
自分が生きた証をこの世界に残すとは何か
前回の記事では、夢をかなえた人たちの共通点や、夢を確実に実現していくための考え方についてお話しました。今回はその続編として、「自分が生きた証をこの世界に残す」というテーマをもう少し掘り下げてみたいと思います。
まず最初に考えたいのは、「この世界」とはどこを指しているのか、という点です。
例えば、ビジネスオーナーであれば、
- 自分が参入している業界・市場
- 自分のビジネスが関わっているコミュニティ
といった領域に、自分の痕跡を残したいと感じるでしょう。
「自分がいたことで、この市場や世界の一部がたしかに変わった」と思えるような足跡です。
その前提をはっきりさせたうえで、次のように考えてみます。
「自分は世界を変えるためにビジネスを始めたのだ」
大げさに聞こえるかもしれませんが、このくらいのスケールで自分の営みを捉え直してみるのです。その思いが、周囲の人を静かに巻き込み、多くの支援者や協力者を引き寄せていきます。
そうした環境は、孤独感から自分を救い、厳しい現実から逃げずに向き合う力を与えてくれます。そして、そのプロセスの中でいつの間にか培われた強さが、やがてあなたに「望むものの大半を手に入れていく能力」をもたらしてくれるのです。
ここで勘違いしてほしくないのは、これは「自分を追い詰めるため」に行うのではない、ということです。
むしろ、あなたの内側にある思いや、本来備わっている力強さを解放するために必要な枠組みだと考えてください。
ある種の「冒険」や「探求」を自分に許可することで、人生に全力投球しやすくなります。映画や小説で繰り返し見てきたヒーロー物語の主人公に、自分自身がなっていくような感覚です。
ヒーロー的な生き方が、課題や不満を変えていく
ストーリーが進んでいく過程で、ふと振り返ると気づきます。
以前まで胸の中に居座っていた課題や不満のいくつかが、すでに別の形に変わっていることに。
もちろん、「課題や不満のことだけを考えていたから解決しなかったのだ」と単純に言いたいわけではありません。
言いたいのは、
ヒーロー的な言動に自分を少しずつ重ねていくことで、多くの障害を乗り越えていくための強さが育っていく
ということです。
そもそも、人間の意志は本来とても弱いものです。
だからこそ、私たちは厳しい現実に直面したとき、つい目を背けたり、うまく迂回して目的にたどり着こうとしたりします。
それ自体は、ある意味で自然な自己防衛でもあります。しかし、その「うまく避ける」やり方が習慣化してしまうと、
- どんなことも途中であきらめやすくなる
- 小さな困難にも過敏に反応してしまう
- 「達成する」より前に、「無難にやり過ごす」ことが中心テーマになってしまう
といった、軟弱な体質を自分の中につくり上げてしまいます。
「生きた証」を残すこと以上に大切なもの
もちろん、
- 人生を精一杯生きているという実感を得られること
- 自分が生きた証を世界のどこかに残すこと
- 結果として、世界の一部を変えていくこと
これらはどれも、とても大切なテーマです。
しかし、私がここでさらに強調したいのは、
「望み通りの成功を得られる可能性を、信じ続けられる」という状態そのものの価値です。
哲学者キルケゴールは、絶望を「死に至る病」と表現しました。
この比喩を借りるなら、
「まだ可能性はある」と感じ続けられることは、それ自体が一つの生命力だと言えるでしょう。
追求し続けた結果、当初の目標とは違うところに着地することは、現実にはよく起こります。
しかし、それで失敗というわけではありません。
世界で上位5%に入るような富裕層の多くが、
「最初から“お金そのもの”を目的にしていたわけではない」という話は有名です。
また、「世界で最も賢い」と評されるような人たちが、
必ずしも一日中勉強だけしてきたわけではない、ということも私たちは知っています。
つまり、
- 何かを追求し続けること
- そこで得られる最終的な結果
このふたつの関係性は、それほど単純ではないということです。
そこに一定の因果の形式があったとしても、
「同じ原因 → 同じ結果」という直線的な法則は、人生においては成り立たない
ということを、私たちはどこかで知っています。
大志を抱くことは、もっともシンプルな方法
それでも、今の自分を変えたい。
そして、できることなら夢も実現していきたい――そう願うのであれば、
大志を抱くこと
は、実は最も簡単で、もっとも「そつのない」方法のひとつです。
大きな志を掲げることは、自分を追い詰めるためではありません。
その志にふさわしいヒーロー的な物語を、自分の人生の中に少しずつ立ち上げていくための「器」を用意することです。
その器があるからこそ、
- 意志の弱さに飲み込まれそうなときでも、もう一歩だけ踏みとどまれる
- 結果がすぐに出なくても、「可能性を信じ続ける」という選択がしやすくなる
- 自分が生きた証を残したい世界に対して、静かに、しかし確実に影響を与えていく
というプロセスが育っていきます。
今、この記事を読んでくださっているあなたは、どの「世界」に、どのような生きた証を残したいでしょうか。
そして、そのためにどんな大志を、自分の中にそっと掲げてみたいでしょうか。
そろそろ空港に向かわなければならないので、今回はここまでにします。
次回は、ここで触れきれなかったもう一つの話題について、お話ししたいと思います。
ではまた。



