不動産投資の課税と減価償却、必要経費について

不動産投資の課税:混乱しがちな各所得の種類を解明

不動産投資は、資産を増やすための主要な手段の一つとされていますが、その運用収益に対する税金は複雑で混乱することがしばしばです。

そこで、この記事では、不動産の運用収益と税制について説明します。

不動産運用収益とその課税

不動産の運用収益として最も一般的なものは、賃料です。

この収益から、必要経費を控除した上で所得税や住民税が課されます。

事業規模が特定の基準に該当する場合は、事業税も課されることがあります。

法人の場合、収益は益金として扱われ、所得税、住民税、事業税が課されます。

さらに、住宅目的以外の家賃収入は消費税および地方消費税の課税対象になります。

不動産所得は、他の所得と合算され、総所得として扱われます。

そのため、不動産所得が赤字の場合は、他の黒字所得との損益通算が可能となります。

個人の不動産所得の種類

個人の不動産所得は多種にわたります。

資産の貸付、不動産の上に存在する権利の貸付設定、船舶や航空機の貸付などが考えられます。

しかし、不動産所得には、区分の難しいものもあります。

例えば、商品ケースの貸出、ネオンサインや広告看板の使用料の収入も、不動産所得として扱われます。

一方で、不動産業者の棚卸資産の一時貸付や、事業主が従業員に貸しつけた寄宿舎の賃料、食事供給を伴う場合などは、事業所得として扱われます。

さらに、敷金の運用益は利子所得に、権利の貸付や設定の対価として受け取った一時金は不動産所得、あるいは譲渡所得に該当する場合もあります。

このように、不動産関連の所得の種類は多種にわたります。

不動産所得と損益通算

不動産所得は、他の所得との損益通算が可能です。

そのため、不動産所得が赤字の場合は、他の黒字所得と通算し、全体的に税額を軽減することが可能となります。

しかしながら、その損益通算にはいくつかの規制があります。

例えば、損失金額が土地を取得するための借入金利子の額より多い場合や、損失金額より土地代利子分が多い場合、土地代利子分の損益通算はできません。

これは、土地代利子分の損益通算が制限されているからです。

そのため、土地代と建物代をあらかじめ区分しておく必要があります。

分譲マンションの場合は、消費税額から建物代を割り出すことが可能です。

しかし、土地と建物を一括して借入により取得した場合、通常は区分されていないため、借入金をまず建物代に充当し、残りを土地代に充当することになります。

減価償却について

不動産投資におけるもう一つの重要な要素が減価償却です。

減価償却は支出と連動するものではないため、収支計画や税務対策などの重要なポイントとなります。

減価償却資産の償却方法には、「定額法」と「定率法」の2つがあります。

どちらを選択するかは、確定申告書の提出期限までに所轄の税務署に届け出る必要があります。

届け出がない場合は、定額法が適用されます。

ただし、法人の場合、1998年4月1日以前に取得した建物は定率法に限定されています。

不動産投資は多大な収益をもたらす可能性がありますが、その所得と税金に関する規定は複雑です。

しかし、それらの理解と適切な対策は、不動産投資の成功に大きく寄与します。

この記事が、皆様の不動産投資に対する理解を深める一助となれば幸いです。

償却方法の変更について

個人の場合は、その年の3月15日まで、法人の場合は事業年度の開始の日の前日までに、変更の申請書を提出し、所轄税務署の承認を得なければなりません。

但し、3年を経過していない場合や所得計算が適正に行われづらいと判断された場合には、償却方法の変更が認められないこともあります。

定額法と定率法

  • 定額法:取得価格×定額法の消去率=減価償却額
  • 定率法:(取得価額-既償却額)×定率法の償却率=減価償却額

年または事業年度の途中の場合は上記算式による金額の12分の該当月数。

耐用年数と中古物件

耐用年数について詳しくは国税庁のサイトを参照してほしい。

中古物件の場合は、合理的に見積もった耐用年数が適用されます。

ただし、実際に見積もりが困難なケースもあり、そのような場合は、簡便法による耐用年数が認められます。

簡便法

  • 完全経過:(法定耐用年数)×20/100
  • 部分経過:(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数)×20/100

新築または取得したサービス付き高齢者向け住宅を賃貸した場合は、賃貸した日から5年間、通常の減価償却費の割増償却が認められています。

※耐用年数35年未満のものは28%、35年以上のものは40%(国土交通省参考資料)

必要経費について

不動産賃貸等の業務を始める際、業務開始までの期間に支払った利子は必要経費とはなりません。

これは建物などの取得価格に算入され、該当建物の減価償却の対象となります。

業務開始後の利子に関しては全額必要経費として算入可能です。

税金と地代・家賃

登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、事業税、利子税は全て必要経費となります。

また、借地上の建物を賃貸したり、建物を転貸した場合に支払った地代・家賃も必要経費となります。

ただし、生計をともにする親族に支払う地代・家賃は必要経費とはなりません。なお、法人が支払った賃貸料は損金扱いになります。

給料などと立ち退き料

管理などに従事したものに支払った給料も必要経費となります。

但し、生計をともにする親族に支払う給料は、貸付が事業として行われている場合に限ります。

立ち退き料も原則として必要経費になりますが、不動産譲渡時の立ち退き料は譲渡費用となり、取得時に支払う立ち退き料は不動産取得価額として扱う必要があります。

その他の必要経費

火災保険料、修繕費、維持管理費、広告宣伝費も必要経費となります。

ただし、大規模な修繕は減価償却の対象となり、必要経費や損金にはならない。

事業的規模の場合

事業的規模の場合、生計を一にする親族に対する給料は必要経費となります。

また、固定資産の損失も全額必要経費として認められます。但し、

事業的規模でない場合、損失額控除前の不動産所得の金額までなら認められます。事業規模に該当する場合は、青色申告特別控除(65万円)も受けられます。

事業的規模かどうかの判断は、収入状況や管理状況による実質基準と、「5棟10室」基準などの形式基準によります。

土地の場合の形式基準は、建物の貸付に相当する土地の貸付件数を「概ね5」としています。

例えば、貸室8と貸地10件を有する場合は、8室+10件÷5=10室という解釈になります。

平均課税

変動所得や臨時所得がある場合は、平均課税によって計算します。

臨時所得とは、3年以上の期間、他人に貸し付けることにより、一時に受け取る権利金などで、使用料年額の2倍以上のものを指します。

詳細は国税庁のサイトをご参照ください。

事業税

事業税とは、事業を行う法人または、第一種・第二種、または第三種事業を行う個人を納税義務者とする都道府県税のことです。

法人の所得は全て事業税の対象となります。

個人事業税の課税対象となる不動産貸付業者または駐車場は、貸付規模が基準です。詳細はタックスプランのコーナーをご参照ください。

税率

個人事業税において、不動産貸付・駐車場業、不動産売買業は第一種事業に分類され、標準税率は5%です。

ただし、課税標準の計算において事業所得から事業主控除の290万円を控除できます。

法人事業の税率は業種別に分類されていません。

次回のトピックは「不動産事業の収支計画について」です。

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