相続税の申告と納付
相続税では、配偶者の税額軽減の適用がないものとして相続税額の計算をします。
その上で課税価格の合計額が基礎控除額をこえ、納付すべき相続税額がある場合には、その相続税を納付する必要があります。
※納税義務者は、相続人または受遺者および相続時精算課税制度適用者。
※基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
ただし、申告を必要としますが、次に掲げる規定の適用を受けることができます。
相続税に関しての特例
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地などの相続税の課税価格の計算の特例
- 相続財産を公益社団法人などに寄附した場合の非課税
- 特定計画山林の相続税の課税価格の計算の特例
上記の内、申告書の提出期限までに未分割の財産がある場合は、法定相続分で分割したものとして課税価格を計算し申告します(相法55)。
相続時精算課税制度適用者の場合
相続税額から控除しきれない贈与税額がある場合には還付を受ける事ができますが、やはりそのための申告書を提出する必要があります。
申告書の提出期限
その相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に提出する必要があります(相法27)。
※知った日とは自己のために相続があったことを知った日とされている(相基通27-4)。
申告書の提出先と納税地
被相続人の死亡時の住所が国内にある場合
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時における住所地の所轄税務署長になります。
被相続人の死亡時の住所が国外にある場合
無制限納税義務者または遺贈により財産を取得していない相続時精算課税適用者 | その者の住所地の所轄税務署長が申告書の提出先。 |
制限納税義務者など | その制限納税義務者などが自ら納税地を定め、その納税地の所轄税務署長に申告。
※申告がないときは、国税庁長官がその納税地を指定し通知。 |
申告義務の承継
申告書の提出期限前にその申告書を提出しないで死亡した場合
相続人または包括受遺者は、その相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に、その死亡した者が本来提出すべきであった相続税の申告書を当該相続税に係る納税地の所轄税務署長に提出することになります。
- 納税地:当該申告にかかる被相続人の住所地
※納税地の所轄税務署長に提出するのは、被相続人の死亡時の住所が国内にある場合。
所得税の準確定申告(所得税法124)
所得税の納税義務者が死亡した場合には、その相続人は相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に被相続人に係る所得税の確定申告をし、所得税を納付しなければなりません。
準確定申告が必要な場合
- 確定申告をすべき者が、その年の翌年1月1日から3月15日までの間に申告書を提出しないで死亡した場合
- 年の途中で死亡した者が、死亡した年分の所得税について確定申告しなければならない者に該当する場合
死亡した者が所得税の還付などを受けられる場合
還付申告は、権利であって義務ではありませんが、還付を受けるには還付申告書を提出する必要があります。
申告書の記載事項について
相続税の申告書に記載しなければならないこと。
- 被相続人の氏名および住所または居所
- 課税価格および相続税額
- 相続税の課税価格の合計額およびその合計額を基礎として算出した相続税の総額その他相続税額の計算の基礎となる事項
- 納税義務者の氏名および住所または居所
- 納税管理人が申告書を提出する場合には、その納税管理人の氏名および住所並びに納税地
- 相続または遺贈により取得した財産の種類、数量、価額および所在場所の明細、その財産の取得の事由並びにその取得年月日相続時精算課税に関する事項
- 相続税の非課税財産に関する事項
- 債務控除および相続税額の控除に関する事項並びに相続税の加算に関する事項
- その他参考となる事項
上記の記載すべき事項の一部について記載のない申告書の提出があった場合
その欠陥を税務署長が照会をすることにより補正することができる程度のものなら、その提出があった日において有効な申告書の提出があったものとして取り扱ってくれます。
申告書の添付書類について
被相続人の死亡の時における財産および債務、その被相続人から相続または遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産または承継した債務の各人ごとの明細などを記載した明細書を添付しなければならないことになっています。
明細書に記載しなければならない事項
- 被相続人の氏名およびその死亡の時にお1する住所または居所
- 被相続人の死亡の時における財産の種類、数量、価額および所在場所の明細
- 被相続人の死亡の時における債務の債権者別の種類および金額の明報並びに債権者の氏名および住所もしくは居所または名称および本店もしくは主たる事務所の所在地
- 被相続人から相続または遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産または承継した債務の各人ごとの明細
- 被相続人の相法第19条の3(未成年者控除)に規定する相続人に関する事項
- その他参考となるべき事項
特別の事由による場合
租税の申告書には、通常それぞれ提出期限が定められていてます。
ですから、期限後に提出された申告書は「期限後申告書」というカタチで扱われます。
そして、期限後中告書については、原則として無申告加算税というペナルティーが課されることになります。
さらに、法定納期限の翌日から延滞扱いになり、延滞税も課されるので提出期限は守ったほうがいいでしょう。
ただし、相続税法では、後発的に生じた事実によって新たに相続税の納税義務が生ずることとなった場合には、期限後申告を行うことができることになっています。
具体的には以下のような場合に認められています。
- 申告書提出後の未分割財産の分割確定
- 認知、相続人の廃除、相続の放棄の取消しなどによる相続人の異動
- 遺留分の減殺請求による返還すべき額が確定
- 遺贈にかかる遺言書の発見、遺贈の放棄の発生など
上記の事由でもそのケースによって手続方法が異なります。
- 新たに申告書を提出すべきこととなった場合は、期限後申告書を提出する。
- 当初申告した税額が不足の場合は、修正申告書を提出する。
また、申告または決定にかかる税額が過大の場合は、「更正の請求」をすることができます。
ただし、事由発生を知った日の翌日から4カ月以内に請求することが条件です。
つまり、通常、修正申告の提出などがあった場合でも延滞税などの附帯税を課されますが、上記に掲げる事由による場合には、期限内申告書あるいは「修正申告書」の納付期限の翌日から申告書の提出があった日までの期間は延滞税は課されないということです。
更正の請求
計算誤りなどにより中告した税額が過大である場合、法定申告期限から5年以内に限り、務署長に更正の請求をすることができます(通則法23)。
しかし、相続税においては法定申告から5年以内に更正の請求ができないようなケースもあります。
そのようなケースを救済するために、特別な事由などが生じたことを知った日の翌日から4カ月以内に限り、更正の請求をすることが認められています。
修正申告
申告書の提出後に財産の計上漏れがあるなど申告した税額に不足がある場合は、税務署長の更正があるまでは修正申告書を提出できます。
更正および決定
一般的には、申告がない場合、あるいは申告があったとしても、その申告内容が間違っている場合は、更正または決定により適正な税額が決定されることになります。
しかし、相続税においては特別の事由がある場合には特例があります。
そのことについては、次回解説させていただきたいと思います。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。