
そこで役立つのが、視点を“並べて比べる”だけでなく“つなげて使う”ための地図です。本稿では
AQAL(All Quadrants, All Levels)という統合フレームの要点を、実務・生活・学習に落とし込む形で解説します。
AQALとは何か(手短ガイド)
AQALは、物事を内面/外面 × 個人/集合の四視点(四象限)で点検し、さらに発達段階やタイプなどの
“違い”を地図化して抜け漏れを減らすための考え方です。ここでは宗教的・形而上学的な主張には踏み込まず、
意思決定のカンペとして活用します。
個人×内面(I)
動機・価値観・感情・意味づけ。
例:私は何を大切にし、何に違和感があるのか。
個人×外面(It)
行動・スキル・成果・指標。
例:次の具体行動と計測基準は何か。
集合×内面(We)
文化・関係性・共通価値・暗黙知。
例:関係者は何を正しい/美徳と感じるか。
集合×外面(Its)
制度・プロセス・市場・インフラ。
例:法規・流通・コスト構造などの前提は。
三つの鍵:「美・善・真」を並べて、同時に扱う
視点をさらに扱いやすくするため、本稿では古典的な三分法を用います。これはそれぞれ異なる検証軸を持ちます。
- 美(I:主観)……体験の質、手応え、物語の整合。言葉・デザイン・トーン。
- 善(We:関係)……倫理・信頼・合意形成。対話の質、ルールの正当性。
- 真(It/Its:客観)……データ・再現性・仕組み。KPI、根拠、プロセス設計。
合理性(真)だけでも、共感(善)だけでも、共鳴(美)だけでも足りません。三つを足し算ではなく“整合”させることが肝です。
ケースで学ぶ:環境施策をデザインする場合
四象限チェック
- 個人×内面:なぜ私(私たち)はこれをやるのか。動機と価値の言語化。
- 個人×外面:最初の30日で達成する測定可能なマイルストーン。
- 集合×内面:地域文化・社内文化に合う語彙・物語の設計。
- 集合×外面:条例・補助金・サプライチェーンの現実把握。
美・善・真の整合
- 真:削減量の算定式、計測機器、検証手順を明示。
- 善:ステークホルダーの利害を見える化し、合意形成の場を設計。
- 美:行動したくなるストーリー/ビジュアル/名称の統一。
発達の視点をどう活かすか(段階=ラベルではない)
AQALはしばしば「レベル(発達段階)」にも触れますが、人を序列化するためではなく、支援の打ち手を最適化するために使います。
- 抽象度の高い議論が苦手な場には、まず行動レベルのプロトタイピングを。
- 価値観が多様で衝突しやすい場には、合意形成の「手順」を共有資産に。
- 高度な分析が可能な場には、データ品質と仮説検証のリズムを標準化。
段階は“固定の身分”ではありません。課題や文脈によって行き来する可動域として扱いましょう。
今日から使える「AQALミニ手順」
① 90秒ブリーフ(朝)
- I:今日の動機を一句(なぜ、いま)。
- It:最小の一歩と計測点(5分でできる行動)。
- We:巻き込む相手1名とメッセージ文面。
- Its:前提・制約を一行で再確認。
② 5分レビュー(昼)
- 真:予定比の進捗/阻害要因。
- 善:合意のズレ/感情のほつれ。
- 美:言葉・画面・体験の違和感。
③ 一行サマリ(夜)
- 「明日の最小一歩」を書いて終える(翌朝の摩擦をゼロに)。
よくある落とし穴と回避策
- 落とし穴:フレーム依存で現実が置き去りになる。
回避:必ず「次の一歩」と「証拠(ログ)」に接地する。 - 落とし穴:発達段階を優劣として使う。
回避:支援設計のヒントとしてのみ用い、ラベリングを禁止。 - 落とし穴:三つの鍵の偏重(データ一辺倒/共感のみ等)。
回避:美・善・真のチェックを定例化してバランス調整。
まとめ──統合は“重ねる”ではなく“整える”
AQALは、要素を盛るための器ではなく、整合を回復するための点検表です。
I(美)・We(善)・It/Its(真)を並べて見て、最小の一歩へ落とす。これを日々繰り返すだけで、
断片だった情報は“働く”知へと変わります。まずは明日のブリーフ90秒から、試してみてください。
あなたのテーマでAQALミニ設計を一緒に作成します。



