
ビジョンアーティファクト ─ 理想を行動へつなぐ実装ガイド
ビジョンアーティファクトは、組織/個人の理想の未来像を、意思決定・行動・評価に接続する“見える設計図”。本稿は、型カタログ→プロセス→ワークショップ→テンプレ→KPI運用までを一気通貫で提供します。
1. 定義と効能(何のために作るか)
1-1. 定義
ビジョンアーティファクト=理想の未来像を視覚・言語・数値に落とし、意思決定の基準と行動の優先順位を統一するための成果物。
1-2. 効能
- 整合性:価値観・戦略・ロードマップが一本線に。
- 可視化:曖昧な“良さ”を絵/言葉/指標で共有。
- 実装力:日々の選択(時間/お金/注意)へ即接続。
2. 型カタログ(アウトプットの選び方)
2-1. ナラティブ系
ビジョン・ストーリー(1枚)
誰の、どんな痛みが、どう変わるかを情景で描く。
原則カード(行動原則5)
意思決定のルールを5行で。例外条項は作らない。
アンチ・ビジョン
やらない未来像を明記(逸脱の早期検知に有効)。
2-2. 設計/数値系
North Star Metric
価値提供の中核指標(例:週次有効体験数)。
KPIツリー/OKR
NSMを分解し、四半期に接地。
ビジュアル・ロードマップ
四半期×レーン(プロダクト/成長/組織)。
2-3. 選び方の目安
- 初期混沌:ナラティブ+原則で意味を固める。
- 実装移行:NSM+KPIツリー+ロードマップを追加。
3. 作成プロセス(発散→収束×2)
3-1. ダブルダイヤモンド
- 探索(発散):顧客/自分の価値観・痛みを採掘。
- 定義(収束):誰の何を、なぜ、いつ変えるか。
- 構想(発散):複数案で未来像を描く(ストーリー/指標)。
- 実装(収束):1枚ビジョン+NSM+OKRに固定。
3-2. 合意ポイント
- 対象・価値・制約(予算/人/期間)の3点を文書化。
- 意思決定テーブル(誰が決め、誰が相談、誰が情報共有)。
4. ワークショップ設計(120分版)
4-1. 流れ
- 現在地の3行(10分):事実/悩み/制約。
- ペルソナ即興(20分):実在顧客の一日を書き出す。
- 価値語5枚(15分):誠実・自由・学び…を抽出。
- 未来の1日(25分):ビフォー/アフターの情景化。
- NSM仮説(20分):価値の核心指標を言語化。
- 原則5&アンチ(15分):やる/やらないを明記。
- 合意の1行契約(15分):誰が/いつ/何を。
4-2. 役割
- ファシリ:時間管理と意思決定の明確化。
- 記録係:発言をそのまま書く(意訳しない)。
5. テンプレ集(コピペOK)
5-1. ビジョン・ストーリー(1枚)
誰の:__(顧客/自分)
痛み:__(現状の不)
転換:__(行動/体験の変化)
未来の情景:朝__/昼__/夜__
わたしたちの役割:__
境界(やらない):__
痛み:__(現状の不)
転換:__(行動/体験の変化)
未来の情景:朝__/昼__/夜__
わたしたちの役割:__
境界(やらない):__
5-2. 原則カード(5行)
1)__(意思決定の大原則)
2)__
3)__
4)__
5)__(例外条項なし)
2)__
3)__
4)__
5)__(例外条項なし)
5-3. North Star Metric
NSM:__(例:週次有効体験数)
計測方法:__(定義と閾値)
前提:__(価値仮説)
計測方法:__(定義と閾値)
前提:__(価値仮説)
5-4. KPIツリー(簡易)
NSM=A×B×C
A:獲得(例:新規有効ユーザー)
B:頻度(例:週内行動回数)
C:深さ(例:1回あたり価値達成率)
A:獲得(例:新規有効ユーザー)
B:頻度(例:週内行動回数)
C:深さ(例:1回あたり価値達成率)
5-5. OKR(四半期)
O:__(望ましい変化の文章)
KR1:__(数値)/KR2:__/KR3:__
イニシアチブ:__・__・__
KR1:__(数値)/KR2:__/KR3:__
イニシアチブ:__・__・__
5-6. ビジュアル・ロードマップ
Q1:__(プロダクト)/__(成長)/__(組織)
Q2:__ …
Q2:__ …
6. 指標と運用(North Star→OKR)
6-1. 週次レビュー(30分)
- NSMとKPIの差分→原因(事実/仮説/学び)。
- 原則違反が無かったか(逸脱の検知)。
- 翌週の最小実験(5分で動く一手)を1つ。
6-2. 月次リセット
ビジョン・ストーリーの1行を更新(死語の除去・新しい語の追加)。
7. 破綻パターンと修正
7-1. スローガン化(中身がない)
修正
未来の一日(情景)とNSMの両輪を必ず作る。
7-2. 指標ドリフト(測るための数字)
修正
NSMの価値定義を読み上げ確認、KPIは入替可。
7-3. 例外運用(原則の無力化)
修正
「例外」を月次で棚卸し→原則本文に統合/破棄を決める。
8. 更新リズムとガバナンス
- 週次:NSM/KPIレビュー+最小実験の設定。
- 月次:ストーリーと原則を1行だけ更新。
- 四半期:OKR/ロードマップの改版。
- 監査:アンチ・ビジョンに近づいていないか。
9. ミニ事例(個人/小チーム)
9-1. 個人のライフデザイン
NSM=「週の充足エピソード数」。価値語=家族/学び/健康。
OKRで時間・支出・注意の配分を調整し、月次で語を更新。
9-2. 小規模サービス
NSM=「週次アクティブユーザーの価値達成セッション」。
KPIは獲得/頻度/深さで分解し、ロードマップは四半期改版。
10. まとめ
ビジョンアーティファクトは、理想を情景(語)と指標(数)に翻訳し、原則(行動)で日常へ接続する装置。
「1枚のストーリー+NSM+原則5+OKR+ロードマップ」を最小セットに、週/月/四半期のリズムで運用してください。



