今回の老後プランのガイダンスは、健康保険の任意継続、資格喪失後の給付内容、後期高齢者医療制度など、退職後の医療制度選択についてです。
退職後の医療制度
退職後にどの医療保険制度に加入するかを選択する必要がある。
その際には3通りの方法が考えられる。
- 健康保険の任意継続
- 家族の健康保険の被扶養者
- 国民健康保険
健康保険を任意継続する
まず最初は健康保険の任意継続を選択した場合についてだ。
健康保険の被保険者資格を失った時点で、被保険者期間が2カ月以上ある人が対象。
- 被保険者でなくなった日から20日以内に任意継続被保険者になるための手続きをする。
- 引き続き2年間にわたって健康保険の被保険者になることができる。
上記の条件を満たす場合、健康保険を資格喪失(退職)した後も引き続き2年間は、個人で健康保険の被保険者になることができる。
これは、60歳未満の被扶養配偶者がいる場合に最も多く選択されている方法でもある。
注意!健康保険の任意継続被保険者の保険料は、全額自己負担
次の①か②のうちどちらか低いほうの標準報酬月額に、加入する医療保険制度に応じ、その団体が定める保険料率を乗じた額が保険料となる。
- 協会けんぽの場合はその都道府県単位保険料率
- 健保組合の場合はその健保組合が定める保険料率
①被保険者資格喪失時の標準報酬月額
②各保険者における全被保険者の標準報酬月額の平均額(前年の10月31日基準)
協会けんぽの場合平成25(2013)年は28万円。
協会けんぽの場合の最高上限保険料は、標準報酬月額の平均額×保険料率。
例えば、保険料率が1000分の99.7で、40歳未満の場合は28万×99.7/1000=27,916円。
※40歳以上65歳未満の場合、介護保険料率15.5/1000を加え、28万×(99.7+15.5)/1000=32,256円。
家族の健康保険の被扶養者になる
退職後、収入が少ない場合には、家族の健康保険の被扶養者になることができる。
60歳未満の場合は、年収130万円未満(60歳以上の場合は年収180万円未満)、かつ、被保険者の収入の2分の1未満の人が対象。
国民健康保険に加入する
- 退職をして健康保険の任意継続被保険者や被扶養者にならない。
- 任意継続被保険者の資格を喪失した後。
上記の場合は、原則として住所地の市区町村の国民健康保険に加入することになる。
なお、国民健康保険の被保険者で一定条件の人とその家族については、退職被保険者およびその家族として退職者医療制度の適用を受けることができる。
退職者医療制度が適用される人(退職被保険者とその被扶養者)
- 被用者年金(厚生年金保険や共済組合)の老齢(退職)年金受給者で、現に被保険者期間が20年以上ある人。
- 40歳以降10年以上の厚生年金保険や共済年金の被保険者(組合員)期間があり、老齢(退職)年金を受給中の人。
適用をうけられない人
- 老齢(退職)年金の受給開始年齢に達していない人。
- 後期高齢者医療制度の対象者(75歳以上の人または65歳以上の寝たきり状態の人)。
資格喪失後のその他の給付
傷病手当金
資格喪失日の前日までに当該健保の被保険者期間が1年以上であることが条件。
傷病手当金受給中、受給要件を満たした人が資格喪失(退職)したときは継続して受給が可能。
出産手当金
資格喪失後6カ月以内に出産した場合に支給されていた出産手当金は廃止。
※経過措置に該当する人を除く。
出産育児一時金
資格喪失後6カ月以内に出産したとき受給できる。
※引き続き1年以上被保険者だった人が対象。
注意!家族出産育児一時金は、被保険者が資格喪失後は受給できない。
埋葬料(費)
- 資格喪失後3カ月以内に死亡したとき。
- 継続給付(上記(1)または(2))受給中の人が死亡したとき。
- 受給終了後3カ月以内に死亡したとき。
該当する遺族が受給できる。
※資格喪失日の前日までに被保険者期間が1年以上などの要件はない。
後期高齢者医療制度
平成20(2008)年4月より「後期高齢者医療制度」が設けられた。
※従前の老人保健制度は、廃止になっている。
都道府県単位の広域連合にょって運営され、下記の手順による。
- 後期高齢者は、今まで加入していた医療制度から脱退。
- 新しく「後期高齢者医療制度」に加入する。
後期高齢者医療制度は、各都道府県の広域連合と市区町村とで実施。
医療などに要する費用については、以下の通りだ。
- 公費で5害(国:都道府県:市区町村=4:1:1)。
- 後期高齢者支援金(若年者の保険料)から4割。
- 高齢者の保険料1割。
対象者
- 75歳以上の人(75歳の誕生日から資格取得)。
- 65歳~74歳で、一定の障害の状態にあるという認定を受けた人。
保険料
保険料は「均など割額Jと所得に応じて決められる「所得割額Jの合計。
※所得に応じて以下のように軽減措置が設けられている。
①所得割額
基礎控除後の総所得金額が58万円以下(年金収入211万円以下)の被保険者は、所得割額が5割軽減。
②均など割額
世帯総所得金額 | 軽減割合 |
所得合計額が基礎控除(33万円)以下のうち、被保険者全員が年金収入80万円以下 | 9割 |
所得合計額が基礎控除(33万円)以下 | 8.5割 |
基礎控除(33万円)十「24.5万円×世帯の被保険者数(世帯主を除く)」以下 | 5割 |
基礎控除(33万円)十「35万円×世帯の被保険者数」以下 | 2割 |
- 被用者保険の被扶養者だった人は、加入後2年間、所得割額の負担はなく、均など割額は9害1に軽減。
- 保険料の納付は、公的年金からの天引き、日座振替を選択できる。
- 配偶者や同居する子の日座からの振替も利用できる。(口座名義人が社会保険控除の適用を受けられる。)
一部負担金
- 外来、入院とも窓口負担は1割(現役並み所得者は3割)の定率負担。
- 窓口負担は月ごとに上限が決められている。
①現役並み所得者
a)課税所得(各種所得控除後の所得)が基準額145万円以上の老人医療受給対象者
b)年収ベースで高齢者複数世帯520万円以上、高齢者単身世帯383万円以上。
医療などの給付および特定療養費の給付など
医療などの給付
- 病院、診療所の窓口に被保険者証を提示し、給付を受ける。
- 医療などの給付は、健保や国保の療養の給付などと同じ。
その他
入院時食事療養費、老人訪間看護サービス。
※医療保険制度と介護保険の給付が重なるときは、介護保険の給付が優先する。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。