感情に打ち勝とうとすることは、しばしば自己否定や無理な自己制御につながり、結果として自己とのジレンマを生むことがあります。
人間の感情は自然な反応であり、自己の経験や認識の一部です。
それらを否定したり無視したりすることは、自己理解や自己受容の妨げになります。
心理学においては、感情に打ち勝つことよりも、感情を認識し受け入れることが強調されます。
これはエモーショナル・インテリジェンスの一部であり、感情認識、感情理解、感情調整の3つのスキルから成り立っています(Mayer, J. D., & Salovey, P. (1997). What is emotional intelligence? In P. Salovey & D. J. Sluyter (Eds.), Emotional development and emotional intelligence: Educational implications (pp. 3–31). Basic Books.)。
自己とのジレンマを生むこの感情抑制のパターンは、多くの場合、自己効力感の低さや自尊心の低下、ストレスの増加、うつ病のリスクの増加など、心理的健康に悪影響を及ぼします(Gross, J. J., & John, O. P. (2003). Individual differences in two emotion regulation processes: Implications for affect, relationships, and well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 85(2), 348–362.)。
そのため、感情に打ち勝とうとするのではなく、感情を認識し理解し、その上で適切に対応する能力を育てることが推奨されています。
それが自己とのジレンマを解決し、より健康的な心理状態を保つための一つの手段です。