
教育は単に知識や経験を得るだけではなく、人的な資本を高める上で欠かせないものです。
学歴だけで将来のキャッシュフローを判断することができなくなったのは、現代ではその人が実際に持っている生産性やコミュニケーション力などのスキルがより重要視される時代になったためです。
これまで以上に教育が将来のキャッシュフローに大きく影響する環境になりました。
教育は子供だけに必要というわけではありません。
グローバリズムが加速する現代社会では、大人にも常に教育が必要です。
ちなみにグローバリズムとは、世界を一体化する思想であり、多国籍企業が国境を越えて地球規模で経済活動を展開すること、自由貿易や市場主義経済の拡大などを意味します。
自分が維持できる生産性のレベルは、将来のキャッシュフローを決定付けます。
今では、社内研修制度などで生産性向上や社員教育を行っていた時代は終わり、即戦力が優先される状況です。
仕事をすると同時に外部機関などを活用して個人的にキャリアアップすることも当たり前となっています。
教育が必要なのは、高校、大学、大学院などのコースだけではなく、専門学校や専門職大学院に行くという選択も増えています。
仕事において必要とされる資格取得や留学経験、実際の仕事においての磨きを得るための投資が必要となることもあります。
自分自身に投資するために必要な資金がいくらであるかが、成功と失敗を分ける重要な要素となっているようです。
こどもの教育プランをどう組み立てていけばいいの?
子供の教育費は、住宅資金・老後資金とともに、三大資金の一つであります。
親が子供にかける費用は、生後すぐの育児費用から高校や大学の教育費、生活費、学校外教育費などにまでさまざまです。
また、子供が成人すると、結婚援助資金、住宅援助資金、財産贈与などにまで広がります。
日本では、欧米諸国と比較して子供の経済的自立を促すという文化が薄いと言われています。
親が子供の手当を払い続け、食費などを負担することもあります。また、成人した後も親の支えを借り続けることもあります。
これは家庭や社会環境の一部の原因がありますが、子供本人が自立を望まないということも大きな問題です。
このような状況では、子供にかかる資金の全体的な負担について再検討する必要があります。
公的年金の受給額が減少する傾向があるため、老後資金の計画がますます重視されることになります。
どれだけのお金を子供にかけるかは、家庭や価値観によって異なりますが、今後の日本の状況予測と生活設計から見て、子供の経済的自立が重要なテーマであることは間違いありません。
そのため、今後は労働生産性をさらに向上させ、自立するための教育が必要不可欠です。
また、教育の方法も多様化しています。社会は、個人が学歴だけでなく実力を備えていることを要求するようになりました。
さらに、生産性の評価も世界的な基準に合わせていることを前提として、教育計画を再検討することが望ましいです。
必要になる教育資金を見積もる
教育資金は住宅資金や老後資金と同様に、大量の費用が必要です。
また、特徴としては、特定の年齢になった際に必ず資金が必要となることです。
一方で、あらかじめ時期が決まっているため、資金計画を立てやすい面もあります。
そのため、子どもが小さいうちから計画的に準備することができます。
しかし、早期から明確な教育ビジョンを持つことは困難かもしれません。
そこで、今から教育ビジョンのアウトラインを固めるための情報を提供させていただきます。
1,教育ビジョンのアウトラインを固めておこう
まず、子供の教育費は、学校教育費と学校外教育費に大別することができます。
学校教育費は、公立高校か私立高校かで準備する金額が異なります。
また、大学の教育費については、親が支援するかどうか、自宅通学か外部通学か、どの学科を選択するかなどによって大きく異なります。
文部科学省が毎年実施する「子どもの学習費調査」や独立行政法人日本学生支援機構の「学生生活調査」などが代表的な教育費調査ですので、これらを参考にすることもできます。
例えば、幼稚園から高校まですべて私立で通学した場合、学習費の総額は約1710万円になりますが、すべて公立で通学した場合は約527万円(平成26年度データ)と約1200万円ほどの差が生じます。
さらに、大学や専門学校、塾や家庭教師、通信教育などの学校外教育費を加えるとかなりの金額になります。
リサーチを行って、できるだけ具体的な金額を把握しておきましょう。
2,教育資金設計の手順
積み立ての優先順位をつける
教育資金は多額の資金が必要です。
ですから、すべてをすぐにカバーすることは難しいでしょう。
またその他の必要資金とのバランスを考えて準備していく必要もあります。
例えば、住宅資金を優先しなければならない時期に、教育資金の積み立てを優先するわけにはいきません。
もし、生活費や住宅資金、保険料といった他の資金が優先するなら、支障をきたさない程度の金額を早期から準備していくといいでしょう。
教育資金の不足額の確認と対応
これから準備できる資金を利息も含めて計算し、不足額の有無を確認しておく必要があります。
不足がある場合は、積立額を増額するか、もしくは余裕が出てきた段階で貯蓄を増やす計画をあらかじめ組み込んでおきましょう。
それでも不足が生じる場合は、教育ローンや奨学金の活用を計画に組み込んでおくという方法もあります。
3,教育資金の準備方法
こども保険や学資保険
子ども保険や学資保険を利用して教育資金を準備している家庭は多いと思います。
子ども保険や学資保険には、2つの役割があります。
貯蓄機能と親に万一の事があった場合の育英資金機能です。
他の生命保険の加入状況のバランスを見て、どちらを重視するかを決定しましょう。
例えば、親の死亡保障が十分満たされていれば、貯蓄機能を重視した方がいいでしょう。
もしも貯蓄を重視する場合は、他の金融商品とも比較する必要がでてきます。
契約時点で利率が固定され、以降長期に渡って保険料を支払っていかなければならないからです。
また、解約時期によっては、損失が発生する可能性があるので注意しましょう。
良い商品がない場合は、とりあえず貯金しておいて良い商品が発売されてからまた検討するといいでしょう。
臨機応変に使えるお金を持っている方が得策という場合もあります。
4,教育ローンを活用する
教育ローンや奨学金にちては「こどもの教育費はいくら必要なのか?」でも触れましたので、そちらの記事を読まれた方は、飛ばしていただいても結構です。
公的教育ローンの活用
教育のために準備した資金で不足が生じた場合は、公的教育ローンで補完するという方法もあります。
低金利で融資してもらえるので、不足の有無に関わらず、うまく活用してキャッシュフローを安定させるということも考えられます。
年収用件や諸々の規定はありますが、日本政策金融公庫の教育ローンがあり、固定金利で、融資限度額は350万円ということになっています。
民間金融機関の教育ローン
最近は民間金融機関が教育ローンに力を入れ、商品も多く出ています。
教育積み立て郵便貯蓄、一般財形の財形貯蓄活用給付金制度、雇用・能力開発機構の財形教育融資など低金利の融資が廃止になったという背景もあります。
また、公的教育ローンの融資限度額も600万円から350万円に減額になったことも影響しています。
教育ローンの分野は、実質的には国から民間へ移行されたというわけです。
5,奨学金を活用する
奨学金には独立行政法人日本学生支援機構のほか、都道府県や市町村、学校などが行う各種の奨学金制度があります。
公的な奨学金制度
独立行政法人日本学生支援機構が行う奨学金には第一種奨学金と第二種奨学金があります。
第一種奨学金は無利子貸与第二種奨学金は有利子貸与で、短期大学、大学、大学院、専修学校に在学している学生を対象としています。
なお第二種奨学金の利率は年3%が上限で、在学中および返還期限猶予中は無利息です。
第一種奨学金の対象となるのは特に優れた学生で経済的な理由により著しく修学が困難な人です。
なお高など学校・専修学校(高など過程)の奨学金事業は2005年から都道府県に移管されました。
※海外留学希望者は第二種奨学金の対象です。
奨学生の採用方法としては、進学前に進学を条件として奨学金の貸与を予約する予約採用と入学後に在籍している学校で申し込む在学採用があります。
予約採用で不採用になった場合でも在学採用で申し込みできます。
またこの他に家計の急変により資金が緊急に必要になった場合に活用できる緊急採用(第一種)・応急採用(第二種)もあります。
返還は卒業後に所定の期間内に月賦などで、自動引き落としによって返還します。
大学学内奨学金制度
各大学の奨学金制度は私立だけではなく国公立でも実施されています。
支給方法や対象者の制限は学校によって異なりますが、かなり多くの学校が採用していますので希望校に問い合わせてみてください。
5,児童手当を考慮する
児童手当については厚生労働省のページを参照してください。
CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFPカリキュラムに沿って記述しています。