生命保険と税金(満期保険金、相続税評価額)

個人が死亡保険金を受け取った場合の課税関係は、契約者、被保険者と受取人との関係により決まる。

今回は、死亡保険金の受け取り、満期保険金の取扱、保険金を年金払で受ける場合の課税、その他の保険金給付金と課税関係について解説しよう。

相続税の課税を受ける場合(契約者=被保険者≠受取人の場合)

契約者(保険料負担者)と被保険者が同一の契約の死亡保険金は、相続税の課税対象となる。

死亡保険金や死亡退職金などは、本来の相続財産ではないが、その経済的価値に着目し、課税の公平の見地から相続財産とみなして課税する。

このような財産を、「みなし相続財産」という。

相続人が受け取った死亡保険金は、法定相続人の数に応じて一定額の非課税金額がある(図表5-7参照)。

図表5-7 死亡保険金の非課税金額

保険金額各人の取得した保険金に対する非課税金額
相続人が取得した保険金の合計額が(500万円×法定相続人の人数)以下の場合相続人が取得した保険金額
相続人が撃得レた保険金の合計額が(500万円×法定相続人の人数)をこえる場合(500万円×法定相続人の数)×相続人が取得した金額/各相続人が取得した保険金の合計額
注意!法定相続人の数とは、相続放棄者を含む相続人の数をいう。

被相続人に養子がある場合、法定相続人の数に算入できる養子の数は、その被相続人に実子がある場合は1人、実子がなく養子の数が2人以上の場合は2人とする。

所得税などの課税を受ける場合(契約者=受取人の場合)

契約者(保険料負担者)と受取人が同一の契約の死亡保険金は、一時所得として所得税など(所得税および住民税)の課税対象となる。

その年中に他に三時所得がない場合、課税対象となる金額は以下の算式により計算される。

  • 一時所得の金額={死亡保険金―正味払込保険料総額}-特別控除額(50万円)注:払込保険料総額―配当金の合計額
  • 総所得金額に算入する金額=一時所得の金額×1/2

贈与税の課税を受ける場合(契約者≠被保険者≠受取人の場合)

契約者(保険料負担者)、被保険者、保険金受取人がそれぞれ異なる場合、死亡保険金は贈与税の課税を受ける。

贈与税の課税対象となる保険金は、その年中に個人からの贈与により取得した財産の価額と合算され、その合計額から110万円の基礎控除額を差し引いた部分について課税される(暦年課税の場合)。

従って、その年中に贈与により取得した財産が保険金だけである場合、110万円以下の金額については結果的に非課税となる。

図表5‐8 死亡保険金を受け取つたときにかかる税金

契約者被保険者受取人税種備考
AA相続人相続税法定相続人の数に応じた非課税金額がある
AA相続人以外相続税
(遺贈)
相続人以外の人が、保険金をAから遺贈により取得したものとみなされる。相続税の課税対象だが、非課税金額の適用はない。
ABA所得税など
(一時所得)
一時所得の計算の際には保険金から正味払込保険料総額を差し引く。
ABC贈与税

満期保険金の取扱い

個人が満期保険金を受け取った場合の課税関係は、契約者(保険料負担者)と受取人の関係で決まる。

所得税などの課税を受ける場合(契約者=受取人)

【原則的な取り扱い】

契約者(保険料負担者)と満期保険金の受取人が同一の場合の満期保険金は、一時所得として所得税などの課税対象となる。

受取額が正味払込保険料の総額に満たない場合において、その年中に他の契約の満期保険金など一時所得の対象となるものがあれば、受け取った保険金や支払った保険料を合算して計算する。

【源泉分離課税になる取り扱い】

生命保険契約のうち、保険期間5年以下の一時払養老保険などは、金融類似商品として、差益に対して20.315%の源泉分離課税が行われ、契約者=受取人の場合は、これで課税関係が完結するので、別途確定申告の必要はない。

源泉分離課税される税金の計算は以下のとおりだ。

差益金={満期保険金(解約返戻金)+配当金}-(一時払保険料)
源泉徴収額=差益金×20.315%

例えば、源泉分離課税について平成25(2013)年1月から平成49(2037)年12月までの25年間は、所得税15%の部分に復興特別所得税(所得税額に対して2.1%)が加算されて15.315%の税率になる。

これに住民税5%を加えた20.315%が適用税率ということになる。

また、5年満期の一時払養老保険であっても、死亡保険金については源泉分離課税は行われず、本節「1.死亡保険金の取扱い」で説明した取扱いがなされる。

なお、一時払養老保険のほか、以下の要件にすべてあてはまる契約も源泉分離課税の適用を受ける。

  • 保険期間が5年以下のもの(保険期間が5年をこえる場合でも、5年以内に解約した場合も含む)。
  • 一時払いまたはこれに準じる保険料の払い方をしていること。一時払いに準じる払い方とは、契約時から1年以内に保険料総額の2分の1以上の払込みがある場合、または2年以内に保険料総額の4分の3以上の払込みがある場合をいう。
  • 死亡保険金が満期保険金と同額か、または満期保険金より少なく、かつ災害死亡保険金の倍率が5倍未満の契約具体的には以下のとおり。
  • 平準払いの確定年金。有期年金や養老保険を全期前納して5年以内に解約した場合
  • 5年超満期の一時払養老保険を5年以内に解約した場合
  • 一時払いの有期年金・確定年金を5年以内に解約した場合

贈与税の課税を受ける場合(契約者≠受取人)

契約者(保険料負担者)以外の人が満期保険金を受け取った場合には、贈与税の課税対象となる。

なお、源泉分離課税されるのは、あくまでも所得税などの対象となる契約だ。

したがって、贈与税の対象となる契約者と保険金受取人が異なる契約については、源泉分離課税は行われない。

図表5…9 満期保険金(解約返戻金)を受け取つたときにかかる税金

契約者被保険者受取人税種課税内容
AAA所得税など
(一時所得)
  • (保険金二正味払込保険料総額-50万円)×=一時所得の課税対象額
  • 5年満期の‐時払養考保険など、または5年超の一時払養老保険などの5年以内の解約は、20.315%の源泉分離課税
ABA
ABC贈与税保険金一110万円=贈与税課税対象額(暦年課税の場合:他に贈与財産がある時は贈与税課税対象額に加算)
AAB
ABB

保険金を年金払いで受け取る場合の課税

死亡保険金や満期保険金が支払われる際、契約者(保険料負担者)からの申し出により、一時金に代えて、年金として分害Jして受け取る場合の課税は原則として以下のようになる。

図表5-10 保険金の「年金払い」の課税

受取人区分年金払いの申し出の時期課税関係
保険金受取事由発生時年金受け取り時
契約者死亡 保険金死亡日前なし所得税など(雑所得)
死亡日以降保険金に所得税など(一時所得)課税
満期保険金満期日前なし
満期日以降保険金に所得税など(一時所得)課税
契約者以外死亡保険金死亡日前に契約者より申し出があり、死亡日以後に受取人より変更の申し出がないとき「年金の権利の価額(年金受給権).に相続税または贈与税課税
死亡日以降保険金に相続税または贈与税課税

保険金を据え置きにした場合の課税

死亡保険金または満期保険金をすぐに受け取らずに、据え置く場合(期間は会社によって異なる)、保険金を受け取らなくても保険金に対しては前述のとおりに課税され、据置金に付く毎年の利息は所得税など(雑所得)の課税対象となる。

その他の保険金給付金と税金

日障害給付金、入院給付金、高度障害保険金の課税

身体の傷害または疾病を原因として支払いを受ける障害給付金、入院給付金、高度障害保険金は、被保険者本人が受け取る場合はもとより、被保険者の配偶者や直系血族あるいは生計を一にするその他の親族が受け取る場合も非課税扱いだ。

なお、年間の医療費の額が10万円または所得金額の合計額の5%のいずれか少ない金額をこえると、確定申告することによって医療費控除を受けることができる。

ただし、入院給付金や手術給付金など医療費を補填する目的で支払われるものについては、申告の際、医療費の額から差し引く必要がある。

生前給付保険金の課税

特定疾病保険金やリビングニーズ特約保険金といった生前に受け取る保険金は、高度障害保険金と同様に所得税は非課税扱いだ。

ただし、その後被保険者が死亡し、受け取った保険金が現金として残れば、相続財産として相続税の課税対象になる。

生命保険契約の権利の相続税評価額

相続開始時において、被相続人が契約者(保険料負担者)であり、被相続人以外の人が被保険者となっている保険契約がある場合は、その契約を引き継いだ者が、「生命保険契約に関する権利」を相続または遺贈により取得したものとして相続税の課税が行われる。

「生命保険契約に関する権利」の相続税評価額は、解約返戻金額である(財産評価基本通達214)。

解約返戻金と税金

個人の契約者が受け取った解約返戻金は、所得税など(一時所得)が課税される。

以下の計算は、その年度中に他の一時所得になる金額があった場合には、合算して計算する。

  • 一時所得の金額=解約返戻金―正味払込保険料総額注_特別控除(50万円)注:払込保険料総額―配当金の合計
  • 総所得金額に算入する金額=一時所得の金額×1/2

ただし、生命保険契約のうち、一定の条件の生命保険を5年以内に解約した場合には、金融類似商品として差益に対して20.315%の源泉分離課税が行われる。

源泉分離課税された場合は、これで、課税関係は終了し、別途確定申告の必要はない。

次回は、個人年金保険の税務についてです。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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