金利スワップ取引と通貨スワップについて

今回は金利スワップ取引、通貨スワップと金利スワップの違い、その他のスワップ取引について解説しよう。

スワップ取引とは取引時点において、現在価値のなどしいキャッシュフローを交換する行為をいう。

その代表的なものが、金利スワップと通貨スワップだろう。

また、スワップ取引は、1990年代以降のデリバティブ取引を牽引してきた仕組でもある。

金利スワップとは?

金利スワップとは、同一通貨で異なる金利の支払いや受取りを交換する仕組みのことだ。

円金利同士の交換の場合、円円スワップと呼ぶこともある。

円円スワップ

固定金利と変動金利の交換が最も頻繁に行われている取引。

※固定金利とは長期プライムレート、社債金利などで、変動金利とは短期市場金利運動型のことだ。

二種類の円円スワップ

  1. 固定金利を支払って変動金利を受け取る
  2. 固定金利を受け取って変動金利を支払う

※元本部分の交換はなく、金利部分だけが交換される。

具体的に云えば、固定利付債の固定金利部分と、変動利付債の変動金利部分とが切り離されて相互に交換される仕組みだ。

例えば、ユーロ債などの発行により長期固定金利の資金を手に入れ、発行者よりも信用力の劣る借手が、変動金利資金の借入をすることなどが考えられる。

独自に債券市場で調達するよりも、スワップ取引を通じた方が低コストで長期固定資金を手に入れらる。

※想像以上の成果を得るために知るべきたった一つの秘密!?

金利変動リスクに対応できる

企業がCP(コマーシャルペーパー)を発行して金融市場から資金を調達する方法はよく知られている。

CPは短期間で償還となるため、結果として発行を繰り返すことになる。

その間に金利上昇リスクを被る可能性もある。

このような金利上昇リスクを回避するために、金利スワップの仕組を活用することができるのだ。

金利が近いうちに上昇する可能性が高いと予想した場合

CPによる資金調達を継続して行いながら、同時に金利スワップ取引を行うことにより短期の変動金利を長期の固定金利に換える方法がある。

この方法によって、将来の金利上昇に備えることができる。

金利の低下が見込まれる場合

変動金利の支払いと固定金利の受取りという金利スワップ取引を交わしておけば、金利が低下した場合支払う変動金利は低下し、受け取る固定金利は契約どおりで変わらない。

このように金利低下によるメリットが享受でき、そのメリットで預金金利が低下して生じる損失もカバーできるという方法もある。

固定金利型の住宅ローンと金利スワップ取引

銀行などが扱っている固定金利型住宅ローンの原資は、1年や2年の定期預金などだ。

もし仮にその定期預金の金利が将来上昇した場合どうなるだろう?

住宅ローン金利を上回り、銀行は逆ザヤに陥ってしまう可能性もある。

したがって、銀行はこの金利上昇リスクを回避するために金利スワップなどを活用しているのだ。

金利上昇リスクをヘッジすることができれば、今日のような低金利時でも固定金利型住宅ローンの取扱い枠を拡大することもできる。

また、多額の住宅ローンを長期間固定金利で借りることもできるので、借り手側も返済計画が立てやすくなるだろう。

低コストで資金調達ができる

金利スワップ取引によって資金調達を低コスト化することも可能になる。

その企業の信用力によって資金調達コストに大きな差が生じることは良く知られている。

特に長期資金の調達は短期資金の調達と比べてその傾向が顕著に現れるのだ。

例えば、信用力の高いX社と信用力に劣るW社の場合を見てみよう。

  1. X社に長期資金の調達を依頼した上でW社自身では短期資金調達を行う。
  2. X社とW社が金利支払債務をスワップする。

※長期資金を必要とするのはW社。

つまり、双方がそれぞれ有利な資金調達を行い、相互にメリットを分け合うという仕組みが完結する。

また、スワップ取引では通常6カ月LIBORを基準とし、固定金利との交換が行われている。

LIBORは一流銀行に対して貸出をするときの金利で、国際取引の基準金利だ。

期間と扱う通貨によって、3カ月物円LIBORとか、6カ月物ドルLIBORがある。

参考▼

LIBOR(London lnter―Bank Offered Rate)は、 ロンドンの銀行間で午前11時に取引される金利で、1カ月から12カ月までの間で取引される。

通貨スワップとは?

通貨スワップ

通貨スワップとは、 ドルと円など異なる通貨の元利金の支払いや受取りを交換する仕組みだ。

  1. 異なる通貨建ての債務の元利金を交換する取引。
  2. 債務の交換によって為替リスクが回避される。
  3. 債券市場における発行者の資金調達力あるいは信用力の格差を利用して、調達コストの低減をはかることが可能。
参考▼

日本では、外債発行、外国証券取得など、円への転換時の為替リスクヘッジ、仕組み債にかかわるリスクのヘッジなどで利用されている。

金利スワップとの違い

  1. 異なる通貨の元本のため、通常スワップの開始時と満期日に実際に元本の交換が行われる。
  2. 通貨分の金利変動リスクと為替変動リスクを併せ持つ。

現在は異種通貨間の金利交換のすべてを「通貨スワップJと総称している。

そのなかでも固定金利と変動金利を交換する取引を「通貨金利スワップ」と呼んでいる。

為替リスクを回避できる

例えば、外貨建ての負債を保有している企業は、決済時点に円安になれば為替差損が生じるリスクがある。

こうしたケースにおいて通貨スワップを活用するといい。

例えば、米ドル建て債券による資金調達が実質円建て債券を発行したのと同じことになり、為替リスクの回避が可能になるからだ。

※為替リスク:外国為替相場の変動によって外貨建て資産あるいは負債に損失が発生するリスクのこと。

その他のスワップ取引

金利スワップ、通貨スワップ以外のスワップ取引として以下のようなスワップがある。

アセット・スワツプ

アセット・スワップとは、保有する資産から受け取るクーポン収入をスワップの金利払いに割り当てる仕組みだ。

ライアビリテイ・スワツプ

ライアビリティ・スワップは、負債を持つ企業(発行体)が、発行コストを引き下げたり、固定化させたりするために利用する。

エクイテイ・スワップ(Equity Swap)

株価指数と金利の交換、または異なる株価指数同士の交換などを行うスワップが「エクイティ・スワップ」だ。

※株価スワップ、株価インデックス・スワップなどともいう。

コモディテイ・スワップ(Commodity Swap)

原油価格や金などの貴金属や非鉄金属価格などの商品価格を対象にしたスワップが「コモディティ・スワップ」だ。

スワップ取引にかかる税金

金利スワップ取引における利息(金利差相当分)の支払いは、国内源泉所得とされる利子には該当しない。

これは、税務的には利子相当額は単に交換して双方が授受する取引という解釈に基づいている。

したがって、国内源泉税の徴収はない。

次回は「オプションの仕組み(コールとプット)を理解してビジネスにも応用しよう」です。

ではまた。CFP® Masao Saiki

お問合せ・ご相談
初回カウンセリング

資産形成について一緒に考えてみませんか?

ライフデザイン、起業、ビジネス、仕事の効率化など、資産形成に関することお気軽にご相談ください。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします