
老後のライフデザインⅥ
今日は、老後の生活費の目安、必要になるお金、年金制度の確認方法、収入源を確保する方法など、プランを作成する上で欠くことのできない内容を分かりやすく解説します。
老後の生活費の目安
老後の生活に漠然とした不安を抱えている人は多いと思います。
老後の暮らしには、どのくらいのお金が必要なのでしょうか?
最低限必要だと思う日常生活費について、もっとも多かった回答は、20万~25万円、総務省が調べた高齢者の実際の支出の平均は1カ月約28万円
となっています。
老後には、日々の生活費に加えて、子どもへの援助、住宅のリノベーション費用なども考えられるでしょう。
したがって、これらを考慮したうえで老後の生活設計を考えていく必要があります。
定年後のイベントの例とかかる費用の例
イベント | かかる費用 |
子どもの結婚費用援助 | 100万~300万円 |
子どもの住宅購入資金援助 | ~1000万円 |
住宅リフォーム | 50万円~200万円 |
海外旅行 | 20万円~60万円 |
車の買い替え | 200万円 |
葬儀費用 | 100万円~200万円 |
※かかる費用には個人差がありますから、あくまでも目安として参考 にしてください。
老後の備えはいくら必要か?
老後に不足するお金の目安は、老後の年間の手取り収入から支出を差し引いて算出します。
「1年間に不足する金額」×「必要年数」で概算することができます。
例えば、60歳時点の女性の平均余命が約29年ですから、89歳-「夫退職時の妻の年齢」という計算になります。
「退職時に手元にあるお金」から「支出するお金の総額」を差し引いた結果がマイナスになった場合は、その分の老後資金が不足しています。
この不足分を準備しておく必要があります。
まずは老後の収入と支出を予想して、老後に不足するお金の総額を算出します。
そのうえで退職時に手元にあるお金で補填しきれない、備えが必要な金額を計算しましう。
つまり、「毎月の収入-(毎月の支出+年間の特別支出)=1年間に不足するお金」ということになります。
実際に以下の表を参考にして、それぞれ計算してみてください。
退職後の収入
夫 | 妻 | |
公的年金 | ◯◯◯万円 | ◯◯◯万円 |
企業年金 | ||
個人年金保険 | ||
その他の収入 | ||
合計 | ||
夫婦合計 |
退職後の支出
毎月の支出 | |
基本生活費 | ◯◯◯万円 |
住居関連費 | |
車両費 | |
娯楽費 | |
社会保険料 | |
保険料 | |
そん他の支出 | |
合計 |
特別支出 | |
年払い保険料 | ◯◯◯万円 |
自動車保険料 | |
所得税 | |
住民税 | |
固定資産税 | |
その他( ) | |
合計 |
1年間に不足するお金×必要期間(89歳-夫退職時の妻の年金)+イベント費用=老後に必要なお金退職時に手元にあるお金-老後に必要なお金=過不足。
次に自分か加入している年金制度を確認しましょう。
加入している年金制度の確認
老後の生活費を年金収入に頼る人は多いと思います。
したがって、まずは自分が加入している年金制度や受給資格を確認しておきましう。
公的年金には国民年金、厚生年金保険の2つの種類があります。
年金制度は3階建てになっています。
- 1階は日本で生活する20歳以上60歳未満の人すべてが加入する国民年金
- 2階は会社員や公務員が加入する厚生年金保険
- そして3階が企業年金など
「参考」
- 学生や農業従事者、自営業者、自由業者は第1号被保険者
- 会社員や公務員は第2号被保険者
- 会社員や公務員の妻などは第3号被保険者
加入する年金制度によって受給できる額が異なるので把握しておきましょう。
公的年金はいつからもらえる
私たちがもらえる年金にはおもに国民年金と厚生年金の2つの種類があると申し上げました。
国民年金からは老齢基礎年金、厚生年金からは老齢厚生年金がそれぞれ給付されますが、受給開始年齢は生年月日によって異なります。
※男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降生まれの人は、基礎年金・厚生年金とも年金受け取りは65歳からです。
月々の生活費が25万円と仮定すると、単純計算で25万円×12カ月×5年間=1,500万円不足することになります。
この期間をどうしのぐかが大きな課題となります。
老齢年金の受給条件は?
老齢基礎年金をもらうためには、原則、保険料を25年以上納めていることが条件です。
この期間を受給資格期間といい、受給資格期間には保険料が免除になった期間なども含ます。
保険料免除期間は、免除の程度に応じて年金額の計算に反映されます。
- 昭和5年4月1日以前に生まれた人の受給資格期間は、生年月日に応じて24~20年です。
- 昭和26年4月1日以前生まれで厚生年金保険や共済組合などに加入していた人の受給資格期間は、生年月日に応じて19~15年です(中高齢者の特例)
老齢基礎年金の額は、480ヵ月で満額になります。したがって、保険料を納めた期間が40年に満たない場合は、保険料を納めた月数、保険料を免除された月数に応じて、満額から減額されます。
また、老齢厚生年金をもらうためには、老齢基礎年金と同じく、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて25年以上(平成29年4月からは10年以上を予定)の受給資格期間を満たしている必要があります。
加入期間を確認しよう
受給資格を満たしているかどうか、今後満たせるかどうかは、早めに確認しておいた方が安心です。
自分の加入状況は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認することができます。
また、日本年金機構の「ねんきんネット」や「ねんきんダイヤル」でも確認が可能です。
このほか、全国にある年金事務所の窓口に年金手帳を持参すれば、その場で加入記録を調べてもらうこともできます。
もし、収めていない保険料があってこれから収めたいという人は、後から収めることができます。
この場合、平成30年9月までは、納付期限を過ぎてしまった国民年金の保険料を、過去5年分までさかのぼって納めることができます。
厚生年金保険に加入している人は、70歳になると続けて加入できなくなりますが、70歳以上になっても受給資格期間の25年を満たしていない人は、満たすまで加入することができます。
年金加入状況を確認する
- 年金事務所の窓口を利用する
全国にある年金事務所の窓口に年金手帳を持っていくと、年金の加入記録を調べてもらうことができる。 - ねんきんネットを利用する
年金加入記録の照会・年金見込額の試算などができる。日本年金機構のサイトで、利用にはユーザIDの取得が必要。ユーザIDは日本年金機構のホームページより申込むと、1週間ほどで郵送される。 - ねんきんダイヤルを利用する
日本年金機構年金に関する電話問合せ窓口。年金の加入状況や、ねんきん定期便の内容、その他年金の一般的な質問に答えてくれる。
およその年金額を確認しておく
次に、自分の年金額を概算してみましょう。国民年金のみ加入している人は老齢基礎年金のみ。
厚生年金保険に加入している人は老齢厚生年金の金額もプラスします。
老齢基礎年金
約78万円(満額)×国民年金保険料を払った月数/上限480カ月
老齢厚生年金
あなたの平均標準報酬額と厚生年金保険加入予定年数に当てはまる金額を確認しましう。(日本年金機構)
厚生年金に加入している場合、あなたのもらえる年金は、老齢基礎年金+老齢厚生年金になります。
ねんきん定期便をチェックしよう
年金の加入状況や年金額の確認に便利なのが、日本年金機構から国民年金および厚生年金保険の加入者に毎年1回、 誕生月に送付される「ねんきん定期便」です。
通常はハガキで郵送され、これまでの年金加入期間のほか、加入実績に応じた年金受給額、保険料納付額、最近の月別状況も記載されています。
その他の老後の収入
老後の暮らしをまかなうのに、国民年金、厚生年金だけでは不十分です。
他に老後資金として受け取れるお金も確認して、目安額を調べておきましう。公的年金以外にも収入を確保する方法がいくつか考えられます。
例えば、会社員の場合は、厚生年金に上乗せする3階部分として、企業年金が考えられます。
企業年金には、
- 厚生年金基金
- 確定給付企業年金
- 中小企業退職金共済制度
- 確定拠出年金(企業型)
があり、勤務先の企業にこれらの制度がある場合は、従業員は強制的に加入することになります。
また、自営業の人が年金を増す方法としては、国民年金に上乗せできる国民年金基金や確定拠出年金(個人型)、退職金を増やす「小規模企業共済」などがあります。
このほか、民間の個人年金保険を利用して老後資金を増やす方法もあります。
会社員
厚生年金基金、確定給付企業年金、中小企業退職金共済制度、確定拠出年金(企業型)、個人年金保険など。
自営業
国民年金基金、確定拠出年金(個人型)、小規模企業共済、個人年金保険など。
次回は、「老後のライフプランを左右する退職金はいくらもらえるのか?」です。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。