時 | 物納撤回申請するとき |
延納が可能になる要件
また、相続税を延納するには、以下の要件などを満たさなくてはなりません。
- 金銭で一時に納付することが困難であること。(延納税額は納付困難な金額を限度)
- 相続税額が10万円をこえること。
- 担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は不要)
- 申告期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出し、所轄税務署長の許可を得ること。
金銭で納付することを困難とする金額とは
金銭納付を困難とする理由書をもとに算定します。
納税義務者の相続した現預金の額ー相続債務など+納税者固有の現預金などー当面の生活費(3カ月分)および当面の事業経費(1カ月分)。
上記算出金額の範囲内とされており、納税義務者自身の収入の状況なども考慮されます。
※現金預金のほか、市場性のある財産で速やかに売却などのできる換価の容易な財産も考慮。
次に延納の担保とその評価方法についてです。
延滞の担保評価
担保の価額は、延納税額に完納されるまでの延滞税、利税など担保の処分費用を加算したものになります。
また、下表で示す通り、その担保の種類によって見積価格は異なります。
担保の種類 | 見積り価格 |
国債および地方債 | 国債:額面金額 地方債:時価の80%以内 |
社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの | 時価の80%以内 |
土地 | |
建物、立木など | 時価の70%以内 |
税務署長が確実と認める保証人の保証 | 保証人からの徴収見込額 |
また、利子税はその区分や延滞期間によって次のように決まっています。
区分 | 延滞期間 | 割合 | 特例割合 | |
不動産などの割合が75%以上の場合 | ①動産など | 10年 | 5.40% | 1.40% |
②不動産など(③除く) | 20年 | 3.60% | 0.90% | |
③計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木 | 20年 | 1.20% | 0.30% | |
不動産などの割合が50%以上75%未満 | ④動産など | 10年 | 5.40% | 1.40% |
⑤不動産など(⑥を除く) | 15年 | 3.60% | 0.90% | |
⑥計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木 | 20年 | 1.20% | 0.30% | |
不動産などの割合が50%未満の場合 | ⑦一般(③、⑨、⑩を除く) | 5年 | 6.00% | 1.50% |
⑧立木の割合が30%をこえる場合の立木(⑩を除く) | 5年 | 4.8% | 1.20% | |
⑨特別緑地保全地区内の土地 | 5年 | 4.20% | 1.00% | |
⑩計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木 | 5年 | 1.20% | 0.30% |
※延滞特例基準割合の変更があった場合には特例割合も変動する
※国税庁ホームページを参照
また、還付加算金の割合は、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、当該基準割合になります。
利子税の計算について
利子税は延納相続税額を、不動産などに係るものと、動産などに係るものに区分して計算します。
具体的には、、
1回目の分納分
延納税額×適用される利子税の割合×納期限などの翌日から分納期限までの日数/365日
2回目の分納分
(延納税額ー1回分)×適用される利子税の割合×前回の分納期限の翌日からその回の分納期限までの日数/365日
次回は物納できる財産とできない財産などについて解説します。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。