個人年金保険にかかる税金について

今回は個人の家計分野、中でも個人年金にかかる税金などについてです。

  • 年金受給開始前における税金。
  • 開始時の年金受給権の価額。
  • 受給開始後の契約形成における課税関係の違い。

年金開始前の税金

まず、年金受給開始前に解約した場合、契約者(保険料負担者)の一時所得として課税が発生する。

ただし、契約形態によっては源泉分離課税される場合もある。

契約者生存中に契約者を変更した場合

変更した時点では課税は行われない。

元の契約者が死亡するか、解約あるいは年金受け取りが開始されたときに贈与税もしくは相続税が課税される。

例えば、保険料払込期間中に契約者を夫から被保険者である妻に変更した場合

税法上の取扱いは以下のようになる。

  1. 契約者が夫から妻に変更された時点で、権利は移転するが課税関係は生じない。
  2. 妻が年金受給開始年齢に達したとき、妻は夫から、夫の保険料に対応する部分の年金受給権を贈与・されたものとみなされて贈与税が課税される。
注意点▼

年金受給権の価額×夫が負担した正味払込保険料総額/正味払込保険料総額=夫から贈与されたとみなされる年金受給権の価額。

契約者(保険料負担者)死亡による契約者変更の場合

元の契約者が負担していた保険料部分に関する権利を、新しく契約者となった者が相続または遺贈により取得したものとみなされる。

したがって、当該権利の評価額が相続税の課税対象となる。

なお、この契約に関する権利の相続税評価額は解約返戻金額になる。

年金受給開始前に被保険者が死亡した場合

被保険者が保険料を負担していた場合

死亡給付金が支払われる。

ただし、このとき死亡給付金受取人は、相続または遺贈により死亡給付金を取得したとみなされて、相続税が課税される。

なお、死亡給付金受取人が相続人である場合は、法定相続人1人につき500万円を生命保険金の非課税金額として控除できる。

死亡給付金の受取人が保険料を負担していた場合

契約者が死亡給付金を受け取る場合、一時所得として所得税などが課税される。

被保険者および死亡給付金受取人以外の者が保険料を負担していた場合

死亡給付金受取人が、契約者から死亡給付金の贈与を受けたとみなされて贈与税が課税される。

年金受給開始時の税金

贈与税課税となる場合

年金受取人と契約者(保険料負担者)が異なる場合。

例えば、夫が保険料を負担し、妻が年金受取人というようなケース。

年金の受給開始時に、年金受取人である妻が、契約者である夫から贈与により年金受給権を取得したものとみなされ、贈与税が課税される。

贈与税の課税対象となる年金受給権の評価額は以下の算式による。

  • 年金受給権の価額×年金受取人以外が負担した正味払込保険料の総額/正味払込保険料の総額
参考▼

平成22年度税制改正により、平成22(2010)年3月31日までに締結して平成23(2011)年4月1日以後受給開始となる年金および、平成22年4月1日以後に締結した(受給開始時期は間わない)年金の給付事由発生時における年金受給権「定期金にする権利」の評価額は、年金受給権(定期金)の種類に応じて次のように計算することとなった。

確定年金

下記のうち、いずれか高い金額

a)解約返戻金相当額

b)一時金相当額

c)年金×予定利率の複利年金現価率(残存期間)

終身年金

下記のうち、いずれか高い金額

a)解約返戻金相当額

b)一時金相当額

c)年金×予定利率の複利年金現価率(余命年数)

図表6‐1 平均余命年数(抜粋)

年齢余命年数年齢余命年数
60歳222880歳811
65歳182385歳68
70歳141990歳45
75歳111595歳23
注意点▼

注:第21回(平成24(2012)年)完全生命表より抜粋(1年未満切り捨て)。

有期年金

下記のうち、いずれか高い金額

a)確定年金として計算した金額

b)終身年金として計算した金額

保証期間付終身年金

下記のうち、いずれか高い金額

a)保証期間を確定年金として計算した金額

b)終身年金として計算した金額

年金受給開始後の税金

所得の種類

生命保険会社や損害保険会社、簡易生命保険・生命共済から受け取る個人年金。

生命保険契約などに基づく年金として、公的年金などとは区別され雑所得として課税の対象となる。

雑所得の金額の計算は、次のようにして行う。

  • 雑所得の金額=総収入金額(公的年金などを除く)(1)一必要経費(2)

(1)総収入金額=基本年金額+増額年金額+増加年金額
(2)必要経費=その年に支給される年金の額×払込保険料などの総額注1/年金支給総額(見込額)注2(小数点第3位を切り上げ)

注意点▼
  • 注1:払込保険料などの総額とは、払込保険料などから年金支給開始の日前に支払いを受けた契約者配当で保険料などに充当した額を控除した額。なお、平成23(2011)年6月30日以後に受け取る年金などについては、払込保険料などの総額から、事業主が負担した当該年金契約などに係る保険料などで使用人などの給与所得に係る収入金額に含まれないものの額を控除して計算することが明らかにされた。
  • 注2:年金支給総額は、年金の種類によりそれぞれ次のように計算する。
    a)確定年金
    年金支給総額=(年金年額)×支給期間
    b)有期年金の場合
    年金支給総額(見込み額)=年金年額×支給期間の年数と年金支払い開始日における被保険者の余命年数注3終身年金の場合 の短い方の年数年金支給総額(見込み額)=年金年額×年金支払い開始日における被保険者の余命年数注3
    d)保証期間付終身年金の場合
    年金支給総額(見込み額)=年金年額×保証期間の年数と年金支払い開始日における被保険者の余命年数注3の長い方の年数
  • 注3:余命年数表の抜粋(所得税法施行令第82条の3の別表)

(本表と本章第2節図表6-1平均余命年数(抜粋)とは異なるものである。)

年金の支給開始日における年齢余命年数年金の支給開始日における年齢余命年数
55歳23年27年80歳6年8年
60歳19年23年85歳4年5年
65歳15年18年90歳3年3年
70歳12年14年95歳2年2年
75歳8年11年

源泉徴収

生命保険契約に基づく年金は、

年金額からその年金額に対応する保険料の額を差し引いた残額が源泉徴収の対象となる。

源泉徴収される場合の税率は1021%で、源泉徴収された税額は確定申告により精算する。

また、貯蓄型の個人年金については、利息の受取時に利息に対して20.315%の税金が源泉徴収される。

年金受給者死亡時

年金受給が開始した確定年金や保証期間付終身年金の保証期間中に年金受給者が死亡した場合。

残存期間分の年金が継続受給者に支払われる。

この場合、継続受給者が年金受給権を相続により取得したものとみなして、年金受給権に対し相続税、その後の年金に対し所得税など(雑所得)の課税が行われる。

年金一括受給時の税金

保証期間付終身年金の場合

保証期間分の年金を一括して受け取ることができる。

しかし、保証期間経過後に被保険者が生存している場合は、年金が支払われるので、一括して受け取る金額は雑所得として所得税などが課税される。

確定年金の場合

一括して受け取ると、その時点で契約は消滅する。

従って、一括して受け取った金額は一時所得として所得税などが課税される。

なお、保証金付として一時金が保証されている終身年金は、一時所得として課税される。

また、一時払いで据置期間(運用期間)5年の年金を一括受給した場合。

確定年金、一時金が保証されている終身年金を問わず金融類似商品として源泉分離課税される。

次回は「保険機能付き投資信託と投資信託の違い」です。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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