今回は、財形年金貯蓄の概要、非課税貯蓄の種類とそれぞれの限度額、およびその手続方法などについてです。
財形年金について
老後資金づくりに限定した「財形年金貯蓄」
事業主を通じ、従業員が給与天引きで積立貯蓄をしていく「財形貯蓄制度」の一部。
- 積み立てる商品は勤め先が契約している銀行、証券会社などの金融機関の商品。
- 非課税枠がある。
- 給与天引きで手軽に貯められる。
- 財形融資制度が利用できる。
- 受取年金は個人年金保険のように雑所得とはならず非課税。
などのメリットがあるので、積極的に活用したほうがいいだろう。
利息が非課税になる条件
- 年金受け取りは60歳以降、5年以上20年以内(保険型には終身もある)の分割で受け取ること。
- 年金受取開始前の据置期間が5年以内であること。
- 5年以上継続して積立てを行っていること。
非課税の最高限度額は、貯蓄型は財形住宅貯蓄と合算して元利合計550万円まで。
※銀行など、証券会社などの財形年金貯蓄
保険型は、払込保険料累計額385万円まで、かつ財形住宅貯蓄と合算して550万円まで。
※生保、損保、かんぽなどの財形年金貯蓄で郵便貯金を含む。
財形年金貯蓄の概要
加入者の要件 | 55歳未満の勤労者、税法上の非課税の取り扱いについては、事業主に「給与所得者の扶養控除など申告書」を提出している者に限って、その適用が受けられる。 |
積立期間 | 5年以上の期間にわたって定期的に積み立てる。 |
貯蓄の目的 | 60歳以降5年以上の期間にわたって定期的に年金の支払いを受けること。 |
税制 | ①貯蓄型:財形住宅と合算し元利合計550万円まで非課税限度額が設定できる。元利合計が、設定された非課税限度額以下の場合は、利息などについて非課税となる ②保険型:払込保険料累計額385万円まで、かつ財形住宅と合算し、550万円まで非課税限度額を設定できる。払込保険料累計額が設定された非課税限度額以下の場合は、利息などについて非課税となる |
契約の制限 | 全取扱金融機関を通じて一人一契約に限る |
非課税貯蓄制度
適用対象者
日本国内に住所を有する個人で以下の要件に該当する人。
- 遺族基礎年金・寡婦年金の受給対象となる寡婦。
- 身体障害者手帳の交付を受けている人。
- その他政令で定めている人
対象者の要件を満たさなくなった場合、非課税貯蓄制度の適用はなくなる。
しかし、対象者であった期間に預け入れたものについては、満期時までは非課税となる。
※老人などの少額貯蓄非課税制度は廃止されました。
平成18(2006)年1月1日から老人などの少額貯蓄非課税制度は廃止され、「障害者などの少額貯蓄非課税制度」に改組。
- 平成15(2003)年1月以降、新たな非課税枠の設定・追加は認められない。
- 平成17(2005)年末に制度廃。
非課税貯蓄制度の手続きについて
非課税貯畜申告書の提出
- 適用を受けようとする預貯金などの最高限度額などを記載した「非課税貯蓄申告書」を、取扱金融機関を通して、所轄税務署長に提出。
- 住民票、年金証書・身体障害者手帳などの一定の公的書類を提示し、本人確認を受ける。
- 限度額を超過して申告書を提出してしまった場合には、新しい申告書から順に無効となり課税される。
非課税貯蓄申込書の提出
申告書を提出した金融機関で、非課税の適用を受けようとする預貯金ごとに、その預け入れの都度「非課税貯蓄中込書Jを提出する必要がある。
その都度申込書の提出をしなくていい方法
一定の預金などについては、最初の預入時に提出する非課税貯蓄申込書に予定最高限度額(口座限度額)を記載すればいい。
限度額変更申告書・廃止申告書の提出
- 制度の適用を受ける金融機関や預貯金の種類を変更する。
- 適用を取りやめる。
上記の場合には「限度額変更申告書」または「廃止申告書」を提出する必要がある。
種類と非課税限度額
- マル優
- 特別マル優
上記の2種類がある。
- 元本350万円を限度として利子非課税制度の適用がある。
- 合計で1人最高700万円まで非課税の適用を受けることができる。
マル優(少額貯畜利子非課税制度)
- 非課税限度額:元本350万円まで(公社債で利用する場合には、特別マル優と同様、額面350万円まで)
- 適用金融商品:預貯金、合同運用信託、公社債(割引債を除く)、公社債投資信託など。
銀行 | スーパー定期、期日指定定期預金、貯蓄預金など |
信託銀行 | 上記銀行商品の他、金銭信託、貸付信託など |
証券会社 | 公社債投資信託、MMF、中期国債ファンドなど |
日本郵政公社
- 民営化に伴い、平成19(2007)年9月30日までに預けたものは満期まで非課税となる
- 平成19年10月以降に預けたものは非課税の適用はなくなり、他の金融機関と同じ扱いになった。
特別マル優(少額公債利子非課税制度)
- 非課税限度額:額面350万円まで。
- 適用金融商品:利付国債、公募地方債。
※政府保証債はマル優適用可だが、特別マル優は適用不可。
非課税貯蓄制度活用の注意点
適用対象者や適用される各金融商品に関する知識は不可欠だ。
それに加えて、、、、、
- 実際の手続き方法
- 各金融商品の特徴
- 金利の動向
などについての情報を見て総合的に判断していく必要もあるだろう。
そこで、主に注意してほしい点について掲載しておく。
実質利回りのよい商品を利用する。
課税・非課税にかかわらず、実質利回りにより比較・検討することは不可欠だ。
利回りの高い金融商品から利用する。
利回りの高いものから利用した方が有利に決まっている。
公社債は特別マル優から優先する。
国債・地方債については、マル優・特別マル優のどちらでも利用できる。
したがって、まず特別マル優から先に適用する方がいい。
長期運用商品に優先利用する
マル優などの性格上、流動性預金よりも長期運用資金に優先して利用する。
利払い方法に注意する
利払い型の金融商品よりも、満期一括払い型の商品のほうが実質的に預入枠が大きくなり有利に運用できる。
マル優不適用の金融商品に注意する
- 割引金融債、割引国債、抵当証券、定期積金、金貯蓄口座、外貨預金、一時払養老保険
上記の商品はマル優扱いにできない。
※預金額1000万円以上必要となる大口定期預金もマル優扱いにはできない。
以上が注意してほしい点です。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。