このケースは、外資系企業で長くキャリアを積んできた一人の女性が、「仕事の仕方」を根本から見直し始めたタイミングで送ってくれたメッセージから始まります。彼女はこう書いていました。

「体力的に無事に乗り切れるか不安定要素がありますが、前回2度の休職もあるので、ここでダウンして結果的に投げ出すことは避けたい。一方で体力や気力は以前と同じようには続きそうにないので、仕事の仕方を徹底してアウトソースするように切替えました。」

これまでの凝り固まった発想では「職場で絶対にできない、しない行動」だったはずのアウトソースに、彼女は踏み切りました。その背景には、過去の休職、繰り返される消耗パターン、そして「今度こそ同じ轍を踏みたくない」という切実な思いがありました。

ケースの背景──2度の休職と、「もう1回ダウンしたら終わるかもしれない」という感覚

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彼女は、外資系企業で責任あるポジションを任されているキャリアウーマンでした。プロジェクトの規模も、裁量の大きさも、人並み以上。周囲からの信頼も厚く、「この人に任せておけば大丈夫」と見られるタイプです。

その一方で、過去には2度の休職を経験していました。体力的な限界、メンタルの消耗、職場の期待に応え続けようとするあまり、自分を後回しにしてしまう癖。いくつもの要因が重なって、「ある日突然、動けなくなる」経験をしています。

だからこそ彼女は、メッセージの中でこう綴っています。

「ここでダウンして結果的に投げ出すことは避けたい。」

もう一度同じことが起きたら、キャリアだけでなく、自分自身の自己評価も、周囲との関係性も、大きく揺らいでしまうかもしれない。そのギリギリのラインを、肌感覚で分かっているからこその言葉でした。

「全部自分でやる」以外の選択肢が見えなくなっていた

私とのセッションの中で、彼女は何度もこう口にしていました。

  • 「人に頼むくらいなら、自分でやったほうが早い。」
  • 「私がお願いしたら、相手の負担になるのではないか。」
  • 「自分の評価は、自分がどれだけ頑張れるかで決まる。」

外資系企業で生き残ってきたからこその、ある種の「戦い方」が、彼女の中にしっかりと根づいていました。その戦い方は、20代〜30代の彼女を支えてきた武器でもある一方で、40代に差し掛かる頃には、同じやり方では体力と気力が持たなくなってきていました。

セッションでは繰り返し、

  • 「何を自分でやるのか」
  • 「何を任せていいのか」
  • 「そもそも、その仕事は本当にあなたが引き受ける必要があるのか」

といった問いを投げかけてきました。しかし、頭では理解しても、現場でそれを実行するのは別問題です。彼女自身も、「そうしたほうがいいのは分かるけれど、実際にやろうとすると身体が拒否反応を起こすような感じがする」と話していました。

追い詰められた1カ月──「反動と勢い」でやってみたアウトソース

転機になったのは、「この1カ月をどう乗り切るか」が勝負となる大型案件でした。そこで彼女は、これまでと同じやり方では持ちこたえられないことを、はっきりと自覚します。

メッセージには、こう書かれていました。

「体力や気力は以前と同じようには続きそうにないので、仕事の仕方を徹底してアウトソースするように切替えました。そうでもしないと1か月間持ち堪えられないと思ったので。」

ここで注目したいのは、彼女自身が「これは、今までの私なら絶対にできない、しない行動だった」と認識している点です。

「今迄の凝り固まった私の発想では職場で絶対にできない、しない行動ですが、時間的にも気持ちも追い詰められた反動と勢いでやっちゃったことで…」

冷静な判断というより、「このままだと本当に持たない」という切迫感と、「もう、やってしまえ」という勢いが背中を押したのだと思います。理屈で自分を説得するのではなく、身体のほうが先に限界を告げていた。だからこそ、「反動」のような形で、これまでのパターンとは真逆の行動に出ることができたのかもしれません。

ようやくつながったピース──「助言の意味が少し掴めた気がする」という一文

このアウトソースの決断と実行を経て、彼女はメッセージの中で、こう続けています。

「今迄、先生に頂いてきたさまざまな助言の意味が少しですが実感して掴めたのではないかなぁと感じています。」

セッションの場でお渡しする言葉やフレームワークは、そのときすぐに役に立つとは限りません。頭では理解したつもりになっていても、現実の場面で「今、この選択肢を選ぶ」という瞬間が訪れるまでは、本当の意味での理解には達しないことも多いものです。そこに臨場感がわかないからです。

彼女の場合、「アウトソース=逃げ」「自分で抱える=責任感」という長年の図式があまりに強かったため、それを一度壊してみる経験が必要でした。その壊し方が「反動と勢い」であったとしても、そこで初めて、これまでの助言のピースと現実が一本の線でつながったのだと思います。

そして、こうも書いています。

「まだ始まったばかりで道半ばですが、これならいける、大丈夫と思い始めたところです。相変わらずカメの歩みですがエネルギーの使い方を変えたことで、今迄とはちょっと違う気持ちの化学反応が起きているような気がします。」

ここで大切なのは、「一気にすべてが解決した」のではなく、「これならいけるかもしれない」という小さな感触を、彼女自身が確かに掴み始めていることです。この「ちょっと違う気持ちの化学反応」が、その後の選択を静かに変えていきます。

コンサル側から見えたこと──エネルギーの入口と出口の設計

私の側から見ると、このケースは「エネルギーの入口と出口をどう設計し直すか」というテーマそのものでした。

  • 入口:どんな仕事・情報・期待を、自分の中に取り込むのか。
  • 出口:どこに責任を返し、どこから先を人に任せるのか。

外資系で長く戦ってきた人ほど、「入口は開きっぱなし、出口は自分ひとり」という構図になりがちです。つまり、

  • 仕事は際限なく入ってくるのに、
  • どこで手放していいか分からない。

その状態で、休職を繰り返さずに走り続けることには、どうしても無理があります。

彼女との対話では、

  • 「ここから先は、組織の責任として返していいラインはどこか」
  • 「どんな頼み方なら、自分も相手も消耗しないか」
  • 「自分の価値は“何でも自分でやること”ではなく、どこにどのエネルギーを投じるかを選べることにあるのではないか」

といった問いをベースに、具体的な行動のシナリオを一緒に組み立てていきました。

私があえて急がなかったのは、「本人が本気で変えざるを得ない」と感じるタイミングでないと、この種の行動パターンはなかなか書き換わらないと知っていたからです。今回の「反動と勢いでやってみたアウトソース」は、まさにそのタイミングで起きた一歩でした。

※上記はあくまでも一つの事例であり、絶対的な成果や効果を保証するものではありません。

あなたへの問いかけ──「エネルギーの使い方」を変える準備はできていますか

このケースは、一人の外資系キャリアウーマンの物語ですが、その背景には、多くの人に共通するテーマが隠れています。

もし今、あなたが

  • 「またどこかでダウンしてしまうのではないか」という不安を抱えながら働いている
  • 任せたほうがいいと分かっていても、「自分がやるべきだ」という感覚から抜け出せない
  • 頑張ることと、自分を守ることが、いつも綱引きになっている

そんな感覚を持っているとしたら、一度立ち止まって、こう問いかけてみてください。

「私は、どこまでを自分の責任として抱え込み、どこから先を“任せてもいいもの”として扱えるだろうか。」

エネルギーの使い方を変えることは、単に「楽をする」ことではありません。むしろ、自分の時間と体力と感情を、これから先の人生で本当に使いたい場所に投じるための、静かな準備でもあります。

「エネルギーの設計図」を、描き直していく対話を大切にしましょう。

もし、あなた自身の歩き方をカメの速度のままでもいいから整え直したいと感じたときは、どうぞお声かけください。

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