
ライフプランとは何か?
一般的にライフプランとは、「将来のライフイベントに備え、中長期的な視点でお金の計画を立てること」とされています。
しかし、私にとってのライフプランとは、「自由もお金も、人生の質を高めるために同時に育てていく手段」です。
そして、どんなに精緻に設計されたプランであっても、その人の個性や本質を抑圧するものであってはならないと考えています。
これは、私がこれまで2,000件を超えるライフプラン作成に携わってきたなかで確信したことです。
この記事では、まず従来の枠にとらわれない「新しいライフプランの捉え方」をご紹介した上で、具体的な手順や注意点についてもお伝えしていきます。
あなた自身の人生にとって本当に意味のあるプランニングとは何か、一緒に考えていきましょう。
ライフプランは現実に即した「行動戦略」である
ライフプランとは、単なる「自分らしさ」の表現手段ではありません。
むしろそれは、現実と理想の間に橋をかける実行可能な戦略であり、自分の思考や行動を具体的な方向へと導くものです。
「理想の人生」を描いても、実行できなければ意味がありません。
過度に理想を追いすぎたり、他人のやり方を模倣したりすると、逆に行動が止まりやすくなります。
大切なのは、自分の現実や素質に合った目標設定を行い、それを無理なく「行動」に落とし込むこと。
綿密な計画を立てるよりも、「できること」に集中する。その方が成果につながるのです。
私が実践するライフプラン作成の8ステップ
ライフプランは、人生の設計図のようなもの。最初の方向性を誤ると、すべてがちぐはぐになってしまいます。
だからこそ私は、目標の積み上げではなく、「本当に実現したい生き方」から逆算するというアプローチを採用しています。
- 自分の性格や体質(類型)を理解する
- 人生において「望まないこと」を明確にする
- 人生において「望むこと」を明確にする
- 理想の1日を詳細にイメージする
- 現実的な優先順位と実現可能性を評価する
- 優先課題を細分化し、すぐ行動に移せる形にする
- 実行計画(タイミング・順序・リソース)を具体化する
- 定期的な振り返りと調整で、計画を「生きたもの」にする
この順序を無視すると、途中で迷いや混乱が生じ、結果として「本来の豊かさ」から外れた方向に進んでしまうこともあります。
ライフプランとは、「自分にとっての豊かさ」を最大化するための実践知なのです。
ライフプラン事例:素質に合わない早起きの罠
例:Mさん(40代男性、不動産会社を退職後に独立)
朝5:30に起き、夜8時まで働き詰めの生活を続け、初年度から成果を出していたものの、激太りと体調不良が発生。事業にも暗雲が立ち込め始めていました。
彼は「過労」が原因と考えていましたが、実際には素質に合わない生活リズムこそが問題でした。
前職での「早起き=成果」という価値観に縛られ、自分の特性とは合わない早朝型生活を続けていたのです。
私は彼に起床時間を2時間遅らせることを提案し、最も集中力の高まる10時~11時を思考時間に充てるようワークフローを再設計しました。
その結果、1ヶ月で7kg減量、売上30%アップ(前年同月比)という大きな成果が得られました。
あなた自身の素質と行動を一致させるために
ライフプランを立てる前に、最低限以下の3つを明確にしてください:
- あなたの人生に望まないことは何か?
- あなたの人生に望むことは何か?
- あなたの理想の1日はどんな姿か?
これを飛ばすと、無意識のうちに「他人の人生」を生きてしまうことになりかねません。
なぜ、ライフプランを立てても自由もお金も増えないのか?
人生設計を真剣に考えたことがある方ほど、「計画通りに進まない」「むしろ息苦しくなった」と感じた経験があるかもしれません。
それは、あなたの意志や努力が足りないせいではありません。
問題は、「人間の行動と心の仕組み」を理解しないまま、理想像を追いかけてしまう構造そのものにあります。
アンカリングの罠:目標設定が行動を妨げる
心理学でいう「アンカリング効果」とは、最初に提示された数字や情報に無意識に影響されてしまう現象です。
ライフプランにおいても、「年収1,000万円」「資産1億円」といった強い目標設定が、実はあなたの行動力を奪っている可能性があります。
認知科学の視点:人間の行動は2つのモードで決まる
認知科学では、行動のモチベーションは以下の2つのモードで説明されます。
- メタスタティック・モード(アクション志向):目標との距離が「少しだけ遠い」と感じたとき、行動が促進される
- カタスタティック・モード(状態志向):目標が遠すぎると、無意識に行動が抑制されてしまう
つまり、「ちょっと手が届きそう」な設定こそが、最も行動を促すということ。
逆に、遠すぎる目標は“やる気”を奪うのです。
「自由もお金も増えない」もう一つの理由
計画通りに進めているはずなのに、なぜか生活の自由度も資産も増えない。
その背景には、心理的安全領域(コンフォートゾーン)の固定化という問題があります。
このように、現実的には新しい選択肢が増えても、心が古い基準に縛られていると、元の「安心できる場所」へ戻ってしまうのです。
おまけ:目標が多いほど成果は減る?
人生を豊かにしたいと思うほど、つい多くの目標を立ててしまいがちです。
しかし実際には、目標が多いほど行動が分散し、成果が出にくくなるという逆説が存在します。
たとえば、細かく家計簿をつけている人ほど、なぜか貯金が増えていない──そんなことはありませんか?
それは、本来の目的(自由や安心)ではなく、「記録すること」自体が目的化しているからです。
自由とお金を同時に増やすために必要な視点
多くのライフプランでは、「まず目標を明確にしましょう」と言われます。
「海外移住したい」「月20万円の不労所得」「老後に5,000万円」──もちろん、これらはすべて正当な願いです。
しかし、それが本当に“自分の願い”なのかを問い直したことはありますか?
もしかすると、それはSNSや他者の期待によって形成された「借りものの理想」かもしれません。
トランスパーソナル心理学の視点:本当の願いは“自我の外”にある
トランスパーソナル心理学では、人の成長は次の2段階で進むと考えられます。
- 自我の確立段階:社会の中で自分の役割や能力を築くフェーズ
- 自我の超越段階:自己を超えた価値・意味・目的とつながるフェーズ
持続可能なライフプランは、この「自我を超えた願い」に根ざしていなければなりません。
静かだけれど力強い、深層の願望──それをすくい上げたとき、人生の方向性は驚くほど自然に定まり、自由もお金もその流れの中で増えていくのです。
実践のヒント:まずは問いを立ててみる
静かな時間をつくって、自分に問いかけてみてください。
- この目標は、誰のためのものか?
- これを達成した先に、どんな感情や状態があるのか?
- もし社会の評価が一切なくなったとしたら、自分は何をしたいか?
ライフプランとは、「目標を管理する技術」ではなく、深層の願いと日常とをつなげるプロセスです。
その視点が得られたとき、あなたの人生設計はまったく違う輝きを放ち始めます。