
老後プランを考える前に!
企業年金、確定拠出年金、個人年金、医療や介護など、老後の準備は人生設計を考える際とても重要です。
収入が途絶えるこの時期をどういう状態で迎えるか、その計画次第で現役時代の設計も変わります。
例えば、豊な老後生活を目標とするのか、質素に過ごすのか、あるいは一生現役を目指すのか、どんな老後を計画するか?
それらは収支バランスいかんによって大きく異なります。
ですから、老後を迎えるまでに確保したキャッシュフローをどう守っていくのか?
それも極めて重要な課題です。
確保したキャッシュフローをどう保持していくか、それはまた公的制度と関連しています。
老後プランを考える前に、こうした公的制度の概要は知っておいたほうがいいでしょう。
ということで、今日は成年後見制度について取り上げてみました。
成年後見制度について
成年後見制度とは、認知症や知的障害のために判断能力や意思能力(自己の行為の結果を判断・予測できる知的能力)が不十分な状態にある人を支援し、その権利譲渡を図る制度です。
近年、休息に高齢化が進んでいます。
そしてその数は更に増加すると予想されて、同時にその保護者の高齢化という新たな問題も同時に発生しています。
一方、意思能力に障害を持つ人たちの保護のありかたは、「自己決定の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」などの理念に基き欧米諸国では成年後見制度の改革が行われました。
ノーマライゼーションとは、「高齢者や障害者などを施設に隔離せず、助け合いながら暮らしていくのが正常な社会のありだ考え方だ。」とする考え方です。
また、それに基づく社会福祉政策もノーマライゼーションに含まれます。
設置ではなく契約に変わった
近年、日本においても従来の制度を抜本的に改めた新しい成年後見制度の創設が求められました。
例えば、従前の禁治産・準禁治産制度は、思考能力に障害のある人を取引の場から排除することによって本人の財産の財産を保全するとともに取引の安全を図るという点に主眼が置かれていました。
しかし、「成年後見制度」においては、社会生活の中で可能な限り本人の意思と能力を生かし、その自立を支援することを目的としています。
この成年後見制度は、介護保険制度の導入と同時に施行され、そのことによって福祉サービスそのものが「措置から契約へ」と転換しました。
これまでのように行政の判断で与えられるものではなくなったわけです。
つまり、自分の意志で選択し、契約を経て利用するものに変ったのです。
ということは、判断能力が不十分な場合は契約できないということになります。
そのままでは福祉サービスを受けることができません。
その様な事態にならないように支援するのが、成年後見制度の大きな役割の1つです。
つまり、介護保険制度を導入するためには、成年後見制度が不可欠だったというわけです。
サービスを利用する場合
施設や福祉サービスを利用するときには、当事者が福祉サービスを提供する指定事業者・施設と契約を交わす必要があります。
それだけに成年後見制度の役割は大きなものとなっています。
この成年後見制度は従前の禁治産・準禁治産制度を大幅に改定した「法定後見制度」と「任意後見制度」からなりたっています。
従来の戸籍への記載を取りやめ、それに変るものとして「成年後見登記制度」を設けているのです。
法定後見制度
民法の規定によって定められている法定後見制度は、後見・保佐・補助の3種類が設けられています。
具体的には、判断能力が不十分な人に対して審判の申し立てにより、家庭裁判所が選任する制度です。
後見
「後見」は精神上の障害により判断能力を欠く状況にある人を保護対象とする制度です。
家庭裁判所が申し立てを受けて後見開始の審判を行い、後見人を選任します。
後見人は財産に関するすべての法律行為について本人を代理し、本人が自ら行った法律行為は取り消す事ができます。
ただし、「自己決定の尊重」の観点から日用品の購入その他日常生活に関する行為は除外されます。
保佐
保佐は、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な人を保護対象とする制度です。
後見同様、家庭裁判所が申し立てを受けて保佐開始の審判を行い、保佐人を選任します。
保佐人は民法第13条1項に規定する行為についての同意権・取消権が付与されます。
また、審判によってそれ以外の行為についての同意権・取消権や当事者が申し立てにより選択した「特定の法律的行為」についての代理権を付与することもできます。
「自己決定の尊重」の観点から、代理権の付与については本人の申し立てまたは同意が要件となります。
ですかた、本人が保佐人の同意を得ずに「民法第13条1項に規定する行為」を行った場合にはその行為を取り消す事ができます。
民法第13条第1条(保佐人の同意を要する行為など)の条文
第13条(保佐人の同意を要する行為など)
1、被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
(1)元本を領収し、または利用すること。
(2)借財または保証をすること。
(3)不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
(4)訴訟行為をすること。
(5)贈与、和解または仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
(6)相続の承認若しくは放棄または遺産の分割をすること。
(7)贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。
(8)新築、改築、増築または大修繕をすること。
(9)第602条に定める期間をこえる賃貸借をすること。
2、家庭裁判所は、第11条本文に規定する者または保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその 保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3、保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4、保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意またはこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
補助
補助は、精神上の障害により判断能力が不十分な人を保護対象とする制度で家庭裁判所が申し立てを受けて補助開始の審判を行います。
それによって補助人を選任し、個別の審判によって当事者が申し立てにより選択した「特定の法律的行為」についての代理権または同意権・取消権を付与されます。
また、代理権と同意権・取消権の双方の付与も可能です。
代理権の対象行為に制限はありませんが、同意権の対象行為は民法第13条1項に規定する一部の行為に限られます。
本人が補助人の同意を得ずに同意権の対象となる本人が自ら行った特定の法律行為は取り消す事ができます。
ただし、「自己決定の尊重」の観点から各審判においては本人の申し立てまたは同意が要件となっています。
次回は「老後プランの要、年金制度の仕組みを理解しよう。」です。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。