断片から統合へ──AQALで「見る・つなぐ・動かす」を設計する
21世紀は情報の洪水と言われますが、断片は増えても納得は増えない――そんなジレンマを多くの人が感じています。
そこで役立つのが、視点を“並べて比べる”だけでなく“つなげて使う”ための地図です。本稿では
AQAL(All Quadrants, All Levels)という統合フレームの要点を、実務・生活・学習に落とし込む形で解説します。

AQALとは何か(手短ガイド)

AQALは、物事を内面/外面 × 個人/集合の四視点(四象限)で点検し、さらに発達段階やタイプなどの
“違い”を地図化して抜け漏れを減らすための考え方です。ここでは宗教的・形而上学的な主張には踏み込まず、
意思決定のカンペとして活用します。

個人×内面(I)

動機・価値観・感情・意味づけ。
例:私は何を大切にし、何に違和感があるのか。

個人×外面(It)

行動・スキル・成果・指標。
例:次の具体行動と計測基準は何か。

集合×内面(We)

文化・関係性・共通価値・暗黙知。
例:関係者は何を正しい/美徳と感じるか。

集合×外面(Its)

制度・プロセス・市場・インフラ。
例:法規・流通・コスト構造などの前提は。

三つの鍵:「美・善・真」を並べて、同時に扱う

視点をさらに扱いやすくするため、本稿では古典的な三分法を用います。これはそれぞれ異なる検証軸を持ちます。

  • 美(I:主観)……体験の質、手応え、物語の整合。言葉・デザイン・トーン。
  • 善(We:関係)……倫理・信頼・合意形成。対話の質、ルールの正当性。
  • 真(It/Its:客観)……データ・再現性・仕組み。KPI、根拠、プロセス設計。

合理性(真)だけでも、共感(善)だけでも、共鳴(美)だけでも足りません。三つを足し算ではなく“整合”させることが肝です。

ケースで学ぶ:環境施策をデザインする場合

四象限チェック

  • 個人×内面:なぜ私(私たち)はこれをやるのか。動機と価値の言語化。
  • 個人×外面:最初の30日で達成する測定可能なマイルストーン。
  • 集合×内面:地域文化・社内文化に合う語彙・物語の設計。
  • 集合×外面:条例・補助金・サプライチェーンの現実把握。

美・善・真の整合

  • :削減量の算定式、計測機器、検証手順を明示。
  • :ステークホルダーの利害を見える化し、合意形成の場を設計。
  • :行動したくなるストーリー/ビジュアル/名称の統一。

発達の視点をどう活かすか(段階=ラベルではない)

AQALはしばしば「レベル(発達段階)」にも触れますが、人を序列化するためではなく、支援の打ち手を最適化するために使います。

  • 抽象度の高い議論が苦手な場には、まず行動レベルのプロトタイピングを。
  • 価値観が多様で衝突しやすい場には、合意形成の「手順」を共有資産に。
  • 高度な分析が可能な場には、データ品質と仮説検証のリズムを標準化。

段階は“固定の身分”ではありません。課題や文脈によって行き来する可動域として扱いましょう。

今日から使える「AQALミニ手順」

① 90秒ブリーフ(朝)

  • I:今日の動機を一句(なぜ、いま)。
  • It:最小の一歩と計測点(5分でできる行動)。
  • We:巻き込む相手1名とメッセージ文面。
  • Its:前提・制約を一行で再確認。

② 5分レビュー(昼)

  • 真:予定比の進捗/阻害要因。
  • 善:合意のズレ/感情のほつれ。
  • 美:言葉・画面・体験の違和感。

③ 一行サマリ(夜)

  • 「明日の最小一歩」を書いて終える(翌朝の摩擦をゼロに)。

よくある落とし穴と回避策

  • 落とし穴:フレーム依存で現実が置き去りになる。
    回避:必ず「次の一歩」と「証拠(ログ)」に接地する。
  • 落とし穴:発達段階を優劣として使う。
    回避:支援設計のヒントとしてのみ用い、ラベリングを禁止。
  • 落とし穴:三つの鍵の偏重(データ一辺倒/共感のみ等)。
    回避:美・善・真のチェックを定例化してバランス調整。

まとめ──統合は“重ねる”ではなく“整える”

AQALは、要素を盛るための器ではなく、整合を回復するための点検表です。
I(美)・We(善)・It/Its(真)を並べて見て、最小の一歩へ落とす。これを日々繰り返すだけで、
断片だった情報は“働く”知へと変わります。まずは明日のブリーフ90秒から、試してみてください。

あなたのテーマでAQALミニ設計を一緒に作成します。


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