私たちの発達は多面的であり、その中で偏りが生じることが一般的です。
この記事では、この偏った発達とそれがどのように意識の段階と関連しているかを探ります。
多重知性の理解
ハーバード大学の心理学者ハワード・ガードナーは1983年に多重知性(MI)理論を提唱しました。この理論は、人々が様々な知性を持っており、それぞれが異なる発達段階を持つと提案しています。例えば、論理的思考力が非常に発達している人は、感情的な側面では未発達であることがあります。これはある人が学術的に優れている一方で、社会的なスキルや感情的な知性が低いことがあるためです。
多重知性には、認識的知性、感情的知性、音楽的知性、運動感覚知性などが含まれます。それぞれの人はこれらの知性の中で異なる強みと弱みを持っています。
発達の段階
これらの知性は、成長と発達を示すため、「発達論的なライン」とも呼ばれます。知性は進歩的な段階を経て展開し、以前の記事で触れた5つの本質的な要素(象限、レベル、ライン、ステート、タイプ)とも関連しています。
多重知性の成長は通常、以下の3つの主要な段階を経て進行します:
- 自己中心的な段階:この段階では、個人は主に自己を中心に考え、感情や行動は基本的な欲求や生存に重点を置く。
- 自民族・集団中心的な段階:この段階では、個人のアイデンティティは拡大し、家族、友人、部族、国家など、自分に近いグループに対する愛着や興味が増します。
- 世界中心的な段階:この段階では、個人は更なる包括的な視野を持ち、他者に対する共感や理解を深め、全ての人々や生き物に対する愛や関心を持つようになります。
これらの段階は線形ではなく、一時的な経験や「ステート」から始まり、練習や経験を積むことで永続的な特性、すなわち「段階」に変化します。
自己理解と社会への貢献
多重知性と意識の段階を理解することは、自分自身の強みと弱みを認識し、自分の才能を社会に最大限に提供する方法を見つける上で重要です。これは、自分の持っている知性の中で最も優れたものを活かし、他者やコミュニティに貢献するために使用することを意味します。
しかし、これを達成するには自分自身を深く理解し、自分の強みだけでなく、弱点にも気づく必要があります。これにより、個人は意識の発展を促し、より調和した社会を形成する上で積極的な役割を果たすことができます。
統合的サイコグラフ
こうした多重知性のラインを表すのに実に簡単な方法があるとウィルバーは指摘しています。
例えば下の図1のモデルは、3っの主要な段階を表したもので、どのような発達論的ラインにも適用可能なものです。
統合的サイコグラフは、個人の意識や能力の発展を可視化する手法の一部です。
これは、多重知性の理論と結びついて、個人の各知性の発展段階を示すために使用されます。
このアプローチでは、個人がどの知性やスキルで優れているか、またどの領域で努力が必要かを把握し、より均衡した発展を目指すことができます。
統合的サイコグラフは、個人が自分自身の強みや弱みを理解し、自己成長に必要な領域を特定するのに役立ちます。これは、個人が意識的に自分自身を成長させ、全体としての人間としての能力を向上させる手助けをするためのツールです。
例えば、認知的能力や対人スキルが非常に高いレベルにある一方で、感情的な成熟度や倫理的判断が未発展である場合、サイコグラフはこの不均衡を明示します。これにより、個人は感情的な成熟や倫理的判断の発展に重点を置くことができます。
このプロセスは、統合的アプローチを取り入れ、自分の成長を促進するために多くの手法を使用します。瞑想や反省などの実践は、高次の意識状態に触れる機会を増やし、それによって発展を加速させます。これは「統合的生活実践(Integral Life Practice)」と呼ばれ、あらゆる知性のラインにおいてバランスを取りながら意識と発展のレベルを高めることが目標です。
一方、段階の発展は時間がかかり、逐次的です。高次の状態に触れることは、成長を促進するかもしれませんが、一歩一歩段階を踏むことなく、突然高度な段階に飛び込むことはできません。これは自然のプロセスとして、段階的な発展が必要であることを意味します。
統合的サイコグラフを使用することで、個人は自分の能力や意識の全体像を理解し、強みと弱みを均衡させながら成長する方向を明確にすることができます。このようにして、個人は自分自身の発展においてより意識的で積極的な役割を果たすことができるのです。