特定同族会社事業用宅地などの相続税の課税価格の計算の特例

今回の相続プランのガイダンスは、引き続き小規模宅地などの相続税の課税価格の計算の特例についてです。

小規模宅地などの相続税の課税価格の計算の特例Ⅱ

前回は特例の概要から貸付事業用宅地など(措法69の4③四)までお話しました。

今回は特定同族会社事業用宅地などについてからです。

特定同族会社事業用宅地など(措法69の4③三)

事業用宅地のうち、同族会社の事業の用(不動産貸付業などを除く)に供している宅地について、一定の要件を満たせば、特定事業用宅地などと合せて400㎡を限度として80%減額されます。

要件は以下の4つです。

1,持株要件

被相続人および親族その他特別関係者の相続開始直前における持株割合が50%超である同族会社の事業用敷地であること。

2,貸付要件

その敷地または建物を、同族会社に対して相当の対価を得て継続的に貸し付けていること。

3,取得者要件

その同族会社の役員(相続税申告期限において)である親族が、その宅地を取得し、相続税申告期限まで引き続き所有していること。

4,事業継続要件

相続税申告期限まで引き続きその同族会社の事業の用に供していること。

国営事業用宅地など(措通69の4-28)

特定郵便局の建物の敷地の用に供されている宅地で一定要件を満たすものは、特定事業用宅地などおよび特定同族会社事業用宅地などと合せて400㎡を限度として80%減額になります。

注意点▼

平成19年10月1日以後の相続・遺贈で取得した場合は、この取扱いの適用はない。ただし、郵政民営化法の規定により、被相続人などが平成19年10月1日前から郵政局舎を旧日本郵政公社に貸し付けていた場合で、一定要件を満たすときは引き続き80%評価減の対象となる。

ー棟の建物の―部が特定居住用宅地など

一棟の建物の一部を被相続人などの居住の用に供していて、かつ、その居住用宅地が一定の条件を満たす場合は、その宅地などのうち特定居住用宅地などの部分と、それ以外の部分ごとに按分して減額割合を適用することができます。

居住用と貸付用が一棟の建物に混在している場合

例えば、敷地の自用地価額が1億9,200万円の場合の課税価格を計算してみましょう。

  1. 居住用部分に対応する敷地は、特定居住用宅。
  2. 適正な対価て賃貸契約した借家人がいる。
  3. 借地権割合70%、借家権割合30%。
  4. 各階とも床面積は同じ。

※上記1~4の条件を全て満たしているとする。

  1. 居住用敷地に対応する評価額:1億9,200万円×1/5=3,840万円①
  2. 貸家建付地に対応する評価額:1億9,200万円×4/5×(1-0.7×0.3×100/100)=12,134万4,000円②

①+②ー(①×80%+②×170.9㎡/192㎡×50%)

相続税の課税価格は75,019,600円になります。

なお、上記の170.9㎡に関しては、200㎡ー48㎡×200/330という計算の結果です。

※居住用部分の地積240㎡×1/5=48㎡、貸付用部分の地積240㎡×4/5=192㎡ということから特例適用地積は上記になります。

居住用、貸付用、事業用が一棟の建物に混在している場合

一棟の建物に「特定居住用宅地など」「特定事業用宅地など」「国営事業用宅地など」および「特定同族会社事業用宅地など」が含まれている場合には、「特定居住用宅地など」以外の部分は対象になりません。

つまり、敷地の利用状況(建物の用途別の床面積)に応じて按分し、調整計算をすることになります。

では、特定居住用宅地などと特定事業用宅地などが混在している場合、どちらを優先すべきでしょうか?

特定居住用宅地などと特定事業用宅地などがある場合どちらを優先すべきか?

被相続人の遺産のうち、被相続人の自宅の敷地と事業用店舗の敷地がある場合、相続税の課税価格が最も少なくなる方法を選択する必要があります。

では、実際に以下のようなケースについて考えてみましょう。

地積 路線価
自宅A 165㎡ 60万円/㎡
事業用店舗(貸付)B 120㎡ 100万円/㎡居住用宅地の適用対象面積の上限を330m2(平成26年

まず、最初に各宅地の自用地価額を求めます。

  1. 特定居住用宅地など(自宅の敷地):60万円×165㎡=9,900万円
  2. 貸付事業用宅地など(貸店舗の敷地):100万円×120㎡=1億2,000万円

次に小規模宅地などの減額特例の適用を受ける宅地を選択します。

特例対象宅地の区分に応じ、それぞれの減額金額を算定することになりますが、その際、換算金額(減額対象地積の違いを織り込んだもの)を算出して比較する必要があります。

特定居住用宅地

1㎡当たりの自用地価額×80%×330/200(換算割合)=60万円×80%×330/200=79万2,000円

貸付事業用宅地など

1㎡当たりの自用地価額×80%×50%=100万円×50%=50万円

上記2つの1㎡当たりの換算後評価額が高い宅地などから順に適用可能限度地積に達するまで選択すると、減額される金額が大きくなります。

つまり、相続税の課税価格が少なくなるということです。

この事例の場合は、、、

79万2,000円>50万円なので、特定居住用宅地などから貸付事業用宅地などの順で選択する方がいいと判断できます。

今度は適用可能限度地積を算定します。

特定居住用宅地(A)を優先的に選択した場合

A地165㎡が特例対象。

この場合の貸付事業用宅地など(B地とする)の適用地積は100㎡になります。

※200㎡ー165㎡×200/330

貸付事業用宅地(B)を優先的に選択した場合

B地120㎡が特例対象。

貸付事業用宅地などの限度地積は200㎡でしたね。

そのため「B地(120㎡)」だけでは特例適用地積を80㎡使い残していることになります。

この使い残し地積80㎡をA地(特定居住用宅地)で使うためには、適用地積の調整計算が必要になります。

A地の特例地積を仮にYとします。

Y×200/330+120=200㎡

Y=(200ー120)×330/200=132㎡

252㎡ー265㎡=-13㎡

特定居住用宅地(A)を優先的に選択した場合よりも適用地積が13㎡少なくなります。

最後に相続税の課税価格を計算します。

特定居住用宅地など(A)から適用の場合

A地:9,900万円ー9,900万円×80%=1,980万円

B地:1億2,000万円ー1億2,000万円×100㎡/120㎡×50%=7,000万円

課税価格合計 8,980万円

貸付事業用宅地など(B地)から適用の場合

貸付事業用宅地など:1億2,000万円ー1億2,000万円×50%=6,000万円

特定居住用宅地など:9,900万円ー9,900万円×132㎡/165㎡×80%=3,564万円

課税価格合計 9,540万円

貸付事業用宅地など(B地)から適用した場合の納税額の方が560万円多くなります。

したがって、特定居住用宅地などから適用した方がいいということになります。

留意点(措法69の4④)

小規模宅地などの特例は、相続税の申告期限までに遺産分割が完了している宅地でなければ適用されません。

つまり、申告期限において未分割の宅地は適用になりません。

しかし、申告期限後3年以内に分割された場合には、適用を受けることができます。

ただし、この場合には、申告期限までに申告期限後3年以内の分割見込書を提出する必要があります。

この特例は法人は適応されません。

また、個人でも贈与税については適用になりません。

 

そしてまた、この特例は一定の要件のもとに、次回解説する予定の特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例と併用が可能です。

以上、小規模宅地などについての特例の適用の有無、減額割合の判定などについて解説しましたが、ここで解説した以外にも細かい要件が定められています。

例えば、建物所有者と敷地所有者が異なる場合の地代や家賃の授受いかんによって適用の可否が異なります。

したがって、実際の案件については専門家に聞く、若しくは専門書を読むなどして慎重に判断する必要があるでしょう。

次回は山林の課税価格の計算や特例などについて解説します。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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