
老後の備えとして、個人年金保険はよく知られているが、それ以外にもさまざまなものがある。
そして、個人年金保険にもまたさまざまなものがある。
個人年金には大きく以下の2つのタイプに分かれる。
- 生命保険会社、損害保険会社などが引き受ける保険型年金。
- 銀行、信託銀行、証券会社が扱う貯畜型年金。

図表2-1
個人年金保険は、生存保険と死亡保険が組み合わされてた生死混合保険だ。
一方、銀行、信託銀行、証券会社が扱う貯畜型年金には保険としての機能はない。
個人年金保険は、年金の受給スタイルによって以下のように別れている。(図表2-1参照)
- 終身年金
- 保証期間付終身年金
- 確定年金
- 有期年金
- 保証期間付有期年金
貯蓄型年金は、元本の取扱方法によって、元本温存型と元本取崩し型に分かれる。

図表2-2
支払われる年金の構造は、その原資の違いによって異なる。
具体的には、保険料を原資とする「基本年金」と、年金開始前の積立配当金を原資とする「増額年金」、年金開始後の配当金を原資とする「増加年金」の3つの部分に分かれ、(図表2-2参照)これらがまとめて支払われる。
これらとは性質が異なる商品で、保険料の運用実績によって将来受け取れる年金額が変動するものを変額個人年金と呼んでいる。
個人年金のタイプ
個人年金保険には、契約による基本年金額が一定の定額型と毎年あるいは数年ごとに一定割合で年金額が増加する逓増(ていぞう)型がある。
逓増(ていぞう)型は物価上昇による年金額の目減りを補う効果が得られるが、定額型よりも保険料が高く設定されている。
個人年金をタイプに分けると以下の11種類になる。
1,終身年金型 | 7,JA共済 |
2,確定年金型 | 8,ねんきん共済 |
3,有期年金型 | 9,変額個人年金 |
4,夫婦年金型 | 10,外貨建て |
5,利率変動型 | 11,保険商品以外 |
6,かんぽ生命 |
終身年金タイプ
終身年金は、被保険者(ひほけんしゃ)が生きている限り年金を受け取ることができ、被保険者の死亡した場合年金が支払われなくなる。

図表2‐3 保証期間付終身年金
しかし、実際に販売されている商品は、終身年金に10年あるいは15年と保証期間が付いた「保証期間付終身年金」がほとんど。
このため、年金の受取り開始直後に被保険者が死亡した場合でも、保証期間内であれば残りの期間に受け取る予定の年金を相続人が受け取ることができるようになっている。
注意!終身年金は、確定年金や有期年金に比べて保険料がかなり高くなる。
また、同年齢の男女では女性の方が、男性よりも保険料が高く設定されている。
男性よりも女性の方が平均寿命が長いためだ。
なお、保証期間付終身年金の中には、保証期間分の年金を一括で受け取り、保証期間経過後にその後の年金を受け取ることができるものもある。
確定年金タイプ
確定年金タイプは、契約時に定められた期間であれば、被保険者の生死にかかわらず年金が支払われる。
5年確定年金、10年確定年金、15年確定年金などの種類がある。

図表2-4(確定年金)
期間内に被保険者が死亡した場合、引き続き遺族に対して年金や、死亡時の年金支給残存期間の年金現価が一時金で支払われる。
なお、保険料払込期間中に被保険者が死亡すると、死亡時の年金原資相当額が死亡給付金として支払われる。
年金保険は、生存保険の一種なので、本来であれば、被保険者が死亡した場合、保険金などが支払われることはない。
しかし、実際は支払われる。
それは、年金原資相当額の逓増型の定期保険を組み合わせている仕組みだからだ。
したがって、年金受取期間中であれば生死にかかわらず年金が支払われるわけだ。
※男女による保険料の差はほとんどない。
保険料を抑えることも可能
加入時に保険料を一括して払い込んだり、保険会社に全期分の保険料を預け、そこから毎年の保険料を払い込む方法をとれば総支払額を抑えることができる。
なお、終身年金に移行したり、受取り開始年の繰り延べ、繰り下げなども可能だ。
※ただし、一定条件を満たしている必要があるので、あらかじめ確認しておくといい。
有期年金タイプ

図表2-5(有期年金)
有期年金タイプは、あらかじめ年金の支払期間を定め、その期間中は被保険者の生存を条件に年金が支払われる。
注意!したがって、支払期間中であっても被保険者が死亡すれば年金は支払われない。
一方、「保証期間付有期年金」は、有期年金に保証期間が付いたもので、保証期間中は被保険者の生死にかかわらず年金が支払われる。
※保証期間内に被保険者が死亡した場合は、保証期間の残存期間に対応する年金現価が相続人に支払われる。
注意!保証期間終了後の有期期間内に被保険者が死亡した場合は、その時点で年金は終了する。
なお、有期年金は一部の保険会社のみで扱われている。(主に変額個人年金という名称)
夫婦年金タイプ

図表2-6(夫婦年金)
夫婦年金タイプは、夫婦のいずれかが生きている限り年金が支払われる商品で、一部の保険会社のみで扱っている。
まず一方の被保険者に年金が支払われ、その被保険者が死亡した後は、配偶者が生存している限り年金が支払われる。
つまり、被保険者が死亡すると配偶者に権利が引きつがれ、一生涯年金を受け取ることができる。
注意!契約者死亡後の年金額、夫婦間の年齢差条件などは各保険会社、取扱機関によって異なる。
「保証期間付夫婦保険」という商品もあり、保証期間内であれば夫婦とも死亡しても遺族に年金が支払われる。
ポイント!夫婦がそれぞれ個人年金に加入するよりも保険料は害安になる。
ただし、離婚した場合は、解約になるか、年金受給権が被保険者だけとなり、配偶者には支払われないこともある。
また、初めから「夫婦年金」として加入していなくても、個人年金に加入していて、年金受取り開始前に夫婦年金を選択することができる商品もある。
利率変動型年金タイプ
利率変動型年金タイプは、市場金利に応じて予定利率が変動する仕組み。
つまり、予定利率が加入時から年金の受取り終了時まで固定である従来の商品とは異なった性質をもっている。
まず、利率変動型年金の予定利率は、市場金利が指標となっている点が他の商品とは異なる。
そして、予定利率の変更時期が商品ごとに異なる。
ただし、契約時に保証された最低保証年金額を割り込むことはないので安心してほしい。
今の低金利時に予定利率を固定したくない状況や金利上昇局面に適している商品と言えるだろう。
外貨建て個人年金タイプ

図表2-7(外貨建て個人年金)
外貨建て個人年金タイプは、低金利に伴い注目されるようになった個人年金商品だ。
外貨建て個人年金は、円をアメリカドルやユーロ、ポンドなどの外貨に換えて、格付けの高い海外の国債や社債で資産運用をおこなう仕組みだ。
保険料は全額積立金に投入され、据置期間内は外貨建ての債券で運用される形になる。
据置期間満了後には積立金と運用益を年金または一時金として受け取ることもできる。
注意!為替相場変動の影響を受けるので、外貨を円に交換する際には為替差損益が生じる可能性がある。
被保険者が死亡した場合には、外貨建て積立金相当額の死亡給付金が支払われる。
かんぽ生命の個人年全保険
かんぽ生命が扱っているのは、年金の受取期間が10年の定額型の「定期年金保険」で、年金の受取開始年齢は、55歳~70歳までの間で選択できるようになっている。
注意!保険料の支払いは一括払いのみ。
※平成28(2016)年4月現在、終身年金保険については販売を停止。
年金受取人が年金支払期間中に生存している場合、年額90万円を限度に基本年金額が支払われる。
また、年金受取期間中に年金受取人(=被保険者)が死亡した場合は、契約者に返戻金が支払われ、必要に応じて災害特約や介護特約などの特約を付加することも可能だ。
JA共済の年金共済

図表2-8予定利率変動型年金共済
全共連が引き受けている年金共済は、予定利率が変動するタイプで、年金の受取期間により「終身年金」と「定期(確定)年金」がある。
いずれも契約の当初5年間は予定利率が固定され、6年目以降は毎年予定利率が見直される予定利率変動型の年金共済だ。
「終身年金」は10年、または15年間の年金受取保証期間がある上で、被保険者が死亡するまで年金を受け取れる。
また、年金受取開始前に被保険者が死亡した場合には、所定の死亡給付金を受け取れる。
「定期年金」は5年または10年、15年の年金受取期間となっている。
ねんきん共済
全労済が引き受けているねんきん共済には、「終身年金」と「確定年金」の2種類がある。
注意!ただし、契約者になるためには全労済に出資金を払って組合員になる必要がある。
終身年金には、15年間の受取保証期間があり、確定年金の年金受取期間は5年間と10年間、そして15年間から選択可能。
注意!終身年金の保険料は一時払のみ。
ねんきん共済の特色は、通常の基本型の年金のほか、基本型にセットする「家族年金・重度障害年金付帯型」にある。
「家族年金・重度障害年金」は、保険料の払込期間中に本人が死亡した場合、遺族が契約年金の2倍を10年間受け取れる「家族年金」と、保険料の払込期間中に本人が重度障害になった場合に、本来の年金が払われるまで受け取れる「重度障害年金」だ。
変額個人年金保険

図表2-9(変額個人年金)
注意!変額個人年金保険は、運用実績によって、将来受け取れる年金額が変動する。
- 平成11(1999)年4月に、外資系生命保険会社から発売。
- 平成12(2000)年12月には証券会社。
- 平成14(2002)年10月には銀行での窓日販売がスタート。
上記を背景に変額年金保険を取り扱う保険会社が増えていった経緯がある。
現在でも一部の会社で扱っているが、2008年秋の金融危機により運用状況が悪化し、新規加入を中断する保険会社が続出した。
保険料の支払い方法は、一時払いが主流だが、月払いなどの平準払いや、中には積立方式を取り扱う保険会社もある。
年金種類は保証期間付終身年金と確定年金が主だが、有期年金を扱う保険会社もある。
加入する時点で年金額は定まっていまない。
ただし、基本年金額を最低保証したり、経過年数によっては基本年金額をこえる金額を保証するタイプを扱っている会社もある。
年金支給開始後は、ほとんどの商品が年金開始日の予定利率に基づく一般勘定で運用することになっている。
そのため、年金開始時点で年金額が定まることになる。
死亡給付金額は、死亡時点での積立金額となるが、払込保険料合計額を最低保証するものがほとんど。
また、運用実績に応じて積立金額が増えた場合、死亡給付金額の最低保証が切り上がっていくステップアップ型(ラチェット型)もある。
ラチェット型の場合には、一度切り上がった最低保証額は、その後運用が不振であっても引き下げられることはなく、災害死亡の場合、死亡給付金に払込保険料の10%を上乗せする保険会社が多くなっている。
保険料の運用は特別勘定という枠で行われる。
特別勘定で行われる運用の多くは投資信託であり、それ以外は保険会社の特別勘定の自主運用という形になる。
保険会社が自主運用している変額個人年金保険には、特別勘定が1つしかないものもある。
特別勘定が複数用意されているタイプの変額個人年金保険を選択した場合には、複数の特別勘定から運用先を選定することになる。
契約者は特別勘定を変更することができ、これをスイッチングと呼んでいる。
一般的には、年間12回~15回程度までは無料でスイッチングできる。
注意!所定の回数をこえるスイッチングを認める会社もあるが、その場合は有料となる。
また、運用の途中で積立金の一部を引き出したり、保険金額を増減できるタイプもある。
ポイント!変額個人年金保険は加入する会社によって運用にかかるコストや保険関係コストが異なるため、運用状況のチェックとともにコストを比較することが大切だ。
保険商品以外の年金型商品
貯蓄型年金は、保険型年金商品ではない。
基本的には通常の貯蓄商品と同じで、積立てや一括払いなどで年金の原資を貯めていき、利息と元本を取り崩して年金的に使う形だ。
したがって、本人の生死は年金受け取りの要件にはならない。
一方、貯蓄型は保険型と違って、積立金額や年金額を柔軟に設計できるというメリットがある。
例えば、若い世代は老後の前に子どもの教育、住宅取得などのライフプランがあり、そちらを優先した資金プランを立てる必要があるだろう。
また、中年世代でも雇用環境の変化などで転職・独立するなど、予期せぬライフプランの修正も考えられる。
そうした場合、積立ての減額や一時中断、積立金の引出し・解約などが柔軟にできる貯蓄型年金商品は、保険型に比べてロスが少ないだろう。
注意!ただし、貯蓄型年金の元本になる商品が投資信託などの場合、必ず解約時に元本が確保できる保証はない。
したがって、積立てに利用される商品は何か、利息の支払われ方はどのようになっているかを確認し、その商品の特性がニーズに合っているかどうかを検討する必要がある。
銀行などの商品
年金型積立定期預金は、定期預金を利用した年金商品だ。
払込み方法には、「積立型」と「一括預入型」とがある。
積立型は毎月の指定日に口座から自動振替で積立てが行われ、一定の積立期間終了後、一定の据置期間を経過したのち、元利金を一定の受取期間内に年金式に分割で受け取る。
元利金が貯まるまで時間がかかるため、まとまった資金が手元にある、あるいは若い世代向けのプランといえるだろう。
一括預入型は元金を一括で払い込む方法で、据置期間、受取期間は積立型と同様だ。
ポイント!退職金などのまとまった資金が手元にあり、近々年金受取りを開始したい世代に適しているだろう。
また、契約後も受取期間や受取周期を変更でき、一部解約、中途解約で不意の出費などの状況の変化に柔軟に対応できる。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。