
今日は情報リテラシー5原則の中のブレイクダウンの続きで3種類のお金、相対化についてです。
世の中でお金と言われているものには、少なくとも3種類あります。
- マネタリーベース
- マネーストック
- アクティブマネー
それでは一つ一つ見ていくことにしましょう。
マネタリーベース
- 日本銀行券(現金紙幣)と貨幣(政府が発行した硬貨)の流通高および日銀当座預金残高の合計値。
すなわち、マネタリーベースとは政府・日銀が主体的に増やすことができるものです。
マネーストック
- 民間銀行など、金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量を示す統計。
- 具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(=金融機関・中央政府以外の経済主体)が保有する通貨量の残高。
すなわち、民間(企業・家計)と銀行とのおカネの貸し借りで増えていくお金のことです。(銀行預金)
アクティブマネー
- 生産者が生産したモノやサービスの購入に支出されたお金。
- 名目GDPのこと。
例えば、
みかん農家さんが生産したものを500円で問屋が引取、青果店に700円で卸したものを私たちが1,000円で買う。
この場合、それぞれに付加価値が発生し、最終的には、生産面、分配面、支出面のGDPが1,000円増えることになります。
これを三面など価の原則と呼んでいます。
また、GDPには名目GDPと実質GDPの2種類があります。
実質GDPが上昇しなくても、物価が上昇すれば名目GDPは増えます。
つまり、名目GDPが経済状況のバロメーターにはならないということです。
しかし、実際にはこの名目GDPが引き合いに出され、経済状況の判断材料として語られているケースは多いです。
相対化(比較・推移・関係性)
日銀が自分の負債を増やす。
つまり、マネタリーベースを増やせば、インフレになってデフレから脱却できる。
それで景気が良くなって国民の生活も潤う。
ただ、マネタリーベースの効果が実際に反映されるには2~3年かかると言われています。
下図はマネタリーベースの推移です。
マネタリーベースの推移
ご覧のようにお金がたくさん増えました。
それで私たちの生活はどう変わったでしょうか?
一部の企業で一時的に賃金の上昇が見られたようですが、日本経済は相変わらず冷え切ったままです。
ここ数年でお金の量は5倍近くも増えたのに。
私たちの生活は良くなっていない!
そう思っている人は多いと思います。
この世間の声とマスコミの過剰反応などが相まってますます厳しい状況になることが予想されます。
マネタリーベースとインフレ率の関係と推移
上図のようにマネタリーベースを増やしてもインフレ率はまだ上がっていません。
デフレのまま。
景気は低迷したままということになります。
理論上は、お金の量を極端に増やせば貨幣価値が下がってインフレになるはず。
しかし、実際にはお金の量を5倍近く増やしても、インフレ率は現時点では上昇していません。
量を激増させたにもかかわらず状況は変わらない。
つまり、実質的には、以前よりも悪い感情を生み出してしまった。
仮説の比較
苦肉の策がたまたまうまく行かなかった。
頭のいい人たちの考案でも失敗することはある。
インフレ率を2%ではなく、1%代に設定しておけばよかった。
もちろん、そのような話ではありません。
そもそもインフレ率とはなんでしょうか?
インフレ率とは、モノやサービスが買われたときの価格の変動率のことです。
つまり、モノやサービスが購入されないと変化しません。
彼らは、お金の量を増やせば、私たちが消費を増やすだろう。。。
そう仮定したわけです。
しかし、消費はそれほど増えなかったという事です。
お金の増量からわれわれが消費に至るまでには相応の時間が必要です。
仮説が不十分だったので、そこから生み出された対策の大半がうまくいきませんでした。
おまけに消費税の増税!?
増税前の一時的な駆け込み需要はあると思いますが、増税によって消費意欲が削ぎ落され、長期的に消費を抑制してしまうでしょう。
つまり、消費抑制対策である増税をデフレ時に実行しました。
これは誤った仮説と認識に基づいているからです。
性懲りもなく、もっと増税しようと画策している。
消費税は他国で用いたれている付加価値税とは異なり、すべての商品・サービスに課されています。
つまり、日常必需品にも課せられている。
それがどういことなのか、食費を例に考えてみましょう。
例えば、年収3,000万円の人は、年収300万円の人の10倍食費を使うのでしょうか?
そんなバカげたことは当然考えらません。
つまり、300万円-200万円(日常必需品)VS3,000万円-300万円(日常必需品)。
この2者では消費税の増税は、まったく異なる意味を持っています。
前者は年収の60%以上に消費税が課せられることになります。
しかし、後者は年収の10%のみで、必需品以外のものを購入しない限り、それ以上は課税されません。
彼らは、これを無視しているのか?
私は数字のことを言っているのではありません。
その違いが及ぼす心理的な影響のことを言っています。
皆がもっと積極的に消費してくれる環境を先に整えるのが優先事項。
ISバランスを認識していたなら・・・・
ISバランスとはインベストメント(投資)・セービング(貯蓄)のこと。
つまり、インベストメント=セービングということになります。
正しく認識できていれば、消費税を増税するという愚策を決行しなかったと思います。
増税に踏み切る前に、もっと需要を生みだすことを考え実行することが可能だったと思います。
つまり「アクティブマネー」を増やす努力を同時に行わなければならなかったわけです。
では、なぜそうした方向に向かわなかったのでしょうか?
理論の飛躍
ひとつには経済学の大前提に従って、現状を解釈し方向性を決定付けていたからです。
その大前提とは、「セイの法則」と呼ばれているものです。
セイの法則は下図の通り常に供給よりも需要が勝っていることが前提です。
突き詰めると、供給が需要を生みだしてくれるとする考え方です。
たとえばマーケティングの観点から観ても、そんなバカげた考え方が成り立つわけがりません。
市場には常にインフレ・ギャップが存在する。
それがどれだけ馬鹿げた考え方か説明しましょう。
日本は長い間、デフレから脱却できない状態にある。
それは皆が承知していることです。
御存じのように出発点を間違えると、余計な問題を抱えることになる。
下図がセイの法則の概略図です。
セイの法則の概要
- 世界は常にインフェレギャップである。
- 非自発的失業者は存在しない。
- 国債発行は金利上昇を招く。
- 自由貿易は常に効用を高める。
- 規制緩和は生産性、効用を高める。
これらの考え方は、すべてこの通りにはなりませんでした。
なぜ?
あたりまえです。
世の中デフレですから。
セミアンチ・セイの法則
- 世界は常にデフレギャップである。
- 非自発的失業者は存在する。
- 国債発行が金利上昇を招くとは限らない。
- 自由貿易が常に効用を高めるわけではない。
- 規制緩和が生産性、効用を高めるとは限らない。
つまり、今の日本の経済の問題は「デフレ」=「仕事がない」=「需要がない」
ということになります。
そして、この構造に私たちの生活がスッポリはめ込まれているわけです。
そして、この現象が過去現在を問わず世界中で起こっています。
1929年にアメリカで起こった大恐慌をご存じでしょうか?
この危機的な状況を招いたことによって米国政府は連邦預金保険会社、連邦住宅局、社会保険制度などの連邦機関を創設しました。
なぜアメリカの話をするのか。
日本は明らかにアメリカの影を追っているからです。
追わざるを得ないともいえます。
また税金という仕組みを駆使して、その支配を強めていきました。
昨今の日本でもその傾向が顕著になってきたので、理解していただけると思います。
政府機関を通した社会制度を利用する以上、政府の介入を受け入れざるを得ません。
政府が決めた納税義務とその他のルールを守る限りにおいては、一定レベルの安心と安全が保証されるからです。
いわゆるこれが「公の支配」です。
サブプライム危機など問題外の悲劇が予想されている。
連邦住宅局やファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)、ファニーメイがモーゲージ市場で十分カバーしていなかった部分に資金を供給するために設立されたフレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)
これらは、あのサブプライム危機でその存在を知るところとなりました。
そのサブプライム危機など問題外になる程の深刻な問題をご存じでしょうか?
それは社会保障制度やメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険制度)の問題です。
これらの問題が噴出した場合、どうなるでしょうか?
そうならないことを願うばかりです。
いずれにせよ、「お金」の問題をもっと高い視点でとらえていく必要があると思います。
- お金は手段であり結果ではない。
- お金は情報の一部
あなたが望む未来を得るための方法。
その一つが、お金です。
お金は抽象的な概念です。
抽象的な概念から動機を得るのは非常に難しいことです。
ですから、その抽象的な概念を具体的なものに変換することをお勧めします。
そのためには、理想的な人生を維持するために必要な費用を把握し、それを現実にするためにいくらお金を作らなくてはならないか?
そのために何をセーブしなくてはならないか?
今何が欠けているのか?
そのことについて深く考えてみる必要がありそうです。
お金そのものではなく、そのお金によって得られる未来に目を向けてみましょう。
次回は「借金をした方が豊かになれる!?」です。
ではまた。