
それでも紹介者の方から再度懇願され、最終的には根負けして、お引き受けすることになりました。そこから、「努力しているのに報われない」構造を、一つずつほどいていくプロセスが始まります。
ケースの背景──経営者というより、仕事に忙殺される職人としての毎日
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※ 医療的診断ではありません。セルフケアの参考情報としてご活用ください。
初回のセッションで見えてきたのは、「会社を経営している」というより、「仕事に忙殺されている職人」という姿でした。
毎日、身を粉にして働き、徹夜も当たり前。クライアントワークに追われ、デザインに追われ、細々とした雑務にも追われている。それにもかかわらず、収入はほとんど伸びていない。体力と時間だけが削られていくような状態でした。
本人も「このままではまずい」という自覚は持っていましたが、何をどう変えればいいのかが分からない。にもかかわらず、
- 「お客様にはここまでやらないと失礼だ」
- 「経営者なんだから、すべて自分で責任を持って見ていなければならない」
といった間違った信念を、一生懸命に守ろうともしていました。自分を苦しめているのがその信念そのものなのに、それを手放すことに、とても強い抵抗を感じていたのです。
正直に言えば、最初の段階では「これはなかなか手ごわい」と感じていました。ある程度は覚悟して引き受けた案件でしたが、「お手上げに近い」と思う瞬間もありました。それでも、「引き受けたからには、何とかしてあげたい」という思いだけで、私自身のモチベーションをつないでいた時期でもあります。
2回目のセッションで見えた、「所得が伸びない決定的な要因」
転機となったのは、2回目のセッションです。具体的な売上構成、業務内容、時間の使い方、取引先との関わり方などを丁寧にヒアリングし、整理していったところ、彼女の所得がずっと低迷している決定的な要因が見えてきました。
それは、
- 「自分が手を動かしていない仕事には、お金をもらう価値がない」
- 「お客様には、必要以上にして差し上げるのが当たり前」
という信念と、ビジネスの構造が見事にリンクしてしまっていたことです。
つまり、
- 誰かに任せられる仕事も、すべて自分で抱え込む
- 利益の出にくい案件ほど手を抜けず、エネルギーを注ぎ込んでしまう
- 「ちゃんとやる」ことが目的化し、ビジネスとしての採算が後回しになる
という状態になっていたのです。
この点を率直にお伝えし、「あなたの信念と、今のビジネス構造は、一度切り離して考えてみたほうがいい」と提案したところ、彼女も時間をかけながらではありますが、その矛盾に納得してくれました。
11ステップのプログラム──仕事を俯瞰し、「やらなくていいこと」を手放す
そこで私は、当時提供していた11ステップ(現在は9ステップに再構成)のプログラムを紹介し、それをベースに一緒にビジネスを組み替えていくことにしました。
概要をかいつまんで説明すると、次のようなプロセスです。
- 現状のビジネスを俯瞰する視点を持ってもらう
感覚や思いだけで動くのではなく、売上・利益・時間・ストレス度などを棚卸しし、「今、どんな構造で回っているのか」を客観的に見える化しました。 - 彼女の仕事を大分類で12項目に分解する
デザイン、営業、制作進行、請求・経理、SNS発信、顧客対応 etc…といった具合に、「やっていること」を細かく分けて書き出していきました。 - 「本来ならやらなくてよい仕事」をアウトソーシングする
12項目の中から、彼女でなくてもできる仕事、むしろ彼女がやらない方がいい仕事を明確にし、外注や社内外の協力者に委ねていきました。 - 最終的に残った4分野を2つに集約し、ショートカットの仕組みを作る
彼女が本当に価値を生み出している仕事は、実は2つの領域だけでした。そこに集中的に時間を投じられるよう、業務フローをプログラミングし直しました。
結果的に、それ以外の仕事は、彼女がやる必要がないものばかりだったのです。「経営者だから全部見ていなければならない」という信念を横に置き、彼女が本来の力を発揮できる場に資源を集めることが、このステップの狙いでした。
顧客の分類とサービス基準の再設計──「誰に、どのレベルで応えるか」を決める
業務の断捨離と集約と並行して、顧客側の整理も行いました。
- 顧客をいくつかのグループに分類する(単発・継続・紹介の源泉など)
- グループごとに、「どこまでのサービスを標準とするか」という基準を明確にする
- それぞれのグループに対し、どのようなメッセージ・提案方法が適切かを設計する
これによって、「誰に対しても120%で応え続けてしまう」という状態から、「その関係性にふさわしいレベルで丁寧に応える」というスタイルへと、少しずつシフトしていきました。
また、既存サービスの価格帯も見直し、
- 明らかに採算の合わないメニューの整理
- 価値に対して価格が低すぎる案件の適正化
- 顧客の心理的ハードルを下げつつ、継続につながるラインナップの整備
といった調整も行いました。
さらに、彼女の「センス」や「感性」が最も活きる領域にフォーカスした新コンテンツをいくつか構築し、小さくテストしながら育てていくことにしました。
一年後──年収3倍強、年商2倍強、徹夜ゼロへ
こうしたプロセスを地道に続けていった結果、一年後には目に見える変化が現れました。
- 彼女の年収は3倍強に。
- 会社全体の年商も2倍強に。
- かつて日常化していた徹夜仕事はゼロになりました。
もちろん、魔法のような一発逆転が起きたわけではありません。一つひとつの業務を見直し、信念とビジネス構造のズレを整え、自分がやるべきことと手放すべきことを分けていった結果として、自然と数字がついてきた、という感覚に近いものです。
私は彼女のことを、「V字回復の達人」と呼びたくなりました。なぜなら、彼女は単に売上を戻したのではなく、
- 自分の働き方
- ビジネスの設計
- 自分自身への信頼感
のすべてを、一度底から立ち上げ直したからです。この経験から、さらにいくつかの派生的なアイデア(デリバティブ)を生み出し、彼女のビジネスはその後も発展していく可能性を感じさせてくれました。
※上記はあくまでも一つの事例であり、絶対的な成果や効果を保証するものではありません。
あなたへの問いかけ──「信念」と「ビジネス構造」は、同じ方向を向いていますか
このケースは、一人のファッションデザイナーの物語であると同時に、多くの個人事業主やスモールビジネスの経営者に共通するテーマを映し出しています。
もし今、あなたが
- 頑張っているのに収入が伸びない
- 自分が休むと、ビジネスが止まってしまう
- 「お客様のために」という思いが強すぎて、いつも自分が後回しになっている
そんな感覚を抱えているとしたら、一度立ち止まって、こう問いかけてみてください。
「私の信念と、ビジネスの構造は、本当に同じ方向を向いているだろうか。」
信念そのものが悪いわけではありません。ただ、その信念が、現実の仕組みと噛み合っていないとき、いくら頑張っても、結果として自分をすり減らしてしまうことがあります。
あなたが大切にしている価値観や信念を尊重しながら、それを無理なく活かせるビジネスの構造を組み立てていきましょう。
もし、「徹夜しても報われない」状態から抜け出したいと感じたときは、どうぞ一度ご相談ください。



